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シベリウスの7番はイエスタディである

2018 NOV 18 0:00:09 am by 東 賢太郎

シベリウスの神々しい7番は最も好きな交響曲の一つで、ロンドンで買ったこのスコアを持って新幹線によく乗った。全曲を記憶しているが、目視で正確にたどるのはとても難しいと思う。というのは、完全な和声音楽なのに精妙かつ意外感のある転調と非和声音がそこかしこに散りばめられていて、絶対音感のない素人耳は難所でどうしても迷子になってしまう。ところが悔しいことにそこがこの曲の魅力なのであって、正解にたどり着くまでくそっと繰り返す羽目になる。そうこう苦労しているうちに名古屋ぐらいにはあっという間についてしまうという寸法だ。

あのトロンボーン・ソロを導く感動的なヴィオラのメロディー、2度目にそれが出てくる2番の終楽章に似た部分から宇宙のこだまのような終結に至る部分は心で何度演奏しても飽きるということがない。いや、気に食わないへたくそな演奏なんかより自分のハートの中で鳴らした方が絶対にいい。

そうやってあのソロのところに来るとホルンでもいいなといつも思うのだが(ブラームスならそうしただろうか)やっぱりトロンボーンなんだとなる。草稿にはこのメロディーに “Aino” と書いてある。奥さんの名だ。彼は山荘の名もそうしたしシューマンと同じことをしている。確かにそれに値する素晴らしいメロディーで、誰も一度聴いたら忘れないだろう。僕は最初これがビートルズの「イエスタディ」だなと思った。

どこがというと最初の「レ」だ。これは楽理で倚音(いおん)というやつで、ポール・マッカートニーが歌う出だし、「イエス」がレで「タデー」が和声音のドに戻るが、このレもそうなのだ。どちらもいきなり倚音で始まるというのが強烈なインパクトで耳に残る。

ちなみに酒豪のシベリウスは7番を書いたころは毎日ウィスキーびたりで「音符を書く手を安定させるためだ」と主張していたらしい。ということは飲まないとペンがぶるぶる震えたわけでむしろアル中なわけだが、それでドがレに行っちまったんだろうか(笑)。ちなみにイエスタディのFの次のEm7は酔っぱらって弾き間違えたら「けっこういいじゃん」になったと知人に聞いた。

7番のこの倚音は、最後の最後でまた響き、またまた強烈なインパクトを与えてくれる。ピアノ譜でこうだ。

この最後のページは何度聴いても心奪われる。レ(倚音)⇒ドと「解決」したと思ったら今度は行き過ぎてシ(また倚音)になり、最後にとうとう運命の最終到達点のドに落ち着くわけである。この安堵感、すべての苦悩を超えて広大な宇宙の「在るべき所」に収まった収束感覚は絶対無比のものだ。こうしてシベリウスは交響曲の旅を終えたのであり、そこから33年も生きたがついに第8番は現れなかった。

 

オッコ・カム指揮ラハティ響のシベリウス5-7番を聴く

シベリウス 「アンダンテ・フェスティーヴォ」とフリーメイソン

 

 

 

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