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カテゴリー: 政治に思うこと

米国のヘゲモニーの視点ですべてを読み解く

2025 MAR 10 18:18:00 pm by 東 賢太郎

そういえばと思い、バックナンバーを検索するとこれがありました。日韓合同演奏会、今年が60周年で、これが50周年だったんですね(師走だった)。

チョン・ミュンフンの第九と濃かった師走の一日

そして、大晦日にこういうことにしました。

有難うございました、良いお年を(ブログ終了のお知らせ)

フラフラになるほど忙しかったからです。結局3か月お休みして4月に再開しました。それが2016年。そのころ僕のブログの訪問数は一日4~500、いまは3~4000です。ちょうど大統領選の年でした。トランプが勝つとはまったく思ってませんでしたが応援はしており、当時、政治関連はSMCでなくソナー・アドバイザーズHPにブログを設けてそっちにたしか4~50本書きました(HPのポリシーで消してしまったようですが)。トランプに好感を持った理由は、あくまで直感ですが、ビジネスマンだから僕には見ていて分かりやすく、裏はあってもこの程度かと思えばそんなに悪党じゃないなと安心感を持ったことです。だから2000年のあのあからさまなインチキ選挙をまのあたりにして、大噓つきの奴らが裏でせこせこ悪事を働いてる、そう確信してブログを書きました。選挙権のない米の内政ですが、単純に僕はそういうセコい奴が大嫌いなんです。バイデン側は今回の大敗で恥ずかしいボロが全部あばかれるでしょうし、現に、彼は当選後の大統領令への署名もオートサインだった(最後の最後に、立候補しない、という署名だけは真筆でさせられた)という暴露が出ています。それでもまだ負けを認めたくない連中がトランプを貶める印象操作を裏で表でやってる。政治の主義主張が違うのは大いに結構ですが、そういう姑息な手口がネット社会では見事にばればれなんです。それを延々とやってる方々、地位も名誉もあろうというものが金のためとはいえそこまで身を売って品格を下げてしまう景色は気の毒ですらあります。

トランプは戦略頭脳が抜群に良いと思います。あの年齢にして記憶力も落ちてない。それなしに不動産業で1兆円も儲けられるわけないでしょう?これを馬鹿という人々は自分にそういう脳がついてないのを公開してるわけです。米国のアキレス腱は通貨主権です。これを取られたら玉座から落ちる。決済通貨ということですがそれは表の話で、通貨主権国だけが紙切れをいくらでも印刷でき信用が棄損しないという錬金術を使えるのです。だから金本位制をやめてじゃぶじゃぶカネを刷っても紙切れとはバレない方式、つまり、軍事、財力、智力、科学技術で包括的に威圧して価値があると弱者に信用させられる状態(ヘゲモニー、hegemony)により帳尻を合わせて世界を支配する構造を米が確立し、対抗馬のソ連を潰しました。同じく戦略頭脳に長けたプーチンはその失敗原因を知ってます。米はそれを民主主義の勝利と謳ってますが、相手が共産主義国だっただけで民主主義が万能の証明にはなってません。現に今の米は民主主義的にDS(Deep State)に乗っ取られ共産主義的に破壊されつつあります。

彼等は大金持ちの超国家利益共同体であり、米のヘゲモニーに利用価値を見出した「虎の威を借りた狐」です。世界の政治権力者とメディア幹部を裏口買収して偽装に加担させ、為すことすべてを虎に見せかけ工作してきた。世界は「米」と思っているので動くわけです。それを指摘した者たちを「陰謀論者」と切り捨てるメディア工作もそれなりに奏功してきましたが、加速度的、不可逆的に増加するSNS閲覧者たちはその工作者こそが陰謀論者であったことを見抜きつつあります。そして最大の誤算は、絶対に買収できない大金持ちが本丸に登場したことです。それがトランプです。彼がスマートな人物であることは買収不可能な世界一の大金持ち、イーロン・マスクを右腕に起用したことでわかります。だから焦り、暗殺まで企てたが失敗した。買収されてる世界のメディアは絶対にそう報道しませんが、おおよその背景はSNS閲覧者たちの間ではもはや共有知で、否定すれば自白になるほどメディアの立ち位置と魂胆は見ぬかれています。だから報道しない。そういう自由があるのではなく、ご主人様に都合の悪いことは、アンタッチャブルなのです。

誤解なきよう明記しておきますが、超国家利益共同体だろうが一般国民の生存権を脅かさず共生してくれれば、税金はたくさん払ってるわけですから何の問題もありません。金持ちになりたいことが悪ではない。それが資本主義、自由主義であって、僕はそれを信奉して生きてきましたし、いまや、世界の(元共産国を含む)、ほんの数国を除くすべての国家が、汚職はしてもあからさまにそれを否定はしません。そうではなく、そこまで財を成した人間というものがさらに共同して追求したい「利益」とは何かがわからない、僕には想像できない無気味さがある、そういうことなのです。トランプ、マスクだって超国家利益共同体のメンバーになるだけの資産を持ち、その一員として何の問題もなく米を支配することができるはずです。その方が楽な人生かもしれない。しかし二人はそうせず、敵対する道を選んだ。暗殺リスクを冒してまで。この決意は尋常なものではないと思うのです。だから愚人、狂人なのだと見る方も多いでしょうが、僕は人間として支持したい。それだけです。何度も書きましたが、僕は米国人でもなく、経済的には超国家利益共同体の末端にいた方が有利なキャリアを来てしまいました。心の奥底の蹉跌がこれを書かせている気がします。

DSが世界のメディアの完全支配に成功したのがバイデンの4年間でした。その手口、すなわち、USAIDを隠れ蓑にして錬金術で刷りまくった金を自在にばらまく物証をイーロンのIT技術者が差し押さえました。ミサイルやドローンが飛び交っている(と見える)ウ国の戦地で、なぜかCNNの記者が流れ弾を恐れることもなく平然とライブレポートし、CGも交えていると思われる画像が世界中に放映されてロシア悪玉の国際世論を作りあげてきた。そして今なおトランプ政権がやることなすことに対し、メディアに It is extremely dangerous for democracy(それは民主主義にとって非常に危険だ)と、米を買収していなければ吐けない言葉を呪文のように唱えさせ、新聞はセ~ノで異口同音のコピペみたいな記事を出す。こういうのを共産主義のプロパガンダというんです。裏口買収以外の方法でこんな離れ業がどうやったら物理的に実現できるか、皆さんご自分でじっくりお考え下さい。

