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カテゴリー: 野球

よく勝った!カープCS第1戦サヨナラ

2023 OCT 14 18:18:59 pm by 東 賢太郎

DeNA東は直球は147kmぐらいだが質が高い。高めで空振りが取れてる。そのうえに制球も半端ない。スライダーは大きくて鋭く右の堂林、末包、デビッドソンは内側をえぐられて当てるのが精いっぱい。そこで緩急つけて外に来るチェンジアップだかツーシームだかが手元で落ちてる感じだ。捕手の山本がいやらしい。東を引っぱってる。このいやらしいという感じは言葉にし難いがリードにインテリジェンスがある。いいキャッチャーだ、巨人戦で戸郷からホームラン打ったがこんなのがよくドラ9でとれたもんだ。このコンビで最多勝は納得した。

6回まで0-0。対して打たれながらも持ちこたえてきた床田がついに宮崎に2ランを浴び、ダメかなと思った、そのぐらい東が良かった。そこで出た三盗にスクイズ!これはびっくりした。羽月と菊池。これで空気が少し変わった。次いで西川の犠飛で同点にして延長11回に秋山のサヨナラ打で勝ち。センターの蛯名君、そんなに前にいなくてもよかったんじゃないかね。まあ劣勢をひっくり返してよく勝った。

大道、矢崎、島内、栗林、九里、ターリー、よく抑えた。僕が今年最下位予想していたのは7-9回の投手陣だ。それがここまでやった。だからの2位だと思う。菊地原コーチの功績もあるかと思うが、やっぱり新井だ。短期決戦で采配をフレキシブルに変えてる。すばらしい経営力。見習いたい。

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セリーグの順位が決まる

2023 OCT 4 22:22:59 pm by 東 賢太郎

今日の最終戦でDeNAが巨人に勝てば2位が確定、広島は3位に落ちてCSは横浜開催になる瀬戸際だった。巨人の山崎投手が9回まで準完全試合の快投を見せて1-0で完封。最多勝の東投手に投げ勝ってくれて助かった。この試合、原監督の最終戦でもあった。2018年から東京ドーム年間席を持っていたので彼の最後の3年を観た。ひとつの時代が終わったのかな。

左が我が予想、右が結果。

1・ ヤクルト       阪神

2・ 阪神         広島

3・ 横浜DeNA       横浜DeNA

4・ 巨人         巨人

5・ 中日         ヤクルト

6・ 広島         中日

なんと我が広島と昨年の覇者ヤクルトが逆であった。新井監督ごめん!

 

ちなみにパリーグは左の予想に対し10月4日現在が右。

1・ ソフトバンク     オリックス

2・ オリックス      ソフトバンク

3・ 楽天         ロッテ

4・ ロッテ        楽天

5・ 西武         西武

6・ 日ハム        日ハム

まだ数試合あるがさてどうなるか。

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今年最後の野球観戦(やっぱりプロは凄い)

2023 SEP 15 9:09:24 am by 東 賢太郎

神宮球場の一塁側スタンドにいた。カープがヤクルトに先に負けると、甲子園の巨人・阪神の結果を待たずしてマジック1である阪神の優勝が決まる。そろそろかなと思っていたら「甲子園終わったね」と後ろの席で女性の声が聞こえた。こっちはまだ7回ぐらいだった。

神宮は久しぶりだ。表参道駅に球場用のエスカレーターができており、いつも寄っていた立ち食い蕎麦屋が消えていた。東京が再開発だらけなのか、こっちがコロナで出なかったせいなのか、日本橋、渋谷、自由が丘で昔なじみの光景が気がついたら消えており、上海料理屋では池袋西口もそうなると聞いた。神宮球場もあの五輪で危なかったがどうなるんだろう。ここはスタンドの蕎麦ひとつだって思い出が詰まっている。東京の歴史も野球もわかってない田舎政治家の一声で消えるなんてことは勘弁してほしい。

このカード、第1戦も来たが2-1で負け。第2戦は静岡に出張だったが、第3戦はカープの神宮最終戦なのでまた来たのが昨日だ。とにかく今期の阪神は強かった。先日、甲子園の直接対決をスィープされて優勝の望みは絶たれたから勝敗はもういい。仕事が一段落したし、最後の意地を見ようというところだった。

広島は第2戦も完敗して大失速の連敗中、しかもぜんぶ1得点以下という情けない記録が更新中でもあった。この日も先発・高橋奎二を打ちあぐみ7回まで5-2と敗色濃厚、僕も完全にあきらめていた。それをひっくり返したのが8回。小園(本当にこの選手はモノが違う、カープの宝)そして堂林がお膳立てした満塁に代打・磯村のセンター前で勝ち越した。左腕高橋に対して右打者を先発で使い果たし、相手は救援の左腕・山本。彼しかいなかった。第3の捕手であまり出番がないがここ一番で打てる勝負強さは折り紙つきだ。彼は2010年春の甲子園で優勝した中京大中京の正捕手で5番打者。準々決勝、準決勝の土壇場でホームランを打っており、先発投手で4番が堂林だった。第3戦はこの2人の打棒で逆転勝ちしたと言っていい。しかしそんな人が第3の捕手ってのもねえ、プロのレベルは僕らごときには想像もつかない。

