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カテゴリー: 新型コロナ・ウィルス

BCG有効説と感染研のメンツ仮説

2020 MAY 4 2:02:11 am by 東 賢太郎

GW後半ですが人出はかなり減っているイメージですね。強制もなく。これは「空気」が働きだしていると思います。従わない人もいますが世界のどこの国もいます(むしろ、圧倒的にいます)。カリフォルニアのビーチにはじけだした若者の群れはファウチが自由を奪ってると騒いでる。このひとたちはいったい誰と戦ってるかもわかってない。アメリカですらこんなものです。パチンコや江の島ぐらいでニュースになってる日本人はほんとうに真面目で、法律もないのにおカミの言うことをよく聞く国民という思いを新たにいたします。こんな景色は僕が住んだり訪問したりした約40か国、どこにもありません。

僕は「きれい好き文化」、「空気に従うこと」が爆発的感染拡大にはなっていない大きな要因と思ってますが、しかし、{人口、感染者数、死者数} でアメリカ {3億、100万、6万}、日本 {1億、1万5千、5百} という数字が本当に正しいならば、どう贔屓目に見ても初動対応も法的措置もお粗末だった日本がこんなに優等生である理由にはなり得ません。あれほどPCR検査をこなして医療対応もSARS、MARSの経験値のある医療機関がうまくやった韓国の死者数が250です。あれほど何もしなかった日本が人口比換算でほぼ同じ死者数というのは非常に不思議であります。

コロナ死亡数が肺炎死亡数に紛れてないかと言う声がありますが、その理由でアメリカより少ない数字になっていると仮定すると例えば年間約10万人の肺炎死者数の6分の1(3~4月)である1万7千が実は全部コロナでしたという計算(人口比換算)になり、実際にあったミス、PCR検査数の少なさ、検査精度の誤差を勘案したとしても無理があるように思います。国と国を比較する場合、ミス、検査精度は比較的無視でき検査数のバラつきは無視できないという立場から僕は死亡者数を注視しております。

すると3つ仮説が出ていることを知りました(もっとあるかもしれませんが)。

①「日本のBCGが有効」説

これは要検証です。日本株BCGを使用しているイラク、台湾、タイもコロナは抑えてます。暴発してしまったアメリカ、イタリアは接種を行っていません。スペイン、ドイツ、フランス、イラン、イギリス、オーストラリア、スウェーデンは過去はしていたが現在はしていません。大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授の作成された表をご覧ください。

100万人当たりの死亡者数が10以下の国が7カ国(赤字)あり、そのうちの6カ国が広範なBCG接種を現在行っており、その6カ国のうち3カ国がBCGワクチンの日本株、2カ国が旧ソ連株(筆者注:両者はほぼ同じ株と理解)を使っているという結果は、偶然でなければ説得力があります。韓国が3.7と日本より高いのは韓国のBCGが日本株でないための可能性とも考えられます。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が「BCGの接種と死亡者数に逆相関がみえるのは確か」と発言したそうです。

(ご参考記事、4月5日)

http://新型コロナとBCGの相関関係について免疫学の宮坂先生にお伺い …

 

「東洋人かかりにくい」説です。中国の数字は {14億、8万、5千} ですが、感染者、死者の人口比をアメリカ並みとすると460万、28万で、中国は60倍のウソをついていることになります。感染地図でインドを含むアジアの丸印の小ささは確かに目立ちます。民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)による違いの可能性はあるとされますが、アメリカで黒人、ヒスパニックの死亡率が高いのはむしろ経済格差が主因と思われます。今のところこの説の科学的根拠からの説明は目にしておりません。地図の印象はむしろ①説の表で「赤字」(優等生)7か国中5か国がアジア・オセアニアあるためとも考えられます。

 

「ウィルス変異説」です。一応「仮説」として挙げますが、後述のように、そうではない可能性が高い。武漢型が欧米で変異して強毒化したために欧米では大量の死者が出たが、その時点で日本にはまだその変異株は上陸しておらず、1月に上陸させてしまった武漢型はすでに封じ込めに成功した、だから日本の死者数は欧米のようになっていないのだとする説です。

これは感染研、専門家会議の主張であり、欧米型変異株は3~4月に上陸して国内に拡散したと強く示唆されると強調しています。事実なら強い示唆などなくてもいいわけで、自ら「仮説」であることを暴露しています。即ち、③説は強毒化したことの疫学的証明、日本の医療が武漢型を消滅をさせたことの証明が必要です。「現在は欧米変異型が蔓延している」事実だけではそのどちらも証明されません。

その2点目、「武漢型を制圧するのに成功した」という言明に弊職の周囲の多くが違和感を感じています。「検査で陽性と判定された国内の約560人の検体」だけからどうしてそれが科学的に結論できるのでしょう?世界でビリから2番目のPCR検査数によって当初から無症状者は野放しだったわけですし、現在も引き続き国際比較で少ない検査数で無症状者の凡その数すら推定の域を出ないのだから、武漢型が国内で変異して欧米型と別個に大量に存続している可能性を排除できるはずがないという子供でも気がつくウソではないかということです。

「医療崩壊が危険」と検査を抑えて野放しになった無症状者が患者を激増させて医療崩壊させました。即ち、どう贔屓目に見ても、無症状者は無視のクラスター戦略が大失敗だったことは明白なのです。それを「再び無症状者を無視したデータ」で「成功だった」と「自認」し、その理由が「日本の死者数は欧米のようになっていない」(5月4日、尾身専門家会議副座長)なのです。そうではない、「大失敗したけどなぜかそうなってない」が真相であって、その疫学的理由を感染研がつきとめているなら自身の名誉のためにも即座に公表すべきだ。そうでないなら「私は正しかった。なぜなら神風が吹いたからだ」と言ってる単なる馬鹿です。

その程度の③説に基づいて「目の前の第2波を国民一丸で抑えないと今度は欧米なみの拡散になってしまう危険がある、よって、ステイホームは5月末まで続けるべきだ」という論旨が組み立てられ、それが専門家会議の結論となり、それを受けた形で政府が緊急事態宣言の5月31日までの延期を発表したのですから、説の正否は国家の命運をかけた決定的に重要なものであることは論を待ちません。このことはいずれ精緻に検証される時が来るでしょう。

①「日本のBCGが有効」説が正しいと仮定すると?

今後も宮坂先生の表のまま進むので、第2波封じ込めに関わらず100万人当たりの死亡者数は韓国(3.7)、台湾(0.2)、日本(0.6)の延長線上の数字が緊急事態宣言解除後も出てくる可能性があります。これは要注目です。防御しているのは政府でなくBCG抗体ではないかという可能性が確認され、それを検証すべきということになるからです。BCGは子供しか使えず大量確保できないので検証する意味がないという議論ではない、政府がしていることが正しいかどうかという有権者の眼として大事な観点からそう考えております。

政府の危機対応レベルが非常に高い台湾は5月3日でも0.2のままですから、政府対応の巧拙にはBCG抗体によるセーフティネットがかかっていると書けば台湾に失礼にならないでしょう。また、そうであったとしても、日本の医療現場の最前線で戦っている医療関係者の皆様のご努力をいささかも軽視するものではありません。あくまで「大本営」の戦略の話をしております。

表のデータは4月初め時点ですから、3月からであった日本への欧米型変異種もブロックできていたということになるでしょう。今後の第2波の防衛に政府が成功しようと失敗しようと、感染研の言うように変異種が強毒化していようといまいと、出てくるのは優等生の韓国、台湾と変わらない数字になり、すなわち、日本は今度は水際防衛に成功しましたという “輝かしい成果” を発表できるようになるでしょう。

つまり、官邸にとってベストで厚労省、感染研のメンツも立つシナリオは、

①が実は正しいかもしれないがあえて証明はせず、③の強毒化は仮説と言わずにそうなのだと主張し、国民に頑張ってもらって3週間たって予定通り優等生の数字が出てきて、「みなさんのおかげです、では少し緩めましょう」とほほ笑んで経済政策に舵を切って、よくやったと支持率があがる

ということでしょう。今回はここまでの指摘にとどめておきます。

最後に、実効再生産数をオンゴーイングの指標として時々示すのではなくドイツのように毎日公表していただきたい。岡田先生の言われるように計算根拠とデータも開示したほうが良いでしょう。

(ご参考)

5月3日のデータ

韓国(4.88)、台湾(0.25)、日本(3.89)

こちらで日々確認できます

http://人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】

 

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国家管理下の金融市場という史上最大の危機

2020 APR 30 16:16:46 pm by 東 賢太郎

CNNを夜中ずっと見ている。アメリカは感染者100万、死者5万だがロックダウンを州によって緩める方向に舵を切っている。これは大きな、ひょっとして非常に危険な賭けだ。カリフォルニアではビーチに普段なみに見える人が押し寄せている。大都市のある州の知事は民主党が多く言うことは聞かない。トランプは選挙の11月までは財政発動し、大企業に資金供給し、株価をなんとしても維持するだろう。11月までは・・・。

アメリカもPCR検査不足が問題になっておりウィルス感染症の世界的権威ドクター・ファウチは週に3~5百万必要と言っている。抗体の信頼度はまだ高くないとも。PCR検査のキャパは増えているが実数が至らないのは日本と同じ事情があるだろうか。ファウチは検体サンプル数が多い中国とのワクチン開発競争に劣後するという政治的危機意識もあるだろうが日本国でそれをやるのが感染研なのか民間なのかアメリカさんにおまかせなのか、開示がないのでさっぱり政府の戦略がわからない。密室政治だ。首相に大統領の指揮権がないならなぜそれを仕切る厚労大臣が素人の文科系で医師、疫学専門家が任命がされないのだろう。まったく危機感を感じない。

多少のやらせはあろうが、アメリカの意思決定はTVで可視化されている。ファウチは「レムデシビルは回復日数がプラシド・グループが15日に対し11日と効果があり、単独または別の薬との併用で死亡率を下げる可能性がある」と言った。トランプはJ&Jのワクチンを期待してるがファウチは12~18か月かかる、治療薬が先と明言していた。仮にワクチンができても量産は別の問題で220か国にすぐ行きわたることはないとも(ならば来年のオリンピックは無理ということだ)。僕の知人が人工呼吸器寸前まで行ったが、アビガンを4日で50錠飲んで自宅療養まで回復した。レムデシビルはアメリカが承認すれば日本でも5月に特例承認かというニュースも出ているが中国は効果を確認しておらずここにも政治のにおいはする。ただ治験数が増えることで早晩両者のプロコンがわかってくるだろう。

