Sonar Members Club No.1

since September 2012

日本の教育がBecause I’m stupid.である話

2016 DEC 28 18:18:05 pm by 東 賢太郎

きのうは取引先と忘年会がわりのランチをしたが、ニューヨークで証券営業をした方の失敗談?が面白かった。お客さんから日本株の発注がWhy don’t you buy~と電話で来たが、それが買ってくれという意味とわからず他社に取られてしまったという。

そうですか、僕もロンドンでI would’t mind accepting your offer.と来てわからなかったですよという話になった。同じ意味だが英米でこうもちがう。僕は米語を覚えてロンドンに赴任したが、それをしゃべるとIt’s a sort of English,  Ken.とお客さんにやんわりたしなめられた。それは英語じゃない、英語「みたいなもん」だ、クィーンズをしゃべんなさいというお薦めだ。

英国で僕がKenになるのには半年かかった。それまではMr.Azumaだ。ドイツだとあなた(you)のSieがうちとけるとduになるが、そんなものである。すると人間関係はがらりと変わるが、こればっかりはミスターの関係をいくら続けていてもわからない。それが正論かどうかはともかく、発音を直してくれた英国人はKenになったから親身にそうしてくれたのである。

かたや米国だと会って5秒(自己紹介)でKenである。米国での人間関係の特質を一言で表すとなればこれをあげる。一面浅はかだが、誰とでも付き合いますよと心を開く姿勢はポジティブで、これはこれで好きだ。5秒たってもMr.~でいくとI would’t mind ~みたいだし、エレベーターで目があってニコッとしない奴みたいに見られそうだ(日本ならニコの方が変態だが)。かたや、英国のアッパーにWhy don’t you buy~は僕はとてもはしたなくて言えない。難しいものだ。

学校ではみなさん大方が「Whyと来たらbecause」と教わっただろう。だからWhy don’t you ときたらBecause~という基本英文700選かなんかの構文を頭が条件反射で探しにいってしまい、何も出なくなる。出るわけがない、買ってくれと言ってるだけなんだがこれを意味どおり「どうしてお前は買わないんだ?理由を述べよ」なんてとってしまうと、「はあ?」だ。そして気まずい沈黙となる(電話だからとても白ける)。そこで構文通りに思いつく文章はBecause I’m stupid.ぐらいだ。

これが今度は算数の話に飛んだ。小数の足し算で答えが9であるところを9.0と書いて減点になった有名な話だ。数学のノーベル賞であるフィールズ賞受賞者の森 重文先生が「なるべく簡略に答えよという条件があればそうですが、そうでないならばおかしいですね」とTVで言っていた。

もっとひどいのは、直方体の体積は縦・横・高さの順番で式を書いて掛けないと答えは合ってるのにバッテンらしいことだ。絶句である。これで×を食らった子は何を反省すればいいんだろう。「構文通りだ、よろしい」と Because I’m stupid. に〇がついてるぐらいにstupidである。

こういう教育で、我が国は皆勤賞で遅刻もしないが仕事もできない人間を大量に作っているような気がしてならない。いや僕ごときがそんな不遜なことを言ってはいけないだろう。森先生はガウスが1から100までの整数の合計を足す順番を変えて求めた例を引いて、「こういう発想が育ちませんね」とやわらかく否定された。

紋切型の掛ける順番⇒ガウス、とパッと類推する。数学は解法の類推力(似たもの探し力)を鍛えてくれる。これは問題解決の道具が豊富ということを意味するから実社会でビジネスで非常にパワフルな能力である。相手がそういう思考をできる人かどうかもすぐわかる。そうでない人には飛躍になるから説明がめんどうくさいが、そうしないと理解されないからそのための別種の説明方法があることを学ぶ必要がある。その簡素で無駄のない美しい解を森先生はTVで即座にエレガントに披露されたというわけだ。

次女はインターナショナルスクールに通ったのは小学校だけだったが英語は僕よりうまい。それほど子供時分の教育は大事である。掛け算の順番にまで注意して〇をもらいましょうと教えることに何の意味があるのか、物事はもっと単純な本質によって決められるべきと思うし、そうなれば教育のクオリティはいい学校に入るだけがモノサシではないという結論に行き着くだろう。よくいわれることだが、問題解決力、特に答えのない問題のそれだという意見に賛成だ。

 

わかる人、わからない人

 

Yahoo、Googleからお入りの皆様

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

Categories:若者に教えたいこと

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