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阪神阪急ホテル偽装事件

2013 OCT 26 2:02:36 am by 東 賢太郎

むかし社会人1,2年目で野村の梅田支店にいたころ、阪急ホテルといえば高嶺の花だった。もちろん自分で入ったことはない。一度だけお客様とレストランで打ち合わせしたことがあるが、雰囲気にのまれていたのか何も覚えていない。

その後、16年間の海外駐在となり年に2-3回は日本に帰ってきた。日本の都会の高級ホテルはだからそこそこ泊まったり食べたりしている方だろうか。食事だが、夜はまあいい。値段なりにいいものが食べられる。しかし朝がいけない。80年代当時で2000円ぐらいした。これは痛いのだが超多忙な証券会社で時間もなく仕方がなかった。高いなりにパンもコーヒーも質が良かった。

その「高いなりに質がいい」というのが一流ホテルのイメージだろう。ところがそこでいよいよメニューの偽装表示が行われる時代になってしまった。焼肉屋のユッケ問題などとは話が違う。レッドキャビアがとびこであっても腹をこわすわけではない。しかし「筆がすべった」という程度のものでもないだろう。なぜなら、高い値段を取っているからだ。「高いなりに・・・」という既成概念を積極的に利用しているから悪質だ。警官や教師の犯罪ニュースを聞いた時に感じる「まさか」と似たものを感じる。

江戸時代を生き延び戦争を耐え忍んだ遺伝子なのだろうか、日本人は元来がまん強く節約を得意とする。縮み指向ともいわれる。デフレ耐性が高いのだ。質素な暮らしは清貧でよしとする。企業はそれをひとつの消費動向と捉えてチャンスとする。今はもはや消極的な、何か政策の失敗でおきたデフレではない。値下げ競争で儲けようという輩が元気いっぱいの積極的デフレである。ユニクロや100円ショップや家電量販店の天下なのだ。もっとも負け組はというと、ホテルと百貨店だ。

ホテルにデフレ耐性がないのは想像の範囲だが、そこで出た知恵がただのねぎに九条と書いてしまおう程度という発想はお寒いものだ。「高いだけで質は同じ」という食事に金を出す人はいなくなるだろう。僕がこの事件で怖くなったのは、ホテルでこれなら市井の居酒屋では何を食わされるかわからないと思ったからだ。普通を高級と偽るならともかく、低級を普通と偽るとなると健康被害のリスクがある。

金融の世界というのは良くできていて、リスクがないのにリターンが高いという商品は絶対にない。もしそう言って何か薦められたら確実に相手は詐欺師であるからすぐ金融庁へ通報したほうがいい。リスクとリターンは通常一定の数学的関係を保つから、ハイリスクハイリターンとローリスクローリターンで値段が違うということもない。リターンがいいから手数料も高いですよなどというのも嘘っぱちだ。

食品は味、おいしさこそがリターンだろう。味はいいが安全でない食品が単に値段が安いという理由から外食店で素材に選ばれ、安売りショップ感覚で客に供されるとしたら非常に恐ろしい話だ。金融商品ほど明確ではなくても、モノの値段というものは同じ原理でつけられていると考えて基本的にはまちがいではない。おいしいものが安かったら安全を疑ったほうが賢明だ。たいしておいしくないものが高かったら?これからは表示偽装を疑いなさいということだろう。

 

 

 

 

 

 

Categories:健康

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