とにかく、どちらでも結構だ、既存薬を組み合わせてでも重症患者の治療、軽症者の早期回復を可能にする最適なオプションを ”早期に” 手にしてウィルス拡散を止めることは全人類の命運をかける絶対の使命だと確信する。そうしないと、後述するが、「財政ファイナンス」という劇薬を投与されている国の方が先に破綻して世界経済は大恐慌と金融恐慌のダブルパンチに見舞われ滅茶苦茶になる。困窮した国民や民族は追いはぎ、強盗となり、あらゆる犯罪、大量難民押し寄せ、国家安全保障放棄、へたすると武力衝突、戦争という道かもしれない。国家が投薬で歩けるうちに、ウィルスをどんな方法でもいいから抑え込まないと万人が生き地獄になるだろう。

そのためには無症状陽性者を洗い出して隔離すること、つまりPCR検査数を限界まで増やすことを徹底しなくてはならないのに増えない。パチンコや江の島だけで騒いでる場合ではない。ホテルから軽症者が逃げ出し、陽性が出ても入院を断る人が出ているが例外を放置すると意味がなくなる。時限立法で私権制限やむなしだろう。日本がここまで死亡数が少ないのは何らかの国民独自の文化的あるいは疫学的な “アプリオリな” 理由があると思料するが、永続する保証はない。何より大事なのは治療するオプションを手にできるスピードである。意思決定のスピードの遅さという点において日本を凌駕できる国はそうはない。前例踏襲の役所の演繹型では国が致命傷を負う。負ってからいくら入念に傷口を調べても、調べがついた時は死んでいるのである。医師、疫学専門家が全責任を負ってトップダウンで指揮すべきである。一説には小池百合子は国政に出て後継に医師を都知事にというプランがあると聞くが、その発想を持つだけでも素晴らしい。こういう手を迅速に打てる政治家だけで国政をやって欲しい。

アメリカはホワイトハウスでトランプと専門家のディスカッションの場をCNNが放映し、そこに記者も入れて質問させているから実にわかりやすい。ニューヨークのクオモは毎朝地下鉄の消毒を徹底的にやれ、それなしでどうやって働きに出れるんだと強く語り愛国心とリーダーシップを見せた。しかし、それでも感染者100万、死者5万と最大の犠牲者なのだ。僕の中でアメリカという概念が変容しつつある。アメリカの覇権は軍事とエネルギーとドル(金融)が切り札だが、軍事は空母まで感染し要諦のボーイング社も業務縮小、エネルギーはシェール油田が絶滅の危機で、命脈は株が下がってないぐらいだ。エスニックには国内にアフリカ、メキシコ(ヒスパニック国)があるような特殊な国家で大都市をロックダウンしても最下層は守れないことが露呈した。ウィルスは人体でしか生存しない。守れない層がそれとなり劇的に拡散する温床と化したかもしれない。

トランプは選挙だけでなく覇権維持に必死なのは当然だ。厄災の元凶をWHOに見立て敵国中国を叩く戦略だろうが、テドロスが台湾のデータを無視したぐらいでは弱い。「近々に調査結果が出る」というが何かは不明だ。FATCAを通じ世界のドル口座の送金データからしっぽを握ったか?この手で中国要人のマカオ等への裏金流出をつかんで習近平を脅した(それで習自身の口座もあげられ見せしめに配下を何人か切ってアメリカとは通貨主権戦略でバーターして手打ちした)前歴があるから当然調べてるはずだ。潰したい本命はアフリカを賄賂で手籠めにしてレアメタルと国際機関のアフリカ票を囲い込む中国の周到な作戦だが口実がない。WHOはそれの格好の標的になる。クオモはニューヨークは守ってもアメリカは俺が守ったというプロパガンダになる。

トランプが経済活動を消毒液を注射してでも緩めたいのは経済がヤバいからである。本当にヤバい。1QのGDPのが4.8%減だが2Qは間違いなくその何倍も落ちる。通年で3~40%は覚悟だ。航空産業は悲惨で日本もANAに4千億円入れるがデルタ、アメリカン、ユナイテッドも50~60億ドルの政府支援をするがそんなのは3か月で蒸発する。英国はそんな応急処置では持たないとBAが最大1万2千人(従業員の3割)を解雇すると発表した。原油先物が負の値とはどんな天変地異よりも異常な光景だ。スタンドでガソリンを入れるとお金をくれるわけだ。シェールガスは原油が$40~50が損益分岐点であるから、世界の経済活動を再点火して石油を盛大に燃やさない限り業界破綻が起きる可能性が高い。それにはファウチの言う数のPCR検査をしてコロナを止めるしかないのだ。当面はFRBが面倒を見るにせよ限界に来れば中西部地銀などから金融に連鎖が広がりリーマン再来の火種になる。

この事態でありながら昨日NYダウは$500も上がっているわけだ。$2兆の財政出動を評価していると素人は表向きを見るが、同様に世界の中銀が禁じ手の財政ファイナンスに踏みこみんでいる。今期の企業収益見通しは国家容認で下駄をはかせるのである。こんなこと聞いたためしもなくアナリストは合理的な予測をたてようがない。従って、唯一合理的に結論できることは、世界の株式市場はもはや官製の鉄火場であるということだ。FRBは企業の短期債務であるCPの購入まで宣言したがそれは市中銀行の仕事だ。むしろ銀行が吹っ飛ぶことを心配しているという意味なのだ。そこまで事態はひっ迫している。鉄火場でエクイティファイナンスなどできるはずもないが、政府が潰さないように資本はつっこむからとにかく国民が動揺する株の暴落だけは避けたいということ。それが怖いからヘッジファンドはショートできず、ロングでバクチを張りたい奴はやる意味があるぞということなのである。

なぜなら、言うまでもないが、トランプは株安は絶対にまずい。経済失速の代名詞として攻撃されると過去の大統領選は現職が8割負けているというパターン認識が有権者に発生する。FRBの「大人買い」の限界が見えるまでに経済活動を戻さないとフェークの株価はもろい。しかし経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われるとその作戦の戦線は全滅するだろう。だから保険として、なんとしてもコロナの初動の失敗の責任を中国、WHOに押しつけなくてはならないのである。責任回避の上でアメリカのヘゲモニーを守るというのは実はクリンチして逃げまくりのボクサーなのだが、一見するととてもアグレッシブに攻めているように見える鉄壁の戦略だ、うまくいけばだが。「WHOの忖度の根拠になる密約メールがないか」、「カネが流れた証拠があれば無敵だ」、「探せ」。至上命令が飛んでいるだろう。ジェームズ・ボンドには任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺めても不問にされる殺人許可証が与えられる、それぐらいのことと思料する。

それに呼応するように日本国ではマスクが2枚配られた。トランプ政権同様に、安倍政権には衆院選挙が重大なハードルになってきている表れと思料するものである。安倍マスクはシャビイだが百合子マスクは小粋だとネットで評判だ。「あれを送ってくれ、1枚でいいから」という声が政府に向けて国民からあがることだけはなんとしても阻止せよという至上命令が官邸官僚に飛んでいるだろう。広島では元法務大臣からカネが流れた証拠がたくさんあがってしまった。財務省自殺問題はくすぶったままだ。こんな状況の中で連休明けに経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われると政権は全滅だ。しかし舵を切らなけらばフェークの株価はもろい。しかし日本には中国、WHOを叩くという保険はない。つまり王手飛車取りなのである。

安倍総理の在任7年間で顕著に成功したのは株価政策だけだ。この点に関しては株式関連業務コンサルである弊社は恩恵に浴したが、それは株が上がったからではなく安倍政権になれば株が大きく上がる理由があるという弊社の仮説的予測が的中したからだ。現在はどうか。安倍政権の7年間で一人当たりGDPが4万ドルと横ばいなのはアジアで日本だけだ。シンガポールに次いで2014年に香港に抜かれ、いまのペースだと5,6年で韓国に抜かれる可能性がある。それでいながらその7年間に日経平均は7千円から3倍になった。日銀のBSを使ったこと以外に合理的な理由はない。日銀の資産の中身(ETF、10年国債)はボラが他国よりずっと高い。株のコストは1万9千円と推定されそれ以下だと評価損だが長期金利が上がると国債の下げでもっとやばい。だから宣言のみならず買う必要もある。すると内容はさらに悪化する。150円、インフレもありかもしれない。財務省はプライマリーバランスを盾にこれを忌避する(役人は相対的に貧乏になる)。だから経済対策の真水は少なく、ショボい。責任は首相に行く。それで降りてもらって全然結構というのが本音だろう。これが森友事件の貸しであるなら、ツケの請求書はなんと国民に回ってきていることになる。

ウィーンのペスト記念柱

困ったもので、株価は僕にとって経済の体温計だ。これを日々読みながらやってきたが、国家にここまで堂々と株価操作されるとお手上げだ。強力な解熱剤を打って「平熱です」と診断する医者のようなものだ。よって僕は社業の危機管理として最大のリスクを想定するしかない。それはコロナの有効な治療薬、ワクチンが変異などの理由で2,3年もできず、財政ファイナンスが燃料ぎれとなって民間企業はもちろんのこと財政の危ない国家の破綻にまで至ることだ。大恐慌(経済恐慌)に金融恐慌が重なったら大変だ、リーマン以上だなどと騒ぐ輩が増えているが、コロナに金融など存在しない。国がやっているのである。ということは、それは国家破綻を意味するのである。みなさん、いま日本国がなかったら生活も未来もどうなるかご想像いただきたい。2、3年の巣ごもりができるかどうかなどというレベルの話ではない。ポスト・コロナ、ニュー・ノーマルはコロナが終わらないと永遠に来ないが、数が減った生き残りの人々がついに耐えきれなくなり、「もういいじゃないか、終わったことしよう」という世界がそれだ。ウィーンの奇っ怪なペスト記念柱はそうして建った。

