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ラグビー日本代表と日本の国会議員

2015 SEP 22 15:15:43 pm by 東 賢太郎

 

ラグビー日本代表がワールドカップで南アフリカを倒すというのがどれぐらい大変なことか僕にはわからないが、ワールドカップでは2度の優勝を飾り過去4敗しかしていない強豪を、1991年大会でジンバブエから奪った1勝のみという世界ラグビー弱小国が倒したのは事実だ。すばらしい快挙と思う。

小よく大を制す、柔よく剛を制す、牛若丸と弁慶、桶狭間、ゼロ戦、小兵力士、小さな大投手・・・日本人はこれが好きだ。奇襲、俊敏性、一点突破、視点の転換、柔軟性、地の利・時の利・人の利、攻めの姿勢、小に利あり、諦めない、こういう言葉をちりばめれば中小企業セミナーでは満足して帰ってもらえるそうだ。

ジャイアントキリングという英語があるぐらい、スポーツの世界ではどこでも、そういうもので「小」が「大」に勝てるケースは実はほとんどない。それほどフィジカルというのは厚い壁であると信じていたので記事を読んでみると、「今回の大会では31名の代表メンバーのうち、外国出身の選手が約3分の1を占めました」とあった。

ラグビーW杯では出生地や国籍の別に拘らず、日本に3年以上居住している選手には、日本代表としてプレーする資格が与えられるそうだ。このルールだとオリンピックやサッカーは世界地図が変わるかもしれない。

ちなみにプロサッカー界では欧州を中心に外国人枠の議論が続いていて、「6+5制度」(スタメンで外人は5人まで)、EU加盟国の国籍はOK、EFTA加盟国はOK、自国人が最低12人など国によりまちまちだ。純血主義だけでなく就労ビザの発給という労働問題や移民問題もからんでいると思われる。

米国のプロ野球に外国人枠はないと言われているが、外国人はマイナーも入れた総数の10%まででメジャーに何人という縛りはなく、ハードルは米国籍の取得であって二重国籍でもよく、従って、実質ないに近いということだ。プロとW杯を同一には語れないが、プロの興業という側面を割り引いてもラグビーW杯の国籍基準はかなり開かれているといえるだろう。「国内」の定義が7つの海であったグローバリズムの元祖、大英帝国主義の競争原理の粋を見る思いがする。

かたや我が国だが、競技人口の減少から背に腹は代えられぬ大相撲は部屋 に1人の外国人が認められ、部屋数(54)の外人力士が幕内上位の大半という事態になった。純血よりレベル維持を図ったわけだがそれで入場観客数は維持できているから興業的には少なくとも成功だったし、「3年住めば国籍不問で日本人」というラグビーW杯基準に近い。野球、サッカーよりグローバルの最先端基準に近いとすらいえる。

「背に腹は代えられぬ」という事態こそ人も組織も国も進化させる。崖っぷちに立ってこそ人は悩み、策を練り、火事場の馬鹿力が出る。それをしなくても生きていける者は、それをした者に負けるのだ。これを「競争原理」という。それをしなくても生きていける者が支配する組織や国は、やがて亡びるか強国の属国になり下がる。なぜなら、日本国民がどう考えどういう道を選択しようと勝手だが、そんなこととは関係なく世界は競争原理で動いているからである。

「どうして2番じゃダメなんですか」と言った馬鹿がいる。はっきり書くが、この言葉を公人が吐いたのは大罪でありこんな者を永遠に許すべきではない。鎖国を辞め、資源がなく、人口が減り、周辺国が強大化する日本国は背に腹は代えられぬ崖っぷちにあるのであり、不断のクオリティー向上、つまり「1番を目ざすこと」でのみアイデンティティーが維持できるのである。市井の人の話をしているのではない、リーダーである国会議員の話だ。属国の負け犬精神をゆとり、やさしいと諭すのは属国になった方が居場所が増える連中自身のアイデンティティー維持以外の何物でもない。

ラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズHCはW杯終了後の退任が発表されている。にもかかわらず自身も選手も関係なく「1番を目ざすこと」に邁進している。ジョーンズはオーストラリア代表になったことはない。1番のプレーヤではなかったが、1番を狙えという精神を持ち続け、リーダとしてやるべき仕事をしている。2番でいいやと思ったら相手ゴール前でPKを得ても同点のPGを狙わず、逆転を求めて攻めるという判断はなかった。「ワールドカップには勝ちに来たので、同点のPGを狙うという頭はなかった」というリーチ マイケル主将の言葉もなかったのである。

国会というのは法律を作るところだ。2番でいいでしょという連中が作った法律はジョーンズHCやリーチ マイケルをやがて殺すだろう。先般の世にもおぞましく恥ずかしい「国会戦術」の数々は涙ぐましいパフォーマンスと知ってはいても、彼らのアイデンティティーそのものがばっくりと露呈してしまいむしろ逆効果を心配してあげたくなるほどだ。昨今、スポーツ界においてすら「オリンピックを楽しみました」などというのが許され、結果でなくプロセスを評価しようなどという声もある。ゆとり、やさしさは大切だが、それができるのは1番になってこそであり、自分も弱くなって弱者を救いましょうという秘策は世界のどこにも存在しないのである。

ラグビー日本代表に乾杯!

 

 

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