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J.S.バッハ イタリア協奏曲 BWV 971

2016 MAY 11 1:01:49 am by 東 賢太郎

ピアノのディスクで最初にノックアウト級の衝撃を受けたはこれでしょう。ポリーニのショパンやストラヴィンスキーも記憶にありますが、大学当時まだそんなにピアノに目覚めていたわけではなく、ああうまいなあで終わってました。

ところがこの59年のグールドのLPは、それがピアノであろうがなかろうがそんなことは忘れてしまう凄まじい音の奔流で、有無を言わせず僕をねじ伏せたのです。第1楽章が鳴り始めるや、耳が立つ感じ。これはとんでもないものが始まったぞというわくわく感が一気に押し寄せます。

イタリア協奏曲は実に名曲で、もっと遅くて味わい深く聞こえるものもある。しかし、本来はそういう音楽だろうと頭では思っても、ブーレーズの春の祭典とおんなじであって、グールドのあまりの痛快さ、快感が僕の脳ミソにバーンと刻印されてしまっていて、他は何を聴いてもドーパミンが分泌されない。あっそうという感じになってしまうのです(本人の再録音すら)。

なんたって遅いところも凄い。第2楽章は4声部のうち、ソプラノ、真ん中の2つ、バスの3本のラインがまったく違う音色で弾かれていて、当時の僕のプリミティブな耳にもそのぐらいはわかってしまい、おいこれは何だか普通じゃないぞと身がまえてました(下が第2楽章から)。

そして第3楽章。この速さはなんだ?それも完璧なコントロール!超人だ。しかし余興の速弾き大会ではなく、このテンポでなきゃあウソでしょという他を圧した絶対的な納得感なのだからもうどうしようもない。これはダルビッシュか大谷の160kmが外角低めいっぱいにビシッと決まって、打者はピクリとも動けずごめんなさいという世界です。

オイストラフのヴァイオリンをきいてああヴァイオリンをやらなくてよかったと思うのですが、これ、ピアノもそうでした。いや、エロイカをきいたら作曲家もそうだったっけ。

 

 

J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲全曲

 

 

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