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カテゴリー: ______グローバル経済

ドルが急騰!(日銀が指し値オペ予告)

2022 MAR 28 23:23:24 pm by 東 賢太郎

今朝のことだ。僕はディーリングルームの真ん中に座って業務の指揮をしている。国債の入札に異変がありディーラーたちがてんやわんやの大騒ぎなのだ。あちこちで怒号が飛び交い、僕も怒鳴っている。

「みんな落ち着け!」「指値を下げていいですか?」「構わん、下げろ」「どこまで行きますか?」「わからん。マルク債はだめだ、売っとけ」「了解です」「板を見せろ」・・・(そんなに厚くない、まずいな、へたすると暴落だな)

窓の外はビル街でどんよりと曇った空がうっとおしい。ここはドイツなんだ。しかしなぜ?なぜDM売りなんだ・・・?

ここで目が覚めた。額にうっすら冷や汗が浮かんでる。そりゃあ円買いしかないだろう、日銀が金利上げ容認?そんな馬鹿な、株が暴落だぞ・・・

飛びおきて円・ドルレートをチェックする。7時半過ぎだ、レートは122円20銭である。なんだ、何も起きてないじゃないか・・・

その時はそうだった・・・

ところが2時間半たって10時10分すぎ、日銀が指し値オペの実施を予告したと知る。当然、円・ドルレートに異変が起きるはずだ。そこからドルは17時ごろアスクで125円10銭まで急騰。現在も123円80銭あたりである。

円・ドルレート(2022年3月28日)15分足チャート

なんということか、僕がうなされていたちょうどその頃、日銀では異次元緩和の継続を意味するこの重大決定の発表に向け「てんやわんや」だったにちがいない。

お断りするが僕はこの発表は寝耳に水であり、なんらの関連情報すら知り得る立場にはない。マルクはもうないし、昔日、指揮官だった日々の夢はちょくちょく見ているからたまたまそれが出てきたんだろう。

それにしても、あまりのタイミングだ。

ドイツのころ、ブンデスバンクのアナリストに「日銀は公定歩合1%以下にすべきだ」と言われ、妙に耳に残った。まさかゼロになろうとは夢にも思わなかったが、それが今も頭にあって夢の舞台がドイツだったかも知れない。

お袋は霊感が強くて何度もお化けを見ている。お化けは見たことないが、僕は相場については何度かこういうことがある。去年、ドルが108円のころにほぼ全部の資産を「ドル建て」にしてしまう大博打を打ったわけだが、たまたま商品があっただけで理屈はない。あったのは、ドルは上がるはずという “不思議な確信” だけだ。

今年の2月2日に下のブログを書いた頃、まだロシアのウクライナ侵攻はおきてない。ただ、誰でもわかるようにやさしく書いたつもりだが、データを分析することで、そこそこのきれいな理屈はすでに立っていた。その通りのことが2か月後におきた、それだけのことだ。信じてくれた “ミセス・ワタナベ” は大儲けしたはずだ。いまディーリングルームの指揮官なら、「どこまで行きますか?」「わからん。円はだめだ、売っとけ」と答えるんだろう。

「有事の円」は終わった

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「有事の円」は終わった

2022 FEB 2 23:23:58 pm by 東 賢太郎

いま僕の資産の99%は米ドル建てである。円安で1割増えている。日本居住の日本人でこんな人はまずいないだろう(スーパーで奥さんに文句いわれるし)。昨年半ばに投資対象をばっさり入れ替えたのだ。この決断を「戦略的だ」と理屈づけすれば格好いいがあっさり認めよう。勘だ。

通貨を体感したのは海外に住んでからだ。給料をドル、ポンド、マルク、スイスフラン、香港ドルでもらい自分の資産の基軸通貨がくるくる変わる。どれで貯金したら一番得か考えるようになる。円もその一つにすぎないというこの経験がなければぜんぶ米ドルという発想は出なかっただろう。

いま我々はどんな世界に住んでいるか。2020年3月初旬に劇は始まる。コロナショックで世界の株が大暴落、各国が緊急金融緩和策を講じトランプ大統領が過去最大の2兆ドルの景気刺激策法案に署名した。日経平均株価が週次の上げ幅、下げ幅とも過去最大を記録したことでこの月の異常な天国と地獄ぶりがわかる。

そこから各国の株は正体不明の上昇を見せる。未知の浮遊感に吐き気を覚えた。理解するデータがやっと見えたのは昨年初めだ。円は2020年3月からドルと辺境通貨を除く全通貨に対して根拠のある下落を始めていた。ドルだけは上記法案の重しで円にも割負け103円だった。ドルだ。覚悟が決まった。勘といえば勘だ。

この時、日本のニュースは「円高だ」と報じた。真正の馬鹿だ。円はその時点で世界の超負け組でユーロ、ポンド、人民元はおろか韓国ウォンにさえ負けていた。そのスタート地点が2020年3月というのを皆さん覚えておいた方がいい。次に打つ手のヒントはそこにある。すべてはデータを入手し、解析することだ。

「有事の円とスイスフラン」は御存じだろう。昔はたしかにそうだった。これをご覧いただけば異変ぶりが分かる。

わかりますか?日銀のBS肥大、経済力減退、台湾リスクで有事の円などもはや空念仏なのだ。僕のスイス時代に80円台だったスイスフランはいまドルより高い124円だ。UBSの口座は転勤で閉じてしまったが、そのまま貯金しておけば何もしないで5割も増えていた。

米ドルは何でも買える。送金できる。戦争敗北はない。経済は強い。テーパリングさえやれば有事はドルなのだ。そして一人当たりの名目GDP($)でスイスは世界2位、米国5位、日本24位という現実。どれも我が家は勝手知ったる国でありスイス、米国に家を買って1/3ずつ住むのもいいなと思っている。

 

 

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MMTの神話は本当か

2021 DEC 26 18:18:53 pm by 東 賢太郎


西 牟呂雄氏の

来年への積み残し

にコメントしたい。

MMTの神話は本当か

推進するしないの二択がそもそも間違い。事務次官の記事は読んでないし興味もないが簡単に書いておく。MMTは徴税権担保に日銀が信用創造すれば景気刺激でき財政破綻もせず、ハイパーインフレは回避できるとする説だ。金融資産は金融機関の負債で増やすほど景気は良くなるが胴元は日銀だ。日銀は国と一体(それが前提条件)だから円は下がらない。だからプライマリーバランス(財政健全化)は不要というものだ。

一見もっともらしいがケインジアンに国の信用保証を付けるだけの小理屈。民需が連れションして制御きかないインフレになって金融ド素人の政治家に火消しできるか?国の負債は景気対策だ、日銀が財布だ、ならば国会議員と役人は年俸1億円でいいだろうにならんか?できないから歴史の知恵で財政、金融を分離してきたのだ。いまどきウザい三権分立やめようぜの流れに近い。唯一賛同できるのは、財政健全化はデフレ下では経済の首を絞めるだけで意味がなく、インフレまでの貯金と見て積極財政やれよ、岸田君なにビビってんの?というぐらいだ。

役人も学者も税金は空から降ってくる世界の住人。自分で稼いだことないから何もわかってない。財政健全化なんかより大事なことが世の中にはあるのだよ。稼げる者はそんな連中に意味のない税金を払わされる国にいる必要はない。企業ごと逃げる。シーメンス、アムジェンの本社は法人税8%のスイスのツーク州だ。こうやって徴税権の担保価値が落ちて日銀の信用も落ちる。金利をちょろちょろいじくってなんて話でないのだ。MMTは貨幣価値の根源を納税手段として国が認めることに置く。暗号通貨で受け取る国が出てくるぜそのうち間違いなく。

GAFAの資金調達力は日本の国家予算の3~5倍はありそうだ。IT企業の本社なんてもっとどこでもいい。だからG7は焦って最低法人税率15%カルテルとかデジタル税で羊の囲い込みに必死になってるが、羊の方がIQは高いし腕力も強くなりつつある(日本にもIT企業はある?ないよ、経営者はぜんぶ文科系だからね)。魅力ない国は弱い羊だけ残って税収が枯渇、国債のGDP比が増えるから通貨の下げは止めようがなく、食品、輸入原材料、電力のコストが上がってますます羊が逃げる。残ったうるさい羊からエサが高い、足りないと文句が出てその対処に10万円バラまくのが政治の仕事になり、そういう低能の政治家ばかりになって益々弱くなる。為替レートのない暗号通貨こそキーなのだがそこはあまり教えたくない。

アメリカの核、移民、中国の覇権は、やばければ小生は家族連れて安心安全な国に逃げる。日本は大好きだが旅行で来ればいいからね、そう考える日本の金持ちは増えている。無責任なようだが税金はたくさん払って国民の義務は果たしたから食い逃げではない。