やっぱり球場はいい。画面ではわからない。第1戦は三塁側ベンチ上第16列で、打者目線で観られたのがとても大きい。サイスニードはテレビ画面では大したことないと思っていたが、150km台の速球が石みたいに重い。中村のミットの音が凄まじい。外野フライがやっと。あれをベンチから見ていたら怖気づくだろうなというパワフルな球で好調だと打てる人間は日本ではなかなかいないだろう。坂倉が本塁打を打ったが家でTVを観たらスライダーだ。カープは完全に力で封じられた。ヒューストン・アストロズが出したのはきっとコントロールだろう。カープ新人益田の150km台も惚れた。いいの採ったねえ、これはエース候補だ。大道は更に一段と速くて凄みがある。高め、あれは前に飛ばないな。カープ田村がプロ入り初安打。いいものを見た。センターから山田に返球、山田はちょっと考えカープベンチにふんわり投げる。わかってるんだ、業界人としての思いやり。

プロのピッチャーの速球を久々に見て感動した。みんな速いけどサイスニード、益田、大道は図抜けて球威があり、目と耳に焼き付いた。ホンモノ。これだ。俺もプロとしてこういう仕事をしなくっちゃ。身が引き締まった。

第3戦は4番に座った堂林の第1打席のホームラン。左翼中段にやや低めの弾道、物凄い当たりであれは高校野球ではあり得ないプロのあかし。あとでTVで確認したが速球だ、素晴らしい。堂林はホームランバッターになっている。山田のホームランも焼き付いた。体の回転で引っぱった技ありの一発。そして村上が2者連続で右翼にライナーで突き刺す。後ろの席の女性たちのキャー(歓喜の叫び)で耳がつんざかれ、傘の上げ下げの大嵐に襲われる(ここはヤクルト側)。第1戦も流してレフトに入れたがこれは高い弾道。今年はWBCでおかしくなったが、やっぱり只者じゃないね。この回はヤクルト圧勝の形勢であり周囲は絶叫の嵐。傘を振ってないのは僕だけであり居づらかったがヤクルトファンは東京の人だ、寛容なものである。新人の河野が5回を2三振で抑えた。彼も150km出て村上から三振を取った、楽しみである。田村もセンターにあわやホームランの2ベースを放った。 愛工大名電高、いいのが出てきたぞ、将来クリーンナップは間違いない。逆転した8,9回は島内、栗林が3人づつで締めた。どっちも生で見たのは初めて。島内の速球はぜんぶ150km越えである。この日の席は29列目で比べられないが第1戦の3人並の剛球またはそれ以上の物凄いストレートと思われる。疲れた頃は打たれたがこの日の調子なら真ん中でも打たれないよ。栗林は手の円弧が大きいオーバースローと見えた。150越の剛球に140台、130台の変化球(なんだかは横からはわからない)とたまに120台(これはカーブ)。速いし緩急もありで打てるわけないレベル。これもテレビじゃわからない。青木、塩見、オスナをあっさり抑えて試合終了。感動あるのみ。ヤクルトが9回に投げさせた坂口も154km、いい速球で2三振。ナイスピッチ。

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慶応高校の甲子園優勝おめでとう

2023 AUG 24 0:00:23 am by 東 賢太郎

驚いた。試合終了後、興奮冷めやらぬ中のインタビューで主将から「この優勝で高校野球の楽しさを広く知ってもらえたら嬉しいです」という言葉が出てくる。大舞台のキメの一言だ、高校生がこれって大変なことじゃないか。日本中がエンジョイ・ベースボールは口先だけでないことを知って、野球に限らず新しいスピリットが世の中を変えていくんじゃないか。古き良きものは守っても、古いだけにしがみつくものは淘汰されていくんじゃないか、そんな気がしてならない。提唱した監督も立派だし、それを甲子園で身をもって行い、結果を出した選手たち、ほんとうにカッコいい。

仙台育英は強かった。今日先発の10番の彼、好投手だ、準決勝を見ていてこりゃ打てないなと思った。打線の圧も群を抜いていた。慶応は先制したが3回あたりから押されてる感じがあった。ヒットで出た走者を走らせて刺されたあたりでちょっと焦りがあるかなと見た。ひとつ歯車が狂えば逆の展開もあったが、そこで圧に負けなかった慶応は胆力が鍛えられていた。エンジョイ・ベースボールで猛練習の成果が自然に出せたのかどうか、グラウンドで歯を見せるなと言われて育った世代には屈託ない笑顔がまぶしかった。

エンジョイ(楽しめ)というのは命令されてできるものではない。できる状態になって初めてできる。その状態をどう作るか。それは心の持ちようだから練習しながら自分で考えろということではないか。孔子様も説く。何人もこれを楽しむ者に如かず。だからそうなれば最強なのだが、楽しんでますと独りよがりで思うだけなら誰でもできるから、その上に「有言実行」がなくては意味ないだろう。これは僕のスナイパー主義と通じるものがある。この大会、なにくれとなく慶応を応援してきたのはそういう気もしていたからだ。

有言実行。これは人の道だ。動物は話さないからそれはない。人は話すからある。だからそれは両者を仕分けするシンボルである。昨今の政治を見よ、有言不実行、無言実行、無言不実行の嵐である。嘘八百、強行採決、都合悪いと報道せず。みなさん、この連中はどっちに仕分けすべきなんだろうか?大変申しわけないが、連中はガチでスポーツやったことがあるんだろうか?疑わしいように思えてならない。

