Sonar Members Club No.1

カテゴリー: ソナーの仕事について

指揮者は何をしているか(野村とみずほの視点から)

2019 JUN 16 0:00:34 am by 東 賢太郎

オーケストラの指揮者がポディウムで棒を振って何をしているか、やったことないので想像もつかないが、証券会社の集団を指揮することは30年やってきた。野村からみずほに移籍させていただいた時はそのキャリアの途中であり、120名の集団をいきなり指揮しろということだった。すでに500人を指揮していたから人数はどうということもない、問題は、みずほ証券は証券会社ではあるが部下になる人ほぼ全員が銀行出身者であることだった。よそ者の指揮棒についてきてくれるとは一概に信じ難いという不安があった。

当時のみずほ証券はというと、株式営業部門だけは野村出身者の集団だった。そのため僕は巷ではそこへ行くと思われていたらしく、全然違うのだがそれが平穏だからあえて黙っていた。話はそういう風に静かに進んでおり、移籍が発表されるまでその部門は役員まで誰も知らなかったはずだ。資本市場グループというプライマリー部門に証券出身者を外から連れてこようとなると興銀、富士、第一勧銀3行の本丸の力学に関わるから色々あり、ご判断はコーポレート銀行頭取と横尾現ソナー会長(当時、みずほ証券常務)が下したと後日うかがった。

周囲の銀行員というと親父しかいなかった僕にとってもこの決断は度胸が要った。当時の心境はニューヨークからコロラドに電話がかかってきていきなりピッチャーをやれというこれと同じようなものだったが(野村證券・外村副社長からの電話)、この時は人生の岐路に立ったわけで体調が変になってしまい、神山先生にお世話になるのはそれがきっかけだった。満を持していざ着任してみると、ポツンと一人で座ってまるで学期中に他県からやってきた転校生みたいであり、空気になじめないことは我ながら滑稽ですらあった。一対一でも会議でも意図がうまく伝わらず、移籍は失敗と思うしかなかった。

それでも結果的になんとかなった理由は2つある。ひとつは “コンサートマスター” が優秀だったこと。彼は横尾さんの指示で僕にぴったりついて変に浮かないように調整してくれ、会議で意味不明の指揮棒を振ってもちゃんとコンマスがフォローの指示を出してくれた。もうひとつは銀行組織に特有の、証券会社にはあまりない「微細な感性」とでもいうものだ。これは何とも文字にならない。彼らには当たり前のようだが新鮮だった。上司になるとこちらの一挙手一投足が彼らのスタンダードにおいて観察、吟味される。何か月かすると、証券語は相変わらず通じないのに、彼らは僕の意図が見事にわかるようになった。これがいわゆるソンタクだろう。

この体験は痛烈で忘れられない。そういうマネジメント・ポストでの異動経験というと拠点長としてフランクフルト、チューリヒ、香港の異動はあった。しかしそれは同じ会社の中でのことだから行った先の部下はそれなりに僕がどういう人物かは既によく知っていた。別な会社となると話はまったく異なる。しかも銀行の人たちは証券業という新しい世界へ移動や転籍でやってきていて、そこにその世界のプロというふれこみで落下傘でやってきた僕への視線は厳しくもあり、お手並み拝見という冷ややかなものでもあった。

スザンナ・マルッキというフィンランドの女性指揮者のインタビューを見ていたら興味深い言葉があった。ニューヨーク・フィルハーモニーに客演して振ってみて、彼女はオーケストラに musical intelligence があるというのだ(9分13秒)。

想像でしかないが、みずほ証券という ”オーケストラ” を指揮して感じたものに似ているかもしれないと聞きながらふと思った。僕は部下に細かな指示をすることなくヒントやサジェスチョンだけを事前に与える。すると彼らはあるべきものを察して準備し、当日の顧客へのプレゼンでそれをもとに僕がインプロヴィゼーション(即興演奏)をするという相乗効果あるパターンがうまく回ってマンデートがとれるようになった。オーケストラの musical intelligence と彼女が表現したのはそういうものではないか。ただマルッキさんのケースと違って僕の場合は力不足で本領を発揮できてないから皆が銀行組織のインテリジェンスで支えてくれていたという形でそれがワークしていた。いま振り返ればやっぱり「客演の指揮」だった。