皇統は維持できるか

これについては、先の大戦で亡くなられた方々への日本人としての当然の思念が根底にある。そこで、納税者として昨今の動静にひとつだけ疑問がある。天皇陛下に学歴が必要なのか?天皇にあるべきは国と国民の安寧を祈り包み込むお心、ご品格ではなかろうか。こればかりは一般人が努力してもどうしようもない、そう国民が感じて日本人としての誇りを持ち、安心し、敬愛し、そのことによって象徴としていただかれる存在だろう。それで必要十分であるし、なければ象徴にはなりにくいだろう。皇室が憲法(基本的人権)を持ち出すのは憲法学者がどう言おうが違和感がある。ご存じかどうか東大は官僚という行政官を作る所で帝王学を教える学校ではなく、学習院こそその歴史があり教育ができる立派な学校であると思う。

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私見”ディープステート”の正体

2021 JAN 26 19:19:36 pm by 東 賢太郎

ロンドンと3回ビデオ会議をしました。毎回2時間ですから昔なら通信費が相当かかったものが今はほぼタダです。こうなると出張は最低限でいいですね。飛行機嫌いなので有難いし、同時に別の案件が走ってますがロンドンへ行ったら物理的にそちらは断念していたでしょう。コロナはライフスタイルも変えましたが、ビジネスシーンも様変わりになっています。

米国大統領選はずいぶんな結果でしたが、これほど背後に見えない力を感じたのは初めてです。トランプの敗北をディープステート論で説明する人たちは、チャイナと左派が米国を乗っ取り世界覇権奪取を目論むのだとしますが、事はそう簡単ではなく、おそらくほとんど誤りに近いと言ってよろしいでしょう。習近平は今回のバイデン政権成立ではしめしめと思ってもこのことでプーチンに勝ったとは思っていないでしょう。ソ連の共産主義をパクった毛沢東を理想とする習政権のチャイナが凌駕できないロシアが、では世界の覇者かというと、ロシアのGDPは日本の3分の1で韓国と変わらず、軍事力と知力(インテリジェンス)はあるかもしれないが経済力なしの国にそれは不可能です。つまり、現状は不完全で過渡的ながら米<中<ロ<米の三つ巴の構図に落ち着きつつある。それはチャイナがGDP世界第2位の経済大国になって完成した、いや、このバランスが都合の良い背後の見えない力が完成させたのです。オバマの8年にわたる「戦略的忍耐」がそれであり、それを継承するバイデン政権が早くもそれを言いだした。これが何なのかという日本国の安全保障にとって極めて重大な示唆を本稿で読み取っていただければ幸甚に思います。

「背後の見えない力」とは、米中欧ロに君臨するスパーパワー(大きな力、以下SPと表記)とでも書くべきものです。それが正確に何かは僕も知る由がありませんが、自分で経験した数多の現象から推察するにそれは確実に存在する(しなくては説明できない)と思っております。本稿の標題は「ディープステート」としましたが、羊頭狗肉と誤解されぬようお断りしておくと、巷に言うそれは存在せず、SPと表現するしかない超国家的(従って超法規的、従って超独禁法的)な利益集団が存在し、トランプがその名称で「敵」としたのは米国内に投影されたSPの影にすぎません(彼は選挙用にそう言いましたが、もちろん全貌を知っている)。その実存を描写しようと試みたのが本稿です。その存在の前にトランプは自身の思いと政治生命とを天秤にかけ、最後の最後に自ら引いたと今のところ僕は思っており、SPにとってはチャイナも米国も手駒であり、共和党、民主党どっちが勝ってもよく、卑近な喩えでなぞらえるなら、巨人と阪神のオーナーが同じ人なら客さえ入れば優勝がどちらだろうと構わないがリーグ全体のバランスは球界の集客には最重要であって、それゆえに世界は米国大統領選挙にまつわる数多の不可解な場面に遭遇したということです。

1月6日の米国議事堂乱入事件は、トランプ大統領が扇動したことにされてしまったため、我が国の二・二六事件のごとき様相を呈することになりました。この事件では雪の日に決起した陸軍青年将校たちの政治訴求を昭和天皇が否定され、結果として彼らは暴徒と見做され、扇動の嫌疑をかけられた皇道派の真崎大将は軍法会議、東京裁判にかけられます。無罪となった理由の詳細は不明ですが陛下にとっては陸軍も海軍も我が軍だったということかもしれません。真崎と同様の立場になったトランプの弾劾裁判はどうなるのか、上院で17名の裏切り者が出るのかどうか。問題の6日の直前に「ペンスは裏切ると彼に確報を伝えたが、彼は何もしなかった」という情報をもらいましたが、これは確かと思われます。

SPをロスチャイルド等のユダヤ財閥やフリーメーソンと憶測する人もいます。ドイツ時代に親しくしていただいた作家のクライン孝子さんからローマクラブ、欧州ペンクラブについて教わりましたが、ドイツ人のご主人がその一人であるペンクラブの会員は彼女以外みなユダヤ系の男性だったそうで、そこだけで語られた話として、ドイツはイスラエル建国に10兆円拠出し、首相交代があると全閣僚にベンツが贈られているそうです。ロスチャイルドは分家していて、僕がロンドンで取引させていただいた時点ではN.M-ロスチャイルド、J-ロスチャイルドに分かれていました。ドルの信用創造権のある米国FRBの株主であり、ロックフェラーと共に世界の金融界を左右する影響力を有すると言うなら誇張でありません。

彼らイコールSPではありませんが主要メンバーではあり、アラブ諸国の資金も関わっていることを僕は事実として知っています。即ちプロテスタント、イスラムもメンバーということであって、これだけの事実からでもユダヤ陰謀論のような単細胞な図式でその存在を解き明かせないことはご理解いただけると思いますし、イスラム原理派と米国が目的さえ共有すれば水面下で共謀可能なこともご納得できましょう。そして、SPに何らかの階層でチャイナが加わったことを今回の米国大統領選で我々はまざまざと見せつけられたわけです。指摘しておきたいことは、SPにはジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた「ビッグ・ブラザー」的側面がありますが、単体の存在ではないことです。

すなわち、SPはべつに陰謀や秘密クラブのようなもので意図的に成立したのではなく、カネ+知恵を備えた者たちが権力と利益を追求すれば自然と同じ立ち位置にたどり着き、人種も宗教も関係なくその時々のアドホックな力関係に応じてくっつき合ったものと理解されます。ビジネス界でそのようなことは日常茶飯事であり、人間の習性に起因するのですから国家のレベルでも起きない方が不思議なのです。従ってカネを生む力を持てば仲間に入るか敵対するかしかなく、ちなみに1990年前後の時点でSPにその選択対象と認められた唯一の本邦金融機関は野村證券です。当時僕はロンドン現法の一員でしたから自画自賛になってしまいますが、経常利益が日本企業トップ(5千億円)となった野村が米国を、その経済力の看板である「株式時価総額」で他国(日本株)に抜かれる(歴史上唯一の事例=米国の汚点)ところまで追い込んだことは当時の証券界で否定する者はなく、必然的にそうなったとご理解いただいて間違いないです。

その背景には幸運がありました。高度成長期を経てテクノロジー分野の技術水準と業績が急伸した日本企業の躍進はその規模とインパクトにおいて世界に前例なし。そして、打ち出の小槌となったその株式を類のない規模で輸出する業務も世界に前例なし。僕はその本丸である野村ロンドン現法で、まさにその時点で輸出部門のヘッドだったのです。その流れに乗って野村の国内部門が破格の営業力で株式ブームを先導した日本では「外人買い」と国民的に囃されて株高に拍車がかかり、すべての日本企業が好条件のエクイティ・ファイナンス(株式資金調達)が可能となる結果として小槌の威力を倍加するという無敵のスパイラルを生んだのです。アイデアとして新奇ではないでしょうが、世界で初めて大成功したという意味では「野村モデル」と呼ぶべき手法でした。

その頂点が1990年でした。80年代までの米国の株式ビジネスは、今では信じられないと思いますが「自国中心主義」でまったくグローバルではなく、我々の輸出先は欧州でした。当時の野村でニューヨークの株式部門収益はロンドンの1割もなく、ヘッドの僕が競争相手と思ったことは一度もありません。ところが、日本の株高は不動産価格高騰に火をつけて企業の信用力が飛躍的に増し、銀行が巨額の与信を競争するに至ったことで、ついに米国民の度肝を抜くニュースが駆けめぐります。ロックフェラーセンター、エンパイア・ステート・ビルの日本勢による買収です(1990-91年)。不幸な事件だった9-11の標的にもなったようにニューヨークの摩天楼というものは米国の象徴であり誇りなのです。ロックフェラーを買ったのは三菱地所でしたがエンパイアの方は個人(横井秀樹氏)だったことも時の勢いを象徴していました(ちなみにエンパイアを買い戻した米国人がドナルド・トランプです)。

