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歓喜のリンデマン再臨

2026 JUL 24 15:15:32 pm by 東 賢太郎

ダイナミック・オーディオのSさんからメールがありました。「お預かりしてるリンデマン820ですが、SACDは残念なから部品がありませんがCDのみの再生は可能です」。リンデマンはドイツのCDプレーヤーです。もう20年も前のこと、自宅であれこれ聴き比べさせてもらい、一目惚れで決めた愛着ある品です。半年ぐらい前に電源が入らなくなってしまい、「メーカーがもう倒産してしまっていてどこへ頼んでも断られました」と言う返事をもらった時はお先真っ暗。仕方なしに買い替えようと、とりあえず代用品でまかなっていたのですが音質の差は歴然だったのです。もう弔いの気持ちになっていたのが復活!

Sさんが届けてくれ、まずはレファレンスとしてKenny Barronのアルバム「Night & The City」を。いや、良かった、戻ってる・・・劇的な差です。ライブ録音のピアノがたまりません。楽器の “物体感” がスピーカーから現れ、触れればほんの少しざらっとした触感がわかりそうな音像が骨太で大きくなり、絹ごし豆腐のようにアナログ的なのに芯がある。単体でもそういう傾向なんでしょうが、僕は世界最高のプリと評価してるブルメスターを通しているのでそれが倍加された印象です。いや、ドイツのメカのこだわりはすごい。次いでかけたクルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のエロイカ。いやいやこれぞドイツの音ですよ。本物のベートーベンにちょっと疲れてた僕も生き返りました。

このメーカーが倒産。まずSACDにコストかけて勝負に出たのが失敗。ストリーミングが隆盛になって同じフォーマット内の進化は霞んで価格倒れになった。オーディオ業界は腕の良い技術者もAIに流れてると聞くし、かつてのLPとCDの関係にあるのかもしれません。マクロ的にはリアルとオンラインの戦いで、オールドメディアと同様にリアルは分が悪い。でも僕はモノを所有しないのはだめですね。テレビがオンディマンドになるのは結構、元から番組は所有してませんからね。でもオーディオの音源がそれってのはいけません、所有してるって満足感は重い。だからそれに深い愛着がわくという因果関係も重大です。引っ越すと飼えなくなるからペットもそうなるかもと聞いてますが、レンタル猫なんてそんなのはありえません。まあいずれ彼氏も彼女も旦那も奥さんもそうなるのかもしれないがもうその時はいないでしょう。

そういえば、これも溺愛品のパワーアンプStratosのメーカー、米国のホヴランドも倒産。なんでだ?不条理としか思えません。発売時にオーディオ評論家の菅野氏が手放しで誉めながらも「でもこれは日本であまり売れないのかな」とステレオ誌の記事で半ばあきらめのタッチで独白してたっけ。この発言だけでも、心から氏はプロだと思います。そう。日本のオーディオマニアには「HiFiっぽい音」こそ大事で、こういうナチュラル本格派は500万も払ったのに普通の音じゃないかとなっちまうらしいのです。これは野球に例えるなら、回転のいい伸びるストレートなんです。150キロ出るとか出ないとか数字じゃなく、130代でもゾーンで空振りが取れる。自分もそれにこだわってたし、フォークだシンカーだナックルだってにぎやかなのね、ああいうピッチャーは好みじゃないんでいくら防御率良くても全然興味なし。そっちが日本のオーディオマニアの世界です。これ、美学なんで理由も理屈もないです。

これも書きましたが、日本で最初の客だったのですぐにホヴランドのCEOからお礼の手紙が届きました。でも問題は中身でね、どうして僕が “オーディオマニア” じゃないと分かったのかは知らないし、感想を伝えたわけでもないんですが、買ってくれてありがとうだけじゃない、わかってほしいところをわかってくれてありがとう、どうしても伝えたいの趣旨だったんです。同好の士と認め合ったということでね、こういうのが一番うれしいんです。子供の時、みんなおもちゃは飛行機、船、車で電車は少なく、いても安っぽいプラレールみたいなどうでもいいやつで、鉄製の電車一本槍ってのは自分しかおらず寂しい思いをしたのを思い出しました。CEOは一度お会いしてみたいものです。

まだ2日だからあまりきいてませんが、とりあえずマルク・スーストロ指揮ボン・ベートーヴェン・ホール管弦楽団のドビッシー/ラヴェル、シノーポリ指揮ドレスデン・シュターツカペレのシューマン3番、アラウのベートーベン月光・田園ソナタ、モーツァルト生家のピアノフォルテによるアンドラーシュ・シフのモーツァルト集を。シノーポリのライン、あんまり印象なかったけど見直しました、これいいですよ。週末は時間があるのでオペラをいきます。本来はサバリッシュかレヴァインでリングが魅力ありますが、ワーグナーはいま気分的にちょっと重い。モーツァルトもいいけど、ここはヤナーチェクかな。

 

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