中国はその地位を狙って地下資源のあるアフリカ、南米まで資金漬けにし、米はそれをつぶす。日本は最強通貨だった円でそれをさせないためにプライマリーバランスのくびきで30年縛って弱体化したのです。どこかに書いてしまったと思いますが、僕は野村香港社長だった98年ごろ財務省某高官の訪問を受け、ユーロドルを範とするアジア円構想の意見を求められたことがあります。まだそういう時代でした。難しいと思うと市場の現実に即したお答えをし、後にサマーズに潰されたと聞きました。米が基軸通貨性を脅かすそれを認めるはずがない、そういう位置づけのものだとは当時は知りませんでしたが、構想自体は意気軒高と思い、そういう財務官僚がおられたことには感銘を覚えたものです。基軸通貨である戦いの雌雄を決する巨額で持続的な決済。これを要するのはオイルなんです、だからアラブの胴元サウジを中国に渡すわけにいかない。もし米・露・サウジで組めば世界のオイル、化石燃料は3国で押えられ、価格決定権を握って儲けつつ世界経済を支配でき、決済通貨のドルは安泰で人民元を潰せ、武器でなくカネと平和でイスラエルvsパレスチナ、ウvs露を調停すれば米のヘゲモニーは守られ彼はノーベル賞です。トランプが露・ウの高官会議をサウジでやるのはそれがシナリオだからです。それもこれも錬金術あってのことなんです。暗号資産を国富に組入れるのはブロックチェーンによる信用創造が潰せない敵と悟った、だから取りこんでしまおうという逆転の発想です。米国民はそんなことは知りませんが、バイデンに乗っても戦争屋とウォール街が儲けるだけ、それよりトランプに乗った方が少なくとも自分たちは幸せになる、多数がそう思ったからトランプは勝ったのです。

では日本はどうなるか。DSの番頭バイデンの忠犬を演じて日米同盟を守ったことになってる岸田総理のあと、石破総理だろうが次の人だろうが、日本がキャッシュディスペンサーである美味しい現状をトランプに変えてもらう期待はないでしょう。尖閣は安保第5条では守れません(本気で核で脅されれば議会は参戦を否決します)。ウ国のNATO編入を露が戦争してでも拒むのは防衛義務の双務性ゆえです。日米安保条約の片務性にいちゃもんをつけたトランプに対し、反共防波堤の前線基地確保のために米が作ったものだという反論をしたところで、因果はどうあれ現状のフリーライドは看過できないとそれをネタに防衛費5%を吹っかけられるのが落ちではないでしょうか。それなら逆手にとって、基地撤収してもらって構わないので核保有を認めてくれと交渉すべきではないでしょうか。憲法改正と自衛隊の増強は必要ですが長い目で見ればその方が日本は安全な専守防衛ができ無駄な防衛費を抑えられ、ものが言える本来の国家状態に復帰できる可能性があります。ここから10年、トランプ以上にそれを飲んで議会を説得できそうな大統領が現われる期待値はほぼゼロです。懐柔、腹芸をまじえてそれを仕掛けられる傑物が総理にならなくてはいけませんね。相手はビジネスマンです。できそうな胆力、交渉力がある人は自民党にはいないかもしれません、政党より個人の資質だから野党だ新党だと言ってる場合じゃないですね。

1,2年ほど前に国内政治については散々好き勝手に書きました。それもこれもトランプ政権になるという前提での話で、そうなりましたからもうつけ加えることはありません。自民という党は不人気で支持が減っているのではありません、書いたように時代の流れからもはやオワコンなのです。右左だ保守だ革新だなんてものは元から戦後日本に真面目なテーゼとしてはなく、総理は米の高額請求書を国会で通すのがお役目だから国民ウケが良ければどっちでも誰でも構わない、その都合がいいように55年に米によって読売新聞などと共に作られた政党であって、いまや、どうやらシンジロー社長じゃコクミンは騙せんようだねってことになってる。だから切れ者の財務担当役員である財務省は重用なんです、これも米のヘゲモニーの一角という視点で見れば当然で、これだけ頭脳明晰な官僚たちが安月給で毎日夜中まで働いてくれる国など世界のどこにもないからです。

問題は何かというと、官僚もいち社会人ですからね、より良いポジションと報酬を求めるのは当然です。米は能力ある者には桁外れの大金をくれるんです。NPBとMLBが良い例です、大谷翔平も佐々木朗希もファンが泣き叫ぼうが米に行ってしまいましたね。金だけが人生じゃないなんて万人が言ってるふりをしないといけないのは世界で日本だけです。野球選手も官僚も選挙で選ばれてないんです、だから愛国心やら国民の負託なんて押し付けても仕方ないしそういう時代じゃない。日本は平和で世界一素晴らしい国ですが、そのコストとして、実力がある若者にとって悪平等でもあるんです。何のために厳しい受験勉強で勝ち抜いたんだと疑念をもってしまい、官僚になれるのに外資系のコンサルや金融に行く人が増えてるわけです。だから官僚の道に進めば、上司が馬鹿なら省益のために遠慮なくつけこむのはこれまた人間界では世界の常識なのであって、彼らに非があるわけではなく、情けなく官僚の軍門に下って使われちまう国会議員たちが情けないという事なんです。彼らは選挙で選ばれてますからね、泣き叫ぶ国民を無視して米になびくなんてことは許されない。そこが最大のポイントなんです。米では選挙で選ばれてない官僚が国をめちゃくちゃにしてるのは許し難いという国民国家にとって実にまともな大統領が登場した。日本では神輿に乗ってりゃどんな馬鹿でもオッケーという優秀な官僚制に巣食うだけのビジネス議員が閣僚になって利権をほしいままにし、世襲し、官僚は官僚で別の生態系を作ってしまい、それこそDSのスローガンである「民主主義にとって非常に危険だ」という事態になっています。そんな議員を政治に無関心な国民がスルーして選挙に当選させている、これがおかしいんです。あちこちで水道管が金属疲労で破裂してますが、立法も行政も同じことが起きてます。もう高齢者である僕の世代が発することのできる警鐘はそれだけです。これからこの国で何十年も生きていく若者が選挙に行かなければ、誰も救ってくれるものはありません。

名器ブルメスター808mk5に見るドイツの底力

2025 JAN 11 1:01:33 am by 東 賢太郎

12月にプリアンプの電源がはいらなくなり音楽がお預けとなりました。きのうダイナミックオーディオのSさんが来て下さり、「接触不良ですね」で解決。接続ケーブルが直径5センチのニシキヘビみたいなやつで、いくらねじってもひねりがほとんどきかず壁のソケットの中が変形していたのです。

さっそくかけたモーツァルト23番の素晴らしいこと!ポリーニのクリスタルのようなタッチ、ベームの指揮するウィーン・フィル、そう、この音だ・・・。今年もニューイヤーコンサートはムーティの登場でしたが、1997年の正月に彼で聴いたムジークフェラインの音がこんなだった。家内が部屋に来たので「これなつかしいだろ」とかけたのが若きムーティとフィラデルフィア管のローマの松。2年通った定期演奏会。彼も若かったが僕たちも若かった。43年も前か。。。