米国が日本の株高に起因する資金力膨張に危機感を覚えたという指摘がなんら絵空事でないことはお分かりいただけるでしょうか。政府をあげて日本の流動性供給の火元を断つためにBIS基準変更で銀行による信用創造力を破綻させ、ありとあらゆる手を使って経済全部を潰しに来たのはそこからです。それには別の伏線があって、89年のベルリンの壁崩壊、冷戦終結を経て米国は国内最大の問題である双子の赤字に国民の目が向き始めていました。同年に就任した共和党の父ブッシュはパナマ侵攻、湾岸戦争と軍事力による外征に舵を切り、日本を貿易赤字の元凶と見立てて自動車産業の輸出の大幅規制など経済戦争を仕掛けて国民の目を外に向ける戦略を採っていたのです。

日本を円高政策と高圧的な市場開放で壊滅的打撃に追い込んだのは次の民主党クリントン政権(1993-2001)です。かたや日本の政界はバブル崩壊で自民党が迷走し、正念場だった1994-96は社会党・村山内閣になる体たらくであり、米国の圧力に無力でありました。その中で野村が総会屋事件に巻き込まれ社長が3度交代します。証券界全体の不祥事となった損失補填事件は実は野村が沈んだための大幅株安の結末であって、同じ余波として野放図な与信で巨額の不良債権を抱えることとなった銀行がいくつも消え、経営統合による金融再編が起こります(1997-)。思えば1989年に昭和天皇が崩御され平成となった1990年に火種ができたことは時代の転換点として象徴的でした。なぜなら、そこから2000年までの10年間で米国は復活し、日本は凋落したからです。「バブル崩壊」とは株価と不動産の下げだけがズームアップされた国難の日本的な描写名ですが、崩壊したのはバブルでなく日本国でした。その10年をフランクフルト、チューリヒ、香港で送り、英米日の主戦場を離れて弾に当たらなかったのは幸いでしたが、外から眺める母国の景色は灰色でした。

その10年で俄かに勃興したゴールドマンの手法は英国に始まり世界に伝播した民営化の波に乗って、そのIPO株式を打ち出の小槌として世界に売ることです。米国内ではモルガンに勝てなかった会社が他国の株を他国に売って儲けたのです。おそらく皆さんが持たれている米国=グローバルビジネスというイメージの原型はここで生まれました。それは単に、二国間取引だった野村モデルを多国間に転用したものです。金融覇権はシティからウォールストリートに移りつつあったということです。今回の選挙でCCPの大学教授がチャイナとウォールストリートの癒着を語るビデオが明るみに出て、やれディープステートの買収の証拠だと巷で騒がれましたが、中国株IPOを打ち出の小槌として両者が儲ける野村モデルをやってくっついただけのことで何ら特別のことでもありません。法外な貢物をくれるチャイナが仲間としてウェルカムだっただけのことで、SPとはそうした性質のもので、我々は今、その生成の一断面を観察しているということなのです。

トランプ大統領も2016年時点のSPの支持を受けて登場したと考えています。分断を生んだのは彼でなくオバマです。そこを「中国ビッグバン」の大波が襲ったため、ギリシャの労働者と同じくラストベルトの低所得の白人が失業したのです。欧州の移民排斥、英国のBrexitと同じ原因から、米国はアメリカ・ファーストのリーダーを望んだと思われます。そしてプロの政治家ではなく強いアマチュアを選んだのです。トランプは期待に応え公約を次々実行し、まさかと思ったメキシコ国境の壁も造り、毎日ツィートで発信しました。職業政治家、オールドメディアは尊厳をふみにじられます。巨人軍が素人監督率いる阪神にこっぴどくやられたと考えればいいでしょう。「こいつを成功させてはいけない」の機運が高まったのは当然のことです。そして、4年かけて、憎き素人を有無を言わさず監督の座から引きずり下ろす計略が練られたと思われます。

その手口について多くを語るのはやめます。白を黒と何百回も報道して黒にしてしまう、敵の悪口は千回言うが自分に都合悪いものは言わず「なかったことに」で闇に葬る。敵の報道は妨害して同じ手口の反撃手段を封殺する。この手法はチャイナが脱線した電車を土中に埋めてしまうのといっしょという指摘だけで充分でしょう。アメリカ合衆国で起きたこととはとても思えません。感じるのは、トランプを政治的に抹殺するほど憎むおぞましい悪意です。彼を弁護する気はないですが、そこまでの殺意という害毒をバイデン側は世界に撒き散らし、いったい何を目論んだのだろうという気色の悪い疑問符だけが脳裏に残っています。両軍のオーナーであるSPがそこまでの害意を懐いたとは思えませんがトランプ独自の政治意図の拡大が意に添わなくなった可能性は考えられると思います。まあグラウンドの乱闘に背広組がグラウンドで加勢することはありませんが。

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国家管理下の金融市場という史上最大の危機

2020 APR 30 16:16:46 pm by 東 賢太郎

CNNを夜中ずっと見ている。アメリカは感染者100万、死者5万だがロックダウンを州によって緩める方向に舵を切っている。これは大きな、ひょっとして非常に危険な賭けだ。カリフォルニアではビーチに普段なみに見える人が押し寄せている。大都市のある州の知事は民主党が多く言うことは聞かない。トランプは選挙の11月までは財政発動し、大企業に資金供給し、株価をなんとしても維持するだろう。11月までは・・・。

アメリカもPCR検査不足が問題になっておりウィルス感染症の世界的権威ドクター・ファウチは週に3~5百万必要と言っている。抗体の信頼度はまだ高くないとも。PCR検査のキャパは増えているが実数が至らないのは日本と同じ事情があるだろうか。ファウチは検体サンプル数が多い中国とのワクチン開発競争に劣後するという政治的危機意識もあるだろうが日本国でそれをやるのが感染研なのか民間なのかアメリカさんにおまかせなのか、開示がないのでさっぱり政府の戦略がわからない。密室政治だ。首相に大統領の指揮権がないならなぜそれを仕切る厚労大臣が素人の文科系で医師、疫学専門家が任命がされないのだろう。まったく危機感を感じない。

多少のやらせはあろうが、アメリカの意思決定はTVで可視化されている。ファウチは「レムデシビルは回復日数がプラシド・グループが15日に対し11日と効果があり、単独または別の薬との併用で死亡率を下げる可能性がある」と言った。トランプはJ&Jのワクチンを期待してるがファウチは12~18か月かかる、治療薬が先と明言していた。仮にワクチンができても量産は別の問題で220か国にすぐ行きわたることはないとも(ならば来年のオリンピックは無理ということだ)。僕の知人が人工呼吸器寸前まで行ったが、アビガンを4日で50錠飲んで自宅療養まで回復した。レムデシビルはアメリカが承認すれば日本でも5月に特例承認かというニュースも出ているが中国は効果を確認しておらずここにも政治のにおいはする。ただ治験数が増えることで早晩両者のプロコンがわかってくるだろう。

とにかく、どちらでも結構だ、既存薬を組み合わせてでも重症患者の治療、軽症者の早期回復を可能にする最適なオプションを ”早期に” 手にしてウィルス拡散を止めることは全人類の命運をかける絶対の使命だと確信する。そうしないと、後述するが、「財政ファイナンス」という劇薬を投与されている国の方が先に破綻して世界経済は大恐慌と金融恐慌のダブルパンチに見舞われ滅茶苦茶になる。困窮した国民や民族は追いはぎ、強盗となり、あらゆる犯罪、大量難民押し寄せ、国家安全保障放棄、へたすると武力衝突、戦争という道かもしれない。国家が投薬で歩けるうちに、ウィルスをどんな方法でもいいから抑え込まないと万人が生き地獄になるだろう。

そのためには無症状陽性者を洗い出して隔離すること、つまりPCR検査数を限界まで増やすことを徹底しなくてはならないのに増えない。パチンコや江の島だけで騒いでる場合ではない。ホテルから軽症者が逃げ出し、陽性が出ても入院を断る人が出ているが例外を放置すると意味がなくなる。時限立法で私権制限やむなしだろう。日本がここまで死亡数が少ないのは何らかの国民独自の文化的あるいは疫学的な “アプリオリな” 理由があると思料するが、永続する保証はない。何より大事なのは治療するオプションを手にできるスピードである。意思決定のスピードの遅さという点において日本を凌駕できる国はそうはない。前例踏襲の役所の演繹型では国が致命傷を負う。負ってからいくら入念に傷口を調べても、調べがついた時は死んでいるのである。医師、疫学専門家が全責任を負ってトップダウンで指揮すべきである。一説には小池百合子は国政に出て後継に医師を都知事にというプランがあると聞くが、その発想を持つだけでも素晴らしい。こういう手を迅速に打てる政治家だけで国政をやって欲しい。