慶応高校のみなさん、清々しいものを見せていただきました。人にしかできないスポーツという素晴らしい文化を通じて、日本国が末永く人の道を堂々と歩んでいけることを願ってやみません。

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慶応高校の毛の長さという甚大な問題

2023 AUG 21 17:17:49 pm by 東 賢太郎

甲子園を見ているとけっこう毛が長い。今日の慶応対土浦日大なんか両チームとも長い。かつてよりの時流といえばそれまでだが、甲子園の準決勝でこれはとても驚きだ。なにせ僕の時代、電車に乗っても硬式野球部の奴らはお互いにすぐわかる。頭が坊主(丸刈り)の集団なんて、お坊さんはあんまり群れないだろうしめったにいないからで、記章やカバンで校名を見て緊張が走ったりした。僕はスポ刈りだった。それでも慶応の子よりずっと短かい。しかしだ、それでもなんだか坊主の方が強そうに見えるのである。何の根拠もないが毛を刈ると戦闘員っぽい気持ちになるのはたしかであった。それが集まると戦闘集団の一体感が出ることは戦う上で大きなメリットだからか軍隊はGIカットなど世界的にそうだ。

坊主も毛の長さに段階があって「五分刈り」からテカテカに青光りする「五厘刈り」まである。清原や中田翔(左)の五厘は球界の紳士のイメージはないが読売は禁止してないと思われる。軍人の髪形だが高校野球の原点でもあり日本文化の奥底を見る。マッカーサーはA級戦犯を思想犯まで処刑し、古来からの日本文化を焚書で抹殺しようと試みた。そこで大政翼賛会から一転し、御用新聞として生き残りを図った緒方竹虎の朝日新聞、正力松太郎の読売新聞がそれぞれ「夏の甲子園大会」、「読売巨人軍」の母体となって野球を振興した。日本の軍部を解体して非武装化し、国民を米国化したいGHQの戦略に取り入ったのだろうが、そこで軍隊刈りが禁じられなかったのは興味深い。

高校で入部してまず圧倒されたのが3年生の頭だ。全員が坊主。すれ違えば誰しも道を譲る。中でも主将Hさんの迫力あるビジュアルは半端でなく、強打は相手投手がビビるせいと思ったほどだ。ところが不思議なことに僕等の代はスポ刈りOKになった。うさぎ跳びや水飲めないなど「野球部あるある」はみなあったからチョロい部ではなく、たぶん3年が強烈すぎて2年部員が少なく、長髪世代の我々新入生をたくさん勧誘する作戦に出たのではないか。それでたしか15人ぐらいは入った。それでも夏からの新チームは捕手HさんとK、左翼Sさん、右翼Yの五厘組をはじめほとんどが坊主で、スポ刈りは主将の遊撃Sさん、一塁Tさん、二塁OとY、外野SとHだったが、彼らも坊主姿をどこかで見た気はする。

かように高校野球はGHQの検閲をくぐりぬけて密かに生き残った軍国調世界である。日大アメフト部の問題で「体育会カルチャーは消せ」のGHQ並の激震が走ったが、体育会どころか軍隊である高校野球はけしからんという声はあんまりなかった。なぜなら日本的な保守精神の深淵に触れるものがあるからだ。我々の親世代は甲子園のプレーボールのサイレンを聞くと空襲警報を思いだした。戦闘開始の効果音には最適で、プロレスと同様にサーカスとして国民のガス抜きにする意図があったのではないかと思われるが、盧溝橋事件の年はサイレンの代わりに進軍ラッパが鳴ったから野球に軍隊を重ねて見る文化は戦前から日本にはもうあった。本塁に向けて血気盛んな五厘刈りの兵士たちが走ってきて整列、礼、そしてサイレンとともに初球が投じられ両者が激突する。その舞台には南方戦線のジャングルを行軍する兵士を焦がした灼熱の太陽、むっとする草いきれと地面の照り返しがふさわしい。だから野球は夏だ。夏こそ野球だ。僕はそのイメージが体に染みついてどうにも消えない。

僕的に強そうに見えないが

いま思うと、坊主のみならず「野球部あるある」は立派な全体主義である。毛を刈るとうまくなるわけでないと考えるのは個人主義だ。どっちが正しいかは理屈で結論が出ないからどっちが強いかで決まる。当時の強豪校は例外なく坊主である。だから坊主とやると負ける。「そうだろ?だから言っただろ、毛を切るとうまくなるんだよ」「なるほど、そうか」。そんなはずないことでもみな信じるようになる。ナチスにしろ大日本帝国にしろ、全体主義国家はそうして成り立ってきた。試合に出ない大衆もその一員であることで安心し、総帥を信じ、強いという心地良さを味わっていた。でも強さと毛の長さは科学的に関係ないのだからいずれ嘘がばれる。全体主義国家はそうして終焉を迎える。

慶応高校はそれをぶっ壊したと僕には見える。たかが毛の長さの話ではない。

 

 

 