プリアンプ、ブルメスター808mk5を聴けばプリ不要説は吹き飛びます。これなくして我が家の音なし。おかげで昔の記憶がリアルに蘇るんだから何物にも代えがたく、買い替えは一生ありません。昔は機器をあれこれ取り替えてみましたが、システムとしての音は最低のパーツが決める、つまり安物に一つ高級品を入れても変わらないがその逆は変わるという法則を発見しました。ロンドンでスピーカーをタンノイに換えましたがぱっとしない。当然なんですねアンプが安物なんで。この法則に添って最もダメなパーツを特定して取り換えていくと、到達点は「ムジークフェラインやアムステルダムコンセルトヘボウみたいな音が出ればいい、だってクラシックをきくのにそれ以上いい音があるはずないでしょ」となります。終点が判断できないと無限に金がかかります。この問題は808mk5を導入して一発で片付きました。

買って21年になります。写真は現在のカタログですが驚くべきことに姿かたちも機能も微塵も変わってません。セパレートボックスの電源が入らなくなっても本体が壊れたはずはないという確信がありました。それだけずっしりとした、最高級メカでしか味わえない重量感があります。これがドイツです。車はベンツ、カメラはライカ、ノーベル賞受賞者数は三位。こういう特性がドイツ製音楽バッハ、ベートーベン、ブラームスになる。モーツァルト、シューベルト、ブルックナーは違いますね、オーストリアの人です。

ドイツにいた90年代、経済は日本が圧倒的に上でGDPはドイツの倍でした。前稿「ヨーロッパ金融界で12年暮らしたということ」をお読みになると「西洋かぶれ」になって帰ってきたと思われるでしょうがそうではありません。英国もドイツもフランスもすべての欧州諸国を僕はナメきっていたのです。それはアメリカで教育を受けたことが大きく、その目線でした。ドイツ赴任の辞令が出て左遷と思い会社を辞めようかと考えたのは、銀行主導の金融は後進国のあかし、そんな国では活躍できないと思ったからです。

1989年、ロンドンにいた時に、ついに世界一の大国アメリカの株式時価総額を日本が抜くという驚くべき事態が発生しました。欧州を下に見るMBA教育を自分に授けてくれた先生の国を抜いた。ということで、僕の頭の中は「大王」状態にあり、それはあんまり不合理なことではなかったと今も思います。国富があるからって個人的には偉くもなんともないんですが、白人国に対するルサンチマンをはね返すよすがになったのです。世界を睥睨する精神状態ってそうはいっても普通じゃない。ほんの35年前、我々は世界の頂点に立った。若者には絶対忘れてほしくないです。

お前のような日本人が勘違いしてロックフェラーセンター買ってババをつかんだんだという声が聞こえそうです。そうかもしれません。でもあの「大王の景色」は目撃した者しかわからない。85年のプラザ合意はアメリカにはめられたんじゃない。日本の優良製品にビビって円を倍にしたんです。その証拠にそこから5年は屁のカッパで、合気道のごとく合わせ技で逆利用し、円高✖株高でアメリカを二位に蹴落とした。そこで大人買いしてさらにアメリカをビビらせ、BIS基準の二の矢を放たれて金融から潰されたわけです。ここからの政府、財界の無能・無策は目に余り、それが失われた30年の原点になりますが、頂上に立った記録が消えるわけじゃない。気持ちいいことじゃないですか。

1990年、あまりの絶妙なタイミングで株価のてっぺんで日本に帰ってきた僕は大王のままで敗戦を知りません。現地で最前線のプレーヤーだったのに日本から遠目に見ていては経済戦争の趨勢はわかりませんでした。ということは最初から終わりまで日本から見ていた人は最も肝心な勝ち戦の部分もわからない。だからなぜ株価が上がってそんな絶頂がやってきたかはほとんどの人は知らず、気がつくとうら寂しい宴の後がやってきた。世界に冠たる経済音痴の本邦マスコミが「あれはバブルだった」とアメリカに吹き込まれて騒ぐと、それが易々と世論になってしまいました。

HMS Prince of Wales

初めてのロンドンで、トラファルガー広場に立ってビッグベンを眺め、僕は「英国恐るべし」の感情を懐いたことを前稿に書きました。しかし同時に、そんな強国がプライドと科学技術の粋を結集して建造した不沈戦艦プリンス・オブ・ウエールズをマレー沖で沈めた日本海軍はもっと恐るべしの感情もよぎったのです。その知らせを受けた首相のチャーチルはショックのあまり自室に引きこもった。ビビったわけです。日本の実力はバブルじゃない。

空母ホーネットの甲板上に駐機したB25

「東京上空三十秒」(Thirty Seconds Over Tokyo)というアメリカ映画があります。真珠湾、マレー海戦ときて勢いづいた日本軍が西海岸に上陸するという報告にビビったルーズベルトがシカゴあたりまで撤退を考えたそうです。そんな漫画のような事態をおこすほど日本の力はバブルじゃなかった。米空軍は奇襲で反撃すべくB25を空母に積んで東京に接近し、30秒で空爆して中国に着陸するという作戦を成功させた。迎撃されたら全滅の危機を乗り切ったこの男たちは今も米国民に英雄と讃えられており、私見でも敵ながらあっぱれではある。ところが、なんとこの特撮映画は1942年に製作されていたというのだからやっぱりこいつら憎たらしいほど手強いなとなるのですが。しかし日本だってそうした男たちはたくさんいて、そういう男ほど真っ先に死んでいったのです。戦前戦後で日本人のDNAプールを変質させたのではないかと思うほどですね。

チャーチルとルーズベルトは問題のプリンス・オブ・ウエールズ艦上で大西洋憲章に調印したのです。それほどにこの艦は英米両国の権力・武力の象徴であり、それを沈めたのはピュアに客観的に戦術という観点から見て歴史的大事件です。そういうことが経済・金融の戦争で起き、英米両国を大変に焦らせたのが80年代にJapan as No.1と書かれた日本であります。それは我々金融マンが起こしたことではなく、自動車、半導体、電子部品など技術力が世界を席巻したことで起きたのです。戦争を僕は断固否定しますが、日本の科学技術力はかように誰がどう見ても優れていた。負けたからといって事実を観ずに全否定ではあまりにインテリジェンスに欠ける。そんなざまだから経済戦争で90年に米国にB29並の反撃を食らい、根こそぎやられて経済界も役所もシュンとなってしまい、新自由主義の御旗の元にひれ伏したのです。そこで自虐的に「バブルだった」の合唱を始めたと僕は思っています。そのころ香港にいた僕は忸怩たる思いで眺めるしかありませんでした。そんな腑抜けの国では世界は評価してくれないし、もとより未来はありません。