アメリカはホワイトハウスでトランプと専門家のディスカッションの場をCNNが放映し、そこに記者も入れて質問させているから実にわかりやすい。ニューヨークのクオモは毎朝地下鉄の消毒を徹底的にやれ、それなしでどうやって働きに出れるんだと強く語り愛国心とリーダーシップを見せた。しかし、それでも感染者100万、死者5万と最大の犠牲者なのだ。僕の中でアメリカという概念が変容しつつある。アメリカの覇権は軍事とエネルギーとドル(金融)が切り札だが、軍事は空母まで感染し要諦のボーイング社も業務縮小、エネルギーはシェール油田が絶滅の危機で、命脈は株が下がってないぐらいだ。エスニックには国内にアフリカ、メキシコ(ヒスパニック国)があるような特殊な国家で大都市をロックダウンしても最下層は守れないことが露呈した。ウィルスは人体でしか生存しない。守れない層がそれとなり劇的に拡散する温床と化したかもしれない。

トランプは選挙だけでなく覇権維持に必死なのは当然だ。厄災の元凶をWHOに見立て敵国中国を叩く戦略だろうが、テドロスが台湾のデータを無視したぐらいでは弱い。「近々に調査結果が出る」というが何かは不明だ。FATCAを通じ世界のドル口座の送金データからしっぽを握ったか?この手で中国要人のマカオ等への裏金流出をつかんで習近平を脅した(それで習自身の口座もあげられ見せしめに配下を何人か切ってアメリカとは通貨主権戦略でバーターして手打ちした)前歴があるから当然調べてるはずだ。潰したい本命はアフリカを賄賂で手籠めにしてレアメタルと国際機関のアフリカ票を囲い込む中国の周到な作戦だが口実がない。WHOはそれの格好の標的になる。クオモはニューヨークは守ってもアメリカは俺が守ったというプロパガンダになる。

トランプが経済活動を消毒液を注射してでも緩めたいのは経済がヤバいからである。本当にヤバい。1QのGDPのが4.8%減だが2Qは間違いなくその何倍も落ちる。通年で3~40%は覚悟だ。航空産業は悲惨で日本もANAに4千億円入れるがデルタ、アメリカン、ユナイテッドも50~60億ドルの政府支援をするがそんなのは3か月で蒸発する。英国はそんな応急処置では持たないとBAが最大1万2千人(従業員の3割)を解雇すると発表した。原油先物が負の値とはどんな天変地異よりも異常な光景だ。スタンドでガソリンを入れるとお金をくれるわけだ。シェールガスは原油が$40~50が損益分岐点であるから、世界の経済活動を再点火して石油を盛大に燃やさない限り業界破綻が起きる可能性が高い。それにはファウチの言う数のPCR検査をしてコロナを止めるしかないのだ。当面はFRBが面倒を見るにせよ限界に来れば中西部地銀などから金融に連鎖が広がりリーマン再来の火種になる。

この事態でありながら昨日NYダウは$500も上がっているわけだ。$2兆の財政出動を評価していると素人は表向きを見るが、同様に世界の中銀が禁じ手の財政ファイナンスに踏みこみんでいる。今期の企業収益見通しは国家容認で下駄をはかせるのである。こんなこと聞いたためしもなくアナリストは合理的な予測をたてようがない。従って、唯一合理的に結論できることは、世界の株式市場はもはや官製の鉄火場であるということだ。FRBは企業の短期債務であるCPの購入まで宣言したがそれは市中銀行の仕事だ。むしろ銀行が吹っ飛ぶことを心配しているという意味なのだ。そこまで事態はひっ迫している。鉄火場でエクイティファイナンスなどできるはずもないが、政府が潰さないように資本はつっこむからとにかく国民が動揺する株の暴落だけは避けたいということ。それが怖いからヘッジファンドはショートできず、ロングでバクチを張りたい奴はやる意味があるぞということなのである。

なぜなら、言うまでもないが、トランプは株安は絶対にまずい。経済失速の代名詞として攻撃されると過去の大統領選は現職が8割負けているというパターン認識が有権者に発生する。FRBの「大人買い」の限界が見えるまでに経済活動を戻さないとフェークの株価はもろい。しかし経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われるとその作戦の戦線は全滅するだろう。だから保険として、なんとしてもコロナの初動の失敗の責任を中国、WHOに押しつけなくてはならないのである。責任回避の上でアメリカのヘゲモニーを守るというのは実はクリンチして逃げまくりのボクサーなのだが、一見するととてもアグレッシブに攻めているように見える鉄壁の戦略だ、うまくいけばだが。「WHOの忖度の根拠になる密約メールがないか」、「カネが流れた証拠があれば無敵だ」、「探せ」。至上命令が飛んでいるだろう。ジェームズ・ボンドには任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺めても不問にされる殺人許可証が与えられる、それぐらいのことと思料する。

それに呼応するように日本国ではマスクが2枚配られた。トランプ政権同様に、安倍政権には衆院選挙が重大なハードルになってきている表れと思料するものである。安倍マスクはシャビイだが百合子マスクは小粋だとネットで評判だ。「あれを送ってくれ、1枚でいいから」という声が政府に向けて国民からあがることだけはなんとしても阻止せよという至上命令が官邸官僚に飛んでいるだろう。広島では元法務大臣からカネが流れた証拠がたくさんあがってしまった。財務省自殺問題はくすぶったままだ。こんな状況の中で連休明けに経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われると政権は全滅だ。しかし舵を切らなけらばフェークの株価はもろい。しかし日本には中国、WHOを叩くという保険はない。つまり王手飛車取りなのである。

安倍総理の在任7年間で顕著に成功したのは株価政策だけだ。この点に関しては株式関連業務コンサルである弊社は恩恵に浴したが、それは株が上がったからではなく安倍政権になれば株が大きく上がる理由があるという弊社の仮説的予測が的中したからだ。現在はどうか。安倍政権の7年間で一人当たりGDPが4万ドルと横ばいなのはアジアで日本だけだ。シンガポールに次いで2014年に香港に抜かれ、いまのペースだと5,6年で韓国に抜かれる可能性がある。それでいながらその7年間に日経平均は7千円から3倍になった。日銀のBSを使ったこと以外に合理的な理由はない。日銀の資産の中身(ETF、10年国債)はボラが他国よりずっと高い。株のコストは1万9千円と推定されそれ以下だと評価損だが長期金利が上がると国債の下げでもっとやばい。だから宣言のみならず買う必要もある。すると内容はさらに悪化する。150円、インフレもありかもしれない。財務省はプライマリーバランスを盾にこれを忌避する(役人は相対的に貧乏になる)。だから経済対策の真水は少なく、ショボい。責任は首相に行く。それで降りてもらって全然結構というのが本音だろう。これが森友事件の貸しであるなら、ツケの請求書はなんと国民に回ってきていることになる。

ウィーンのペスト記念柱

困ったもので、株価は僕にとって経済の体温計だ。これを日々読みながらやってきたが、国家にここまで堂々と株価操作されるとお手上げだ。強力な解熱剤を打って「平熱です」と診断する医者のようなものだ。よって僕は社業の危機管理として最大のリスクを想定するしかない。それはコロナの有効な治療薬、ワクチンが変異などの理由で2,3年もできず、財政ファイナンスが燃料ぎれとなって民間企業はもちろんのこと財政の危ない国家の破綻にまで至ることだ。大恐慌(経済恐慌)に金融恐慌が重なったら大変だ、リーマン以上だなどと騒ぐ輩が増えているが、コロナに金融など存在しない。国がやっているのである。ということは、それは国家破綻を意味するのである。みなさん、いま日本国がなかったら生活も未来もどうなるかご想像いただきたい。2、3年の巣ごもりができるかどうかなどというレベルの話ではない。ポスト・コロナ、ニュー・ノーマルはコロナが終わらないと永遠に来ないが、数が減った生き残りの人々がついに耐えきれなくなり、「もういいじゃないか、終わったことしよう」という世界がそれだ。ウィーンの奇っ怪なペスト記念柱はそうして建った。

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(こちらもどうぞ)

経済はウィルスの奴隷である

2年前の相場予想の検証

2019 JAN 22 0:00:13 am by 東 賢太郎

2年ちょっと前、ソナー・アドバイザーズのブログにこう書きました。

これから起きること

以下、ここで予言しておいたことが当たっていたかどうかひとつひとつ検証してみます。書いたのはトランプの大統領当選(2016年11月8日)直後の11月30日でした。青字が実際に起きた結果です。

2016.11.30.
これから起きること
トランプの法人減税と1兆ドルの財政出動はもし本当なら世界のリスクオフを解く可能性がある。世界一高い法人税35%が15%になるだけで米国企業の利益は25%増える。要はそれだけ株価が上がる。

⇐ 株価は25%ではなく40%上がった

ニューヨークダウ平均株価(マル印がコメント時)