そう思っていたら先週、志あって他社に移籍したり起業をされている野村証券出身の元気な若手4名が訪ねてこられた。20~30代。話しているうちに懐かしくなってきて独演会となり結局2時間もお引止めすることになってしまった。別に後輩だからいつもそうなるわけではない、今回の皆さんは自分で新たな道を行く決断をされ退路を断っていて、その理由をひとりづつ伺ってなるほどと思った。いまどきの若者に転職、転社は普通なのだろうが、彼らは僕らのころだったら一番やめないタイプの人たちである。だから面白くなってしまったのだ。僕もおんなじで50まで大好きな野村にいた。会社が嫌いでやめたわけではない。25か50かはともかく思いは共通だったということだ。そういえば・・・こういうオーケストラを僕は20年も指揮していたのだ。

野村もみずほも、経営は一筋縄で行かない時代になっている。預金もローンも証券も投信も、同じものが大量に売れて会社が存続できることはもうなくなるだろう。情報はネットで取得でき、執行も安価だからだ。月並みな商品やどこでもあるインフラ使用に高い代金を払う人は確実に減っていくのは「ことの本質」であり、value for moneyを消費者が吟味する時代になってきているのだ。だから僕は販売、執行、情報提供はビジネスとして興味がないしやる気もまったくない。金融で生き残るのは intelligence を売るアドバイザーである。その能力のある人は「本物主義」であるのは当然のことであり、これが何を言っているのか分からない人はAIに淘汰される前に失業する。そして、そういう社員しかいない会社も、どんなに大きくても消滅するだろう。

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ますます大事な「ひとりで強い人」

2019 JUN 11 1:01:03 am by 東 賢太郎

今日は3つの重要なミーティングがあり、どれもが大きな案件であって有難い。ビジネスとしてというよりも、まずエキサイティングであることがだ。近年あまり興奮するということがないからであるが、そういうものを持ち込んでくれる人こそがエキサイティングなのだ。

最初のは中村修二先生の会社のアメリカ人幹部たちだ。じっと聞いていると面白い。何が?数字じゃない、とにかく前向きなことがである。見通しが良いのは知ってるがそこまでバラ色かといぶかしく「でも中国ビジネスはリスクだろ?」と茶々を入れてもへのかっぱ。素晴らしい。こうじゃなきゃあの国では商売なんてできない。でもきっと家でも女房にあの調子でアメリカンな明るい未来を語ってなきゃいけないんだろう、毎日のI love youは当然で。ご苦労様だねまあ俺には無理だ。

2つ目はサムライアートの島口さんらと打ち合わせ。3つ目は不動産ファンド関連でパートナーとなる人との打ち合わせと会食。とにかく熱い人ばかりである。何ができるかわからないがやらないと何も起きないのは確実だからやるしかないよね、というのを「チャレンジ精神」なんてクソみたいな名称で呼ぶ人たちにそういうことは逆立ちしてもできないだろう。僕らはそれをチャレンジなんて思ってない、何も起きない人生なんてまっぴらごめんで、長年そうやって生きているから呼吸するぐらいに当たり前のことだ。

こういう方々が来てくれるから僕も熱く生きられて日々楽しい。次々アイデアも出てくる。それがビジネスには何よりで、収益動機に走るとだめである。これは経験則だ。収益は結果であってそれを目指していると疲弊してしまう。面白く生きてるから続くのだ。来てくれるのは何かを期待してくれるからで、それに応えようという気になるし、今度はこっちが期待して相手がモチベーションを持ってくれる。このキャッチボールはお互いを予期せぬ高みに至らせてくれるのだ。

これからは限られた時間だし、そういう人々と深くつきあうことになるだろう。年齢、国籍、性別、学歴、職歴は関係なし。ひとことでいえば合う人。何時間話していてもあきないかどうか。これはまぎれもなくキャッチボールなのだ、うまい人からいいタマが返ってくると何球でも続く。比喩でなく実際に。前に何かで女子と話が合ったり意気投合した経験は皆無と書いたことがあるが近年僕も少し丸くなった。むしろビジネスに女性視点は不可欠とも思う。

つまり、英語はイランと書きながら英語を使わせてもらうが、energizeしてくれるなら僕にはすべからく大事な人なのだということがだんだんとわかってきた。それは「ひとりで強い人」、ショーペンハウエルがくだらない社交は時間の無駄、本は馬鹿になるから読むなと書いたように自信をもって生きられる人で、そこに年齢、国籍、性別、学歴、職歴など関係あろうはずもない。