愚民に貶めて飼いならしておきたいと思うほど日本人は優秀で強かった、そういうことなんでしょう。ブルメスター808mk5、ドイツもだいぶ落ちたけどこれを見ると魂は健在だなと思います。そのドイツに3年住んで学ばせてもらったことは財産でした。調べると陸軍大将だった先祖も少佐時代、1911年から3年間ドイツに駐在してました。35~37才。僕は37~39才。縁を感じます。日本もモノづくり大国です。インバウンドのおもてなしごときで1億2千万人も食えるはずがないでしょう。自民党にまだ何がしかの存在価値があるならば、それを復興させる教育を根底から見直し、国家百年の計を練ること。左傾化したままなら七十年でお役御免でしたという歴史になりますね。

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トランプ時代の円ドルと株価について

2024 DEC 15 0:00:14 am by 東 賢太郎

これをアップした2022年9月27日の円ドルレートは145円でした。

Invest in Kishida(岸田に投資を)で円安に

で、当時、ぜんぶドルにした資産はどうしたか?今もそのまんまです。本稿ではその理由をご説明します。

翌日9月28日にあえてアップしたこれをお読みください。

円レートは年末に上がるのか下がるのか?

こう書きました、

『前稿で僕が「わからない」と書いた供給サイドの「コロナ・ウクライナ・ファクター」(以下、CUF)が問題と思われます。コア・インフレ率は食品・エネルギーを除外しているのでCUFの影響度はデータ集積が足りない。結果論ですがFRBはそれを軽度な方に見積もっていたと想像します』。

そうなんです、FRBでさえも見積もりを誤ったCUF。そのためFFレートは行っても5%だろうというドットや市場の予想が5.5%まで行ってしまい、僕も、

『日銀の事情は前稿で書きました。ということは金利差は開くと思われるのでさらに円安になって不思議でないですね。FFレート5%でいくらまで行くかということです』

と書いていたところが5.5%で市場がびっくりして円は160円まで売られてしまったのです。

その犯人であったのがCUF、つまり各国の経済を同時に直撃したコロナとウクライナ戦争です。こいつは消費と投資を停滞させ、医療 / 防疫に不測の巨大な出費をさせ、人流を制限して物流コストや人件費を押し上げ、エネルギー価格(電気代)や食料価格を押し上げ、多くの人命を奪ったばかりか健康な人々であっても安寧に生きていくための生活費を不慮に高騰させ苦しめたわけです。

いま世界各国で政治に異変が起きていますがその犯人もCUFです。つまり、日本の衆院選での自公の大敗、アメリカのトランプ勝利、イギリス、ドイツ、フランスの政権交代、韓国の突然の混乱などがシンクロして起きている、それは同一犯の証拠です。例えば自民党大敗の原因は裏金問題ではありません。もしそうなら立憲民主党は獲得票数が前回の衆院選から増えてないとおかしいが1149万票から1156万票と7万票しか増えてない。自民を裏金で叩いて入れ替わって議席数を98から148に伸ばしただけです。では自民が前回から減らした500万票はどこへ行ったかというと立憲ではなく7割の350万票は国民民主に行ったわけです。訴えた政策が「国民の苦しい生活を救う」だからです。英米独仏、みなそうです。

ではその間に為替レートはどうだったか。円レートは上掲ブログを書いた2022年末に上がって僕のモデルが示す135円あたりになりましたが、翌2023年半ばに一転し、今年の半ばに160円まで下がりました。現在、マイ理論値から18%円安に振れている153.7円ですから利益確定してもいいのですがしてません。理論値を修正したからです。コロナは当面のところ収束し、トランプ就任でウクライナ戦争も終結の兆しが出てきました。つまり攪乱要因だったCUFが消える可能性が高いからです。

ではここから出発するトランプ時代をどう見るか。政策金利の予測にはフィリップス曲線の読みが必須ですが、来週FOMC(まず25bpの利下げ)での新ドットも25年の利下げ回数も僕はそういうものは全然興味ありません。もう曲線に織り込み済だからです。トランプの政策(それが何か以上にそのインパクト)はパウエル議長も委員もわからないから官僚的な当たり障りないコメントが出るにきまってるんです。ということはコンセンサスにマグマがたまります。花火なら玉が大きくなって火薬が増えるんです。打ち上げて面白くなるのはその先、データがある程度そろう来年の半ば以降でしょう。

年8回出てくるFOMCの数字をあーだこーだやってる世界の金融界のインテリの皆さん、そう思われ続けないと失職するからリスクとらないんですね、僕もその一員だったことがあるからよくわかります、ぶっ飛んだ発言して外れると馬鹿と思われますからね。そういう “プロフェッショナルな” 見解はインテリの回答だからほぼ狭いレンジに集まり相場は織り込んでしまうのでそれに基づいて投資しても収益は得られません。テレビのどのチャンネルでも「明日は晴れでしょう」といってる天気予報みたいなもので投資価値はゼロです。しかしトランプファクターは巨大でインパクトも読みにくいから好機です。覚えておいていただきたいのですが相場に大事なのは「変化率」です。変化はショックで起きますが、変化率で増幅される、つまり「2回ビックリ」でそのインパクトは「接線の傾きの変化の割合」(二階微分)なんです。数学のセンスのある方はそれが火薬の量とおわかりでしょう。

僕はプラザ合意、ブラックマンデー、リーマンショックで市場のど真ん中にいて恐怖感をおぼえ、後になって「何が怖かったか」データを分析してそれを知ったわけです。大事なのは当事者であることです。外野で見ていて数字だけ分析しても「怖さ」まではわかりません。だから僕は申し訳ないがエコノミストは信用しない。インパクトはわかりません、1次微分じゃね。遊園地のジェットコースターを想像してください。どんな坂も速度がゆっくりだとあんまり怖くないですね。でも速いと怖いんです。さらに「予想外」の上がり下がりで「加速」まであるともっと怖いんでキャー!ってなるんです。相場もおんなじです。上げ下げをそれが増幅して暴騰、暴落(価格の大きな変動、ボラという)がおきます。ただしこれは人間がやってるからなんですね。びっくりしないロボットがするアルゴリズム取引が執行/トレーディングの主流になった現在はボラが減っていると思われ、逆に、みんな似たプログラムなので熱狂を伴わず日経平均が一日にあっさり4千円も下がったりします(逆に人間はそんなもんにびっくりしちゃいかんのです)。だからネットで相場に張り付いて日々売った買ったで頑張ってる皆さん、チェスや将棋と同じでAIには絶対に勝てませんから長丁場はやめたほうがいい。生成AIだけになると最も賢いのが他のすべてのアホなAIを食う草刈り場になります。一人勝ちだとやがてask-bidが出なくなって市場が消え、その先は計画経済的市場という墓場になります。「流動性」が担保されている貸借や証券だけの話ではありますが、まさにFFレートや無担保コールレートがそれなんですね、だから公開市場操作(オペ)なんてのがあって、堂々と権力者が操作なんてうたっちゃってるおかみのインサイダー取引みたいなもんで、そんなもんは「市場」じゃないんですね。いっぽう、そういうことが我々が生きてるうちにはまず確実にないだろう不動産やスタートアップ企業の資金調達市場はask-bidスプレッドが消えることはなく、知性で勝負するファンダメンタル情報が分析もできますから、これから運用資金が流入して魅力的な市場になるでしょう。