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経済はウィルスの奴隷である

宇宙人の数学的帰納法

2020 APR 26 21:21:45 pm by 東 賢太郎

CS放送で「古代の宇宙人」(Ancient Aliens)という米国のシリーズ物を見てます。高校の頃、エーリッヒ・フォン・デニケンの『未来の記憶』を穴のあくほど熟読した者としてこの番組は垂涎です。地球外生命体の存在を確信しているしSETIプロジェクトは多大な関心をもってフォローしているのです。ただ、この話をすると、ほとんどの人に、えっ、まじめにそんなの信じてるんですか?という目で見られます。興味ぐらいはある人も怖いもの見たさです。SETIまでは科学と認める人もデニケンの古代宇宙飛行士説まで行くとオカルト扱いです。西洋でも疑似科学とされていてまともな学者がとりあうものではないとされているように思います。

影響を受けた本はもうひとつあって、中学か高校か忘れましたが、神話のトロイの遺跡は実在すると信じて掘り当てたシュリーマンの伝記です。彼は商才はあったが家柄も学問もなく、ほら吹きだ遺跡を台無しにしたと後世のエスタブリッシュメントからの毀誉褒貶もあります。でも、たしか雑貨屋だかの見習い店員だったころ、よっぱらいのおっさんが高吟していたホメロスの詩を聞いてトロイに興味を持った。それが世紀の大発見となったなんて素敵じゃないですか。彼は幕末の慶応元年に世界旅行で日本まで来て旅行記を書いています(右)。とても好奇心のある人だったのでしょう。

アレキサンダー大王、ガイウス・ユリウス・カエサル、マルコ・ポーロ、ヴァスコ・ダ・ガマ、クリストファー・コロンブス、みんな好奇心旺盛な男ですが人をたくさん殺したり略奪してますからワルですね、でも魅力あるんですね、なぜなら、やってみないとわからない未知なことにまったく怯んでないからです。みな仮説・検証型の人間だったのでしょう、演繹でなく帰納型で、自説に自信があって突き進んで自分で検証して見せて、どうだ見たかというタイプでしょう。想像力がたくましく政治家、軍人、冒険家でなくても、現代ならビジネスマンで大成功するタイプです。シュリーマンもそのタイプで、目的はカネだ功名心だなんて揶揄されますが、そんな批判は成果からすれば吹けば飛ぶほどのものです。

どうして日本人がいないかと不思議ですが、仮説・検証型、帰納型が少ないと思うのです。与えられたもので「うまくやる」人は多いのです。でも革命的創造、原理的発明、解析モデル構築、地球的ディファクト作りみたいなものは弱いですね、圧倒的に。信長がそれに近いですが彼も鉄砲作りの真似で成功してから中国、キリシタンのアイデアに「開明的」であっただけで、それすらしない者ばかりなので目立ったということです。仮説・検証型、帰納型の反対が既存モデル適用型、演繹型です。モデルは自分で一切作らず、成り行きをじっと見て事例が出そろうまで待ち、モデルと矛盾がないことを確認し、間違いないとなって満を持して結論を出す。調査、研究には向きますがビジネス、投資には最も失敗する方法で、世にいうエリート、役所、大企業病の会社の得意技であり、まさにそれを政府、厚労省は新型コロナでやって初動が大変に遅れたわけです。

デニケンは上掲書に旧約聖書エゼキエル伝の一節は古代宇宙飛行士に遭遇した筆記者エゼキエルによる目撃譚だと書いています。これをユダヤ教徒、キリスト教徒が真面目に請け合うとは考えられません。しかしデニケンにおける聖書はシュリーマンにおけるホメロスの『イーリアス』だと考えることにはむしろ異教徒の日本人の方が思考に自由度があるでしょう。100%否定できないものは否定も肯定もしないというのが科学的態度であります。僕は科学者ではないですが受験生のころ数学にハマって何でも解けるという全能感に近い所まで行って、まったくの勘違いでしたがそれでも自分の限界の淵は見ました。そこで、科学は神聖という犯し難い天界のルールみたいなものがあるかなと感じました。そこからは、論文の捏造とかガセネタとか似非科学には天罰を求めたい欲求すら懐くようになっています。

デニケンを読んだ時はガキだったし、今は彼の説を一刀両断しておかしくないのです。ところが、そうならないのは、ある決定的な経験をしたからです。僕が帰納法型人間であるのは「知は力なり」の英国経験論者フランシス・ベーコンの影響ですが、す。ということは、経験から仮説を作って生きてるわけですからどうしようもありません。その経験とはなにかというと、1990年にメキシコシティーに出張ついでにテオティワカン遺跡に行ったときの度肝を抜かれる「不思議感」がそれなのです。CSの番組でも取り上げてますが、巨大なピラミッドが3つと小型が複数あり、西暦紀元前後にできたのですが、誰が作ったかも用途も不明です。そもそもギザのピラミッド同様、これだけの巨石を積み上げるのは現代のクレーンでも困難のようです。

演繹的な思考だと、こういう従来のモデルで説明できない遺物は(日本の古墳の土偶、埴輪もそうですが)「祭祀用」ということになってしまう。なぜなら、未開人は科学を知らず呪術や祭祀を尊んでいた、という思考のルール(モデル、正統とされる学説)があって、テオティワカンは未開人の造ったものである、したがって祭祀用であるという三段論法で結論する。典型的な演繹法です。真面目で高い教育を受けた人ほどこの思考の鋳型にはまりがちです。ルールに従った処理だから何の祭祀か、神は誰かという余分な論考は無視します。要はわからんものは「その他」に入れて蓋をしてしまい、その事例がルールを覆すものかもしれないとは考えないし、考える者は異端として排除したりするのです。ところがテオティワカンでそれをすると99%が「その他」でしたとなって、ルールの意味すらなくなってしまいます。

僕は一切のルールは間違ってるかもしれないと考える疑り深い人間なので、初めて遭遇する物事を演繹法で考えることはほとんどないです。テオティワカンでも太陽と月のピラミッドは、上掲写真の目線までけっこう急な石段を登るのですが、高所恐怖症だから本当に怖く、それでも、あまりの不思議感と好奇心でみっともなかったですが這いつくばって必死に登ったのを覚えてます。番組はこれを、高度な文明を持つ地球外生命体が飛来して建築した宇宙船のエネルギーチャージャーとして、水銀を用いた超電導空中浮遊装置だろうと比定していましたね。確かにUFOは空を飛ぶのです。というと、空中浮遊?どっかの新興宗教か、アホかと大概の人はなるでしょう。

でも現にリニアは空中浮遊してます。テオティワカンのピラミッドの最近の発掘調査で土中から超伝導体の水銀が検出されたそうだから、否定しづらい仮説であろうと思います。ここの大ピラミッドも、エジプトのクフ王のピラミッドも、どちらも三つあり、空中から見るとオリオン座の三ツ星の形に並んでいるというのも、二つの遠隔地で偶然そうなる確率はかなり低いと思います。よって、僕の中ではデニケン説を否定する科学的姿勢は取りづらく、ヒストリーチャンネルの「古代の宇宙人」をまじめに見るという行動が合理的という結論になっているのです。

最後に一つだけ。「宇宙人」は低レベルの訳ですね。英語もスペースマン、エイリアンとは言いますが漫画っぽい、オトナはエクストラテレストリアル・インテリジェンス(地球外生命体、extraterrestrial intelligence)というんです。映画ETもThe Extra-Terrestrialの頭文字です。その存在は正統派の天文学者、物理学者が認める帰納的推論だから米国でSETI(地球外知的生命体探査、Search for extraterrestrial intelligence)が行われている。ただ、空から宇宙人の電波が来るのを待つなんてアホだ無駄だという批判は世論としても哲学者からもあり予算はついたり打ち切りになったりしています。僕は税金も払っていない米国がそれをしてくれることに謝意と敬意を表明したいし、それは「西へ西へ」という金採掘者のアメリカンドリーム(シュリーマンも参加した)が「上へ上へ」になったものと理解します。

さらに言うなら、そのムーヴメントは、アレキサンダー大王からシュリーマンまで僕の思いついた6人の「仮説・検証型人間」、「帰納法的人間」、つまり、思うに日本は言うに及ばず、ひょっとしてコロナ禍で人類がより現実的、現世肯定的になって世界中で減っていくかもしれないタイプの人種に元気になってもらうプロジェクトでもあると考えるのです。日本はもっとダメになるんだろうか心配です。そもそも日本語で宇宙人と呼んでいること自体が思考停止ですね、お化けみたいなもんです、いるはずないけどいたら怖い、だからお化け屋敷行ってみようよという、この番組を見てる人たちは科学的思考とは無縁であり、TV会社もそういう客が入れば当りとならなければいいが。

ちなみに、GAFAのCEOは異口同音に「これからビジネスで必須な勉強は?」という質問に「数学と哲学」と答えています。

 

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(こちらもどうぞ)

宇宙人のいる星の画像(NASA)

新・のぞき劇場

2020 APR 19 20:20:37 pm by 東 賢太郎

米1ドル紙幣の「神の全能の目」

4月2日からテレワークで経営会議やお客様とビデオ会議をやっている。いまだかつて半月も会社に行かなかったことも家にこもったこともなく、これは行動変容というより人間変容を起こすのではないかと思うようになってきた。

さきほど、久々に多摩川の巨人軍グラウンドまで走った。足が動いたのも意外だったが、もっとそうだったことがある。まばらに河原に人が出ていて、いままで人影を見ると危険と思ったのがなぜかジーンときたのだ。そうか、ヒトは社会的動物だった。知らないうちに自分も変容してる。

もともと、社会に電車も飛行機もなかった。あるのが当たり前の存在になったのは高々7、80年前のことだ。なくても誰も困ってなかったが、ないと戦争や収奪競争に負ける。そういうものを平時になって産業が「便利」という言葉に置き換えて普及させたに過ぎない。便利と必須はちがう。

競争本能だろうか、人間は列を見ると並ぶ。野球場へ行けばより前の方の良い席で観たくなるからそういう料金体系になってる。では全試合が無観客ならどうだ。座席の競争はなくなる。生の迫力は犠牲になるが、平等にそうなら仕方ないとテレビでそれなりに楽しむだろう。観客入りは必須でなくなるかもしれない。

テレワークしてみると、満員電車に乗って定時にオフィスに集結することが必須かどうかわかる。参勤交代なみの忠誠心の証ならば雇用契約を細分化して実績型にかえ、総合評価と称して現場で見張る中間管理職は廃止し、全員の通勤定期券は回収したほうがいいかもしれない。

