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「有事の円」は終わった

2022 FEB 2 23:23:58 pm by 東 賢太郎

いま僕の資産の99%は米ドル建てである。円安で1割増えている。日本居住の日本人でこんな人はまずいないだろう(スーパーで奥さんに文句いわれるし)。昨年半ばに投資対象をばっさり入れ替えたのだ。この決断を「戦略的だ」と理屈づけすれば格好いいがあっさり認めよう。勘だ。

通貨を体感したのは海外に住んでからだ。給料をドル、ポンド、マルク、スイスフラン、香港ドルでもらい自分の資産の基軸通貨がくるくる変わる。どれで貯金したら一番得か考えるようになる。円もその一つにすぎないというこの経験がなければぜんぶ米ドルという発想は出なかっただろう。

いま我々はどんな世界に住んでいるか。2020年3月初旬に劇は始まる。コロナショックで世界の株が大暴落、各国が緊急金融緩和策を講じトランプ大統領が過去最大の2兆ドルの景気刺激策法案に署名した。日経平均株価が週次の上げ幅、下げ幅とも過去最大を記録したことでこの月の異常な天国と地獄ぶりがわかる。

そこから各国の株は正体不明の上昇を見せる。未知の浮遊感に吐き気を覚えた。理解するデータがやっと見えたのは昨年初めだ。円は2020年3月からドルと辺境通貨を除く全通貨に対して根拠のある下落を始めていた。ドルだけは上記法案の重しで円にも割負け103円だった。ドルだ。覚悟が決まった。勘といえば勘だ。

この時、日本のニュースは「円高だ」と報じた。真正の馬鹿だ。円はその時点で世界の超負け組でユーロ、ポンド、人民元はおろか韓国ウォンにさえ負けていた。そのスタート地点が2020年3月というのを皆さん覚えておいた方がいい。次に打つ手のヒントはそこにある。すべてはデータを入手し、解析することだ。

「有事の円とスイスフラン」は御存じだろう。昔はたしかにそうだった。これをご覧いただけば異変ぶりが分かる。

わかりますか?日銀のBS肥大、経済力減退、台湾リスクで有事の円などもはや空念仏なのだ。僕のスイス時代に80円台だったスイスフランはいまドルより高い124円だ。UBSの口座は転勤で閉じてしまったが、そのまま貯金しておけば何もしないで5割も増えていた。

米ドルは何でも買える。送金できる。戦争敗北はない。経済は強い。テーパリングさえやれば有事はドルなのだ。そして一人当たりの名目GDP($)でスイスは世界2位、米国5位、日本24位という現実。どれも我が家は勝手知ったる国でありスイス、米国に家を買って1/3ずつ住むのもいいなと思っている。

 

 

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Categories:______グローバル経済

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