さてアメリカですが、トランプの高率関税は即刻の税収増となりサプライチェーン、製造業の米国回帰もそれに寄与しますが、不法移民強制送還費用というバイデン政権では視野になかった歳出は150兆円と見積もられ、この金額は日本の国家予算を上回ります。グローバリストの民主党はカネをばらまいて戦争を煽ることで武器を売り、コロナ禍の需給停滞ではお薬を売りまくり、CO2削減の再生エネ利権、食糧利権、ポリコレ / イデオロギー支配による副次的利権など地球的、世界統一政府的変革で新たな需要創出を目論んでいます。トランプはそれらを真っ向から全否定する可能性が大いにありますが、コロナ発生以来その前提で中央銀行のバランスシートはFEDも日銀もリスクアセット満載となり株式市場のバリュエーションは人為的(国策的株価形成という不純不潔なもの)の色彩が覆い難くなっており、僕はプロとして非常に不快でありますが、利益が出るのだからいいではないかというこれも不快な妥協を強いられています。この不快感は外野からチャートを眺めてる自称専門家の方々にはいくら説明してもわからないです。トランプはわかってるかもしれませんがそこにメスを入れてディープステート潰しをして株を暴落させても自分も何の利益もなく、なにより米国の富国強兵の根幹である信用創造も終わるので手を出せませんね。すべては未だタラレバの段階ですがインフレ率の心配が出る可能性は否定できません。

〈最後に〉ブログ読者の皆様へ

12年間ここに綴ってきたように僕は敗戦後ではなく古来からの日本国に誇りを持つ愛国者ですが、受けてきた教育と選んだ職業は証券業 / インベストメントバンカー / 投資家という敗戦後に興隆した英米由来のものであり、MAGAを主張するトランプに心情は共感しつつもビジネス上は彼と敵対するグローバリスト路線に乗っています。いわば言行不一致なのですが株主利益を出すことが企業家としての使命だから仕方なく、自分を騙して思想の二刀流と思ってます。そちらの方がウォートンMBAとしては理が通り、世界のトップトップなビジネスマンと同じ言語で通じやすいので圧倒的に楽なんです。逆にトランプイズムが大成功してアメリカがグレートになり、一将功なりて万骨枯るでは困る。彼はそうはしない知将と信じますが、肝心の日本の将のほうは知る限り経済・ビジネス音痴ばかりで、ひょっとしてこの人たちは公開市場操作で日経平均が決められると真剣に思ってるんじゃないかと心底ぞっとするばかりで僕はからっきし信用しとらんのです。だから国がだめなら海外移住します。ソナーは海外から経営して何の問題もない会社です。かように父祖の国を愛しても操縦する人間を信用しないビジネスマンは国籍を問わずごまんと知っているし、権力欲と3、4千万円程度の年収でハイリスクでめんどうくさい政治家になりたいと思ってる人しか人材プールがなくアメリカでさえトランプやマスクら大富豪しかいないのだから救う道もおそらくないのですね。日本は大富豪はいないし愛国心はけっこうだがグローバルなインテリジェンスぐらいまともな学校(東大法学部は純ドメ学校)で教育されてない政治家はこれからの時代、国を潰します。

僕は人間としては単純にできているのでこの生き方で気持ちのバランスをうまくとるのは疲れます。だからパニック障害が出たと考えてるし、本来の姿に戻るには仕事を辞めてプー太郎になるのがいちばんです。家内と二人それでもう何もいらないのですが、頂いたものを社会にお返ししないで何のために生きてきたのかという思いはあります。だから5年前に映画を作ろうと思い立って、コロナで断念しましたが、素晴らしい監督さんスタッフたちと思いをひとつにして出雲でロケハンまで行った。大損しましたが構わない、これは母が大好きだったことで、それにチャレンジした親孝行の軌跡だからです。することが何であれ最後は育ててくれた親への感謝、そして、社会のためは大袈裟ですが、少なくとも袖振り合った人のためという思いはあります。これまでは事業家としての僕を知ってくださっている本業のお客様だけでしたが、より実像に近い僕を知ってくださっているブログ読者の皆様をふくめてです。時間をかけて読んでくださっているのだから国内外で学んだことやビジネスで悪戦苦闘した経験、ノウハウを若い人に残すようにブログにしようと思ってきたのはそういう思いがあったからです。

社内である発案がありました。SMCというブログを書くだけのクラブではなく本業のほうのクラブがあってもいいねというものです。僕が何を考えて何にどう投資しているかみたいなことはブログにいっさい書けませんし、これまではソナーの株主以外に知らせる由はないのですが、そうしたことをご興味ある方と共有する場を持ったり、49人までですが一緒に投資できるクラブがあってもいいというイメージでしょうか。あるいは音楽ですね、こっちについては素人ですが、仕事より情熱はこもってますからミュージシャンの方や僕と同じ聴く専門の方々とのクラブがあっても楽しいしこちらが教わることも多いだろうと思うのです。ただ、まだ仕事第一は変わらないのでわかりませんし、いずれはすべてを離れて隠居しようという時は来ますが、来年2月にいよいよ70才になるので一区切りに何かをと考えていることだけお知らせしておきたいと思います。

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老獪な独裁者は鵺(ぬえ)という妖怪である

2024 DEC 2 14:14:11 pm by 東 賢太郎

天気がいい。久しぶりに見た秋空という気がする。息子と散歩がてらに蕎麦屋で一杯やった。江戸っ子はこれがたまらない。ほろ酔い加減で浄真寺にお参りすると、名物の銀杏がひときわ異彩を放っていた。

この鮮やかな黄色に出会うと学生時代に帰る。夕食にやってきた娘とその話になり、そう本郷は有名だもんねという。いや駒場だよ。あそう、じゃ本郷はとくると銀杏もあったかなぐらいでわからない。成蹊は何だっけときくと楓(かえで)という。かえでか、なるほど、かえでね、で、ところでどんな木だったっけと考えたが空しいもんである。僕は木の区別はほとんどつかない劣等生だ。いつも行く箱根の露天風呂など風流な小山にいろんな木が眺められ、幹にいちいち名前の札がついてる。行くたびに覚えようとするが入るたびに忘れてる。樹木はすべからく「森」か「林」か「木」なのだ。ちなみに成城では6年間「かつら組」だった。桂の木は見たことあるかもしれないが覚えはない。