 

キャッチボールと挨拶

 

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横尾会長ご就任について

2019 MAY 29 10:10:58 am by 東 賢太郎

ソナー・アドバイザーズ取締役に就任された横尾敬介会長とは15年のお付き合いとなります。お会いしたのは49才の時でした。齢50の節目を前に社外の多くの方の話を聞いてみようと思い、人の紹介で当時みずほ証券の常務だった会長に時間をいただく機会ができたのです。いろいろな思いがあってお会いしたのは事実ですがお世話になった野村證券を去る気があったわけではなく、僕のようなキャリアの人間を世間がどう評価をしているか知りたかったのです。

3社から熱心なお話をいただいたことはまったくの予想外でした。詳細は書けませんが、こと横尾会長のご提案に対しては「ありがたいことですが自信がありません」と正直にお答えしたのです。普通であればそこで終わった話ですが、会長から即座に返ってきた言葉は「関係ない。僕は君のことを良く知ってるんだよ」だったのです。士は己を知る者の為に死すではありませんが、その時の心境にこれほど深く刺さるものはなく、家内に決心を伝えました。

思い返すと、その時の野村證券の対応には感謝あるのみです。本社の部長が同業に移籍するのは尋常なことではありませんし、通常は許されないでしょうし、恐れていたことでしたが公になってアンチな記事が経済誌に出たのには後悔の念が強く浮かびました。覆水盆に返らずでどうすることもできませんでしたが、しかし野村はそんなことでびくともする会社ではありませんでした。その懐の深いカルチャーで育てていただいたことにさらなる誇りをいただきましたし、微力ながらも頑張ってきてよかったという敬意と共に去ることができたのです。

迎え入れて下さったみずほ証券にも同等の恩義があることは言うまでもありません。優秀な部下の皆さんに支えていただき、思っていた以上の重い仕事をいただき、キャリアのうちでも思い出に残るディールを力を合わせて達成できたのはエキサイティングな時間でした。書きながら夢の中の話のような気すらしていますが、それもこれも、そして念願叶ってソナーを起業できた自分も、あの時に横尾会長と会ってなければ無かったことです。ご縁は大事だと何度も書いてきましたが、これほど人生を左右したものはありません。

15年の時がたって、今度は僕が「横尾さんのことは良く知っています」と腹を割って申し上げる番になりました。三顧の礼を尽くしたとはいえ大みずほ証券の社長に僭越至極なことなのですが、そう思わせないお人柄がそうなった理由でもあり、何より、相性というものが誰がどんな理由があろうと割って入ることのできない肝心かなめの太い幹であることは初めてお会いしたあの時から感じたことでした。縁と運だけで来た人間ですからご一緒に会社の未来を切り開ける機会をいただき心強く、楽しみでもあります。

 

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ソナー・アドバイザーズHPの刷新について

2019 MAY 22 15:15:36 pm by 東 賢太郎

お知らせ

ソナー・アドバイザーズ株式会社は現行のホームページ(HP)を廃止し、新たなHPを公開致します。公開日は2019年5月25日(予定)です。業務に変更はありませんが、本年5月7日の横尾敬介会長の就任に伴う業容の拡大に添うためです。ブログおよびアクセス欄はこれをもって廃止します。ご理解を賜われますよう、よろしくお願い申し上げます。

東賢太郎

ソナー取締役会長に横尾敬介氏が就任

2019 MAY 7 22:22:06 pm by 東 賢太郎

 

お知らせ

ソナー・アドバイザーズ株式会社(東京都千代田区紀尾井町4-1)は、令和元年5月7日、取締役会長として横尾敬介氏(元みずほ証券株式会社 取締役社長)を迎えましたことをお知らせいたします。

代表取締役社長 東賢太郎

 

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やさしいおじさんになったつもり

2019 JAN 10 0:00:06 am by 東 賢太郎

さいきん毎日いろいろな方とお会いする機会がありもろもろの話をするが、気がついたことがある。若い人は僕がだんだん自説に熱が入ってくると威圧感を感じるらしいのだ。こっちはそんな気はなくても怖いといわれたこともある。サラリーマン時代ならわかる。でもいまはすごくやさしいおじさんになったつもりだったので、けっこうショックなのである。