カネのばら撒きによるインフレ期待から長期金利は上がる。FRBは狼少年になることなく12月第3週に短期金利を上げるが、リスクオフ資金の過度の需要でバブル価格となっていた長期債から短期債にスイッチがおきバランスされる。

⇐ 長期金利は33%上がった

米国10年国債金利(矢印がコメント時)

短期債に回らず株、不動産に回る資金はまだ織り込んでいない新興国等に回るが最後は日本に来るしかない。日本株は来年上がるが補正予算の規模によっては2万5千円もある。

⇐ 日本株は2万4千円まで上がった

日経平均株価(丸印がコメント時)

トランプの政策には長期的にはドル安の方がいいが、短期的には海外資産買い入れにドル高がプラス。消費回復、税収増のシナリオを煽ってコンフィデンスを高める作戦をとる。(以上がブログ)

・・・・

しっかり当たっていましたが、僕は競馬の予想屋ではありませんからそれはあまり問題ではありません。ポイントはこれを書いた2016年末時点で考えていた仮説が今でも有効かどうかなのです。有効ならまだ使えます。その可能性が50%以上はありそうだというのがこの結論ですね。トランプが何をやりそうかという観察に基づく仮説だったので、彼のやることは本筋ではそう変わらないだろうということでもあります。

この2年の間に英国のEU離脱決議、北朝鮮の核弾頭ミサイル発射事件、米朝首脳会談、、米中貿易摩擦の勃発などお騒がせの政治的事件は数々起きていますし、それを予測することはほぼ不可能ですが、心配せずとも、戦争にさえならなければ政治は株式市場には大きな影響はないのです。経験上、それで下げれば常に買い場であったと申して過言でありません。

僕はマクロは基本的には金利と業績しか見ていません。それ以外の情報はすべてノイズであり、それで下げれば買い、上げれば売り。シンプルなのです。

 

(ご興味ある方はこちらへどうぞ)

大規模金融緩和からの「出口」遠のく

 

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大人買いCDセットによるクラシック音楽市場の死

2018 AUG 25 22:22:01 pm by 東 賢太郎

アマゾンからマーキュリー・リヴィング・プレゼンス・コレクターズ・エディション3が届きました。アンタール・ドラティ、ポール・パレー、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー、アナトール・フィストラーリという気になる指揮者の1960年前後の録音が中心に53枚組というブロッキーなものです。

それが、昨日の午後にネットで見つけて注文したら今朝に家に届いている。店舗で買って、重たい思いをして持ち帰って一晩で53枚聴けるわけありません。でも、3日もたっての配達だとやや熱が冷めてしまう。翌朝のお届けは絶妙ですね。事務用品通販のアスクルは明日来るが売りでしたが、アマゾンの出現で全商品それが当たり前になってしまいました。

だからほとんどの実店舗型小売りは売上が減少し、米国でついにトイザらスが倒産というショッキングなニュースに至ったのはご記憶に新しいでしょう。残酷なようですが自由主義、資本主義はこういうもの、「アマゾンによる死(Death by Amazon)」は盛者必衰の理の一断面であります。

米投資情報会社ビスポーク・インベストメント・グループが2012年に設定した指数で、アマゾン躍進で負け組になりそうな実店舗型小売業を集めた「アマゾン恐怖銘柄指数」(Bespoke “Death by Amazon” index)の株価パフォーマンスを見ると2016年からの2年間でまさに恐ろしいことになっています。


思えばその昔、石丸電気などでLPレコードをあれこれ迷うのは絶大な楽しみでした。LPレコードは収録されているコンテンツの是非以前に、塩化ヴィニールの表面を擦過する針音が一品ごとに微妙に異なるという是非がありました。だから購買にはレジでの検盤という重要なプロセスがあり、それでも帰宅してターンテーブルに乗せてみないと針音はわからないというリスクは除去できず、さらにコンテンツである演奏が気に入るか否かというダブルのリスクがあったのです。

それをCDが駆逐して電子的読み取り信号が商品となった瞬間に目視による検盤は無意味となりました。「第1のリスク」は除去できたものの擦過がなくなり、購買という行為は均質な工業製品の仕入れと変わらなくなりました。しかしそれでもCDはモノではありました。それが今やEコマースだ。僕らはもはや物体でない「虚像(イメージ)」を紙幣という物体すら介さずにプラスチックのカードに記載されている無機質な数字列と引き換えているのです。

まあここまでは百歩譲って「利便性」の勝利と認めましょう。自由主義、資本主義はこういうものだと。しかし均質な工業製品は品質を落とさずに大量生産が可能で小型化により輸送費も在庫管理費も低下して物体としての製造、小売り単価は劇的に圧縮されます。すると「第2のリスク」である「コンテンツである演奏が気に入るか否か」は大方の購買者にとってリスクではなくなってきます。たかが1枚150円のCDがハズレでも大したことはないからです。

そこまで割り切ってしまった自分でしたが、新品53枚組のケースを開けてみると、しかし、これはなんということだと絶句してしまったのです。ドラティのブラームス交響曲全集がドーンと目に飛び込んで・・・。

ここから53枚目に至るまで、一枚一枚のジャケットに感嘆の声をあげながら中のCDを取り出し、いつくしみ、こんなやつが出てくると狂喜し、

こんなのが出てくるや、これは単品では絶対に買わなかったぞと嘆息するという塩梅でした。

このさまを観ていた家内にはわからないだろうと咄嗟に「子供の時にメンコのセットを買ってもらった時の気持ちだよ」と、我ながらうまいことを言うなと納得の説明をしたのですが、さらにわからなくなったようでした。ところがです、一連の出会いの感動からだんだん覚めてくると、この僕にもわからないことが頭をもたげてくるのです。

ちょっとまてよ、セットはいいが53枚組で8千円?なんだそれは、1枚150円かよ?カラのCDRがそんなもんだったじゃないか、ということはコンテンツはタダのおまけか?何かおかしいぞ、ドラティのブラームス、俺は1万円でもいいぞ、コープランドは5千円でも。

ほんとうです。まったくイラショナル(非合理)なことですが、僕は150円じゃなく1万円、5千円払いたいのです。もしそれで昔の価値観の時代に戻るなら・・・。

2000年ごろ不良債権のバルクセールというのがよくありました。纏め売り、バナナのたたき売りであって、単品では売れないクズ不動産を「オトナ買い」させたい銀行の窮余の一策でした。「53枚組はあれと同じか?そんなにCDは売れないのか?」、危機感が僕の頭をよぎりました。現実に売れ残りのバルクの中に箱根の土地があった。芦ノ湖、プリンスホテルを眼下に望む景観があって、えっ、こんな安くていいのという値段でした。

リゾート地が売れなくなる。業者は資金効率のために売らんかなの姿勢になる。すると売れる市場価格まで値が下がる。すると景観の価値は度外視になるのです。駅近、治安、生活インフラなど万人が気にする要素(地価を決めるハードとしての要素)に比べ趣味性が高い景観は先に無視される要素なのです。CDにおいてコンテンツである音楽は趣味性の要素で、売らんかな姿勢の業者がバルクセールをすれば、値段はハード(工業製品)原価であるCDR1枚の値段まで下がり得るということです。

それは購買者としてはむしろ有難いことです。しかし、マクロ現象として長期的な目で見るならば危機をはらんでいます。53枚組のどの1枚だってLPの頃は1500円はしていた。インフレを加えると10分の1超に至る価格破壊が「第2のリスク」を軽減してはくれます。しかし、その背景で由々しきことが進行しています。購買者は選択の安心と引き換えに鑑賞への集中力を無意識に放棄しているということです。まあ安いから聞いてみようか、1枚150円のCDがハズレでも大したことはないや。10倍のお金で買った場合とは集中力はおのずと違います。それが常態化すると人間は徐々に不要となった能力を失うのは進化の歴史が証明しています。

供給者側でも、アダムのジゼルの程度のクオリティの音楽、つまりたいして売れそうもないコンテンツを当代一人者のフィストラーリのような演奏家、最新鋭の録音システムでコストをかけて商品化しようというインセンティブは著しく低減するでしょう。英Deccaがヘルベルト・フォン・カラヤン / ウィーン・フィルを起用したジゼルは1分当たりの(音楽の価値)÷(製造者原価)の値が最も低い録音だろうと思われ、収録した1961年あたりにクラシック音楽ソフト市場の数値のボトムがあった可能性が高いと考えております。

需給の両サイドでの質の低下は確実に文化を変質に追い込みます。経済学のわかる人は本稿の趣旨である「アマゾンによる死(Death by Amazon)」との類似性を見抜かれるでしょう。大人買いCDセットはクラシック音楽ソフト市場の断末魔になりかねないのです。