「10年前のちょうど今日あたり、屋久島で千年杉ってやつを見て感動したけどね、あれとその辺で花粉飛ばしてる杉が同じだってわかる自信はあんまりないな。そう、自慢じゃないが花だって3つか4つだからね知ってるの、興味って大事だね、だって猫の顔は一度見たらぜんぶ識別できるんだから」。

普通はお父さんがそういうのを子供に教えるんだろうが、昔からそんな会話だからまったく役に立ってない。しかしこういうことは教えられる。

分類はすべての学問の母だ

分類は識別しないとできない。識別は興味がないとしない。興味がないと学ばない。学ばないと学問にならない。そこにはこういう関係がある。

分類 識別 興味 ⇒ 学ぶ 学問

ど真ん中に鎮座するのは「興味」で、すべてはそこから発している。分類をお仕事でやっても学問には行きつかない(写譜屋は作曲家にはなれない)。分類ができれば入試ぐらいは受かる。でも受験勉強だけでは学問には行きつかない。このことは「学問」を「ビジネス」に置き換えても正しい。

興味ある!おもしろい!

古語だとそれは「をかし」で、枕草子は「をかしの文学」と評される。しかも清少納言はその対象を分類までしている。僕はなぜ自分がそれを好きか不明だったが、自分も興味ある物事にだけ反応し分類癖のある人間だと知って理由が判明した。前稿でプロコ1番にモーツァルトのアマデウス・コードが潜んでいることを発見し、「だから自分はこの曲に得も言えぬ親愛の情を覚えているのだ」と書いた。まったく同じ解明プロセスだ。

さらにおもしろいことがある。

「をかし」の反対語は「すさまじ」「興なし」だが、そこには「をかし」を反転して負の値にしたと同じほどの否定的な感情が入っている。

ところが、英語にはそれを感じない

indifferent

なる興味深い形容詞がある。これを知った時には一抹の感動すら覚えたものだ。というのは、僕における樹木や草花への反応はまさにそれに他ならないからだ。

この言葉を少々解題してみよう。

differentは「~と違う」だ。それに否定の接頭語 in がついて「~と違うことはない」(=同じでないことはない)なる二重否定だ。めんどうくさい語だが背景には文化がある。different の differ は「異なる」という意味の自動詞だ。西洋は子供に「人はみな違う」という教育をする。みな個性や主張や物事への反応においてdifferentであるのが当然であって、それが人間のディファクト、定義のようなものだからそのつもりでお付き合いしなさいという。とすると「個性や主張や反応が他人と同じ」方が少数派ということになってきて、それにいちいち名前を付けて表現したい場面に遭遇する。そこで形容詞が必要となり、それが、

「個性や主張がdifferentでない」= in + different = indifferent

になる。重要なポイントは、その人は少数派であるにもかかわらず「妙な人だ」という否定的なニュアンスがない。なぜなら、その人の存在自体も「人はみな違う」という定義を満たしているからなのである。

(参考)https://ejje.weblio.jp/content/indifferent#goog_rewarded

いっぽう、子供に「みんな仲良く」と教育するのが我が国だ。我々だっておぎゃあと生まれた時はみな個性や主張や反応が different なのだが、いやいや、人前でそれをあんまり出してはだめだよ、嫌われたりいじめられたりするよ、「和を以て貴しとなす」だからね、という色濃い空気の中で育つのである。ディファクトから幼少期にOSの設定変更が入るわけで、いかなる動物もそんなことはないし、人間も知る限り世界にそういう国は日本しかなく、それは外人が見出す「日本人らしさ」の根源だろう。蓋し、これがあるから皇室は武力がなくとも存続してきたし革命も起きなかった。

そのOS変更は日本語という言語に深く刻み込まれていて、それを母国語として話者になった時から我々の精神構造の深奥まで浸透し、それを思考ツールとして生きてゆくのだから自分でそのことに気づくのはどんなに語学力のある人でも困難である。僕は英語を頭の中で日本語変換せずに話せるようになって(外国語ができるというのはこの状態のこと)、発出する自分の英語を振り返って比較してみてようやくわかったことだ。何かで I’m indifferent to it. とぽんと口から出て、その自分は和を以て貴しとなさないかもしれない自分なのだと気がついたという風である。

このことは翻訳が文化に関わることを示す。たとえば Tastes differ. の日本語訳は「趣味は人それぞれ」「十人十色」であるが、「蓼食う虫も好き好き」なら僕は誤訳とする。受験英語なら正解なのだが、これが僕が大事と考える「写譜屋と作曲家の差」であり、入試は作曲家までは求めないということだ。なぜ誤訳かというと、differ は何の色もなくただ淡々と「違う」という意味であり、蓼食うの方は「あいつは変わったやつだ」という否定的な感情が混入するからである。ということは differ をルーツに持つ indifferent にもそれはなく、静的、無機的、中性的で、あえて否定的な感情をこめたい場合は very をつけたりする。

a very indifferent player(とても他人と差別化できてない選手=下手くそ)

がそれだ。poor で済むのにわざわざそんなひねくれた言い草をするのはとてつもない皮肉屋であるが、好例として某指揮者がいる。汽車のポッポーが盛大に聞こえる野外音楽堂で指揮させられてブチ切れ、「ここはお抱えオーケストラを所有する世界で唯一の駅である」の毒舌を吐いたこの男なら使いそうな表現で、僕は嫌いでない。indifferent は英語を使う国民にはディファクトではないが、それゆえその人の個性としてとらえ「変わったやつだ」と切り捨てる空気はなく、very で殊更に強調してみせて初めて否定的な味付けができるのである。

いっぽう、「和を以て貴しとなす」日本では往々にしてこういうアンケート結果が出現する。

41.9%が indifferent (どーでもいい)となると少数派ではない。旗幟鮮明の西洋では「どーでもいい」は少数派だが、旗幟不鮮明を良しと教わる日本では多数派になりえるのだ。

これでは聞く相手を間違ったのではないかとなろう。日本の選挙はまさにそうで、どーでもいい派は投票に行かないから投票率は大半が5割以下だ。ということは日本人は民主主義を行わせるには相手を間違ったということになる。

イエス、ノーをはっきり言う(旗幟鮮明)と嫌われたりいじめられたりするよって、それ独裁国家のすることじゃないの?

