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やだ、うそ、信じられな~い

2014 JUN 14 23:23:44 pm by 東 賢太郎

22年前の話です。夏の暑い日に課で残業してもう9時ぐらいだったでしょう。といってもほぼ日課のことで、その時間までメシ抜きというのもざらでした。国際金融部コーポレートファイナンス課長だった僕は「おい、今日はおしまいだ、みんなでなんか食べに行くぞー」。部下たちに声をかけると、「やったやった、東さん、焼き肉行きましょ」と大はしゃぎ。家族的な課でしたね。みんな机の引き出しに厳重に鍵をかけて大手町アーバンネットビルを出ると、困ったことにぱらぱらと大粒の雨が降りだしていました。「まいったね、天気予報も最近あたんないよなあ・・・」、というのは誰も傘を持っていなかったのです。

急な雨で大手町ビルの反対側路上のタクシー乗り場は満員です。どこもタクシーをつかまえる人であふれて車はなかなか来ません。前には5、6組も待っていて僕らは雨よけからはみ出してしまい、もうけっこうびしょ濡れです。30分以上も待たされてやっと我々の順番が来て車のドアが開いたその時です。横の方からひとりの若いOL風の活発そうな女性が何のためらいもなくさっと前に割りこんできました。そのあまりの自然な感じに驚いていると、挨拶に目を合わせるでもなく、何の説明もすみませんの断りもなく、我々を差し置いて車に乗り込もうとするではないですか。

「ちょっと待って、ちゃんと並んでくださいよ!」まず体で女性をブロックしたのは運動神経抜群ながら普段はおとなしいH君です。「あんた後ろに何人ならんでると思ってるの」、知性派紳士で女性に人気のI君も珍しく語気を荒げます。するとです。その24,5と思われる派手目な化粧の女性は勝気そうに我々4人をひとりひとり睨み付け、驚いたような顔をつくって大声でこういい放ったのです。

「やだー、うそー、信じられな~い」。

うーん、この女、目がどっか狂っとる・・・あっけにとられる東課長をしり目に、ついに堪忍袋の緒が切れた正義感のかたまりのK君、

「信じられないのはこっちの方だ、この**!」

**は余計でしたが誰が見ても正鵠を得ている極めて写実性の高い描写ではあり、4人はなにごともなく焼肉屋に向かったのでした。

こういうのを逆切れと呼ぶのはだいぶ後で知りましたが、この頃がこういう輩の出現のはしりだったでしょうか。何をしてもワタシは平気、悪くない、お母さんがそう言ってたワ、○子ちゃんはすごくかわいいし、男はみんな何でも許すわ、フフフ♡・・・お顔の表情がこういう感じですな。そこまで絶対の自信をこめて大きく勘違いできるのは天賦の才としか理解の仕様がありません。まあ男ぐらいで済んでいればかわいいものだが世間となるとそうもいかないでしょう。

この女性の父親は何をしていたんだろう、何でも許す男のひとりだったんだろうか。父性原理がない世の中というのは日本女性の本来の魅力まで奪ってしまいます。「あのー、すみません。大変勝手なことなのですが、さきほどから少し体調が悪くて・・・」とでもいえばまず正義漢のK君が黙っていたはずはなく、後ろの人にまでそう説明して「お大事に・・」と送り出したでしょう。万万が一にも30分後に医者でなく同じ焼肉屋に彼女の姿を見出したとしても、まあゆるせるかな。

逆切れはいけません。K君さえも放送禁止用語の**ぐらい言ってしまう。得るものはありません。まして同じ焼肉屋で見つかったら・・・人生を棒にふるかもしれません。

 

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