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ポゴレリッチのラフマニノフ2番を聴く

デュトワのカルメンと前後してしまうが、今日の読響について。指揮台に立ったオレグ・カエタニはフランクフルト駐在時代によく聴いていて、ヴィースバーデンでのリング全曲は彼の指揮だった。なにせあのマルケヴィッチの息子だ、もっと硬派なプログラムだったらよかった。

いつも感じることだがボロディン2番はライブだとオーケストレーションに空隙を感じ粗野な原色ばかり目立ってしまう。かと思えば終楽章のあの素敵な第二主題の伴奏になにもトロンボーンを重ねなくてもいいのにというベタ塗りがあったりもする。シンセでたくさん演奏するとスコアを見てヤバいなあというものを感じるようになって、これはやってないがきっとトロンボーンは超弱音か無しにするだろう。

カエタニはまったくその辺を気にしてない風情であった。チューバまで入った金管群であるわけだしこれがロシアの感性と言われれば仕方ないが、そうであるなら男同士がキスする感性など日本人の僕にはわかりようもないというものだ。フランス系のアンセルメやマルティノンは薄口でうまくやっているし、人工的であってもミキシングでうまく化粧した録音で聴く方が僕はずっと楽しめる。カエタニは低音を鳴らすので特にそう思ってしまった。

交響曲が先でトリが協奏曲というのも珍しいが、ポゴレリッチあってのことだろう。

ラフマニノフの2番だったがこれはproblematiqueだ。強めに始まる鐘の音は途中で弱まり、再度強くなる。こんなのは初めてだ。テンポは不可解に遅いと思えば第2楽章の主題は無機的に速く、つづく右手の単音の旋律はなんとフォルテに近かったりする。遅い部分はルバートがかかりまくり、終楽章のピアノの入りのアルペジオは真ん中の数音符だけ突然フォルテで弾いたり、まったくわけがわからない。

それでいてフォルテは強いだけでちっとも美しくなく、細かいパッセージは弾けていないしミスタッチもある。アンコールの第二楽章がほぼ同じだったから即興でもなさそうであって、つまり考えぬかれた解釈のようなのだがではどうしてそうなるのか理解に苦しむばかりだ。演奏家の感性や哲学は尊重するしありきたりの美演より僕はそっちを採る主義なのだがこの曲にそんな深い哲学があるとも思えない。

グールドのモーツァルトはなにくれかのirritationを聴衆に与える意図が隠されていて、彼はそういう屈折した心理を持つ天才だったと思っているが、ポゴレリッチもそうなのか推察するほど僕は彼をよく知らない。記憶にあるのはあの流麗で瑞々しく神のgiftを強く感じさせるスカルラッティやガスパールなのだが、彼のその後の人生には何があったのだろう?拍手をする気分ではないままそういう疑問ばかりが心を占めてしまいサントリーホールをあとにした。

 
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    2 comments already | Leave your own comment

  1. 12/14/2016 | 9:57 PM Permalink

    ポゴレリチの二十数年ぶりの新録音が出たとの情報を得、昔の彼が復活したのではと、期待があったのですが、「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番」の冒頭の妙な表現を聴いた途端、相当落胆しました。本番にも関わらず気ままな試弾のような演奏を世界各地で繰り返すことに、彼は指揮者・団員・聴衆に対して少しの良心も痛まないのかしらと不思議に思いました。あの若き日の輝いて強い光を放っていた素敵な演奏には、もう再会できないかもしれないですね。

    休憩時間、ロビーで東さんが偶然目の前に立っておられ、びっくりしました。「初めまして^^」の(体面的には初めてですが)ご挨拶がちょっと面白く、笑ってしまった勢いでお調子に乗ってポンポン失言してしまい、大変失礼しました。

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  2. 東 賢太郎

    12/15/2016 | 12:43 AM Permalink

    お初にお目にかかりまして光栄です。あれは終わったボロディンがかなりいまいちで後半もラフ2番で気が乗らず帰ろうかな?と迷っていたところでした。おかげさまでそのままポゴ氏を聞くことになりました。いろいろ楽しいご意見、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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