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ブラピのカミングアウト

2013 MAY 31 2:02:55 am by 東 賢太郎

ブラッド・ピットが雑誌のインタビューで「人の顔が覚えられない」と発言して話題になっています。それを相貌失認ということを初めて知りました。

僕も50歳をこえてから覚えが悪くなったし、映画の登場人物が覚えづらくてストーリーがわかりにくい、これも洋ものの場合けっこうありますね。外国人の顔はちょっとわかりにくいことがあります。顔写真の65%以上の名前を言えないと相貌失認と判定するそうです。

そもそも僕が一部の色の見分けがつかないのと何が違うのかなという気もします。「分からない」というのは「見えない」のでなく「判らない」、つまり区別がつかないということです。相貌失認も顔だということはわかっても区別がつかないという点は似ています。俳優にとってそれは相当ハンディでしょうからゴッホの色弱説と同じようなインパクトがあったのかもしれませんね。

こういうことをカミングアウトするのは勇気がいります。ピット氏は周囲との関係が悪化するデメリットを考慮しての決断だったようですね。僕の場合、そう相手に伝えないとグラフやチャートが正確に読めないので仕方なかったのですが。ただ、そうして会社人生30年、僕は色が判りませんとお伝えして実は私もですと言われたのは2回しかありません。男子の5%はそのはずなので、そんなはずはありません。やはりなかなか言いづらいのかなと思います。

しかし、今けっこうはまっている哲学の認識論というものを知ると、所詮我々の知覚や認識というものは絶対的なものではなく相対的な現象に過ぎないとされているのです。難しい話は省きますが、要は脳内現象なので人それぞれといったところです。赤い色といってもそれがどう赤いかはその人しか知りません。隣の人が同じように赤いと見ているかどうかは誰にも判りません。

物の本によると、鳥類やは虫類はより色の識別ができたのが、ほ乳類になり猿に進化して夜行性の生活になると必要のない能力は捨てられました。当初の猿は赤緑色盲だったそうです。そこに突然変異で赤と緑を識別できる種が現れると、樹上生活で緑の葉の中から赤い木の実を探すのが速い彼らが繁殖において優勢になりました。その結果、彼らが人間に進化するまでの長い間に原種である赤緑色盲種は人口の5%まで淘汰されてしまったわけです。

ただなぜ全滅しなかったかというと、二足歩行、火の利用で樹上から地上に生活の本拠を変えたからです。地上では赤い木の実を速くさがすことだけでは生殖機会において優位には立てなくなったということでしょう。足が速かったり狩猟能力があったり、別な領域でより地上生活に適応していれば生存が可能になったと思われます。

こういう事実を知れば、僕のような5%の人は原種の子孫、95%の人は突然変異種の子孫に過ぎないことがわかります。5%は異常でも珍種でもない。肌の色が違うのと同じく、単に人種が違うだけです。人間界は95%種がインフラ構築しましたから,赤い実探しのような5%種に不利な部分ができてしまっているということです。その逆風をはねのけて生きてきた能力にむしろ自信を持ちなさい。僕は色弱の子たちにそう言ってあげたいと思います。ブラピが世界的俳優になれたのもそれかもしれないよと。

 

 

 

Categories:______世相に思う, ______自分とは, 徒然に, 自分について, 若者に教えたいこと

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