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財務省キャリアに東大法学部ゼロ

2019 APR 6 0:00:59 am by 東 賢太郎

「おい、財務省キャリア入省に東大法学部がゼロだったらしい、財界に激震が走ってるぞ」と一昨日ある経済団体トップの方からききました。逆に増えたのはコンサル系、ファンド系だそうです。そのど真ん中にいて言うのも些か自虐的ですが、「日本の屋台骨が年々おかしくなってきましたね」とお答えしました。

そのココロはというと、「万人は万人に対して狼」(または「万人の万人に対する闘争」)という自然状態を克服するため社会的な契約を結んで国家に主権を委譲している(ホッブズ「リヴァイアサン」)と、単なる教養やお題目としてではなく、真剣に考えているからです(僕の人生哲学(イギリス経験論)の起源)。僕は政治、行政にプロフェッションとしての関心も能力もないので、平穏な市民生活を送れるよう狼、闘争から守ってもらうために政府と官庁に税金を納め、優秀な人たちにその責務を負っていただき、それならば主権が制約されることをやむなしという契約をしているのだという観念をもって日本国で生きています。だから税金が下がらないのに官僚の質が劣化するとしたら俄には認容し難いのは当然のことなわけです。

ホッブス『リヴァイアサン』表扉

官邸主導も結構だが、官僚の頂点の財務省でそのまた頂点の次官や局長にまで登りつめても政治の人身御供でああいうことになり、お茶の間の下世話な勧善懲悪ネタに飢えたマスコミの格好の餌食になって国民の理解も得られないどころか悪玉として記憶されてしまう。苦労して勉学しながら入省した挙句に大臣が人の税金で勉強したまで言ってくれる。 後輩たちは優秀なんです。たくさんの選択肢をもっています。想像するに、漢字も読めない上司にそんなことを言われて辞書に書いてない人生航路を行くのはアホらしい、それならば税金を払って守ってもらう側で能力を活かしたいということなのでしょうし、そう考えるならそれがいいよ、税金をたくさん払って「お釣りはいりません」というぐらいに国と貸し借りない人生を歩めばいいよと先輩として賛意を送りたい。読んでない人は「リヴァイアサン」をお読みなさい。

森友決裁文書改ざん問題の真相

昨日は韓国のソウルで中村修二先生にファイナンスのコンサルとして助言を申し上げていましたが、人の税金で勉強するのがいかんなら「税金を1円ももらわないでノーベル賞を取ったのは私だけです」との中村先生のお言葉をここでお伝えするので官邸は麻生大臣の論旨を真摯に受け止め、先生に国民栄誉賞を検討すべきでないか。ところがその先生は「日本に事実に基づいた正義など存在しない、正義は既得権者の保護という落としどころありきで決まり、彼らはやったもん勝ちだ」と本質を看破してすでに米国市民になっておられ、「茹でガエルの日本は一度ぶっ壊れて沈没したほうが長い目で見ればいい、そうしないといずれ茹であがって滅びる」と愛国心、老婆心でおっしゃる。世界の熾烈な競争環境にいる者は皆同じ気持ちで、鈴木一朗氏(イチロー)が茹でガエルのNPBの栄誉も国民栄誉賞もいらないのも同根のことではないかと拝察しております。

池田信夫氏が「『葉隠』で印象的なのは「釈迦も孔子も鍋島家に仕官しなかったので家風に合わない」という言葉だ。ここでは佐賀藩(鍋島家)が、仏教や儒教などの普遍的な価値を超える絶対的な存在だった」と書いています。日本人の精神構造を考えるとき武士道は避けて通れませんが、それは影響のプロセスにおいて韓国の「国民情緒法」とファンクションはあまり変わらない。韓国のそれは、国民が騒げば、そんな法律はないが時に憲法にも優先して大統領や財閥トップが有罪になってしまうinvisible law(見えない法)ですが、「家風に合わない」で真理や正義を葬れる国なら韓国を法治国家にあらずと笑うことはできないでしょう。

普遍的な価値を超えた存在」で日本国の「家風」を決める存在になろうとしているように見える官邸の主導という政治は、平成初期に雲霞のように大量発生して大企業の根幹部門に巣くい、会社を軒並みダメにした茹でガエルの集団に乗っかって命脈を保っているだけであり、お湯が熱くなってきて大きめのカエルが次々と茹であがってきたのが平成という世でした。その間に時価総額という企業の通信簿で日本の全大企業は米中はおろか韓国にも大負けであり、これは野球なら20対0のノーヒットノーラン負けぐらいの大屈辱敗戦なのに「株価なんて尺度は家風に合わない」という空気がいまさらのように残っている。個社として本気でそう思うなら構わないがそれならば自ら上場廃止すべきであって、それもしない。つまりなぜ株式を公開しているか意味すら分かっていない。

買収というのは、レバレッジド・バイアウトを除けば原則として時価総額の大が小を食うものです。捕食者か獲物かは株価で決まると言って過言でない。ある朝に出社したら会社は食われて今日から外資系でしたという可能性は世界に普遍的に存在するし、そうなっても個人としては生きていける人たちはそれを何とも思っていないのですが、それを「リスク」だと一番思わなくてはいけないのはサラリーマン社長を含むそうでない社員であり、皮肉なことに、「家風にこだわっている茹でガエル」であり、「株を理解していない人たち」なのです。カルロス・ゴーン事件の本質はそこというアングルでマスコミはほとんど報じないが、彼らは茹でガエルの代表選手で放送法の外国人株式保有規制(20%)でそれが起きえない業界に生息する最も感度の低い人たちなのです。そんな低次元の報道ばかり見ていれば、英国で移民に職を奪われたくない一心でBrexitにこぞって賛成投票したらホンダが工場移転して自分が失業しましたというようなことがあり得るのが日本の現実です。

後輩たちにアドヴァイスするとすれば、日本というplay groundはこれから悪くはないよ、ただ良いとすればそれは外資にとっても同じく良いよ、だから引きこもりの茹でガエルはいずれ全部死ぬしそこにいる君も死ぬよ、世界の最先端技術(deep tech)にフォーカスしたほうがいいよ、大企業がへたる環境は隙間ができるということだから君らの世代には大チャンスだよ、という簡単なことです。コンサル、ファンドがいいよとは言いませんが、有能な人がビジネス界に入ってくるのはウェルカムだ、皆さんの「未来アンテナ」は結構いい線いってるな、日本のビジネスパースンの未来はずいぶん明るいなという印象を持ちました。

 

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Categories:______気づき, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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