香港時代、毎日きわめて機嫌が悪かったらしく、「笑っていてちょうどいいぐらいですよ」といわれて、それはそれでこたえた。飲みニュケーションの場になって初めて「笑われることもあるんですね」なんて女子社員に驚かれるのはずっと若いころからだし、顔が怖いのは仕方ないとあきらめていたわけだが、僕は集中力で仕事するタイプなので「はいってしまう」とどう見えようが周りのことは気にしない。

しかも、集中すると2倍速くやらないと気がすまず2倍短気だ。いまは1.1倍になっているが、それでもソナー案件を何度も助けてくれた税理士のN先生や弁護士のM先生、A先生、会計士のA先生、アナリストのM君など「アズマ経験値」(飲むと酒の肴)が高く、もちろん能力も高く、即座に臨戦態勢に入ってくれるおかげでなんとかもっている。N先生など、あっ、また始まったと楽しんでおられる風情すらある。

とにかく思いついたらすぐやるので、この先生方は外国から携帯に直で「あれを明朝までにやってくれ」、(会議中なのに)「この条文をすぐ直してくれ」なんてのを見舞われておられる。「遅い!ビジネスがわかってない!」なんて叱咤もしてしまった(無礼な話だ)。しかしそんなのは礼儀正しいほうで、昔の部下は例外なく机をぶったたいて怒鳴られている。それでもついてきてくれるなんて、誰でもできることでないのは僕が一番わかってる(僕なら無理だし)。それに最大の敬意を払っているからこそ、長いお付き合いになっているわけである。

僕は徹底した問題解決型人間である。ゴールに最短で達する方法以外になんら興味はない。それを僕以上の速度でできる人は世界にあまりいないと思ってる(野球のピッチャーと同じ、そうでもないとこの仕事はできない)。だから余計なことをしたりくだらない茶々が入ったりされるのが決定的にだめである。そんなの相手にする暇はない。こうやれば解ける、最短の解法はこれだ、という確信なしに僕が動くことはあり得ないし、それを瞬時に共有して持ち場持ち場で必要なことを判断してさっとやってほしい。やれば結局は僕が最後はやるのだから勝率は高く、その人は利益を手にするし成功体験も積める。

いろいろお付き合いが増えてきたし、本稿を読まれる方もおられるだろう。僕以上に上記のことができて収益があげられる方がおられれば、経歴、年齢、性別、国籍すべて不問で、ソナー・アドバイザーズの社長をいつでもおまかせしたい。ことし64になるので、65までには後継者を作らないといけない。なんでこんなに頑張ってきたか?2億円も借金しちまったからだ。返せないから必死に働いた。なまけものなのでケツに火がつかないと本気でやらないが、気がついたらそれもなくなった。相続は終わって無一文だし、事業の引継ぎをすれば断捨離も完了、背負うものがなくなる。

僕は50で野村をやめて55でサラリーマンをやめた。65というのは何ものかではあるだろう。そもそも税金で勉強させてもらって社費で留学させてもらって社会人としては自己都合で何回も「FA宣言」させていただいた。同世代でこんなにわがまました人間も珍しいだろうが、いま30代以下の人たちは、入った会社が終身雇用をキープしてくれるかどうか心配する以前に会社が消えているリスクを考えなくてはいけない。そんなの普通でしょという時代を生きていかなくてはならないから僕のやったことはいいシミュレーションだ。ポイントは、FA宣言は採ってくれるところがあるからできるということだ。つまり労働市場での自分のバリューをあげておかないといけない。

簡単だ。僕が社長をやってもらいたいと懇願するような人物になれば、はっきり書くが、いつFA宣言してもぜんぜんOK。経験者が言うのだから間違いない。「どうすればそうなれますか」と質問するような人は、かわいそうだがなれないからあきらめた方がいい。修行がいるのだ。その場はどこでもいい、与えられた仕事(嫌な仕事、難題であればあるほど良い)とがっぷり四つの真剣勝負をして最後まで完璧にやり遂げる。自分なりに解決する。責任を持つ。それを積み重ねる以外に手はない。解決しないまま何百年やっても、そんな経験は無意味。僕はそういう人は、とりあえず一回は叱る。それで気がつけば脈はあるし、それで治らなければもう二度と叱らない。なぜなら叱ると怖いといわれるし、できればやさしいおじさんでいたいからだ。

