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新・のぞき劇場

2020 APR 19 20:20:37 pm by 東 賢太郎

米1ドル紙幣の「神の全能の目」

4月2日からテレワークで経営会議やお客様とビデオ会議をやっている。いまだかつて半月も会社に行かなかったことも家にこもったこともなく、これは行動変容というより人間変容を起こすのではないかと思うようになってきた。

さきほど、久々に多摩川の巨人軍グラウンドまで走った。足が動いたのも意外だったが、もっとそうだったことがある。まばらに河原に人が出ていて、いままで人影を見ると危険と思ったのがなぜかジーンときたのだ。そうか、ヒトは社会的動物だった。知らないうちに自分も変容してる。

もともと、社会に電車も飛行機もなかった。あるのが当たり前の存在になったのは高々7、80年前のことだ。なくても誰も困ってなかったが、ないと戦争や収奪競争に負ける。そういうものを平時になって産業が「便利」という言葉に置き換えて普及させたに過ぎない。便利と必須はちがう。

競争本能だろうか、人間は列を見ると並ぶ。野球場へ行けばより前の方の良い席で観たくなるからそういう料金体系になってる。では全試合が無観客ならどうだ。座席の競争はなくなる。生の迫力は犠牲になるが、平等にそうなら仕方ないとテレビでそれなりに楽しむだろう。観客入りは必須でなくなるかもしれない。

テレワークしてみると、満員電車に乗って定時にオフィスに集結することが必須かどうかわかる。参勤交代なみの忠誠心の証ならば雇用契約を細分化して実績型にかえ、総合評価と称して現場で見張る中間管理職は廃止し、全員の通勤定期券は回収したほうがいいかもしれない。

僕が入社したころ社歌なるものがあった。今でも歌えるが、それが日本の孤発事象であるという点において入社式も入学式も同じだ。テレワーク企業の専門職採用、年齢でなく学力に合わせたオンライン教育が広まれば入社、入学は必須でも一斉でもないどころか概念もなくなるだろう。

学校でオンライン化できないのは体育と部活ぐらいだ。それは社会性の育成として地域社会のローカルなミッションとし、知識の習得とテストは全国一律に東京からリモート教育としてでき、飛び級も落ちこぼれ対策も自在にできる。登下校の時間は別途使え、現場の先生の負荷は減り、なによりいじめがなくなる。

60年ほど前、鉄人28号という漫画のTV主題歌に「敵に渡すな大事なリモコン」とあった。リモートコントロールは長らく人類の夢だ。医療は入り口のオンライン診療ができるばかりか5Gで日本からブラジルの患者のリモート手術ができればドクターXみたいなスーパー・ドクターはフリーランスが当然になる。

要するに「テレ」「リモート」はITの産物なのだ。買物も趣味も仕事も教育もオンライン。それが便利となり、やがて必須となり、人のオンライン滞留時間を増やす。その時間は世代交代と共に不可逆的に漸増してきているが、コロナのひきこもりで急加速して人間変容、社会変容を一気に誘発するだろう。

コロナ禍の出口がいつ、どこかはまだ誰も見えないが、人類が死滅しない限りはどこかで来る。その後のことを「ニュー・ノーマル」(新たな平常)と呼ぶが、それは変容後のヒト、今の我々からすれば新人類が作ると考えたほうがわかりやすい。オンライン化で中国のような全体主義国家は国民を容易に監視できるようになる。新人類は対抗措置として政府を監視する法律とツールを駆使するようになる。双方向の「神の目」がバランスしたところに、新しい国家像が見えてこないだろうか。

 

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Categories:政治に思うこと, 新型コロナ・ウィルス, 若者に教えたいこと

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