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バンテリンドームで目撃した髙橋宏斗の速球

2023 AUG 15 10:10:36 am by 東 賢太郎

軽井沢、兵庫、岐阜、名古屋を3泊4日で踏破する旅というのは、ビジネストリップでなければまずないものだろう。前日に岐阜でのディナーを終えた土曜日、最後の日程は野球観戦だった。

バンテリンドームは意外に遠く、名古屋駅からタクシーで4千円かかった。先発投手は中日が髙橋宏斗、カープが森下。両方見たい投手でありこの対戦はラッキーである。

いきなりなんだこれはということが起きる。初回、森下が一死も取れずに5連続ヒットを浴びる。人生初めて見たんじゃないだろうか? 結局この3失点を返すことができずカープは3-2で負けというつまらない試合だった。

やむを得ない。髙橋宏斗が良かった、というより、かつて現物を見た投手の球の中でもトップクラス、一球ごとにため息しか出ない物凄さだった。

【動画】竜の若き右腕が連敗中のチームを救う!/8月12日:中日-広島のハイライト

ビデオを見たがこれではわからない。実物の球威は圧倒的。思い出したのはサファテとオスンファンだ。ああいう石みたいに重い球。153,4キロだが芯で打っても外野で失速してた。テークバックが小さいし立ち投げっぽく見えるんだがリリースでの腕の振りが速くて強く下半身も効いているんだろう。7回投げて2安打、6三振+フライアウトが11、四球は1つと、振り逃げを入れて22アウトのうち17が剛球で押し込まれての負けで、要するにカープの打者は手も足も出なかったのである。そしてクローザーのR・マルティネスの13球も見ものだった。高橋より一段と速い157が出て、最後の松山は159で三直だったが、体格やフォームを含んだ印象点では高橋のストレートの方が凄みがある。もうそれを見ただけで行った価値があったというものだ。

マウンドは髙橋宏斗

カープの救いは二番手・清水から放った小園のホームランだけだ。清水も150出たような気がするし高橋の後だから遅く見えたとはいえ、バンテリンのセンターは122mあってそこにぶちこんだのだから頼もしい。小園はカープの宝である。他の打者は少し疲れが出ているように見えるから連敗もするだろう。森下のストレートもいいが、高橋のを見ると普通の人の球だ。7回まで投げたが2回からは1安打でほとんど打たれず、投球術は百戦錬磨だ。これが実力なんだろうがどうして1回にああいうことが起きるのかは全く理解できない。

ちなみに、この翌日のこと、テレビ観戦していたがカープは柳に9回ノーヒットーノーランをやられてしまう。前日の高橋に押し込まれた余波はなかったろうか。幸いなことに遠藤も9回無失点で見事な投球を見せて不名誉な記録は残らなかった。10回に出てきたR・マルティネスの剛球を堂林が本塁打した。前日球威を目撃しただけにこれの凄さは実感できる。1-0で昨日の雪辱かと思ったらその裏に矢崎がいきなりホームラン2連発を食らって、劇的というかあまりにあっけないサヨナラ負けだ。昨日でなくて良かった。最悪の気分で新幹線に乗ることになったからまあ不幸中の幸いだった。しかし高橋といい柳といいマルティネスといい、なんでこんなすごいピッチャーのいるチームが最下位なんだ?

家に着いたのが何時だったか、もうふらふらで記憶もなく、どうやら夕食も忘れてそのまま寝こんじまったらしい。軽井沢、兵庫、岐阜、名古屋を3泊4日で踏破する旅が終わった。

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子を甘やかして全能感を与えたい馬鹿な親

2023 AUG 4 12:12:23 pm by 東 賢太郎

広島カープの元投手で野球殿堂入りしたレジェンド、大野豊氏がナイターの解説で「硬式をやってよかったです」と語っていた。その意味を理解するには彼が出雲商(硬式)から出雲市信用組合 (軟式)に進み、カープにはテスト入団だったことを知る必要がある。軟式だけだったら今の自分はないという意味なのだ。ボールの話ではない。「硬式(野球部)」はただの野球好きの集団ではなく「甲子園をめざせ」で結集したガチの集団だ。特色はそうでなくてはできない過酷な負荷に耐えること。野球の技術を鍛えるのみならず、火の上を裸足で歩いても熱くなくなる精神まで求めるみたいなものが、どういうわけか日本全国の高校どこにも大なり小なり共通してある。だから「コーシキ教」なる一種の宗教であり、現在は多少ゆるくなったようだが、僕の時代の非合理的なシゴキの凄さはどう説明してもやった者しかわからないだろう。初めて会った人に「やってました」と聞くと、野球の話より「よく耐えましたよね」で意気投合したりする理由はそこにある。本稿はもともとは甘ちゃんだった僕がその洗礼を受け、それがあまりに強烈だったので「ガチ性格」になったと思われる、その経緯を述べる。