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ライオンキングの落日

2018 DEC 23 2:02:08 am by 東 賢太郎

きのう森嶌医師が診療で「音楽は聴いてますか」と質問してきた。「いや、ぜんぜん、その気にならないんでね」と答えながら、それがかつてドツボの兆候だったことを思い出した。彼は統合医療の専門家だから心療内科の意味合いからその質問をしたのかなと思う。「いまは猫ですよ、最高の癒しなんで」。とにかく疲れてる。

仕事はジャングルだと書いたが、そうかどうかは仕事による。僕の場合は「良い投資機会」というものが獲物に見立てられるわけで、だからジャングルの比喩がぴったりくるということにすぎない。株式投資に限らず良い投資機会というのは「嗅ぎ分ける」もので理屈ではない。理屈で分かるものは誰でもわかるからすでにほかの猛獣に食いつくされて骨だけになってるのである。

資本主義はジャングルを肯定する所に成り立っている。一匹のライオンが獲物を全部食ってもいい。ライオンもシマウマもエサは配給制なのが共産主義だ。強すぎのライオンにはレバノン系のフランス人であっても森林管制官からお咎(とが)めが入ったりする日本は和を貴しとなす配給制に親和性がある国民性であり、森林管制官が大勢飯を食えるという側面ですぐれて共産主義的である。かたや米国と中国は相反するように見えるが、ライオンが森林管制官をやっているという側面においては、実は国民性においては非常に資本主義的で似ている。だからこそトランプが習近平をライオンであると察知し、知的財産権にかかわる血みどろのトレード・バトルが発生しているのであり、草食獣の森林管制官がまじめにライオンを取り締まっている日本とはどちらも水と油の国なのである。

ジャングルで獲物を嗅ぎ分ける能力というのは、何度も書こうと思って断念してきた大きなテーマだ。この「嗅覚」は自分で起業して経営をしたり、他人がそれをした会社の株式に投資してそれを疑似体験するということに長年たずさわっていないとなかなか身に着くものではないからだ。どうやって習得しようとある人にはあるものだとしか書きようがない。ジャングルで獲物があれば、同じ嗅覚の他の動物も寄ってくる。基本はそれらはみなハイエナのような敵なのだが、そう思わずむしろ共同したほうが大物を得ることができるのは長年の知恵だ。

この共同ハンターは大事だ。ライオンのハンティングを見ればわかる。僕は長年それらに猫パンチをくらわしてしまう手癖が抜けなかったが、最近になって足腰が衰えてきたせいもあり、むしろそれを集めようと180度趣向をかえた。かといって一人で倒せそうもない大きな獲物を見つけていざっという刹那に、一緒にハントしません?なんて草食獣に声をかけるライオンはいない。しかも同じライオンでも得手不得手があるから選択が肝要である。ハントに役に立たないのに肉を食いに来るフリーライダーは邪魔なだけでいらない。

そのハントのリーダー格になれるかどうかが我が業界の死活問題であり、僕自身がリーダーで長年食ってるわけであり、その感覚は研ぎ澄まされているがそれ以外のことはあんまり興味もない。これを他業界の人にご説明するというのは猫が犬にマタタビの魅力を説くようなもので全く意味がない。証券会社にいた人でも99%は使い物にならない。だからこそ自分の嗅覚で僕に寄ってくる人は貴重なのだ。その人たちは社員になってもらう必要などない。そのほうがコストが安いし機動性は倍加する。それが「伊賀の影丸経営」なのだ。

大手総合証券の強みは引受業務の主幹事ができることで、引き受けた株を「玉(ぎょく)」と呼ぶがそれを握った者がそのディールの支配者、王者であり、いい玉を握れば同業者は放っておいても嗅覚ですり寄ってくる。それを力関係で配分して少しでも多く売らせるわけだ。そうやって需要が多くなれば売値は高くできて発行会社も喜ぶからまた主幹事ができるという寸法だ。そのメカニズムで「ライオンキング」になった者こそがジャングルの王者なのである。

聞けば簡単だがきれいごとの通じる世界ではない。ライオン同士の主従である。支配者になった経験のない者にはとうてい無理で逆に食い殺されるのが落ちだ。僕が野村證券という引受業界で世界のライオンキングであった会社の最盛期に海外でたっぷりと、食ったり食われたりの血みどろの戦闘経験を積ませていただいたのは天の恵みというしかない。向いていたとは思わないが、唯一ネコ科であったからハントの瞬発力では負けない。