でも日本に独裁者はいないよね、民主主義だし・・・

たしかにいない。でも、どーでもいい派は独裁者の目には「羊」なのだ。羊は和を以て貴しとなしてシープドッグ(牧羊犬)に従う習性を子供の頃からたたきこまれている。親がそう教育してくれてるのだから独裁者はごっつぁんである。姿を現さず犬を飼えばいい。犬も楽だ。牧場に置かれた巨大スクリーンに姿を映してもらってワンワン吠えるだけで羊は右に左に意のままに動くからだ。

しかし、昨今、急激に事情は変わりつつある。牧場には羊によって小型スクリーンが設置され大人気になった。すると賢明な羊たちはシープドッグは決して猛犬でもなく、血統書も偽物のその辺の犬にすぎないと見ぬき始めた。巨大スクリーンは壮大なヤラセであって、CGだったり嘘っぱちだったり都合悪いことは隠したりと、羊を騙すカラクリがバレてきたからだ。そこに旗幟鮮明派の若い羊が出現し、多くの羊がそっちの号令に従いだした。

シープドッグが「悪」で若い羊が「善」なのか?

それは羊が決めることだ。なんだ、それならまさに民主主義じゃないか、バンザイ、それはいいことだ!

注意しなくてはいけない。老獪な独裁者は鵺(ぬえ)という妖怪である。もし羊がそう決めるならシープドッグを撃ち殺して若い羊を誘惑するだろう。巨大スクリーンも粉微塵にして羊の小型スクリーンに易々と乗り換えるだけである。民主主義だろうが共産主義だろうが、鵺は羊の生き血さえ吸えればそんなのはどっちでもかまわないさという indifferent な連中なのだ。以上は日本の事として読まれたと思うが、実はアメリカ合衆国もそうなのだということに賢明な読者はお気づきだろう。

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ビジネスにはケミストリーが最重要である

2024 NOV 24 1:01:49 am by 東 賢太郎

先日、あんたとはケミストリー(相性)が合う、俺たちのパートナーになってくれと面と向かっていう米国人実業家が現れた。友人に紹介されたのだが、会ったのはそれが2度目で、始めはなめていたと思われつっけんどんだったが仕事以外の話をするうちに打ち解けた。「たち」の中にトランプの娘もいたりするが僕はそういうことよりまず人間性であり、むこうもそのようであるから是も非もない。くれといわれた履歴書をさっき送ると、上海からThanks my friend.とすぐ返信が来た。

アメリカはそんなもんだ。多民族国家だからどこから来たかよりも合うかどうかで仲間を増やしたい。生きるための手段だからその姿勢が気持ちいいほど前向きであり、仲間になるには旗幟鮮明でなくてはならない。「その程度のことでそう簡単に友達と呼んでしまって、はたしてよいものなのだろうか」なんてどこかの国の総理みたいな調子でクソ真面目な顔でくだらないことをぐちゃぐちゃいう奴はいないし、そんなのは偉くもならない。そのかわり、つきあってみてやっぱり合わないねとなるとあっさりあと腐れなく切りもするわけだ。ドライというなかれ、旗幟鮮明であるとはまさにそういうことなのである。

僕は子供のころから幸か不幸か性格が旗幟鮮明であんまり友達もできず、20代にアメリカの学校で2年もまれてさらに磨きがかかった。合う会社を見つけて入ったつもりだったが様子が変わって旗幟に合わなくなりフリーエージェント的に移籍させていただいた。こういう日本人は少ないから合う人はいないと思っていたが、旗幟に合わないとこんなめんどうくさい長文のブログを読まないだろうから、実はけっこう合う人がいるんじゃないかと数字から思えてきた。ページビューだ。去年の一日2,500から50%増え、毎日3,800人ぐらいが読んでくれている。僕はブログでミーハーにリーチする手段も意欲もなく読者は高学歴の知識人と思われる。約半分を占める40代未満の伸びだから日本人が変わる兆しという気がしないでもない。

それはいい話だが、ひとつみっともない話を書く。きのうドラッグストアで買い物したらレジの若い女性にポイントカードをすすめられた。普通作らないが金額が張ってたのでディスカウントがあるらしい。じゃあ作ろうかとスマホをとり出した。するとAppleのPWをという。あれこれ入れたがどれもだめだ。「おかしいな」「大丈夫です、よろしければリセットしましょうか」というので一度閉じた。「もう一度開いてください」といわれると、動揺してたのだ、今度は毎日使ってるスマホのPWが出てこない。まいった。このどうしようもない馬鹿なおっさんに彼女は嫌な顔一つせずやさしい笑顔で「焦らなくて結構ですよ、ゆっくりやりましょうね」と励ましてくれ、やっとできたのである。ボケ老人で危ないと思ったのだろう、紙切れをくれ「いまのPWふたつ、ここに書いて絶対なくさないように保管してくださいね」ときたものだ。30前後だろう。とても感じのいい子で、外国にこんな店員がいるとは逆立ちしても思えない。日本の財産である。

そう、日本の若者は世界に類のない財産なのだ。しかしこの世代は多くが奨学金で学校を出て30代まで返済に追われ、就職難で結婚資金もないうえに僕らの世代ひとりの年金を二人で支える。生まれてから株が上がるのを見たこともないから投資もできない。こんな日本に誰がしたという大逆風が自民党に吹いたが、それならそれでと質量ともに歴史的ボロボロの石破政権をだましだまし予算成立まで延命して自民党の負の責任をなすりつけ、裏でお仲間の立憲と「大連立」で増税と選択的夫婦別姓を狙っているとしか思えない。そこに実質減税である政策を果敢かつ旗幟鮮明にぶち上げた玉木君の勇気は賞賛に値する。女性にもてるのは当然である。ビジネスマンだから当然だがトランプも強烈に旗幟鮮明で物凄くもてる男だ。ケミストリーが合うと思うよ。賭けてもいいがビジネスのビの字も知らず旗幟が微塵もない石破や岸田は絶対に相手にしない。チャンスはあるぞ。

人の相性についての僕の考え

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怒りに燃えたトランプの大鉄槌がくだる

2024 NOV 19 11:11:55 am by 東 賢太郎

以下、松田学氏は元大蔵官僚。スマートな人の話は分りやすい。コンパクトに世界のニュースが俯瞰でき、記事の選択はやや右寄りかもしれないが左翼系のあざとい洗脳、バイアスよりずっとまし。テレビ、新聞は公共性、客観性を装おうが「都合悪いことは報じない」というとんでもない洗脳、バイアス機関であることもこれでよくわかる。

米国全メディアはハリス押し大合唱の大外れでアイヤー! その忠実なコピーである日本の全メディアはアイ~ン!バイデンは民主党じゃなく俺と犯罪(ウ)もみ消し裏ディールで辞任なんよ(ハリスなら楽勝だもんな、ラッキー)。トリプル・レッドだからな、やりたい放題やったるぜ、暗殺にきたディープステート消すんでな(馬鹿だねえ まだ言ってるぜ 陰謀論)。米軍のLGBT派は全部クビ、女子スポーツからも男を追放よ(あれー、日本は法律まで作っちゃったんですう)。俺を起訴した特別検察官な、あの野郎は2秒でクビだ、保健福祉省長官はRFケネディ・ジュニアにしたるぜ(よりによってこのワクワク凄すぎ!)。不法移民追い出し丸損3千億ドル、屁のカッパだ。関税60%?100%でもいいぜ台湾やるならな。イーロン君起用はレッドへリングよ(2億ドル支援ありがとな)。経験ない?だからなんだそんなもん、やるのはぜんぶ俺さ、あたりめえだろ裏切らねえかどうかだけじゃあ!(トランプさん日本の総理も指名して下さい)。