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重かったビル・ゲイツの言葉

2018 MAR 17 2:02:09 am by 東 賢太郎

当時はこんな感じだった

1997年2月のダボス会議で、時の寵児だったビル・ゲイツが1000人ぐらいのホールでスピーチをした。まだインターネットが普及しはじめのころだったが皆が席を争って殺到し、やっとのことで予約が取れて会場に入れたという超人気ぶりだった。昨日のことのように鮮明に覚えているのは理由がある。「これまではどの国に生まれたかで生涯所得が決まりましたが、これからは何を学んだかで決まります」という言葉があったからだ。これは僕にとってアインシュタインの「 重力波」に匹敵する重大な予言であった。

先進国に生まれただけで開発国よりは年収は得られたし、学歴があればさらにそうだった。しかし、これからの時代は開発国に生まれても学ぶもの次第で億万長者になれるし、先進国に生まれても良い暮らしの保証はないよ。学んだものが時代に合わなければ名門校を全優で卒業しても年収アップにはつながらないよ。ゲイツの言った「何を学んだかで決まる」とはそういう意味であり、彼はそこで「これから学ぶべきものはITだ」と明言したのである。ちなみに彼はハーバード大学数学科を中退している。

あれから20年。世界はまさに予言どおりにそうなっているが、彼が「生涯所得」を良い暮らしのベンチマークにしたのは、「もし人間の幸福指数というものがあるならそれが最大変数だろう」(それだけではないが、必要条件だ)というきわめて自由主義的、資本主義的かつアメリカンな考え方であるから異論ある方もおられるだろう。素人がいくら音楽を勉強しても一文の足しにもならないが、それでも幸福指数を高めてくれることは僕自身も納得している。

しかし、彼の言葉は謙虚に聞くに足る。なにせピーク時の年収が1兆6,635億円(時給46億円)、総資産9兆円の人の言葉だ。彼の信条を習得してその1万分の1でもいいからご利益にあずかれば、あなたの年収は1億6,635万円だ。そんなのいらん、清貧に生きるのが人生だという方はこの先はお読みにならなくてもいいと思う。

ウォートンスクールに留学するにあたって「ビジネススクール」とは何か調べてみた。MBA(経営学修士)という学位を与える、経営の専門家になるための教育機関という建てつけの大学院であり、メディカルスクールが医者の、ロースクールが法曹のそれであるのとパラレルと思われた。当時27才の僕にとって経営とは想像の対象だからその専門家がどういう存在かは空想の領域だった。

経営の専門家は医師、法曹のように育成できるという概念は、経営は「技法」であるという前提がないと成り立たない。その上に、人間やイデオロギーを細分化(いわば因数分解)し、客観的で普遍な構造を追求する思想が重なる。それは「構造主義」に近似すると僕は理解した。つまり、技法は技術の集大成であって、高度に複雑な技法も技術レベルでは客観性、普遍性があり、そこに還元してしまえばマスターできるという意味で医学、法学と同次元の構造を見て取っているのだろうと思われた。

それが正しいかどうかは置くとして、実際に2年学んだ経験から次のことは言える。ピアノ演奏(技法)は運指(技術)に立脚するが、24の調の音階運指を訓練すればピアノは少しは弾けるという程度の類似性において構造主義はワークしうる、つまり、「経営はそれを構成する技術に因数分解して教室で教えることができる」ということだ。そう納得したと同時に、次の疑念を抱いたことも併記しなくてはならない。そもそも「経営は技法なのだろうか」ということだ。

ビジネススクールは経営学を教える学校ではない。ビジネスを「学」の対象にするほどの構造性はおそらく認めておらず、技法は技術の集大成ではあるが、技法は経験からしか学べない部分も包含している高次の概念であると前提していることは、経営学(マネジメント)は科目として、つまり技術の一つとして教えていることから明確にわかる。ビジネスは医学や法学と同次元で教育はできるが学問ではないという立場であり、これに僕は100%同意する。

経営学者ピーター・ドラッカーは自らの組織論、経営論をオーケストラと指揮者の関係に例えたが、奏者の腕(生産性)が高い前提で良い演奏(効率向上)をさせる経営(指揮)を教えているのであって、多くの人が勘違いしているように彼は名指揮者になる秘策を教えているわけではない。彼の著作を誇らしげに書棚に並べる経営者がいるが、そんな無駄金を使うこと自体生産性の低い経営者だとその本には書いてある。

かたやビジネススクールはそうした学問的、合理主義的なアプローチを頭で理解したうえで、夜中12時まで図書館にこもって半分も読破できないほどの地獄の特訓みたいな膨大なアサインメント(宿題)を毎日こなし、教室では完璧でなくても皆がなるほどと思う議論をその場ででっちあげるご都合主義にいたるまで、CEOになれば直面するしうまく切り抜けねばならないであろうあらゆるプレッシャーやシチュエーションの仮想体験を経験主義の精神で肉づけをする場だ。平たく言うなら、教室ではなく道場である。

ということは「経営は技法なのだろうか」という本質的な問いに対して、教室で教科書的に論じることはナンセンスである。実際に名経営者に接して、道場で剣道の乱取りを見る目線で結論を出すのが筋なのである。僕のころ「伝説の経営者」の神棚に並んでいたのはフォードのCEOを解雇されぼろぼろだったクライスラーCEOに転身して立て直したリー・アイアコッカ、そしてGEのCEOとして売上高を5.2倍、純利益を8.4倍に伸ばし、世界有数の株式時価総額を誇る巨大複合企業に育て上げたジャック・ウエルチだった。

ド迫力のおっさんだったウエルチ

僕は幸運なことにビル・ゲイツの出てきた97年のダボス会議の場で、その神様ジャック・ウエルチのブレックファスト・ミーティングに参加する機会を得た。最前列の丸テーブルに陣取ったら、自らの白熱したスピーチに興奮したウエルチが壇上からしゃべりながらおりてきて真横で熱弁をふるいだし、唾が飛んできて朝食は断念する羽目になった。そこでびびっと体で感じたのだ。ああ、このおっさん、自説に没入してテコでも動かん、それを弁舌と迫力で納得させるカリスマ親父だなと。

そんなのは因数分解などできない。教えられない。音大で棒の振り方だけ教えればフルトヴェングラーやチェリビダッケみたいな指揮者が出てくるわけではないのだ。ウエルチはドラッカーの信奉者だが、自説を立てる段に役立ったかもしれないがそれを実行させたのは彼の強烈な人間力だと思う。終了後に出口で参加者を握手で見送るウエルチに挨拶したら「おおノムラか、**はどうしてる?」と会社の先輩の名が即座に出て驚いた。心底びっくりした僕は彼のことを絶対に忘れない。ドラッカーの経営学もビジネススクールもこういう大事なことは教えてくれないのだ。

その同じダボス会議の場で、「生涯所得は何を学んだかで決まる」「それはITだ」というビル・ゲイツの言葉が水と油ほど異質に響いたのをご想像いただけるだろうか?こんなことを言う経営者が出てきたのか!目からうろこだった。カリスマ、人間力なんかではない、むしろ学校で教えられるもの、だれでも学べばできることだ。しかし、大事なのは習うことでなく、関心を持って自ら学ぶことだ。だから実はそれは「オタク」のすすめなのである。ゲイツは僕と同じ1955年生まれだ。思えばこの辺の世代から日本でもオタクが現れだしたし自分もそのはしくれであった。

僕は法律はつまらなくて勉強しなかったからゲイツみたいに退学しても良かった。オタク的に学んだのは株式投資であり何の専門家かと問われればそれだ。そしてそれが生涯所得を決めたというならそうだ。ウエルチのカリスマ、人間力は魅力があったし自分もそういうものを身に着けたいとは思うがそれで食えるわけではない。四六時中株のことを考えていて飽きないのだからそれで食ったほうが健康にもいい。「ITだ」と言われればそうだったかもと思うが、株ほどの興味はないからやっても成功しなかったのではないか。

最後に、僕の目を覚ましてくれたビル・ゲイツに賛辞を贈ろう。彼の予言を重力波の計測のごとく体現した人物は僕らより16才若い、EVを牽引するテスラ社の創業オーナー、イーロン・マスクだ。彼は決して先進国ではない南アフリカ共和国の出身だ(どこの国に生まれたかは関係ない)。10才のときにコンピュータを買い、プログラミングを独学し、12才で商業ソフトウェアであるBlasterを販売する。幼少にしてITオタクであり、商人であったのだ(何を学んだかで生涯収入は決まる。それはITだ)。そして彼の現在の総資産は205億ドル(2兆3千億円)なのである。

 

しかし予言のすばらしさの要諦はそれではない。マスクが共同創業者として起業した最初の会社、ペイパルがオンライン決済という金融に関わるサービス会社であったことだ。NASDAQ 上場の時価総額1兆円企業である(本社は前ブログのサン・ホセにある)。その彼が電気自動車メーカー、テスラという畑違いの創業に関わって、一度も黒字がないのに60兆円の企業にしてしまう。サービス業から製造業、金融から自動車。一見するとクロスオーバーなキャリアに見えるが、それらはITオタクという横糸で結ばれているのであってそうではない。それが宇宙輸送ビジネスになろうと、これまた同じことだ。ゲイツの予言の凄みを僕はここに感じるのだ。

