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世界のうまいもの(17)《蒸汽海鮮石鍋魚》

2024 MAR 8 7:07:49 am by 東 賢太郎

上海で知った貴州料理の石鍋魚に惚れこんでいて、どうしてもあれがもう一度食べたい。あるとすると池袋北口のガチ中華街だろうとネットで探すと、いかにもその感じの店を見つけた。蒸汽海鮮石鍋魚なるものを食わせる料理屋「食彩雲南」である(写真)。貴州ではなく、もっと南の雲南省だがまあいいかと足を運んだ。地図を見るとこの省はチベット、ミヤンマー、ラオス、ベトナムに接する。中国南方の内陸はまだ行ったことがないが、古来より少数民族がたくさんが住んでいてその数だけ文化がある。行ってみたい。貴州のあの鍋は確かミャオ族のだと聞いた気がするが、初めてだったにもかかわらず衝撃的なうまさで忘れられない。

屈託ない笑顔がなんとも魅力的だ。

ミャオ族の人々

雲南省はこちら。これもきれいだ。

白族の人々

中国人といっても北京や上海と違ってこういう暮らしの人々がいる。食文化だって我々がいわゆる「中華料理」と呼んでるものとは違う。

「食彩雲南」は大通りの角にある雑居ビルの8階だ。狭いエレベーターでやや怪しげといえないこともなく、店員の日本語もあやしく日本人客はいないのだが、中国人の若い女の子がひとりで来たりする。テーブルの真ん中に鍋型の穴が据え付けになっていて、そこにスープを満たして点火すると、尾頭つきの魚(淡水魚だろうか)をデンと横たえる。何が始まるかと思うと、草を編んだようなモンゴルのゲル風のでっかい蓋を鍋に被せる。すると、そこからもうもうと蒸気が立ち昇ってきて天井まで届くのである(写真はまだ序の口)。壮観だ。

出来あがりはこうなる。貴州と比べるとスープの色は似ているが味は違う。だがこれはこれで実に美味。見た目でひいてしまう人もいようが料理というのは食してみてナンボであり、視覚的楽しみもあるからお薦めである。少数民族は何十もあるようだが各々にこうしたプライドをかけた食文化があると思うと興味は尽きない。

これがシルクロードを辿って西へ行くと中央アジア、中東をとおってローマに至る。黄河 ・ 長江文明からメソポタミア文明を経由してギリシャ・ローマ文明へという気の遠くなるような距離と時間の長い道のりであり、そのものが人類史といっても良い。

日本列島発祥の人類は今のところ見つかっていないので、我々は誰もがいつかどこからか渡来しているはずだ。遺伝子はそれを覚えている。だから「好み」はルーツの刻印だろう。僕の好みはユーラシア大陸を楽しみながら突っ切ってギリシャ・ローマまで行く。そこの食と音楽に、えもいえぬ親和性を覚える。

世界の所々にまだ知らぬ美味があり、見知らぬ文化の人々が暮らしており、そして音楽がある。僕にとって、音楽への関心の根っこにあるのは無意識の中にあるそういうもの、つまり雲南省の白族の人々の写真を見れば蒸汽海鮮石鍋魚を食ってみたいなとなる気持ちと変わりがないようだ。

こうした精神で世界を観ている僕のような者にとって、政治をもって中国人が好きだ嫌いだという言説は誠に狭隘と評するしかなく、政治は政治家にやらせればよく、それをもって保守か否かを論ずるなど暇人の戯れとしか思えない。ミャオ族や白族の文化を尊重するのが多様化社会であって、白人のLGBTでチンイツにするのは単一化であって馬鹿でねえのというしかない。そういう連中は料理の味もわからんし、まして音楽などほど遠かろう。

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Categories:______世界のうまいもの

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