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坂東玉三郎、片岡仁左衛門を堪能

2015 OCT 23 21:21:30 pm by 東 賢太郎

僕は新しいものをマスターしようという時はいつも最上級からトライする主義です。ワインも安物を千本飲むよりロマネコンティやペトリュスを一本飲んだ方が、世界の通が良いとする定義が一発でわかって実は安くつきます。

歌舞伎の至宝といわれる五代目坂東玉三郎は名前ぐらいは知ってましたが、女方の大御所だ程度のことでありました。

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しげ森のおかあさんがこれのために上京され、見とくようにということで芸術祭十月大歌舞伎(歌舞伎座)に参ったのでした。お席は中村時蔵さんからということで中央三列目。おかあさんには奥方からごあいさつもあり、これはお茶屋さんの力です。いろいろ教わりました。こういうものに入門しようと思ったら詳しい人に教わるのが一番です。まあ猫に小判の感もありましたが。

またこの道に精通されておられる阿曽さんからは

『すでに「人間国宝」の坂東玉三郎、そして、「孝玉コンビ」と謳われた、片岡孝夫である片岡仁左衛門、このお二人を充分堪能されてください』

とわかり易いメールをいただき、なるほどロマネコンティ、ペトリュスなんだと事前に知りました。おかげで充分堪能いたしました。御礼申し上げます。

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)「阿古屋」遊君阿古屋が玉三郎、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)「髪結新三」加賀屋藤兵衛が片岡仁左衛門。芸につきあれこれ書くのはお恥ずかしいので控えますが、素人目にも圧巻でございました。

単純に驚いたのは阿古屋は琴、三味線、胡弓を弾くのですが、玉三郎がどれも見事に演奏したこと。ストーリー上は裁判官である秩父庄司重忠が阿古屋に楽器を奏でさせてその音色で真実か嘘か判断するということ。だから音は地方さんが出して阿古屋は弾くふりするだけと思っていたのですが独奏、合奏とも難なくこなされてました。これが難役で玉三郎しかできないのはそのためのようです。

髪結新三」の元ねたは江戸時代の日本橋界隈での実話であり、大岡越前が裁いた。それが人形浄瑠璃になり歌舞伎になったそうですが、大変面白かったです。また観たい。お席が良かったものだから見事な舞台装置と役者たちに完全に引きこまれ、その時代の永代橋、閻魔橋にワープしたかのよう。僕のような歴史好きで擬似江戸体験したい人に歌舞伎はたまらないものだという発見もございました。

髪結いや蕎麦屋や長屋の様子が生き生きと実感できたのもしかり。マイクロフォンの説明だと江戸時代をとおして蕎麦はほぼ16文だったそうでそれを現代のラーメン代として換算すると一両が10万円だそうです。だから娘を誘拐した髪結新三が要求した身代金一本(百両)は1千万円で、それを大家の長兵衛に15両(150万円)に値切られてしまった、という話なんですね。

こういう人情話に、これじゃあっしの立つ瀬がねえ、どうか見逃してやっておくんなせえ、あんまりじゃござんせんか、のような江戸言葉が出てきますが、人情というものが社会を律するルールだったことがよく理解できます。当時世界最大の人口の都市だった江戸ですが、火事と喧嘩はあってもそれなりにうまく回っていたのはそこに秘密があったんでしょうか。こういうのは教科書や本じゃわかりません。

それは薄まったとはいえ現代の我々にも引き継がれていますが、明治時代以来の西洋式である法の支配とはズレがあります。感情的にはおかしいが法律ではこうなる、という部分にそれが出てきますね。新三の誘拐もそうだし大親分の弥太五郎源七はメンツをつぶしたというかどで新三を殺してしまう。それが犯罪だということでもなく平然と歌舞伎になって皆が納得しているのだから人情や面子のほうが法に勝っていたのでしょう。

雑多な感想になりますが、あまりに新しいことずくめで圧倒されて終わったというのが正直な所。クラシック音楽の世界でいうならカラヤンが指揮してホロヴィッツが弾いたというクラスの物だったのでしょう、おそらく・・・。しげ森さんには御手引きいただきまして感謝いたします。kabujiza

 

ラヴェルと玉三郎

 

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