僕にとって硬式野球は90%が苦痛だった。入部した年の九段高校は東京都大会(まだ1リーグ制で180校ぐらい)の第6シードでそこそこ強かった。1年だから出場はなかったがベンチには入っていた。甲子園で準優勝する日大一に4回戦で敗れるとすぐ合宿がコールされる。早朝から真っ暗になるまで矢野口のグラウンドで野球漬けの猛練習が一週間。灼熱の炎天下で水を飲ませてもらえないから全員ふらふらになり、ひとりが倒れて救急車が来た。そして最終日に新チームのレギュラーが決まるOB戦がある。あまり体力がなく体はボロボロだったのであきらめていた先発投手に指名され、先週まで現役だった三年生チームに7対2で完投勝ちしたのが鮮烈なデビューだった。これで憧れの背番号1を手にした。それが良かったのかどうか今は微妙な気持ちだ。体重は58キロでまだ中学生であり、エースだから全試合をまかされ、投げ過ぎが祟って2年でヒジ、次いで肩を壊して背番号14に降格になる。やがて治るだろうと期待したが虫歯と同じでそれはないということがわかり、お先真っ暗になって3年で野球を断念。東大という唯一野球をできそうな大学に入ったが断念。この悔しさは死ぬまで残ることになる。

就職してからはもう二度とやることはあるまいと忘れていた。そこにひょんなことからニューヨークの日系企業40数社のトーナメントで登板する機会をいただいた。軟式だし草野球と思っていたが、元プロ野球、六大学、米国大学の選手がいる意外にハイレベルな大会だった。初戦で優勝候補筆頭のチームに11対2と大勝して番狂わせを演じ、日本語新聞の一面にでかでかと載った。バッテリーを組んだ名捕手ドン君の巧みなリードで緩急の武器にしたカーブがとてもうまくいき、米国人はほぼ三振、元阪急の人は内野フライ2つ、元巨人の人に三遊間を破られた以外は1本も打たれずノーヒットノーランもあった。そういうのが良かったんだろうか、準決勝で敗退したが大会のMVPに選んでいただいた(写真がトロフィー)。27才。これが最後のマウンドだった。キツネにつままれたようだったが野球人生の始めと終わりだけはストライクでよかった。

いまふりかえってそういうものかと納得したのは、10年のブランクがあっても技術は体が覚えていたことだ。故障で球威はがた落ちしてるから高1の時の技術ということになる。それをコーシキのガチ集団で揉まれてなかったらニューヨークでいきなりそんな芸当ができたはずもなく、大野さんの言葉の重さをしみじみ感じている。こと野球に限らず、何事も技術とメンタルをガチ集団で叩かれないと一丁前にはならない。昨今は高学歴なら何とかなるみたいな風潮があるがとんでもない。親御さんは子供がかわいいなら甘やかして根拠のない全能感を与えるのでなく、虎の穴にぶちこんだ方がいい。そしてぶちこまれたティーンは何事であれガチを恐れずにやることだ。逃げたらナンチャッテ族の一員になる。ガチやってダメならいくら好きでも職業にはできないことがわかる。ぜんぜん構わない。むしろ長い一生を幸せに送るには大事な情報だ。僕はガチ野球界に飛び込んですぐプロは無理と悟ったが、草野球をいくらやってもそれはわからない。職業にならなくてもガチ経験は一生残るし、ナンチャッテに逃げるとそれが一生残る。きわめてシンプルなルールだが、それはやがて大差になる。

昨今の政治家を見ていると、この連中、何もガチやってねえだろうなという感じのばっかりだ。とにかく言葉が軽い。ガチの人間はみっともなくてあんな軽い言葉をお気楽に吐けない。岸田総理など、あまりにいつも軽いから何ほざいても国民がスルーして気がつかないという斬新な政治手法かと見まごうばかりだ。パリ観光研修旅行が子連れだったとは知らなかったが、今度は茂木敏充・自民党幹事長が「党負担分に政党助成金は含まれていない」ってこいつ馬鹿でねえのって言い訳をする。こんな軽い猫だましで批判がかわせるほど国民が馬鹿だと思ってる、これが「民意が読めてない」っていう政治家失格の証明になってることに気がついてすらいない。つまりお笑い3人組と幹事長の頭は同レベルであり、ということは自民党全部がおんなじだろうという証明にもなってるわけだ。松川るいもオチャラケ写真のキッシー息子と同類だったことが判明したが、なんのことない、党全部が同類なのだから証明不要の「自明」というやつだ。

別にこの人たちに恨みも興味もないがガチ育ちの僕は男も女もナンチャッテが大嫌いなのだ。だから軽~いタッチで論文を捏造したなんとか細胞なんてのは徹底してブログでぶっ叩いた。彼女は叩き上げで気の毒だったが、それを利用して政治とカネもうけに利用した奴がいたわけだ。そいつらが悪党だったから叩いた。そういう輩が閨閥とか要領だけで世渡りして偉くなってるのがいまの世の中である。でも世の中うまくできていて、そういうのは揉まれてないからどっかでガチの壁に当たってコケる。そんな事態は彼・彼女の辞書に載ってない、そういう道に乗ってる自分は特別だと思い込んでることがそこまで来てる唯一の原動力なんだから救いようがない。だから親御さんは子供がかわいいなら甘やかして根拠のない全能感を与えない方がいいよと言ってるのだ。彼・彼女がコケてくれてもまったくどうでもいいが、そういうのが操縦桿を握ってると国が墜落するんだ。冗談じゃないよ。

キッシー息子くんの楽しい忘年会

大統領選挙のための日本ポチ化計画

日本人に砒素のように効くLGBT法

 