僕が入社したころ社歌なるものがあった。今でも歌えるが、それが日本の孤発事象であるという点において入社式も入学式も同じだ。テレワーク企業の専門職採用、年齢でなく学力に合わせたオンライン教育が広まれば入社、入学は必須でも一斉でもないどころか概念もなくなるだろう。

学校でオンライン化できないのは体育と部活ぐらいだ。それは社会性の育成として地域社会のローカルなミッションとし、知識の習得とテストは全国一律に東京からリモート教育としてでき、飛び級も落ちこぼれ対策も自在にできる。登下校の時間は別途使え、現場の先生の負荷は減り、なによりいじめがなくなる。

60年ほど前、鉄人28号という漫画のTV主題歌に「敵に渡すな大事なリモコン」とあった。リモートコントロールは長らく人類の夢だ。医療は入り口のオンライン診療ができるばかりか5Gで日本からブラジルの患者のリモート手術ができればドクターXみたいなスーパー・ドクターはフリーランスが当然になる。

要するに「テレ」「リモート」はITの産物なのだ。買物も趣味も仕事も教育もオンライン。それが便利となり、やがて必須となり、人のオンライン滞留時間を増やす。その時間は世代交代と共に不可逆的に漸増してきているが、コロナのひきこもりで急加速して人間変容、社会変容を一気に誘発するだろう。

コロナ禍の出口がいつ、どこかはまだ誰も見えないが、人類が死滅しない限りはどこかで来る。その後のことを「ニュー・ノーマル」(新たな平常)と呼ぶが、それは変容後のヒト、今の我々からすれば新人類が作ると考えたほうがわかりやすい。オンライン化で中国のような全体主義国家は国民を容易に監視できるようになる。新人類は対抗措置として政府を監視する法律とツールを駆使するようになる。双方向の「神の目」がバランスしたところに、新しい国家像が見えてこないだろうか。

 

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経済はウィルスの奴隷である

2020 APR 15 13:13:24 pm by 東 賢太郎

1月30日から何か変だと思っていて、そこで周囲の人に緊急事態宣言をしたが、なぜそう思ったのか当時のノートを見るとこの記事のインパクトが大きかった。

「500万人が外に出た」新型肺炎で封鎖の武漢市長明かす 成田に9000人移動か(毎日新聞2020年1月29日)

記事ネタも見つけた。中国以外で最も早く感染者が出たのは日本とタイだ。

1月27日、中国第一財経網などは、航空サービスアプリを使用し、昨年12月30日から1月22日武漢から出発した乗客の国外行き先を抽出した結果、タイが最も多く2万558人、次いでシンガポールが1万680人、3番目に日本(東京)9080人、4番目は韓国の6430人となっている。

30日に武漢からのチャーター第1便で「無症状病原体保有者」が2名(1%)確認されたという情報は決定的であった。無作為抽出の武漢在住者の1%ということは武漢全体では14万人いるということで、その一群が感染爆発に寄与でもしないことには突貫工事で病院を立てるほどの事態に至るまでの時間があまりに短かすぎると考えた。ここは単なる直感であるが大きな分岐点だった。なぜなら、ということは「無症状病原体保有者」は感染力を持つということを意味してくるからである。

以来、厚労省HPの「国内の患者発生」を発生順にノートに書きとってきた。初めは身を守るための情報収集だったが、業務上、ウィルスのことを知っておく必要があることがだんだんわかってきた。経済も株式市場も感染のマグニチュードと終息時期の奴隷と思うほど影響の甚大さがみえてきたからだ。

新型コロナウィルスはどこから日本に来たのか?天から降ってくるわけではない、誰かが持ち込まれなければ存在しないのだから、この写真のデータに答えがあるはずである。決して犯人探しではない。ドクターでもない。それでも、ウィルスを知ろうと思えばその「行状」を観察する以外に道はない。

発生は武漢で昨年11月のことであり、中国内で拡散の騒ぎが起きたのは1月の春節前であっという間に医療がパンクして1月23日に武漢市がロックダウンになった。その時点で外国の感染例は報告がなく、日本への持ち込みは武漢関係者(武漢に住むか、直近に訪問した人)による直輸入か、それがいったん中国の他の都市を経由した間接輸入であることは確実である。

厚労省のデータを見る限り21番目の患者以降に武漢関係者はいない。20番目までの19名(16番目がなぜが記載されていない)のうち17名がそれに相当し、うち半数の9名が中国人旅行者でその全員が1月22日以前、即ち、ロックダウン直前に武漢を逃げて日本に入国していることがわかる(ちなみに7番目の40代の女性は北海道観光をして1月27日に発症・受診している)。

でも、種とはいえたったの17名でここまでなるか?少なすぎないだろうか?そうではない。持ち込んだ17名の陽性者は毎日新聞報道の9000人の一部であったのだ。空港検疫または発症によって厚労省が認識するに至ったのは37.5度以上の発熱があり咳などの症状が発現した人のみだ。それが17名だったのである(1番目の患者の入国日・受信日は1月6日、PCR検査陽性確認は15日。20番目は各々22日・27日、2月5日)。

ということは、チャーター便で帰国した763名のうち患者11例、無症状病原体保有者4例(全員退院)15名(2%)の陽性者が最終的にいたと発表されたことから9000人のうちの180人、また、後述するイギリス医師会BMJのデータに基づくなら70人の陽性者(55名が無症状病原体保有者)が入国していた可能性があるが、厚労省が「患者」と特定したのは17人だった(無症状者4名は付記されている)。

それはPCR検査を絞る政策を採ったからだ。即ち発症者だけ検査するといういわば受動捜査で、実質的には「無症状病原体保有者」は無視するという結果になった。武漢の人を入れてしまったのは3~5番目は「来日時の症状なし」、1番目は入院させて陽性確認した日に「症状が軽快」と退院させてしまったなど、初動時の判断がウィルスにとって「疑わしきは罰せず」とでも書くしかないものだった。「無症状なら無害」の性善説は有事の危機管理としてあり得ず、水際対策を現場は懸命にやったと信じるが、大本営の戦略策定の失敗である。

だから、つい先日に徳田安春医師(群星沖縄臨床研修センター⻑)が、

有力な医学誌「BMJ(イギリス医師会雑誌)」の4月2日の報告によると、先週、中国で行われた新型コロナウイルス検査で陽性と確認された166人のうち、実に5人に4人にあたる78%(130件)が、明確な症状を示さなかった

と報じるなどで厚労省は政策の180度転換をしなくてはならなくなり、首相が前言を翻して「検査を増やす」「ドライブスルーまで考える」と発言する事態になった。「無症状病原体保有者」は1~2%どころか症状のある人の4倍もいるという驚愕のデータが出てきたわけであり、「無症状でも有害」(感染力がある)という推定の正しさがわかってきたからだ。

では現在ではどうか?4月14日時点で陽性が7645名であるから、無症状者は3万人いて日本には合計で3万8千人の陽性者がいることになる。

一方で、厚労省がLINEを使った4月10日の調査には僕も回答したが、

37度5分以上の発熱が4日以上続いていると答えた人の割合が全国平均で0.11%、数にして2万6900人余りに上りました。

という結果が報告されている。ここでYESの人は「症状あり」である。もしその人たちが全員が陽性であったなら、熱がない無症状者は9万5千人いて、日本には合計で13万4千5百人の陽性者がいることになる。まさか全員ではないだろうというなら、国民(1億4千万人)の 0.11% という角度から計算しても15万4千人とむしろそれより多い数字になる。

LINE調査は8300万人で回答率3割ほど(2450万人)だからサンプル数は何かを統計的に語るには十分多いと考えるならば、厚労省の「陽性が7645名」という数字は13~15万人のたった 5~6%であり、検査数がそれほど過少であったという別な角度からの証明になってしまっているかもしれない。仮に3万8千人という説を採ったとしても20%であり、そこをどんなに精密に調査してもウィルスの全体像を解明する努力としてはあまり科学的に賢明なアプローチではないだろう。データサンプル数が世界一である中国は全体像解明のレースで非常に優位にあるからだ。

 

ここまで書いた時、友人から

4月3日から中国人が3000人も日本に入国したかもしれない

と電話があった。そんな馬鹿な、入国はその日から禁止だろと思ったが、湖北省、浙江省のビザで省を出て14日たった条件で入れてるらしい(このデータは法務省HPにあるらしいが僕は見ていない)。頭をよぎるのは、毎日新聞の9000人だ、再入国許可でいったん武漢に帰国してまた来てるのだろうか?そういえば、武漢は終息宣言して4月8日に封鎖解除してるじゃないか。ひょっとして、政府の4月7日の緊急事態宣言は関係あるのか?

いやな予感があたらなければいいが、安倍首相の唐突な「V字回復」という言葉は何だろうと考えている。ひとつはこれだ。日銀による官製株価操作である。日経平均が下がれば千億円単位でETFを買い、浮力をつけつつカラ売り筋の買戻しを誘発し封じ込める。ある程度は奏功していることがこのチャートで分かる。

これはトランプ政権と歩調を合わせていると思われる。向こうは選挙で株の暴落は敗北を意味するから2兆ドルのバズーカ砲を放ちながら盛大にやる。日本の花火は援軍になる。それにシンクロして日本も上がったように見せれば安倍政権のコロナ経済対策はうまく行ってるムードを醸し出せるぐらいは考えてるだろう。証券界で市場価格の透明性を説き40年過ごしてきた者として言わせてもらうなら、誠に下品で知性の片鱗もない発想であり、それそのものが大ウソだから弁護の余地もない。

株も為替もマスクも区別なくブルドーザーの如き力技でいけると思い込む浮世離れした金銭感覚の凄まじさは国民に知れ渡ってしまった。トランプも一見、彼らと同様に、ゴルフを知らない田舎のおっさんがクワでパットしてグリーンに穴あけてるみたいに見えるが、ビジネスマンである彼はカネの効用も怖さも株式市場も嗅覚で知っている。株価は何をしようと最後は実体価値に収れんするのである。あの真似を官邸のお歴々がしようなんてことは考えない方がいい、日銀のBSがぼろぼろになって我々の子供、孫の世代からいずれ積年の恨みを買うこと必至である。

