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南米の空気とライル・メイズ・トリオ

2024 JAN 30 11:11:14 am by 東 賢太郎

ビジネスは流れというものがあって、今はいいように渦が巻いている。いろんな話があって、まあ自分のことだけ考えれば受けても受けなくても、どれとどれだけやってもいい。世間的にそう小さな話でもない。あと少しで69にもなるのだから無理してもろくなことはなく、他人様の迷惑になってもいけないというのが先にあるのは道徳心というより体力、気力との相談だ。ゴルフ場の受付で「年齢」欄に58と書きそうになり、一瞬、えっ俺はもうそんなトシかと思ったんだよなといったら「お前だいじょうぶか?来ちゃってるぞそれ」と笑われる。本当に58ぐらいの時にも、48ぐらいの時にもそう思ったし、あまりに来ちゃってないからそう思うのさということにしている。

こういう時、信じるのは直感だけだ。なぜならずっとそれで世を渡ってきて、まだ渡れており、そこには体力、気力との相談も自律的に含まれているからだ。やって良かったというケースもあるが、やらなくで正解だった方が多い。やったら即死のケースもあった。そうやって部長や役員だった会社を3度も辞めたし、今となってみるとあまりに大正解だったと考えるしかない。金融のホールセールビジネスというのは魑魅魍魎の巣窟である。魑魅は山の怪、魍魎は川の怪だから要はぜんぶ化け物であって、化かされた者は入ってきた本人がいけない。プロの麻雀大会だ、すってんてんにされても同情も救済もされない。

僕は経験も信じない。経験を信奉する者に最も欠けているのが経験なのだ。うまくいった失敗したというのはその時の環境要因が大半であって、それが違えば別の判断になるのは道理である。僕はピッチャーだから前の打者を打ち取ったタマで次打者もいけるなんて考えたこともない。直感というのは打者ごとに危険を察知する霊感のことで誰にもあるのかどうか、練習して身に着くかどうかは知らない。想定外の事態になっても大丈夫な神経のほうが大事かもしれない。ちなみに会社の資本勘定はその為にある。経営者はえてして経験から判断するが、えてして凶と出る。それで即倒産されては商取引の信用が崩壊するからBSにバッファーを載せる。経験は信用できないことを前提にしている。

直感は充分に寝て、心が冴えわたり、かつ、平静でないと働かない。そういう状態を作るのが実は難しい。個人的なことになってしまうが、僕の場合は36才の時に行ったブラジルの空気と情景を思い出すのがいい。際だって特別な記憶だ。歳と共に輝きを増してクラウン・ジュエルになってる。24時間もかけて地球の真裏の別世界まで行くなんて火星に行ってきましたぐらいのもんだ。格段にラグジュアリーだったヴァリグ航空のビジネスクラスであったとしても最早望めない自分がいる。そんな出張までさせてくれた野村證券の懐の深さに育てられた自分がこの程度。申しわけなさもあり、どうしてもあの時に帰ることになって幾分かの鼓舞も混じる。

僕がうまくいってきたのは多種多様な音楽が生み出す気分があるおかげだ。無意識に漢方薬にしてうまく使ってきた。ピンポイントにあの宝石を心象として蘇らせるものが大海を探せば必ずある。南米といえばボサノバで大好きだが、こういうシチュエーションで蘇らせたいのは心象であって風景ではない。それがある。ウィスコンシン生まれのアメリカ人のジャズだ。ブエノスアイレスでの録音というのがあるかもしれないが、ライル・メイズのピアノはその芳香に満ちていてこのシャワーを1時間浴びているだけでいい。

あの時、ブエノスアイレスもサンティアゴも行った。これを録音したオペラハウスは世界5大ホールに数える人が多い名劇場だが聞けなかった。仕事も面白かったし素晴らしい時を過ごしたのだから思い残しはない。

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Categories:______体験録, Jazz

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