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カープ6連勝で首位・阪神に並ぶ

2023 JUL 23 1:01:55 am by 東 賢太郎

カープが強い。後半戦初戦は中日、スタートは森下。しぶとく勝って6連勝となり、首位阪神に並んだ。高校野球の強いチームみたいな勢いを感じる。怪物はいないが選手が信頼しあって勝つムードがある。

新井監督になって様変わりなのは、足をからめて攻めまくるカープ野球の復活だ。それに向けてのベンチの強い意志で全員が動いている感じがする。それも納得してだ。攻めた結果の失敗はまあ仕方ないと思える。去年はそれがなかった。消極策やら意味不明のセオリーやらで失敗する。何も考えてない。お前ら馬鹿か!と僕などテレビに向かって何度怒号をあげたかわからないのである。

盗塁数がそれを象徴する。去年の26は12球団ぶっちぎりでドベ。阪神・近本ひとりの30より少ない。野手総合コーチの東出が「走力のランク的にSとかAというより、BやCが多い。失敗の確率が高い中で、わざわざリスクを冒す必要はない」なんてアホ極まりない方針だったからだ。確率?お前いくつ走ってそれを言ってるんだ?こんな鬱病みたいなベンチで勝てるはずがない。その証拠が、選手は去年と同じなのに今年はすでに48でセリーグ1位という数字だ。

先発は大瀬良、九里、床田、森下に加えて野村、森が好投。問題は中継ぎだったが矢崎がクローザーにはまり栗林が前に回って厚みが出て来た。島内、ターリーは150台半ば、大道、中崎も150キロ出てる。球速があるのは強い。7~9回が締まってきたので先発陣安定の強みが活きて勝率が上がる。先日の敵地でのDeNA戦をぜんぶ1点差で3連勝したのはそれだろう。

内野守備が締まっているのも投手には心強い。ここでは、どこでもできて打撃もしぶとい上本の存在が絶大だ。彼がいるから菊池が休んでも大丈夫だしサブに羽月が育ってもおり、サード、ショートを田中、小園、矢野で回して守備も攻撃力も穴ができない。内野のこの厚みは頼もしい。

打順も、今日の上本の4番はすばらしい。12球団で唯一ホームラン二桁がいないのだからそれでいい。上本は本ブログで何度も誉めたが本当に走攻守そろったいい選手で相手投手は嫌だろう。ユーティリティと思われると定位置を取ってないイメージから評価されない傾向があるが、一ヶ所しか守れないより優秀と考えるのが普通だろう。新井のフレキシブルな戦術には彼は不可欠で、怪我人を覚悟しなくてはいけない夏場を乗り切るには存在がアドバンテージでもあり、カープの目下の強さを象徴する選手だ。年俸2900万円はないよ、安すぎだ。

新井は去年までのベンチワークは完全無視で歯牙にもかけてないと思われる。大英断だしいきなり断行した行動力は大したものだが、就任していきなりここまでうまくいくのは、もしかして選手の空気が「早く上を替えてくれ」「こうやらせてくれ」だったのかもしれないとも思う。お兄ちゃん監督だから権威やプライドを振り回すことなく素直にそれをやってうまくいっている風にも見える。阪神、巨人、DeNAは巨大戦力がある。カープは長打力不足だからつなぎの野球であり得点する成功確率は劣る。夏場で怪我や疲れが出るとそう甘くはいかない。ここからが正念場だ。

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新井カープは素晴らしいが鬼門は中継ぎ

2023 JUN 29 3:03:29 am by 東 賢太郎

これが入る?ありえん

今日、2番・投手で6回1/3を10奪三振1失点で抑えたピッチャーが打席で2本もホームランを打った。それも両リーグトップの27、28号だ。しかも、それを6本差で追い上げる2位のライバルをマウンドから2打席三振に料理している。こんなことは草野球で大人が中学生とやってもそうはできるもんじゃない。メジャーでそれってどんだけ図抜けてるんだか、もう頭がくらくらしてわけがわからない。大谷翔平が今していることは野球の歴史を塗り替えるどころか、もう二度と誰もできない、人類ではない鉄人28号がやっているとしか思えない。

左翼上段まで飛んだ

これを知っていたのか、今日のDeNA戦でカープ先発の森下もやってくれた。投げては7回6奪三振2失点で1ホームラン。カープの投手は打撃が比較的良くて、マエケンも打ったが現役でやりそうなのは森下と床田と思っており、ついに完璧なのが出た。2対2同点の5回に、まさかピッチャーに引っぱられてこの特大のスリーラン。相手はガックリである。しかし大谷さんに外角低めの悪くないボールを右手1本でレフトスタンドまで流し打ちされた相手はどうなんだろう。まさか、じゃない。やっぱりか、かな。いや、まったく見当もつかない。