「V字回復」。株でないなら何だろう。いやな予感というのは爆買いだ。もちろん中国人様のである。地位が不安になりつつある習近平はマッチポンプと言われようが何だろうが、感染データ数と患者数の優位性を梃に、日本製のアビガンだろうが何だろうが治験例を増やし、マスクや医療器具も大量に世界に(特に欧州とアフリカに援助して、腕力をもってしても世界の救世主になりたい。5月6日、桜もGWもお預けだった日本国民にはガス抜きがどうしても要る空気になるだろう、銀座に灯をともして観光地も商店街も・・・ならば・・・。そんな馬鹿な?友人は言っていた「そうかな?お肉券、お魚券があそこで平気で出てくる連中だよ」。そうか。非常に説得力がある。

「無症状病原体保有者」なんてのっけから頭にない。そいつらは死なないんだろう?抗体もつんだろう?ならば検査数、うるさいから増やしてホテルに閉じ込めとけ。あの9000人は爆買いの布石として入れる。恩も売れる。陽性は増えるだろ、医療崩壊するだろ、でもアメリカよりましだ、よくやってるとトランプに言わせればいい、それに、もうここまで増えちゃってるんだ、仕方ないよ、大事なのは空気だ、マスコミのポチを使え、もう大勢に影響ないじゃないかで押し切れるだろう。6月には中国人入国禁止令が解ける(だって習さまが沈静化したとおっしゃってるんだから)。カネだカネ、まず不安にしておいて助け舟を出す、売り上げが戻ったよくやったとなれば衆院選で自民党は安泰だ。ポピュリズム万歳だ。

それをしてしまえば、銀座やニセコも埋まるかもしれないが病院のベッドも埋まるだろう。オリンピックで味をしめた「お・も・て・な・し」がたくさんの善良な日本国民の命を担保に成り立つなら、令和の幕開けは呪われた暗黒の悪夢として日本史の教科書に載るだろう。そこまで言うとさすがに友人は「考えすぎ」と笑ったが、こういうことに関して僕は徹底して性悪説で生きてきた。なぜなら、投資は後手後手の演繹型人間はやればやるだけカモになり大損になる。根っから帰納法的人間でなくては勝てない。すると、人間の諸相を観察するに性悪説でないといけないのだ。冒頭に帰るなら、ここで何より性悪説なのはウィルスに対してだ。このエイリアンこそ諸悪の根源。だから始めからありとあらゆることを悪い方の極限で組み立てる。しかし、少なくとも国民は、今や誰もがそうしないといけないほどの有事と気がついただろう。

さっき気がついたが、厚労省クラスター対策班の西浦教授が「日本人は42万人死ぬ」と僕の3月27日付のブログと同じ数字を公表した(計算根拠は知らない)。それを書いた意図は全面的な「性善説」をもって、壮絶なテンション、ストレス、感染リスクと戦っている医療現場のすべての方々と、体内でウィルスと戦っているすべての患者、ご家族、そして、ウィルスを殺すワクチン・薬の開発努力をされているラボラトリー、企業の先生方を応援するためだ。今更ながらだが、ほんとうに医者になりたかった、こういう時に力になれなくて心から悔しいと思うからだ。人の命を預かる医療というのはカネじゃない、人間にしかない尊い善意で成り立っていると思い知る。だから国民は我慢して応援する。私権制限する法もないのに、そういう民族であることを誇りに思う。

だから、その善意の我慢が限界にくるまでに、日本人の美徳を守るために、国は即刻カネで助けるべきなのだ。何を考えてるんだろう?日本人のフリーランスのミュージシャンの方が申請したら2日後に60万円相当が口座に振り込まれて驚いたというドイツみたいに。だって教えてほしい、それ以外に国ができることってなあに?出せない法律のせい?なら変えればいいでしょ、あんたらそれが仕事の国会議員なんだから。カネは出ないんですけど政治家も頑張ってます、ごいっしょに身を切ってますなんてくさいポーズはね、ぜんぜんアウトのタイミングなのに猛然とヘッド・スライディングして監督に「懸命にやってます」をむなしくアピールする万年二軍選手にしか見えない。

そういうのが浅ましくて滑稽なだけということにこれほど笑われても気づいてないから「貴族か」なんて新聞の見出しに書かれちゃう。貴族は戦争になれば最前線に出て命かけて国守る。モーツァルトがウィーンで売れなくなった最大の原因は、客だった貴族がみんなトルコ戦争に行っちまったからだ。その引き換えとして貴族は地位も贅沢も許されているのである。ところが平時が長く続くとその地位にいるだけで自分は特別な人という何の根拠もない全能感が生まれ、国民は奴隷と思い、自分はどうでもいい事に精出してみんな喜んでくれているという「ああ勘違い」の奴隷になっていましたという人間の悲しい性が世界史に刻まれている。「パンがなければケーキ食べればいいじゃない」の王妃マリーさんはきっと悪い人ではなかったが国民はブチ切れてギロチンで首を刎ねてしまった。刃が見えるようわざわざ顔を上に向けてね。星野源も結構だけどお家で犬とくつろぐならフィガロの結婚なんかもお薦めだ。

 

(追記、2020年4月16日)

「中国人3000人」のデータはこれとのことであった。本件はネットで話題になっている。

http://www.moj.go.jp/content/001318291.pdf

上陸拒否国からの渡航者で審査の結果「特段の事情」を認め許可した人である。特段の事情とは永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、または定住者の在留資格を有する者。

中国人以外も含み、上陸拒否国から帰国した日本人も含むから「中国人3000人」はこの時点で正確ではない。ただし論点は国籍ではなく、「ウィルス保有者」を入れてしまっていないかどうか、要は「空港検疫の精度」の問題と思料。接触8割減は不幸にも入国させてしまったウィルスを増殖させない策であり、国民が身を切ってその努力を1か月するのは、「新しいウィルスがは入って来ない」信用に基づいている。

 

 

 

 

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のぞき劇場

2020 APR 11 12:12:31 pm by 東 賢太郎

いや、これは驚いた。風営法施行令にある用語だが、東京都が国と議論した営業自粛対象で基本的に休止を要請する施設の細かさにだ。しらみつぶしを地で行くぞという気迫すら感じる。

(いわゆる)「風営法」という昭和23年施行の法律は江戸時代の赤線囲い込み隔離政策にルーツがある。「風俗」というつかみどころのないものをどう法律的に定義していくか参考になるので書いておく。

まず同年に「興行場法」を制定し、「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設」が定義(大分類)される。そこで業として興行を行うものは都道府県知事の許可が必要という網をかける。

次に、そこで行われる「興行」が風営法で定義される(中分類)。その一つに、

「性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態又はその映像を見せる興行」(*)

がある。

次に、その興業を行う場所(興行場)が風営法施行令第二条にて三分類され、それが「ヌードスタジオ」「のぞき劇場」「ストリップ劇場」である(小分類)という三層構造になっている。どれも、やることは(*)であり、昭和23年にはあったであろう「のぞき劇場」が現存するかどうかはともかく、分類のタイトルであるから法技術上はどうでもよくて残されていると思われる。

東京都に気迫を感じたのは、興行法上、これらが都の許認可事業だからだ。国に口だすなよという意志を感じる。小池都知事が「ロックダウン」と言ったが、新幹線を止める権限はない(鉄道事業法により国交省が許認可)、できもしない事を言うな、横文字は使うなと揚げ足を取られた。

ここからはまったくの私見だが、僕には、

「ならばこれはどう?英語の読めないおっさんでもわかるでしょ、その3つ、あんたたちよく知ってる所でしょ。私の権限よ、後ろからスカート踏まないでね」

という風に見える。これが小池都知事の案かどうか?「代表取締役社長かと思っていたら天の声がいろいろ聞こえて中間管理職になった感じです」というコメントに嫌味なくじんわりとにじませる。真相はどうあれ、「うまいなあ」と思うのである。

何故なら、それを男が言ってもあまり迫力がない。広義の「ポジショントーク」になるだけだ。まあボロが出るからこのぐらいにしておくが、この一戦は小池氏の圧勝であった。女性の時代というが、古来我が国はシャーマニズムといわれ巫女という存在が有事の祈祷をして民が従っていた。未知のウィルスに襲われてる恐怖は民の本能の領域にだんだん至ってきているのかなと思わせる「のぞき劇場」であった。

 

(こちらもどうぞ)

若者のための政治講座(その2)

 

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フェーク・ニュースの見抜き方

2020 APR 8 18:18:41 pm by 東 賢太郎

証券界で生きてくると性悪説になります。僕は親の教育でシンプルにのほほんと性善説なのですが、仕事になるとやおら人が変わって鬼の如き性悪説人間になります。要は、全員がウソを言ってると思ってるということです。

わかりやすい例でいうと、Yahooファイナンスの「掲示板」があります。ここに書いてあることはほとんどウソです。ポジション・トークと言って、その銘柄を持っていれば強気、買いたければ弱気が書いてあると思えばいいです。

つまり欲の皮がつっぱった人たちのジャングルだから踏み込んだら最後。だまされたら君が悪い、そういうものだ嫌なら来るなという世界なのです。そこで40年生きていればそれなりにウソに免疫力がつきます。見抜けてしまうのです。

ポジション・トークには上級者版があります。どなたか学者さんが国会答弁を「ご飯論法」と呼びました。「あなた朝ごはん食べましたよね?」「食べてません」と答えて、実はパンを食べてましたというものです。立派なウソです。

これを、「朝ごはんを食べない人が増えてます」と言い「パンを食べる人は増えてますが」は言わずに「ブランチ(朝昼いっしょ)がトレンドです、マックの株が買いです」とやれば「ご飯論法」の逆行型でポジショントークができます。

フェーク・ニュースはそうやってできています。猿でもわかるものから知能犯的なものまであります。隣国が十八番とする「ウソも百回言えば本当になる」というバージョンもあります。油断も隙もない。ジャングルだと述べたのはそういうことです。

これをマスコミがやれば「情報操作」ができます。「言わないのはウソではない」という論法で、権力者だけが知っている情報のうち都合のいいものだけ流す。独裁国家の常とう手段ですし、選挙戦でネットが使われるのは有名ですね。

ウソに免疫力がつきます」と書きました。40年かけてガッツリついたのです。僕は性善説なので公然とウソを言う者は蛇蝎のように嫌いなのです。脳内で免疫が活動し始め、ウソを成敗したくなってしまう。本人に恨みはありません。