テスラ モデルX

ガソリンエンジンとトランスミッションのいらないEVは日立やパナソニックが電化製品として作ってヤマダ電機で売れる。IOT時代は商品の方がITを基軸にクロスオーバーする時代であり、自動車が「家電」になればそれもそこに組み込まれる。子供でも分かる、それだけのことだ。1997年にビル・ゲイツがそれを見越していたかは定かでない。おそらく、彼はムーアの法則のような原理的観察による直感を語ったのではないかと推察するが、天才の脳内は測りがたい。ともあれ、原理と経験と直感から常に未来を予測し、予言をし、適中させること以外に大きなビジネスで成功する道はない。そして、多くの天才たちの予言・適中の蓋然性を吟味・分析して、少額の資金による事業参加を行うことこそが株式投資の本質なのだということも若い皆さんは覚えておいた方がよい。

 

株式道場-未来を原理思考しない日本人-

 

 

 

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平昌オリンピックと株式時価総額

2018 FEB 13 17:17:01 pm by 東 賢太郎

グーグル・アナリティクスでブログ閲覧の統計値が出てきます。僕のブログは毎日千人ぐらいが読んで(少なくともどれかを開いて)くださっていて、その6割が男性です。ところが年齢層が意外でした。ご訪問くださる過半数(55%)が44歳以下で、もともとターゲット層と考えていた55歳以上は25%しかないのです。

むしろ18~34歳が35%で上回っており、しかもそのうち自分の子供より若い18~24歳が20%近い。何となく自分の世代に向けて書いていましたが、それでこれというのはどういうことなんでしょうか。今時の中高年だからITリテラシーだけの影響とも思えませんし、サンプル数は137万だから統計としては有意だろうし、けっこう世代別に関心がある層の所在を反映していると思うのです。いずれにせよ、僕の当初の目論見は外れたということであります。

18~24歳といえば、メジャーにチャレンジするプロ野球の大谷選手、そしてたったいま平昌オリンピックで世界に挑戦している若人たちの世代でしょう。子供と話してもその世代とはギャップがあるし、どういう興味で読んでくれているのかまではさっぱりわかりませんが、とにかく有難いことで、未来の日本を背負う世代とつながれるというのは昭和30年生まれのオジサンとしてはうれしいことに感じるのです。

大谷選手といえば、先日TVのインタビューで「年男ですが、その年齢でのメジャー挑戦でお感じになることは?」ときかれ、にっこりと「特にありません」。これいいですねえ。僕も新入社員のときTVで「今年の新人は『泳げ鯛焼きクン型』だそうですがいかがですか?」と振られて「僕はちがいます」と答えて白けさせて申し訳なかった前科があるんで、好きだなあ大谷さん。彼は「くだらないこと聞くな」という顔しないところが大人でかっこいいですね。

きのう平昌オリンピックでスピードスケートの高木美帆さん、ジャンプの高梨沙羅さん、男子モーグルの原大智のさんのメダル獲得を見て感じるものがありました。何事であれ日本で3位でもただ事じゃないのに世界ですからね、もう想像もつかないことです。それも世界に放映されて日の丸を背負っての一発勝負でね。あっぱれの一言です。

高梨さん、2本目スタートの瞬間、いい顔してましたね。ハラ座ってるな凄いなあ。でもルンビもアルトハウスも顔が負けてない。最高峰の戦いでの立派なメダルです。高木さん、表彰台で金じゃないのが悔しかった、その言葉、次は勝つ人ですね、オランダ人(とにかく男女ともでかいよ)を抑えての銀は痛快でした。原さん、すぐ前に滑った金メダルの奴が物凄かった、自分は未勝利なのにそれ見ても失敗する気がしなかった、見てる方もそう思いました、大物だね、素晴らしい。

ジャンプで2本とも追い風で、誰が見てもその不運で9位だった伊藤有希さん。4年間頑張って悔しかったのに、あなたインタビューで風のせいにしませんでしたね。大変にあっぱれです。幸田露伴(知らないだろうがエライ人)が言ってます、「大きな成功を遂げた人は、失敗を人のせいにするのではなく自分のせいにするという傾向が強い」。僕は知ってる、運はそういう人にだけ寄ってくるのです。次はいけるよ。

若い選手の皆さんに元気をもらいながら、あったかいリビングでぬくぬくと皆さんの活躍を見せてもらいながら、昭和の我が世代がいま日本国に何を残したのかつらつら考えます。オリンピック出たわけじゃないし、貢献したことといえば早朝から深夜までモーレツ社員やって経済成長に参加したぐらいでしょう。だから日本の企業の規模や収益力にほんのかけらほどが遺産として残ってるかもしれないということになりますね。

それを見るなら代表企業の時価総額(全株式を買った金額)を比べる、それがグローバルスタンダードなんです。ご覧ください。以下、カッコ内が現在のそれ、単位は「兆円」です。

アップル(80)、アルファベット(グーグルの親、75)、マイクロソフト(68)、アマゾン(65)、フェースブック(42)以上米国

対して中国はテンセント(50)、韓国はサムスン電子(30)

かたや我が国はトヨタ(24)、ソフトバンク(10)

これが我が世代が残したもの。残念です。こんなのに甘んじてていいのかな?

メダリストになった高木さん、高梨さん、原さん、あなたたちは企業ならば時価総額60~70兆円の所にいるということですよ。ほんとうにすごいことです。

その昔のこと、我が国は「経済一流、政治三流」といわれました。ところがご覧のとおりその経済だってだんだん三流になりつつあるのです。我々のような元戦士はもう終戦モードで、過去の栄華を懐かしむだけ。どうせあと20年も生きないし、貯めた小金を食いつぶしてあの世いきなんでございます。どうしたらいいかって、我々の成功体験なんか屁の役にも立ちませんよ、それは皆さんがご自分の頭で考えぬいて、臆せずにあれこれやってみるしかありません。

 

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理系の増員なくして日本は滅ぶ

2017 MAY 23 18:18:33 pm by 東 賢太郎

大航海時代まで世界の覇権はスペインにありました。海を支配し、新大陸を含む植民地、銀の産出という当時として絶対の利権を握り神聖ローマ帝国のハプスブルク家と姻戚を結んだというのは宗教的にも世俗的にも並ぶ者のない権力を持った、陸海を制しまさに日が沈むことがなかったということで、今の米国よりずっと優位だったのです。

これを島国の英国がひっくり返した。一気の戦争によるKO勝ちではないが、市民革命の時代までには判定ポイントで優勢となり産業革命に至って恒久的勝利が確定した。野球なら5回までに10点取られてノーヒットだったチームが勝ってしまった感じでしょう。世界史で空前の大逆転といえば僕はこれを挙げます。

スペインの敗因は複数ありますが、膨大な利権に甘んじてフロンティア、辺境で競り負けアメリカを取られたのが逆転満塁ホームランになったという見立ては衆目の一致する所。当時のフロンティア開拓はイコール海軍力であり、もともと海賊の英国は生命線としてその得意技に徹したのに対し、スペインは陸地の経営でも楽に食えてしまった。これがまずかったと思うのです。

つまり持てる者である大株主、地主となった。配当、家賃というキャッシュフローは安泰だから「攻め」の必要なし。防御型の人生観が支配的になります。かたや持たざる者はフロンティアで攻撃型にならなくては生きられません。そのどちらが強いか。自然界でいうなら無限に生える草(=キャッシュフロー)を消化できる草食獣は多産で個体数が確保できる限り牙も爪も必要なく、攻撃力は進化してません。三百年ほどで徐々に防御型となり草食化したスペインを、航海で牙と爪を研いだ攻撃型肉食獣の英国が食った、僕にはそういう光景と映ります。

現代において国力のフロンティアと目されているのはIT、AIの技術力です。軍事、情報、金融、生活関連産業すべての興隆がこれからそれに大きく依存するからです。70余年前、我が国は石油供給を止められて開戦に至りましたが、今や石油がないどころか国民が餓死していてもIT技術を磨いて核ミサイルを持てば攻撃はされない時代になったことがその証拠です。

IT技術のフロンティアで我が国がどこにいるか。これが不安です。日本は欧米が基礎研究した技術を民生用に汎用化するアプリケーションテクノロジーで筆頭の勝ち組でした。高度経済成長による国力興隆の背景はそれであり、その仕上げがいよいよIT技術に及んでIBM-日立事件が起きた80年代はそのピークだった。