今年のカープは思ってたよりもずっといい。まず菊池だ。最高のリーダーになってる。そして田中が往年の輝きを取り戻したのが本当に嬉しい。最強の二遊間が帰ってきた。そして丸がいた所に秋山、これがまたハマリのリーダーだ。二人いてぶつかると良くないが菊池は秋山に電話してカープに来いと呼んだほどツーカーだからそれがない。これに打てるキャッチャー坂倉が加わって強いセンターラインが復活しつつあるのが今期はとても大きい。レフト西川は4番で違和感を覚えないほどになった。そしてライト野間がとてもねばっこくなった。ファースト堂林は打席で風格が出てきて当たれば場外まで行きそうな感じだ。矢野は田中を休ませる時に安定したショート、亜大の根性がいい。そして上本だ。サード、ショート万全で打撃は本当に勝負強い。広陵ー明治。う~ん聞いただけでエリートだ。そして代打の松山、チャンスで実に頼もしくなってる。忘れてはいけない、羽月がいる。走れる。なぜ去年走らせなかったのか不可解なほど。打撃もロッテ佐々木朗希から粘りまくってヒットを打ったし、菊池を休ませる時のセカンドは決まりかな。足はカープ野球復活に必須。曽根の足はこれから楽しみで、ホークス周東、ロッテ和田みたいになってくれ。

というわけで、外人がいなくてもそこそこ得点できるようになっている。イメージとしてどの選手も去年よりずっと「太く」なってる。まとまりも勝ちへの執念も増してる。だから交流戦も5割で切り抜けられた。これはひとえに良い空気を積極的に作ってカープらしい野球を戻してくれた新井監督効果であることは間違いない。問題は先発投手だ。九里、大瀬良、床田、森下の4枚では優勝は無理。ここは阪神、横浜に劣る。あと2枚必要だが、先日巨人に勝った森は期待するが、アンダーソン、コルニエルはメンタルが弱そうだなあ。河野、黒原はあの球じゃクオリティスタートはしんどいな。期待できた玉村、遠藤はどうしちゃったのか?このままだと夏場に中継ぎに負担のしわ寄せがドッと来て、7、8回がとても危なくなるだろう。ターリー、島内だけだと潰れるリスクが高いが今年は森浦がおかしい。ケムナは少しは使えそうだが、大道は球威はあるが球が素直。中崎は制球はいいが球威が落ちてる。となると栗林が復活して矢崎を7、8回にまわすしかない。しかし栗林は内転筋をやって右足の蹴りが弱くなってるように見える。ストレートが弱いとフォークは去年ほど振ってくれない。

もう1枚の先発。あるとすれば野村祐輔だろうか。ただ以前からそうだが6回までしか持たないから中継ぎの救いになる先発じゃない。この問題が残りそうだから今期は優勝があるとすれば得点力でカバーするしかない。となると外人打者二人が大化けして30本近く打ってくれるのを願うしかない。その確率は低そうだが。

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北別府投手、たくさんの勝利をありがとう!

2023 JUN 17 22:22:40 pm by 東 賢太郎

きのう家内から訃報を聞いて愕然とした。3学年下の65才だ。病気とは聞いていたがなんぼなんでも早すぎるだろ。まだ北別府ロスから立ち直れておらず、きのうの西武戦は床田に何が何でも完封して弔ってくれと念じていた。そして床田はそれをやった。よくやった。今日は危なかったが、背番号20を継いだ栗林が、そしてクローザーの矢崎が気迫の投球で押さえ込んで勝った。よくやった。

北別府の雄姿をTVで見られたのは入団2年目の1977年から20勝して沢村賞を取った1982年の夏までと、1990年から1992年夏までだ。あとは海外にいたから映像は見ていない。それでも毎朝、新聞で真っ先に見るのはカープの試合結果である。スマホもヤフーニュースもないからそれが最新情報で、株式欄なんてどうでもいい、どのページより先にスポーツ欄を開くワクワク感たるや半端でなかった。北別府は213勝141敗と72も勝ちこしているのだから、異国の地で朝っぱらから何度も勝利の美酒に酔わせてくれ、気持ちよく仕事をスタートさせてくれた。つまり僕が仕事で勝ち抜けた恩人である。

そういうわけだから彼をグラウンドで観たのはたった一度しかない。よってどうしてもその時の話になってしまうがこういうことだ。

あれは1990年から1992年のどこか、神宮球場の3塁側ベンチ上の席からだった。どういうわけかゲームについてはさっぱり記憶がなく、ゲーム前の北別府のキャッチボールが目に焼きついたのだ。捕手とは10mぐらいの立ち投げで、単なる肩慣らしだ。ところがである。腰を入れてフルに体重移動して、ということは1.5mぐらい体を前に持っていくわけだが、足が長く股関節が柔らかいのだろうそれが2m近いかと思われるぐらい前に行くわけである。ただ、足を開くだけなら他にもいくらもいる。びっくりしたのは、それに加えて球離れの位置がとても遅く、イメージ、顔の1m先までキープしてから軽く放っていたことである。そういう大きな動きは流れの中でないとうまくできないが、彼はスローモーションで投球システム全体のバランスを微細にチェックするシミュレーションとして行っていたのだ。何という完全主義!