2014年、僕はあるニュースを見てSTAP細胞がウソだと気がつきました。かなり早い段階で。それは当ブログに時系列で残ってますが一日に何万回も読まれました。もちろん学者じゃないんで証拠はありません。直観と論理だけです。137億年の彼方でも働く論理はウソは言わないです。結果は周知のとおりです。

いま新型コロナで世界の政治は窮地に立ってます。権力でウィルスは殺せません。お願い、強制、ばらまき、緊急事態宣言、いろいろ出し物はありますし、日銀のETF買いの経済対策なる株価操作も涙ぐましいのだけれども、そんなことより政府にお願いしたいのは「情報開示」なのです。それに尽きます。

だいたいの政府は国民は馬鹿だと思ってます。なにせ孔子さまが「民は由らしむべし、知らしむべからず」と言ってるものだからもっと馬鹿な人でもそう思っていて情報は小出しでいい、知らせると騒いでマスクが買い占められたりするではないかということになってる。民は安心させるのが大事というのです。

そうでしょうか?台湾は政府がマスクの総量を管理し、アプリでいまどこの店にあると、むしろ「100%情報開示」した方が騒ぎが起きない事を証明してます。政府は情報操作をしているかもしれないと民が疑っている土壌に小出しの断片情報を流すからパニックになると僕は思うのです。

さらにまずいのは、「知らしむべからず」=「ウソをついていい」になることです。「朝ごはんを食べない人が増えてます」の例を思い出してください。この情報を開示したふりすることで「マックの株はいいね」と信じこませるポジション・トーク(=ウソです)ができてしまう。巧妙に民を騙せてしまうのです。

民を安心させるために我々が要るんだ、開示するだけならほかに政府は何をやるんだ?知りません。でも民に知らしめないことが仕事の国会議員は全員辞めてもらって日本国は何も困らないでしょう。そしてもうちょっとましな特措法つくれるレベルの人たち、まあ「選良」といいますかノーブレスオブリージュを身をもってできる人といいますか、少なくとももう少し学力のある人だけにはしてもらって、それならば人数は半分もいらないという結論でしょう。

ウソを見抜くのは商売だから、見過ごせない場合はブログにします。

 

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遅きに失する緊急事態宣言

2020 APR 7 1:01:06 am by 東 賢太郎

ボクシングでいうなら選手が失神してからタオル投入みたいなイメージであります。もし選手がそのまま死んでしまっても「投入時期は時間をかけて慎重に検討したものであります」でおわりというシナリオなら怖い。私見ですが、我が国の検査数が少ないのは、どうせ死人は一定数は出る、医療崩壊しない範囲で対応して本音は「集団免疫にたよる」作戦で薬、ワクチン開発を待つ気なのかなと見えないでもないのです。

北朝鮮が「感染者ゼロだ」と言ってる。みんな笑ってますが、仮に、感染者を徹底的に洗い出して全員「粛清」してるという意味なら、ぞっとしますが、それは正しいのです。国内にウィルスはゼロです。それは極端な例ですが、その「マイルドなバージョン」として、感染者を動かないように閉じ込めて(当然そこから多くの死者が出ることの認容は口外せず覚悟のうえで)、国民60%の元気な者に自然に感染させて抗体を持たせ、社会的に免疫のバリアを作って弱い者も守るという集団免疫作戦を時間をかけて遂行しつつ薬、ワクチンを待つということは可能であります。

現にイギリスは当初それをやると決めましたが、自然な感染を放置したら死者が20万人出るという予想外の研究結果にジョンソン首相が驚いてやめました。しかし対応が遅くオーバーシュートがおきてしまったイタリア、イラン、スペインは、もうすでに多くの犠牲者が出ているのだから若者に集団免疫のバリアを作る作戦に移行する(している)かもしれない。すると高齢者はさらに亡くなる、それをやむなしとする、トリアージもある。人の生死に人の意思が関わる。とても恐ろしいことです。

ではアメリカはどうか?トランプ大統領は3月29日にCNNで「死者20万人以下なら非常にいい仕事(very good job)をしたことになる」と言いだしました。いよいよ来たなと思いました。どこまで深く考えた発言かは不明ですが、人口がイギリスの5倍あるアメリカで20万人より少なければ上等だろうということでしょうか。とするなら、選挙戦略上トランプは封じ込めはあきらめて本音は「集団免疫」戦略に切り替えた可能性があります。

粛清する(故意)か死を容認する(未必の故意)かの違いであって、トランプの意図は金正恩とそうかわらないかもしれないという恐ろしい話です。意図というより、それは不可避な真実なのだから、それに即してベストをつくせばいい仕事だという「確信犯」になるかもしれないということですが、彼が善意であろうとなかろうとトップが決めれば下はそう動くのです。医療現場の方々は命を守ろうと必死の努力をされる、そのことに僕は一片の疑問もありませんがトップの意図の変質や汚染は彼らには隠ぺいされて伝わりません。トランプがふたたび大統領になるための good jobで20万人の命が失われる、そんなことがgoodなわけないのですが、それが限られた選択肢では最善策かもしれないという恐ろしい所に人類は追い込まれている。COVID-19はエイリアンだと僕が指摘したのはそういうことです。

一方で、我が国はというと、一昨日、某病院で医療側の感染が出て、検査してみたらさらに陽性者が何人か発覚した。この事例ひとつ見ても、韓国なみに検査すれば日本の感染者は公表よりずっと多いでしょう。おそらくその発症していないキャリア集団が「感染経路不明の感染者」を増やすところまで増えてしまっていることを示すのがここ数日の東京都のデータではないでしょうか。それは初動の水際対策がザルだったばかりか、つい最近まで海外旅行者までユルユルだった厚労省の大失敗のツケがとうとう東京に来ているという結末です。それは感染研の検査しない戦略と共にいずれ大問題になるので隠すしかない、つまり、そのために日本もトランプと同じ事後的集団免疫戦略に転換した可能性がある、だからアメリカは国民に帰って来いと急に言い出したのではないでしょうか。

アベノマスクに300億円。我が家は5人家族だから1500円の税負担です。1枚750円の布マスクを買ったことになる。その金は医療従事者支援に使うべきじゃないでしょうか、どう考えても。30万円の支給もよくわからない。困った人の一時しのぎにはなるが1,2か月で消費して終わり。抜本的な解決ではない点、マスク2枚と本質は同じでしょう。しかも平等に給付はできないし、給付を受けようと役所に行列ができてクラスター感染でも発生したらどう言い訳するんでしょう?

マスクはともかく30万円は確実に歓迎されます。でもどちらも救済策としての持続的な意味がないバラマキなのは共通。どうも政府が「全国民的イベント」を無理にでも作ってアピールしたがっているように見えます。「タオル投入」がなぜこんなに遅いのか国民は誰もわからない。都知事も医師会も早く出してくれ。でも出ない。それが国の権威だとでもいうように。医療崩壊リスクが高まるという専門家の知見を覆してまで「慎重に検討」したのがいったい何だったのか、国民は知る必要が出てくるでしょう。

やっと緊急事態宣言は出ました。しかし逆になぜここで出たのか。金曜に財界トップの間では4月5~7日に出るとささやかれてましたから3日時点で準備に入ったようです。でもなぜそこだったのか?不明ですね。終了をGW明けにしてそのぴったり1か月前みたいな、いかにも役人が考えそうな、そんな浅はかなものだったらふざけんなとつい考えてしまう。なんといってもここ一連の安倍政権の行状の透明性欠如は非常な不信感を生んでいるのです。どうもこの政権は「全能感」でもあるのか「わたし失敗しないので」路線を行きたがってるように見える。まずいことは隠して、国民にそう見えるようにパフォーマンスしているように感じられてならないのです。経営者なら確実にとっくに首の人たちが、いつの間にか部下を首にする裁判官の席に座ってる。そういうのだけ磨き抜かれた高度なスキルを持っている感じですね。

ちなみに、トランプは「4月に終息」とコロナを甘く見て大失敗しました。ところが事態を認識すると「俺は専門家じゃない、国家のチアリーダーだ」とロベルト・コッホ賞金メダリストでウィルスの権威アンソニー・ファウチ博士をテレビに呼んできて例によって勇ましいことをまくしたて、博士が「そんなことをしたら大変なことになる」と諫めるという姿を国民に見せた。一方でジョンソン&ジョンソンやプロクター&ギャンブルなどの経営者も呼んできてワクチンや人工呼吸器を早く作れと、GMは何やってるんだと、こっちは自分が指揮してるぞという姿もテレビで国民に見せて支持率を上げています。

「世界最高の学者ファウチが『このウィルスはわからない』と言ってるんだ。神のみぞ知るというのが真実なのです。素人の俺がわかるわけないでしょ?でも必ず解決します。大統領としてあらゆる手を尽くしてアメリカのために全力で戦っているのをご覧あれ」と意思決定の現場をテレビで国民に見せ「透明性」をアピールして国民を安心させている。それで「まあ失敗はしても、あいつは会社2つ潰してドツボから這いあがったタフな奴だ。有事には強いだろう」という空気が出ており、黒人の支持率までオバマを超えてます。失敗はしても認めてしまう人間力があれば、「透明性」こそが切り札になるのが今の世の中です。

ところがこっちはどうだ。密室感満載ですね。それで満を持してポロンと出てきたのがマスク2枚だからズッコケ感満載だったのです。御簾の向こうで「専門家の意見をききます」じゃないんです。雁首揃えて時間をかけて慎重に検討したからウィルスを退治できるわけじゃないんです。そう見せること自体がいまどき全く逆効果であることすら知らない。ネット社会は情報コモディティ化社会で、科学情報で政府しか知らない情報は、それを知って貴殿方がどう反応するかだけです。そんな馬鹿な事があり得ないぐらい心ある国民はもう完全に見抜いてしまっています。このブログもおそらく多くの人が読むことになるでしょう。つまり、安倍さんは憲法改正したいなら(それには賛成だ、やってくれ)最後の勝負をかけてトランプぐらいの腹芸しないとだめだ。国民に人間力でリスクを取って直接語りかける。もうそこまで来てますね。エビデンス見るまで断定しない役人のペーパーなんか読んでたらもう完全にアウト。それで遅れたと国民に思われたら、はっきり言っておしまいである。