しかしライオンにも落日はくる。今の案件が終わったらどうしよう。

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人生初の点滴をする

2018 DEC 22 8:08:25 am by 東 賢太郎

新幹線で名古屋を過ぎるとだんだん血が騒ぎだす。不破関を抜けると関ヶ原古戦場跡の文字が見え、雪を頂く伊吹山をのぞみながらやがて長浜の郊外を走る。ややあって、彦根の佐和山城跡が目に留まり、あれは石田三成の城だったかななどと考えているとあっという間に京都に着いてしまう。秀吉は長浜で初めて城主となり京都で人生の栄華を極めたが、新幹線に乗ってその行程がほんの2、30分で窓の外を通り過ぎるのを見たらなんと言っただろう。

戦国時代が面白いのは登場人物たちが実に生々しく人間くさいからだ。領土拡大の野望丸出しで合戦に明け暮れ、食うや食われるやの虚々実々の権謀術数が尽くされる。しかしこれを戦国時代と呼ぶなら武士が政権を取った鎌倉時代から実質は戦国時代である。世襲による長期安定政権を樹立した徳川家は実質は疑似天皇化していたが、武家政権ではあるゆえにその樹立以前のジャングル状態をあえて戦国と区別したと思われる。その理屈でいうなら中国に戦国時代でなかった時代などないだろう。

自分の企業を経営するのはジャングルで生きぬくことだ。ジャングルに盆も正月も土日も休日もない。ハワイでアロハシャツで休暇をとっても頭の中は安らがない。信長や秀吉がホリデーに1週間も温泉三昧で息抜きする姿なんて誰も思い浮かばないだろう。彼らの気持ちは給与所得者(社長であろうと)には絶対わからないということを僕も経験してみて初めてわかった。だからだろう、そうやってストレスフルな人生を送ったであろう武将たちが命を懸けた関ヶ原のあたりに来ると血が騒ぐのだ。兵どもが夢のあとの文学的な感慨ではなく同胞感からだ。

これを8年やってきた勤続疲労が出たのか、このところ心身とも調子がいまひとつだ。別にどこも痛くも痒くもないが、英語ならout of orderであり、もっとぴったりに書くなら、指は動いていても調律が狂ってるピアノを弾いているいやな感じだ。これを大阪の守口に行って、ラヴィータ・クリニックの森嶌先生に訴えた。「病気じゃないけど心身とも疲れていて万事がすっきりしない」。こんなのを治す薬はない。でも先生のドイツ製の精密な診断機器である「バイオ・レゾナンス」は数値で答えを出してくれる。だからここの予約は数週間待ちで常に満員御礼だ。

ものの30分の検査(といっても服を着たまま座ってるだけだ)で結果が出る。「全身の代謝、血行が弱ってます。”腎”が良くないから鼻づまり、耳鳴り、頻尿です。これは漢方で治ります。臓器のシグナルが全部弱く、脳細胞の膜がストレスにやられる可能性があります。東さん、かなりひどい数値ですね過去最悪の状態です、放っておいたらまずかったですよ」という診断データのリーディングになり、すぐに別室で2時間の点滴を受けろということになった。看護師さんがとんでくる。「すいません、63才なんですが点滴は人生初めてなんで」「ええっ?そんな方おられるんですね、初めてです」。そっちも初めてだったんだ。

「入院したことも、そもそも病院のベッドに寝たこともないです」。これは看護師さんにはひとかどの驚きだったらしく、血管が細いだのああだこうだうるさい患者に細心の注意で痛くなく注射をしてくれた。「これ押して歩いてもトイレに行かれても結構です」。名前は知らないが入院患者が点滴しながら歩く時の車輪がついて薬剤がぶら下がったあれだ、あれが装着されてしまう。とうとうその身になったかと感慨もひとしおなのは、いつもは大丈夫?と心配する側だったが、される側になってみると意外に悪いもんじゃないと思ったせいでもある。

なにせジャングルで戦う身だ。ライフルを構えているそばから「ところで五十肩のほうは最近どうだ?」なんて心配してくれる輩がいるはずがない。つまり入院経験がない以前にケアされた経験がないのだということに気がついた。そうか、はやいことジャングルはぬけだしてやさしくケアされて生きるのも一法だな、すぐボケるだろうけどなんて考える。打ったのは「αリボ酸+VB」と「高濃度ビタミンC」である。点滴しながら森嶌先生がベッドの横にやって来て、ある重要な相談をされた。実は今日来たのは患者としてではない、相談に乗ってくれと招かれたからで、でもそれがなければ点滴もしなかったわけで幸運だった。

