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ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団をきく

2015 FEB 21 22:22:24 pm by 東 賢太郎

N響できいて注目したトゥガン・ソヒエフを聴きたかった。プロは、

ドビュッシー : 牧神の午後への前奏曲

サン=サーンス : ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 Op.61( Vn: ルノー・カプソン)

ムソルグスキー ( ラヴェル編曲 ) : 組曲 『 展覧会の絵 』

またまたサントリーホールであった。初めて聴いたオケだが、管楽器の音は昔のフランスの楽団とはずいぶん変わってユニバーサルなものに接近している。同じことは旧東独のオケやロシアにもいえるからフランスばかりではないが、僕らが若い頃にLPレコードで聴いたパリ音楽院のオケやドレスデン・シュターツ・カペッレの個性的な音色はもはや見事に消滅している。それを寂しいと思うのは古い人間だろうか。

失礼ながらパリはそうでもちょっと田舎のトゥールーズぐらいなら、という淡い期待は叶わなかった。だが、それはそれとして、牧神のフルート・ソロの柔らかい音はいきなり耳を惹きつけたから文句はない。まったりした質感が心地よいではないか。木管群はオーボエとピッコロ以外は全部女性だ。コンマスも美人の女性。こういう景色も悪くないが、やっぱり僕がヨーロッパに住んでいた頃はあんまり想定できないものだった。

特にうまいということもなく金管にミスもあったが、聞きすすむにつれオケ全体の特徴も冒頭のフルートと似て、弱音でふわっと立ち上がる時のまろやかな空気感が特徴だということがわかってくる。ソヒエフがそういう音造りをしていたのかもしれないが、カラヤンとベルリンフィルの音の立ち上がりを思い出した。

サン・サーンスは第2楽章がいいがトータルとしては僕は結局あまり夢中になれずに終わった曲だ。カプソンは音に芯がありながら柔らかく、音量も豊かで、ずっと聞いていたい魅力ある音色を持つ。アンコールはグルックの歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』の精霊の踊りからクライスラーが抜粋した「メロディ」と呼ばれるもの。僕はこのオペラにモーツァルトの「魔笛」に通じるものをたくさん感じるが、この曲は第2幕でパミーナが歌うハ短調のアリア「「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」 (Ach, ich fühl’s)にそっくりだ(和声まで)。無伴奏で弾いたカプソンの音は和声を髣髴とさせる倍音豊かな美音で、これは聞きものだった。

展覧会の絵は一転して管楽器がカラフルな色彩を発散し、ああやっぱりフランスのオケだと思った。古城のサクソフォーンはとろけるように美しかったし、ソヒエフのメリハリある指揮はソロを中心としたアンサンブルを室内楽的にうまく目立たせながら弦は常にバランスよく鳴らし、リズムのばねは強靭な推進力を持つという独特な運動神経を感じるものでN響とのプロコフィエフと共通するもの。ただ音楽が対位法的でなく、彼の面白さが充分聴けたわけではない。

アンコールのオペラ『カルメン』から第3幕への間奏曲 、またまた絶美のフルートとハープの合奏はうれしい。この音楽、対旋律に回ってからのフルートの音選びなど、どうということなく聞き流してしまう部分なのだがいつ聴いても頭が下がる。そうそれしかありえないという音を辿っている。ビゼーの作曲の技は本当に凄い!この演奏は聞きものだった。最後はやはりカルメンの第1幕への前奏曲。これまた颯爽と速めのテンポで走る「弦の発音の良さ」に舌を巻く。うーん、これぞビゼー、これぞカルメンでなないか。聞き飽きた展覧会よりこっちを全部やって欲しかったかな。今度はソヒエフでカルメンを全曲聴いてみたくなってしまった。

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Categories:______ドビッシー, ______ビゼー, ______演奏会の感想, クラシック音楽

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