いま東京都民は不安がとても増幅しています。武漢ウィルスが欧州型に変異したという学者もいます。ニューヨークの動物園ではトラまで感染してる。ここで「全国民」目線で考えるのが「国の仕事」だといわれてもどうなんだろう?僕は人生初めての事態に遭遇して、ウィルスのことよりも今は「国って何なんだろう」という思いが沸き起こってきてます。平時はともかくこの有事に至っても感染者ゼロの県と東京都を同じ目線で見る意味があるんだろうか。僕は国民であり都民でもあるのですが、こういう時に命を救ってくれるのは東京都なんだろうと思う。都市部の国民はだんだんそう思うようになるから、自民党政権はパフォーマンスしようと焦るのかもしれませんね。

東京都民は小池都知事を直接選挙で選んでおり、安倍首相は山口県の人(第4区)が選んでいます。有権者数は東京都が約980万人、山口4区が約25万人です。どう考えても、子供だっておかしいと思うのですが、そうした矛盾をはらむのが議院内閣制です。内閣は国会に対して責任を負うのだと。しかしその国会議員が公選法違反で、つまり私利私欲のために議員になりたいというあかしで逮捕されるかもしれない、そんな連中が僕の命を救ってくれるの?という、これまた子供でも不思議に思うものなのです。我々都民が小池さんに頑張ってもらいたいというのは、制度論はともかく、自然にあたりまえでしょう。

結論ですが、以上のような物事に僕は本来ほとんど関心はございません。分類すれば非政治的人間のほうに属すると思っていますし、あんなリスクリターンのよくない大変な仕事をやってくれてる政治家のみなさんには頭がさがる思いがあるのです。しかしここまで非常事態となると見聞きしたものを深く考えてしまう性質でもあります。いち国民として、日本の安全と平和を願う気持ちはみなさんと変わりません。政治家がどうあれ、いくらお粗末な失敗を重ねてくれようと、前稿に書きました日本人の宗教ともいえる清潔さと従順さが働きさえすれば、我々は難局を乗り越えられると固く信じております。

 

(本稿は筆者の個人的雑感を開陳したものであり、政治的意図はまったくございません)

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若者のための政治講座(その2)

2020 APR 2 22:22:42 pm by 東 賢太郎

マスク2枚(まちのこえ)

・国家の緊急事態です?

・お魚券のがうれしかったです(5才)  ?

・2枚というところがステキ 

・加藤大臣、安倍さんのマスクじゃないね、でかいね ?

・アベノマスク、流行語大賞決定 ?

・笑いでお茶の間からコロナが吹き飛びました、ありがとうございます㊗

 

〈続編がぞくぞく来ています!〉

 

・これが緊急経済対策って思ってましたけど、違ったんですね

・あんたちょっと、「おためごかし」よね!(表面は相手のためになるように見せかけて、実は自分の利益をはかることー広辞苑)

・これが国民のためになるって信じてる、わたし、あなたのそこが怖いんです

・配達する日本郵便に50億円のミルク補給ですか?

・発案者は天才です!NHKさん、天才テレビくんで紹介してください

・北朝鮮がミサイル攻撃してきたらマスクは3枚になりますか?

・悲報 アベノマスク、ネットオークションで暴落か

・スガノマスク、あっそーマスクが楽しみです

 

 

お肉もお魚も族議員の利益誘導。広島では1億5千万円で議席の買収。五輪誘致も9億円。自民党のカネまみれ復活です。マスク2枚はしょぼいのですが、僕はそのことよりもこんなものに300億円かけてる、その判断の「軽さ」「金を使う痛みのなさ」に唖然とします。政治家、役人はカネは天から降ってくる感覚だそうです(某役人)。こっちはこれから間違いなく収入は減りますが、政治家、役人は一銭も減りません。この声は同じ穴の狢の野党からも出ませんから、有権者が決めないとだめですね。

 

(こちらもどうぞ)

若者のための政治講座

 

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世界で2100万人、日本は42万人が死ぬ

2020 MAR 27 1:01:25 am by 東 賢太郎

何度も書く。辟易された方も多いかもしれないが、新型コロナウィルスという未知の星から来た「エイリアン」は薬、ワクチンが開発されなければ人類を滅亡させるかもしれない事を否定できる科学者はいない。人類(ヒト属)が発祥したのは200万年前で、我々「ヒト」の属するホモ・サピエンスは40万年前に現れたが、その生存時間は37億年前に発生した生命の歴史の0.01%を占める。37億年を1日(24時間)とすると、人類は日付の変わる直前の最後の9秒ほど存在しているに過ぎない。

 

(1)寿司屋という異界の空間について

16年の海外赴任から帰国して、ありがたいと思ったのはちゃんとした寿司が食べられる幸せが当たり前のようにあることだ。ちゃんとしたというのは、もちろん味の良し悪しのこともあるが、それ以前の問題がある。清潔感だ。

握り寿司というのは生魚と粘着性の米を素手で「成型」する食物だ。ネタと酢飯を別々に口に放り込んでも分子論的には同じ食べ物だが、あの程良い塩梅にぎゅっと固めあげた食感がないとサマにならない。だから素手で圧力を投じて握るのは、衛生上はリスクがあっても割愛できない、いわば寿司に命を吹き込む行為だろう。

非常に不思議なのだが暖簾をくぐってカウンターに座った瞬間、僕は寿司を握る親方が食品衛生管理者の資格を持っているんだろうかという心配はしていない。彼の手のひらに何がしか付着しているはずの雑菌やウイルスが病変を起こす限界個数を超えている確率は何%だろうかと考えることもない。

なぜなら寿司屋はお清めされた何やら特別な空間であってレストランではない。左様な疑念を許さぬ一種の様式美のもとに成り立っている、疑うなら来るな、来たら疑うなという無言のルールがある場だ。それが客のみならず親方をも支配し、握る側は徹底して清潔であるべきであるという掟を自らに課しているはずであるという揺るぎなき確信が客を安心させるという、世界に類のない相互信頼の食域なのである。

(2)日本人の分厚い信仰心の場こそ寿司屋である

それは相撲の土俵に通じるところがある。なぜ寿司を女性が握らないのかは、なぜ土俵に女性を上げないのかと同じだ。指摘されればジェンダー問題に至ることを免れないが、しかし、古来そういうものでありそれが日本文化なのだと外国人には説明するしかない。仮にそれを大方の客が気にしないというなら、今どき銀座あたりに美貌の女将やAKBみたいな女の子が並んでかわいく握る寿司バーが現れそうなものだがそれはない。なぜなら、大方が気にするからであろう。

外国人の親方となるとさらに厳しい。香港時代に現地の人が作るラーメンやとんかつは平気だったが寿司屋に入る蛮勇は持ち合わせなかった。「特別な空間」の佇まいが不在などころかウナギや天丼まで供している店は相互信頼の食域とは別世界だ。そこで不格好に握られた物体を寿司と呼ぶならアナゴの正体がマムシだろうが深海の奇怪なウミヘビだろうが大きな問題ではなかろうし、数時間後に腹の調子が正常なら代金を払った価値ぐらいはあったと感謝すらすべきである。

本稿は寿司礼賛がテーマではない。そんな清冽な食文化を生んだ日本人には「お清め」「清潔」への分厚い信仰心があり、国民的にそれを共有していることへの相互の信頼感があり、それらは何百年もかけてDNAレベルで根づいて醸成されてきたものという主張だ。外国人がちょっとやそっとで真似ようともどうしようもないし、仮に技術的にはうまく握れていて清潔さが厚労省によって保証されていようとも、大変に申しわけないが、僕はそれを食べてみようとは絶対に思わないのである。清冽な食文化を共有する寿司屋は文字どおり「聖域」なのだ。

女性と外国人。奥深いテーマだが、なぜかどちらも聖域ではだめなのだ。おふくろの味という家庭で許され愛されるものがなぜ寿司屋でそうでないのか。感性のみ知覚する領域なので一般化する気はないが、個人的には他家のおふくろの味にまで寛容でないのかもしれないと思う。家族という、ひょっとして腸内フローラまで共有するような生理的関係はパブリック(公的)になり得ず、どうしても本能的に一線を画し、まして国境をまたいで交わりましょうというのは根本的に困難だということ。それが清潔不潔というリスク感覚に投影されて、寿司屋という特殊な場で先鋭化して知覚されるというのが僕の理解だ。

(3)「日本教」という宗教

このことを新型コロナのここまでの感染者、死亡者数の少なさに関連付けようとするのは牽強付会に思われるしれないが、聖域を作り上げる程に練り上げられた日本人の「お清め」「清潔」への分厚い信仰心は永遠不滅の高みに至っており、その結果として、16年住んでみた海外各国との比較感として日本はスーパークリーンな国であって、偏差値をイメージするなら70以上の超優等生であることは反論の余地もない。ウィルスの立場になってみれば繁殖に最も厄介な環境、国民性であろう。検査数の少なさも指摘されるが、仮に2倍としても感染者、死亡者数はまだぜんぜん少ない。仮説ではあるが、それだけでは説明しきれないものが背景にあるとしか考えられない。

寿司屋や土俵への「分厚い信仰心」はすべての和食系の板さんにも、甲子園の女人禁制を主張する高野連の精神にも共通する、日本人を問答無用に呪縛する行動規範である。ヒンズー教、イスラム教が左手を不浄としたり、キリスト教が離婚、中絶を禁じたりするのが宗教であるならば寿司屋や相撲や甲子園の暗黙の了解がそうでない理由などない。これは堂々たる宗教である。そうだろうか、その割には「いや自分はそんなものは気にしない」とアンチな行動する者を表だって咎(とが)める人はいないではないかという反論もあろうが、それは当たらない。なぜかというと咎めないのも教義の一部だからである。思っても言わない。目撃した傍から「その者は “信者” ではない」と心の中で冷ややかに見放しているのである。つまり、「古来そういうものでありそれが日本文化なのだと外国人に説明するしかないもの」に行動も思索も従順であり大いに長いものに巻かれること、それが日本人であり、その心の働きはかつて山本七平がイザヤ・ベンダサン名で「日本教」と看破したものに近い。