内容はまだ書けないが、実現すれば画期的なアイデアである。こうやって血が騒ぐのはまだまだジャングルにいたいからでケア人生なんか到底無理ということも知る。どうやろうかと考えているうちにウトウトしてしまい、終わりましたと起こされたらなんとなくすっきりした感じはあった。帰りに処方されたのはツムラの漢方4種類(かなりの分量だ)、オメガー3、植物発酵由来LPS(リポポ酸)である。「先生、ありがと、来てよかったよ」お礼をいって日帰りしたが、新横浜で降りたのが失敗だった。22時なのに菊名までの混み方が半端じゃない。もう2度と使わない、品川にするぞ。

ソナーは自分が買わない株はすすめません

2018 DEC 1 15:15:37 pm by 東 賢太郎

「自分が買わない株はすすめません」というとたいがい嘘だろうという顔をされる。無理もない、そんな会社は僕の知る限りない。しかし、どんなに世の常識に反していようとそれは本当だ。ソナーは自分の資金でお客様と一緒に買って持っているし、そうでなくてはプロでないし、そういう株を探し出してくる自信があるし、実際できているから会社が8期目に入っている。宝を探す「ソナー探知機」になぞらえて「ソナー」を名のらせてもらっているのはそのためだ。

証券マンとしての僕の原点はこのブログにある。HPのブログ第1号だ。

ソナー・ファイル No1 (10倍になる株を探す楽しみ)

僕は金利が1%だ2%だ何ベーシスポイントだというボンド(債券)の世界には何の関心もない。そんな誤差みたいなものに感応するセンサーはついていない。株も1割2割上昇ではなく、10倍になるかなというのに出会うと初めてセンサーが作動し、全神経が集中する。これは理屈でない、本能的な反応である。自分はネコ科なのでハンティング感覚なのかなと思う。追っかけても疲れるだけだからだろう、ライオンはモグラやネズミは見向きもしない。そんなのを追っかけるのはハイエナでライオンではない。僕はハイエナは好きでない。

「10倍探し」は学校で習った技能ではない。生まれつき好きな嗜好のようなものであって野球やクラシック音楽と同じだ。しかしそこでは僕は素人だがこっちはちがう、というのは「好き」の度合いがちがうからで24時間寝ても覚めてもそれを考えてるわけだが苦痛と思ったことは一度もない。野球や音楽でそれは無理である。やり直せるなら大学は不要で高卒で野村に入りたい。東大やウォートンで習ったことは趣味だ、10倍探しには全く不要であった。野村と他は比べものにもならない、野村でないとだめだ。

ソナーのHPをご覧になって立派な経営理念ですねなどと言って下さる方があるが、あんまりそう思っていない。ハンターとして獲物を捕らえる自信あります、それに便乗(共同投資)しませんか?という経営だから理念というほど立派でもなく泥臭い。血の匂いすら意識すると書けば、まず99%の方は理解できないだろう。それが「ソナーは自分が買わない株はすすめません」の意味であり、経営のコミットメントなのだから嘘でない。並の会社のHPにある芳香剤の匂いのする美辞麗句とはちょっとわけが違う。

なぜ便乗者が必要か。まだ投資資金が少ないから獲物のサイズが限られてしまう。そうなるとハイエナになるしかないがモグラやネズミは10倍にならない。だから「仲間」が必要なのだ。ただし僕は買収する気はない。経営リスクを負う気はないからだ。「買収者に近い発想と分析」で対象を選別し、モノが言える程度には株を持って経営はあまり口出ししない。100%取得した社のCEOを呼んで「君の定年退職は100歳だ」と告げるウォーレン・バフェットに近いと思う。当然ながら彼同様に、日々売った買ったのトレーダーではまったくない。もしこれからうまくいけば、いずれソナーは共同投資者は不要になるだろう。

こういう考えに至った経緯は簡単だ。証券会社勤務で一番いやだったのはモグラやネズミを「大物」のように売ることだったからだ。そのくせライオンのようにふるまっている。なぜそれが嫌いかは、僕の書き貯めた1915本(12月1日現在)のブログをお読みになればどなたもわかっていただけると思う。性格は変えられないし、自分の本性に逆らったことを毎日するほど苦痛な人生はない。何でも好きにできる自分の会社でいやなことをする理由などなく、それを理解されてない方を共同投資者にお招きする気も必要もないし、顔の見えない不特定多数の人の資金を運用する投資信託をやる気もない。

