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カントルーブ 「オーヴェルニュの歌」

2013 OCT 17 22:22:24 pm by 東 賢太郎

なごり惜しいのですがスペインを後にしましょう。今回からいよいよ南欧シリーズ<フランス編>に入ります。

ほとんどのクラシック好きの方は知っていて一般の方には知名度がほとんどない曲をご紹介します。「これmapが好きです」と言って嫌味にもならず、あっけっこう通だなと思われる曲です。パリから約400キロ離れたオーベルニュ地方(右)の首府はクレルモン・フェラン、周辺の重要都市はリオン、ヴィシーなどです。世界有数のタイヤメーカーであるミシュランの本社はここにあります。高原地帯で土着の文化が濃厚にあり、言葉もオック語という固有言語を持っています。スイスの山岳地帯でロマニッシュ語を話すサンモリッツあたりのイメージに近いでしょう。東京から400kmというと盛岡市、神戸市あたりですが、そこの住民が外国語をしゃべっているというのは想像がつきにくいですね。

この曲集はそのオック語で書かれています。ほとんどの人は(ひょっとしてパリッ子も)何を言っているかはわかりません。オーヴェルニュ地方に伝わる民謡をカントルーブが採譜してソプラノにオーケストラ伴奏をつけた曲なのでそうなっているのでしょう。この音楽はオーヴェルニュ地方の清涼な空気そのものであり、僕にとっては疲れた時の最高のいやし、精神の漢方薬でもあります。オーベルニュ地方の田園風景はこんなもののようです。

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初夏の陽だまりの中、この風景の中にいる気分になってください。そして、全身がリラックスしたら、これにのんびりと耳をかたむけてみて下さい。何も考えずに。

歌はフランスのソプラノ、ヴェロニク・ジャンスでした。ただただ美しいですね。今の2曲目が「バイレロ」(Bailero)といって、この全5集(27曲)からなる曲集の中でダントツに有名な曲ですので覚えておいてください。

次にそのバイレロをポルトガルのソプラノ、マリア・バヨで聴きましょう。

指揮者とオケが繊細ですね。声はジャンスよりコシがあり感情の起伏も大きいですが、とても曲想にマッチしていると思います。

バイレロの最後です。これを聴きください。

歌はイスラエルのネタニア・ダヴラツ。何という懐かしさ、純朴さでしょう。「うさぎ追いしかの山・・・」か新日本紀行か。オーケストラの木管の鄙びた味!あまりうまくないのに、そのほうがどこか良かったりする。民謡を完璧な合奏でやっても、大事な何かを失ってしまうのです。都会で疲れている僕たちに、それが人間らしいということだよといつも気づかせてくれます。

世界はオーヴェルニュといえばダヴラツ、ダヴラツといえばオーヴェルニュなのです。

ピエール・ド・ラ・ローシュ / スタジオ・オーケストラ   ネタニア・ダヴラツ(sop)

CDはこれです。僕の永遠の愛聴盤です。そして世界中のどこへ行っても名盤中の名盤と評価されているのです。言葉はいりません。41GYD8ABKRL._SL500_AA300_

 

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