80年代はバブル時代だとネガテイブに語る人もいるが、自虐史観の洗脳ここに至れりであって、日本人が我が世の春を謳歌し欧米を震え上がらせて何が悪いのだろうか。あれは敗戦で焦土と化し地にまみれた屈辱からフロンティアを攻めまくって勝ち取った大戦果なのです。

ところが今やそのIBMすら影は薄く、投資の神であるウォーレン・バフェットが「唯一の失敗はIBMを買ってアマゾンを買わなかったことだ」と認めるほどITの時代も急転回しています。我が世の春だった日本がITのアプリケーションにおいて "スペインの轍" をふみ、フロンティアを中国、台湾、韓国に猛攻撃されて主要な要塞はすでに陥落してしまったと感じるのは僕だけではないでしょう。

日経の記事によると米国シリコンバレーには三百万の住民がいますがうち40%が外国人で、インド、中国、韓国に比べ4万4千人の邦人は存在感が低い。世界のIT基本ソフト、ブラウザー、クラウドで二大巨頭であるマイクロソフトとグーグルのCEOはどちらも40才台のインド人であり、ペンタゴンが恐れるハッカー集団は中国人です。

フランスのマクロン新大統領は「経済成長と起業は不可分」とし、創業期の負担を減らす政策を強調しています。16年までの20年間、米国の成長が年平均2%に対しフランスは1%であるのは、起業家の成人人口に対する割合(TEA)が米国の12%に対しフランスは5%であることが原因であると危惧している、それは皆さんもう忘れたでしょうが、あのピケティという学者の講義を思い起こせば納得のいくことです。そして、これもご想像に難くないでしょうが、わが日本国も同じく5%であり、中国、韓国の半分以下であるのです。

(出所:野村総合研究所、平成28年3月)

日本人の特性として元来そうかどうかは議論がありますが、少なくとも徳川時代以降は「農耕民的防御型」で「キャッシュフロー安泰志向型」が国民の多数を占め、「フロンティア攻撃型」は少数派といえるでしょう。防御型=地主型=草食系がフロンティア攻撃型=肉食系に食われるのはすでに見た通り歴史に実例は枚挙がなく、かつて高度成長の牽引車であったエレクトロニクス産業が韓国、台湾に食い荒らされれている真因はここにある、すなわち防御型優勢でなくフロンティ攻撃型の起業家を増やさなくては国力に関わると考えるのはマクロン大統領だけではありません。

城の本丸が落ちようとしている危機に頼るよすがは優秀な頭脳と教育であり、大学こそが防御型に生まれついた人材を導いて世界のフロンティア攻撃型人材との戦い方を教えねばなりません。その人個人のためでもあるが、優秀な一握りの個人は国の助けなどいらず日本の大学を捨てて米国へ出ていく(頭脳流出)道がある。米国どころかヘタすると数年でシンガポール大学、香港大学、北京大学のほうが東大より起業に有利という時代になるのは、そこに関わる金融、証券の実務をしていると肌で感じることです。

だからこれは何より日本国の経済成長と雇用の継続のための問題であります。我が国の学校における起業家教育は世界最低レベルという事実があるからです。日本という「農耕民的防御型」で「キャッシュフロー安泰志向型」の土壌にはそういう教育概念すら存在せず、教えられる教師は実業界にしかいないという事情が背景にあります。

(同上)

はっきり言うが、日本の大学の経済学部は草食獣の学生に100年前の教科書を教えることが唯一の仕事である草食獣の先生の職場である。ここからは100年たってもノーベル経済学賞受賞者は出ないことは賭けてもいいでしょう。そんなものはもうフロンティアではなく、学問であれ実業であれそこでの戦争には無用だからです。もしそれを学んで卒業した学生が世の中で成功したとしたら、それはその人がもともと優秀だったというまぎれもない証左としては高い価値があるだろう。

本丸が落ちたS社とT社において、研究員、技術者、職工が無能であったと考える日本人は少ないはずです。だからこそ台湾のH社はSを買ったし、Tの半導体事業に海外からビッドが入るわけです。失敗の本質は100年前の教科書しか知らない先生に学び、高度成長期の国家的浮力に助けられた成功体験のみで育った、肉食獣の本能と生態系を良く知らない草食系経営陣(その多くは経済学部など文系)のまいた種によるのは衆目の合致するところです。

そしてそれを見た新聞の社説に「外資の傘下に入るのは決して悪いことではない」などと、これまた100年前の教科書の草食獣である論説委員が書く。ばかとしか思えない。マイクロソフトとグーグルのCEOはインド人でもガバナンスは米国にある。本社が日本にあって日本人が雇用されれば経営者は台湾人でもいいというのは奴隷国家の考え方だ。経済学部の先生は彼らにガバナンスと株式支配の意味を教えていないのだろう。

安倍内閣は大学まで授業料無償化というが、まったくの無駄です。高等教育は国家戦略であり、幼稚園の「みんな仲良く」の世界など存在しないのです。自身がそれが何の役に立っているか自覚できない(早い話がどうでもいい)文系学科卒である政治家の発想だろう。100%の子が大卒になれるならそんな教育はそもそも大学教育ではないから中学までで履修できるはずなのです。言ってることが自己矛盾だ。そんな金を使うなら東大、京大、国立理系大学(東工大、電通大)等の収容人員と実験等教育予算を倍増したほうがよほどいい。優秀な才能に国家の計で教育をする。留学生の頭脳も集める。シリコンバレーもすべてのIT産業も牽引車は最先端理系教育を受けた技術者なのであり、100年前の経済理論や帳簿の管理術やお金集めやセールスマンなど国家が教育しなくても商人道だから誰でもできるし、そこを台湾に譲っても日本は失うものはなしです。

文系はいらんという御仁もいますし僕も結果的にはそれに近くなります。近年の中国共産党中央政治局常務委員の指導者の学歴を調べると習近平(清華大学化学工程学部)、胡錦濤(清華大学水利エンジニア学部)、温家宝(中国地質大学)、朱鎔基(清華大学電機製造学科)、江沢民(上海交通大学電気機械学部)、賈慶林(河北工学院電力学部)、李長春(ハルビン工業大学電機学部)、曽慶紅(北京工業学院自動制御系)、羅幹(北京鉄鋼工業学院圧力加工学部)、周永康(北京石油学院)、賀国強(北京化学工業学院無機化学工業学部)、呉邦国(清華大学無線電子学科真空トランジスタ学部)と驚くべき理系王国であり、文系は北京大学法学部卒の李克強ぐらいです。

問題はこの中国共産党がどういう思考回路を持っているかということです。我が国の政治家の平均的プロフィールとは良くも悪くもかけ離れていることは間違いなく、どちらがいいということではないものの、文系頭では想像もつかない戦略を練ってくる不気味さを感じるのです。彼らはもちろん孫氏の兵法、三国志に通暁しており自己の生存のためには恩人も殺す曹操のようなことを平気でやるだろう。そのトップにある連中がサイエンス、エンジニアリングを自分で理解して国家戦略を練ってくる。数学・物理音痴の文系が理系を従える日本の行政と産業の支配構造は、楽譜も読めない指揮者が振っているオーケストラみたいなものです。中国共産党幹部は若い才能の発掘と教育に国運をかけるだろう。フロンティアでの攻撃型競争が才能を開花させることを当然の如く知っているだろう。

我が国が明治時代なみの理系文系なる無意味な区分のまま大学教育を改革せず、だから学生の知能指数で30位ということはまずない東大が大学世界ランキングで35位にしかなれない現実に目をつぶり、実社会で何の役にも立たないから留学生が来ない100年前の学問を先生の権威のために温存していけば、50年後には科学技術はもちろんITの関わるすべての産業でアメリカと対等のパートナーとなる中国に確実にぼこぼこにされるだろう。それしか優位性のない我が国は、したがって実質的に滅びるのです。新聞の論説委員おすすめの奴隷国家になるのです。そんなはずはない、モノづくり、匠の技は凌駕などできない。そう思う方はスペインと英国の覇権の歴史をもう一度勉強されるといいと思います。

そうならないための絶対の妙案はありませんし、もう遅いかもしれないと半分は思っていますが、私案として、全大学の学部を是々非々で要不要を検討し、予算総額は限りがあるので国家の百年の大計に添ったお金と教師と生徒数の再配分を決めるというのが最も合理的でしょう。この趣旨を説けば、高額所得者増税には反対の超富裕層は名誉と引き換えに大学に多額の寄付をしてくれるだろう。文科省天下りがいかんというのも一概にそうはせず、大学教員は派閥や各界余剰経営者の受け皿というサプライサイドの考えをまず一掃し、国に必要な学生を育てる能力があれば天下りでも外人でも何でもよしというディマンドサイドのポリシーから合目的的に改革をすればいいと思料いたします。

 

(ご参考)

脳内アルゴリズムを盗め

小保方氏に見るリケジョとAO入試

クラシック徒然草《フルトヴェングラーと数学美》

 

 

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