お金をタダでくれる人はいない。だから株を買ってお金が増えるとすると、その知恵をタダで教えてくれる人などいるはずがない。それっぽい本を書いている人は、それができないから印税で食いたいのだ。その知恵というものは、自身のリスクをかけた、体を張った勝負の見返りである。投資信託を買っている方は、運用しているサラリーマンのファンドマネージャーに「自身のリスクをかけた、体を張った勝負」をたったの1~2%の手数料でお願いして「わかりました」とやってくれるかどうかよく考えてみればいい。

「いや、彼はがんばってくれている」と思っている人もいる。それが本当だとしよう。すると可能性は二つある。一つ目、彼は1~2%の手数料で本気でがんばれる人なのだ。そういう人は根っからサラリーマンに向いていて、ハンティングには適性がないから職業を変えたほうがいい。二つ目、運用会社が羊頭狗肉(モグラやネズミを「大物」のように売ること)をポリシーとしている。日本の老舗の大手金融機関は例外なく後者の商法をやっている。

彼らにきっと悪気はないだろう、なぜなら、経営陣にハンター気質の人は一人もいないからジャングルでどうハンティングが行われているかなど誰も知らない。巨人軍のフロントが誰も野球を知らないのとまったく同じ図式だ。それでも十分利益は出るし、お客に売っているのは結果ではなくて「ブランド品を買っている」という安心感だけである。それでも買ってしまう国民がごまんといる。だからそれが自分たちの「守りの経営」だと信じ、「守りの運用」などと恥ずかしいキャッチコピーが堂々とTVで流されるわけだ。

とんでもない。運用は野球やアメフトではない。「守りながら攻めましょう」ということはリスクを取らずにリターンを得ましょうという意味で、そんなことは全宇宙空間において理論的にあり得ない。もしそんな神業ができるなら、そのファンドマネージャーは自分のお金を運用してあっという間に大富豪になれる。その道を捨てて1~2%の手数料でその能力を生かして銀行や保険会社に就職しようという人を探し出すことは、30億円くれる巨人に移籍するかどうか迷っていた広島カープの丸選手をクラブチームに来ませんかと勧誘するよりも難しいことだろう。

日本人はブランド好きで老舗や大手の羊頭狗肉に騙される傾向が強い国民だ。たしかに獲物はジャングルにいるし、そこは生き馬の目を抜く危険な場所なのだ。しかし、ハンターはいわれなくてもそもそもライオンに食われたりしない。そんな人はハンターになれないし、資質もないし、なろうとも思わないのだ。ところがそのことは生まれつきハンターではない性質の99%の人には理解できないし、この洞察は僕だって証券会社で育って途中で銀行系に移籍したからわかったことだ。

新人時代にタバコ屋のおばちゃんに日立の株をすすめたら「で、にいちゃんは何株買うの?」と返された。立派な質問であった。世界に出てみるとまともな運用者はみなおばちゃんと同じ質問を想定して、自分で自分のファンドに投資している。その質問がいかに的を得ているかを示している。日本ではその質問を僕にしたのは40年間であの大阪のおばちゃんだけであったというのは危惧すべきことだ。丸選手はお金でなく男気で広島カープに残ってくれるだろう、信じてるよ、マルちゃん!という気質のまま、そういうほっこりしたゆるキャラみたいな情緒でもって、水と油である運用の世界に足を踏み入れてしまう人が国民のほとんどだということを示しているからだ。

高邁な理論なんか使わなくても真理は誰でもわかるシンプルなものだし、それにシンプルな解答を用意できるのが真のプロだと信じる。そもそも僕は部下が「がんばります」というと「がんばらなくていいよ、結果だけだしてね」という人間だ。プロ野球選手は去年の実績やら毎日素振り千回してますとかはぜんぜんどうでもいい。「わかったから、結果だけだしてね」だ。あたりまえだ、僕らは学者や評論家やセラピストじゃない。プロの評価は、結果だけなのである。結果は数字だ。あたりまえだ、結果とは利益であり、利益は数字だ。自らに利益が出たのにお客さんが損しているという企業はいずれ必ず滅びる。お客さんと利益を一致させるのが「自分が買わない株はすすめません」という経営だ。

 

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