現在、ニューヨーク、ロンドン、パリ等が都市閉鎖状態になるなど世界の様相が急速に緊迫する中、我が東京は同じ地球上と思えないほどのユルさである。ひところクルーズ船であえぐ日本を対岸の火事と見ていた欧米が今や延焼でパニックになり、今度は日本がそれを対岸で他人事のように眺めている。こうしてウィルスというエイリアンは人間を波状攻撃で追い詰め、食い殺していく。なぜこちらが一旦は踏みとどまったか?薬もワクチンもない、検査して陽性とわかってどうなるものでもなく、国家の行動制限強制力など世界最低レベルで圧倒的に弱いのだから、ひとえに、日本教のおかげと思う以外に何があるというのか?お清め、清潔好きで、手洗いどころかお尻の穴まで毎度毎度ていねいに洗浄する世界に類例のない日本教信者の国民性に起因していると考える以外に理由は見当たらないのである。海外が驚いて調査してるらしいが、わかるわけないね。

ただし日本教には弱みもある。人間中心主義で科学を軽視することだ。以下に書く日本人しかできない防御策の、最大のウィークポイントはこれである。人の和は大事だがそれは平時の話である。今は世界大戦に匹敵する有事であり、すべての判断に科学的データが優先すべきだ。ここを取り違えれば、政治が軟弱で無能である日本はあっけなくエイリアンに食われまくるであろう。戦争で懲りたため我が国はシビリアンコントロール、文官政治に振れた。それは結構だが文官だからといって学力に欠け、科学は「専門家」に丸投げで失敗したら人を替えればいいなどという無責任な政治まで国民は許容したわけではない。テレビも毎日手を変え品を変え科学の素人が井戸端会議をくりひろげているが、公共の電波をそんなくだらないものに浪費しないでほしい。科学者だけを出すべきである。

また、日本教信者はお花見のごとき国民的遊興に弱い。まあこのぐらいとタガが緩んでしまう。それは「3つの密」戦略の効果を致命的に減殺し、国民を危機に陥れてしまう自己中の愚行だ。次の危機はゴールデン・ウィークである。国は緊急事態宣言をしても強制力や罰則規定はない。小池氏は都知事として最高権力をふるいあらゆる愚行を封じ込める強硬策を執行すること必須である。ちなみに最新ニュースとして阪神タイガースの藤浪選手の陽性が発覚したが、重要なのはプロ野球の開幕がどうのではない。「37度5分の発熱が4日」の厚労省基準をあざ笑うようにウィルスはひっそりと彼を感染させており、しかも、感染者に見えていなかっただろう彼はひっそりと2人の同僚を感染させたという事実だ。これが僕が1月30日づけのブログで指摘しているこのウィルスの最大の危険性、つまり、誰もそう見えない不顕性感染者に感染力があることの証左である。皆さん、国が言ってることを信じていてもダメだ、自分で考えないと身を守れないのだ。著名人だからニュースになったが、かように20代の健康で若い人でも誰でもかかる。同じことがそこかしこで発生している、ほんの氷山の一角である。

(4)インペリアル・カレッジ・ロンドンの確率データ

ここまで、日本教は我々を曲がりなりにも助けてきた。くりかえすが、日々テレビはやれオリンピックが大変だ、小池都知事がどう言った、学校はいつから開けるのか、プロ野球はどうなるか、国民給付はお肉券はいかがだろうか等々かまびすしいが、そういうことは人類が直面している歴史的危機においてなんら重要な変数ではない。注視すべきは科学者(の内まともな者)の発表だけだ。例えば、英国のボリス・ジョンソン首相は当初「3つの密」のようなクラスター抑制戦略をとる他国とは一線を画し、感染者は症状の軽い若者だし、安全対策に協力しない無知な馬鹿者も存在する社会的コストもあるのだから、人口の60%が感染することによって発生する「集団免疫」によって弱者を保護すればいいだろうという対極的な施策を選択した。反ユーロのにおいもあったがそれはそれで、その時点では科学的知見に立ったものだった。

ところがインペリアル・カレッジ・ロンドンの学者が、それをやると20万人の死者が出ると計算し、ジョンソンは施策を撤回した。国家の基本戦略を間違えましたというのは元首として誠にみっともないことだが、オックスフォード大学卒のジョンソンは科学の宣託をきっちり理解したのだろう、自らテレビで視聴者に目線を合わせて「You must stay at home(家にいろ)!」と自らの言葉で強く語りかけた。官僚のペーパーを読んで関係各位と緊密な連携を図ってまいりますなんてお経をくりかえす首相とは雲泥の差のインパクトだ。現在時点の世界の死者が2万人であり、1年後にその10倍の死者が英国だけで出るという指摘だから当然だが、では日本国首相官邸はその確率データをどう読んでいるのだろう?意味がわかっているのだろうか?それとも意に介さぬだけの反証データを持っているのだろうか(全くそうは思えないが)。

英国という6600万人が密閉された島で人々の行動を平常のまま放置すれば0.3%がウィルスに殺されるという確率を有意とするデータのサンプル数があるのか否か置くとして、少なくとも現在時点でのデータからウィルスの不可避的に強い感染力と薬・ワクチンなし状況下での人間殺傷力、防御する医療体制の限界点を加味して算出し得る最悪の人口比死亡率が0.3%としたのだろう。毎日ワイドショーでどうでもいいことをご宣託している先生方の「**と思います」など比較にもならぬ重要な数字で、我々が行動の規範と肝に銘じたほうが生存率を上げてくれる結論であることは信頼に足る(それが科学的態度である)。

とするとどうなるか?「3つの密」は感染者数曲線のピークを低くして医療崩壊を防ぐ戦略であるとしては意味があるが、曲線がなだらかになると横長になり終息は遅れる。しかしウィルスの感染力が一定なら曲線を積分した値は同じであり、結局は0.3%の人がすぐに死ぬか来年死ぬかの差である。であるから、世界の死者総数は2100万人、日本は42万人が死ぬちなみに、人類の生存の危機と比べればたいして重大事でもないが、「3つの密」政策がうまくいけばいくほど終息は遅れるのだから1年後のオリンピックは吹っ飛ぶだろう。

(5)人類の安息への唯一の道

それは新型コロナに対抗できる薬、ワクチンが開発されることである。それ以外にない。ということは、来年の今ごろにさあオリンピックだと世界が意気揚々となっている可能性など極めて低い。カネの問題というなら1年延期の希望的観測のコストはもっと高い。どうして中止にしなかったのだろう。学者の意見は複数あるが、おおむね、最短で1年かかり、それを世界の患者に行きわたらせるには更に時間がかかり、5~10年という人もいる。ということは、人類が存続するためには、5年ほどはエイリアンに殺られず生き延びていなくてはならない。その間の経済悪化による生存の危機も国家の方策によって乗り越えねばならない。したがって、我々が今できる努力はとにかく3つの密を避けて感染しないこと、そして運悪く感染してもそれを絶対にバラまかないことだ。体調が悪いのを軽く見て出歩くなど人類を破滅させる行為だと自覚することだ。イタリアの市長はパーティーをやった若者に対し「火炎放射器を持った警官隊を出動するぞ」と警告したが、そのぐらいのことである。

もし幸いにも生き延びることができたなら、そこには未知の世界が広がってるだろう。それはニュー・ノーマルと呼ぶべき新しい均衡点の上に出来上がる我々の知らない “平常” だ。人類史に確実に刻まれる未曾有の厄災に我々は見舞われているのであり、台風一過で元に戻るという単純なものではない。欧州の全人口の60%が死んだペストや第1,2次世界大戦がそれまでの世界を、つまり地球上のヘゲモニーも科学も生活も根底から覆してしまったように、新型コロナは人類のあらゆる均衡を変える可能性がある。しかしそれは恐れることではない。誰も知らないのだからそれはフロンティアでなくて何であろう?未知というものは常に活力を与えてくれるのであり、人類はそこを目指して、新たな光と希望を求めて戦っていくだろう。

(6)我々日本人はどうなるのか?

この問いこそ本稿の最も重要な帰結だ。もう一度書く。日本教の支配する我が国および日本民族というものは「ウィルスの立場になってみれば繁殖に最も厄介な環境、国民性であろう」ということだ。何という幸運なことだろう!我々は、政府があれほどヘマや後手後手をしたのにしぶとく踏みとどまっている。政治家の出来ることは3つの密を「強制執行」し、社会不安と治安に目を配り、カネをばらまくか減税することしかない。国民に必要なのは現金だ、お肉券や旅行券など馬鹿も休み休み言え、電気代や税金をお肉で受け取ってくれるのか?こんなものを真面目に議員が議論しているなど世界の失笑をかう国の赤恥だ。インフレなどなるはずもないのだから日銀引受のコロナ国債だろうが何だろうが、あらゆることを禁じ手無視でやるべきだ。我々国民はどうするか?オーバーシュートを全員の努力と協力で回避し、感染者数が医療崩壊を起こさないレベルで推移するようピークを先送りし、1,2年後には世界のどこかの科学者が開発してくれるであろう薬とワクチンを待てばいい。その忍耐が良い成果を挙げる可能性の最も高い国は日本であると僕は思う。

それには「3つの密」を避けるだけでなく次のことが効く。日本人しかできない秘策だ。西洋式を忘れ「日本教」という宗教に徹底的に帰ること、すなわち、「お清め」「清潔」への分厚い信仰を徹底して守り、不潔を忌み嫌い、古来そういうものでありそれが日本文化なのだと外国人には説明するしかない日本人を問答無用に呪縛する行動規範には不合理であっても異を唱えず従い、日本人にしかないであろう「自己中でなく他人を思いやる気持ち」を大いに持ち、うがい・手洗い・鼻洗浄・マスクは自分のためだけでなく他人を感染させないためという意識を強く持つこと、そして、日本人が持つ最強の我慢強さ・忍耐力でそれらを成し遂げて社会に貢献し、世界に冠たる優秀な民族であることを見せてやろうぐらいの誇りを持つことだ。

このウィルスの性質は未知数で、だから薬もワクチンもないわけだが、少なくとも僕の仮説が正しければ以上のことを国民全員が励行すればその行為がウィルスが最も嫌がる防波堤になることはここまでの数字で証明されている。それを粛々と、気を緩めずに続ければよい。日本人の生存戦略は成功するだろう。それどころか、その成功がニュー・ノーマルになっていき、我々の子孫が最も適応してそこで有利なポジションにつき、日本に生まれて良かったと幸福をかみしめて栄えてくれるのではないか。まだ何が起きるか予断は許さないが、その事を願って筆をおく。

 

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