投手をやった人はわかると思うが、それだと外角低めに伸びのいい速球がびしっと決まるイメージしか持てないと思う。それが投げられて初めてピッチャーをやらせてもらえるわけで、勝手にそれが投げられてしまうそういうフォームが彼の基本形になっているのだ。ワインドアップするがテークバックは浅くてあまり力感がなくセットポジションのように軽く脱力して見え、しかし、左足に体重が乗ってからトップでの力のタメが真骨頂で、それが指先に伝わったリリースの一瞬で爆発する。この印象がものすごくて、彼のビデオを百回見ればああいう感じで投げられるかもしれない、そうしておれば肩を壊さずに済んだかもといつも思ってしまうのである。もう遅かった。それが悔しくて、だからあのキャッチボールが今もビデオのように心の中でリアルに再生できてしまうのである。

上の写真。これは体重移動しきって胸を張った瞬間(トップ)だが、身長181cmで手足が長いのに開脚が広いので低く沈みこんで見える。この瞬間を横から見たのが下の写真で、体だけ前に来てボールは置いてきているので顔の後ろにあり、ヒジとボールが水平に近い。僕は経験的に、トップでそうなると速球が伸びることを知った。しかし、北別府のこの肩と肩甲骨の柔らかさは異例で、僕は頑張ってもまだ垂直に近くこんな平らにはとてもならない。この角度のまま我慢して体を追い越して1mぐらい先までもって行って限界で指さきでスピンをかけて押し出すようにリリースする。ご覧のように腕、肩、胸、右足の描く弧が美しく、頭は動かず、無駄な力がどこにもない。だからコントロールに狂いが出ない。これは神業なのだ。先の計算だと、ちょっと大袈裟かもしれないが、リリースポイントはプレートより3mほど手前になり、18.44mではなく15.44mからボールが出てくる感じになるからソフトボールの距離(14.02m)に近く、打者は140kmでも差し込まれただろうし変化球も曲がりが遅くなって対応に手を焼いただろう。「球が速い」というのは打者の体感であり、体感はそういう要素で決まる。差し込まれるとは目測より球が早く手元に来てしまうことであり、それが起こるとスピードガン表示が何キロだろうが打者は速いと感じるはずだ。これは打席にいる者しかわからないから150kmが速いか速くないか130kmが遅いか遅くないか数字だけをあげつらって議論しても意味がない(だから伊良部の150kmより星野伸之の130kmの方が速かったという選手が現れる)。北別府は制球力ばかりが語られるが、140km半ばは出ていたと思われるから振り遅れるほど伸びる速球のキレ、球威がまず一級品だったのであって、あまりに神懸かった制球の良さの陰に快速球投手のクレジットが隠れてしまったように思う。僕を神宮でびっくりさせたのは、下の写真の足腰の「形」をきっちり作って 10mの距離で軽く投げていたキャッチボールだったが、それが彼の一級品のボールの秘密であり、213勝へのルーティーンだったのだろう。

彼は集中力で勝負する人だったようで1球へのこだわりがすごくて近寄りがたい雰囲気があり、達川はいい音を出して捕らないのでキャンプでは受けさせてもらえなかったそうだ(達川が1才年上)。「ゴルフは75~80ぐらいで常にコースマネジメントを考えながらプレーをする。まるでプロだ。だから、北別府さんと回ると昼食時以外で会話がない」と後輩の川端投手が言っているが、僕もゴルフ仲間からまったく同じことを言われており(本当にラウンド中に一言も口をきかなかったらしい)スコアも同じぐらいで、たかがゴルフとはいえ遊びではなくなってしまうところはああ同じタイプの性格だったんだなと感無量で誇らしくさえ思う。以上、僕のようなへっぽこ投手が彼の野球についてああだこうだ言う筋合いなどまったくないが、見てしまった理想の技術への感動というものは消し難く、不遜にもそういう話になってしまったことをお許しいただきたい。

北別府と衣笠(1986年6月、広島市民球場)

いち野球ファンとして北別府のフォームほど美しいアスリート姿と思うものはなく、キャッチボールひとつで魅了された野球選手は他に誰もいない。デカいだけとかマッチョマンとか、ぐしゃぐしゃの汚いフォームでエイや!とか叫んで160km出すだけが能なんて投手は興味ない。優劣ではなく美学が合わない。無駄のない完成されたギリシャ彫刻のような美しさ。手元で伸びるストレート。内外に揺さぶって手を出させぬ制球力。タイミングをずらして腰砕けにする緩急。この三つを駆使して打者を攻めまくれる者こそ本物の投手と思うのであって、北別府こそまさにそれだったからこそあの江川卓がライバル視した数少ない投手だったのだろう(江川氏ご本人が自身のyoutubeチャンネル「たかされ」で対戦相手の投手として最も嫌だったNo.1に挙げている)。1982年に両者は沢村賞をめぐって熾烈な戦いを演じ、勝ち星(江川19勝、北別府20勝)、勝率(江川.613、北別府.714)、登板数(江川31、北別府36)、投球回数(江川263回1/3、北別府267回1/3)は北別府が上だったが、防御率(江川2.36、北別府2.43)、奪三振(江川196、北別府184)、完投数(江川24、北別府19)は江川が上だった。結果は北別府が選ばれ、江川は沢村賞を獲得できないまま現役生活を終えることになる。元巨人の角 盈男氏が歴代最高の投手は江川と言っておられたが、その江川に勝った北別府がいかに凄いピッチャーだったかは永遠に語り継がれるだろう。

北別府さん、長く苦しい闘病生活と聞きとても心苦しく思っておりました、ほんとうにお疲れ様でした。今は解放されて自由になられたことでしょう、ゆっくりお休みください。たくさんの素晴らしい勝利と歓喜をほんとうにありがとうございます、雄姿は決して忘れません。ご冥福をお祈りいたします。

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