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閑話休題 -ジャズとモーツァルト-

2013 JUL 13 9:09:06 am by 東 賢太郎

 

 

2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365 第3楽章

キース・ジャレット (第1ピアノ)                                                 チック・コリア   (第2ピアノ)

 

「多くのピアニストはこの曲はこう弾きべきだという訓練しか受けていない」 (キース)

「第2楽章のテーマはまるでモーツァルトが即興してくれと言ってるみたいだ」 (チック)

 

(追記、3月10日)

 

クラシック音楽というのはゴールがある。あらかじめ設計され、手順も道筋も決まっていて、生生流転の行程を経るのだが最後はちゃんとそこへ連れて行ってくれる。この予定調和は安定したソリッドな気分を与えてくれるものだが、めんどうくさいと思うことが、ほんのたまにだけど、ある。そういうとき、僕はジャズを聴く。ジャズは Music to nowhere なのだ。どこにも行き先のないきままな旅みたいなものだ。

ジャズとなると僕のレパートリーは誠に貧弱なものであるが、はなはだ月並みだがこれが好きだ。

ビル・エヴァンス 「ワルツ・フォー・デビイ」 (Waltz for Debby)

この音楽を文字にしたり、もっと単純に、なにか感じたことを書いてみろといわれても僕にはむずかしい。なにも感じないわけじゃない。大学をなかばサボってニューヨークで夜な夜な遊びほけてた、あの自堕落な日々のメモリーがこれをきくとシャワーみたいに頭の中に降ってきて、いつのまにか肩の力がぬけている自分がいる。

そうすると、ラヴェルのバーボン・カクテルですねなんて訳のわからないことをつぶやいてジャズ好きの顰蹙(ひんしゅく)をかってしまいそうだ。アメリカが大好きだったくせに、クラシック音楽目線でヨーロッパびいきだった僕はあのころ、自分がなんだかわからなくなっていた。

その後にまた渡米して、結局はペンシルヴァニア大学の経営学修士というのが僕の最終学歴になったが、他人事みたいにあんまり実感がない。学位をとったというより、地獄の特訓から生還したぐらいのイメージだ。教室で毎日浴びた鉄砲玉みたいな英語のシャワー。あれが人生に影響しなくてなんだろう。あそこで教わって覚えた知識のようなことじゃなく、もっと脳みその深いところで僕は根っからアメリカナイズされたにちがいなく、ジャズを聴くとどこかわからないその部位に音がささる気がする。

東京大学でも僕は勉強しない子だったが、全米の秀才が集まるウォートン・スクールの強烈な洗礼を受けても生来のなまけ癖は治らなかった。病気だ。2年間、毎日いっしょに飲んでた興銀のMが、もっと勉強すりゃよかったよなあとまるで僕のせいのようにいうが、こっちだっていま後悔してる。どうも、ジャズはほろ苦い。

(こちらへどうぞ)

オスカー・ピーターソンを聴く(Oscar, the Great)

 

 

 

Categories:______モーツァルト, Jazz, クラシック音楽

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