以上、小生周囲の業界ウワサ話。真偽の保証?いたしません。

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石破総理と玉木代表に思う

2024 NOV 13 0:00:11 am by 東 賢太郎

居眠りして風邪薬のんでましたとか、ズル休みのガキの言い訳みたいなのが出ちまうこと自体、小物感満載でみっともない。うるさい、俺が目をつぶった時は集中してるってことだ!ぐらいかませばいいのにね。そういうキャラでないしお疲れなのも理解するが、立場が立場なんだから気をつけられた方がいい。どんな組織であれ、世界のどこであれ、人は小物には本気でついていかない。共倒れリスクが高いからね。個人の身体的な限界は言うべきでないが、トランプ、プーチン、習近平、金正恩がそれを見てどう思うかということ。徹夜明けだろうが二日酔いでべろべろだろうがビシっとしている体力も要件だ。また、後輩だからあえて苦言を呈するが玉木氏も肝心なところでドジふんだもんだ。そのこと自体は奥様のご裁定であり是非もないが、これも居眠りと一緒、出ちまうこと自体がみっともない。まあトランプだけは So what? だろうが、将来トランプと対峙する気があるならそんなもんは屁のカッパの strong man ぶりでないと相手にもされんよ(もちろんだが strong womanもありだ)。

企業社会の話だが「承知しました、社に持ち帰って慎重に検討します」って言って半年もかかってやっぱりできませんなんて頭をかくのが伝統的な日本人のイメージだ。すると、その交渉のご当人は社内で strongでないって判定をされてあの人は意味ないからもう会いませんってなる。岸田総理は有無を言わさずLGBTをやらされ、やっちまって、保守に総スカンになって自民党を現状に追い込んだが、あの時点で総理であったのが誰であれ、つまり彼のお立場として逃れようがなかったと拝察する。やった者だけ評価するし、特にやれば1千億円だってくれるし、やらない奴はどんな言い訳しようが You’re fired! が米国人だから彼はその意味において成功し、奥の院を知ってる国会議員たちは与党であれ野党であれ彼を無視できないだろう。ただしここからはトランプ政権の出方次第である。

多数決というのは少数与党の総理より、別に総理でなくてもcasting voteを握ってる方がstrongであるといえないことはない。少なくともそう見せつけることは可能だ。ビジネスは大いにそうだが、実体などどうあれ相手にそう思われればディールは勝てる。そういうセンスがあるかどうか、ある人はあるしない人はないので何とも言えないが、たぶん人生一度あるかないかのチャンス。うまくやるんだね。ちなみに僕は国民民主党に投票してないしサポーターでもないが。

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あれまあ!やっぱりトランプだったのね

2024 NOV 7 3:03:04 am by 東 賢太郎

きのうディナーした米国人が来社したのが午後4時半だった。ちょうどスマホにトランプ当確のニュースが入ったのでどう?ときくと「個人は残念、ビジネスOK」ときた。なるほど、それなら僕は個人もビジネスも、まあOKだ。ウォール街はばりばりの民主党で当社もその仲間ではある。LGBTやら内政干渉には心底怒りを覚えるが、それとビジネスは別物と割り切らなければこの業界ではやっていけない。ちなみに当社のパートナーであるウォール街の某投資銀行CEOはトランプのトランジションチームに入ってるからホワイトハウスに移ることになる。「俺が不在の間に利益は何倍になるんだ」と社内では檄が飛んでるらしい。経済顧問ぐらいのポストだろうから楽しみであり、まあその分だけOKということだ。

というわけでビジネス的にはあんまり興味なかったが、「ハリスが僅差でリード」というニュースをどこかで耳にして、そんなに優秀なのかと公開討論を聞いてみた。悪いがどうひいき目に見てもこの人物においてそんなはずはない。現地にきいてみると「偏向報道の嵐です」が回答だった。しかしそれはアメリカの話だ。投票権のない日本人に日本のメディアはハリス押しのコメンテーターばかり並べて妙ちくりんな理屈をこね、気合を入れて偏向報道してる。誰が得するんだか実に不思議だ。あれまあ!って予想が大外れして赤恥をかくばかりか報道機関としての信用も失墜である。明らかにそう考えてないのだから経営リスクと思ってないのであり、報道にみせかけた新種のエンタメと解釈するしかない。

これで思い出すのはマカオのカジノだ。留学時代やロンドン時代に賭場に出入りしたが、香港ではマカオである。客はほとんど中国人で雰囲気はまるで鉄火場だ。丁半バクチで素人もわかりやすいルーレットが大人気で、テーブルを取り囲む人垣は三重ぐらいになっていたので僕は最後列から人をかき分けてチップを置いていた。やたら赤ばかり出る。次は黒だろう。あれれ、また赤だ。ええい今度は絶対にくるぞ!うわあ、また赤だ。これが6回続いた。64回に1度の珍事である。ざわざわし始め、なにやらそこらじゅうから大声で中国語が飛び交い、あたりは興奮のるつぼと化してきた。もういくらなんでも赤はない。確率はいつでも1/2なんだけど人間は思いこみに弱いのである。かく言う僕も賭けようと試みたが、あちこちから手が伸びてきてはじかれてしまい断念した。黒のベットゾーンに高額のチップがこれでもかと山積みになる。後でもめないようにディーラーはプレーを中断し、スティックで用心深く山をゾーン内に寄せて仕分けした。緊張が走る。いよいよ数字盤が回る。No more bets!  場がシーンと静まりかえる。カラカラと乾いた音を立ててジャンプした球がコロンと収まったのは、赤だった。

アイヤー!

多勢の混声合唱団のように見事にテンポのそろった大音声の絶叫が場内にとどろきわたった。これ、英語で「オーマイガー!」、日本語で「あれまあ!」である。正確に記すと、

アイィィヤァァァァ

であり、アイが四分音符、ヤーが二分音符のフォルティッシモで、速度はアダージョ、最後が嘆息ぎみのディミニュエンドで一抹のもの悲しさが漂ったものだ。なかなか音楽的であったのは皆さんの落胆の気持ちがひとつになっていたからだろうと思われる。このたび、バイデン政権のアイヤーも壮絶なものだったろう。メディアはお通夜みたいに真っ暗だ。それの忠犬ポチだった日本のお歴々はどうするんだろうか。

「トランプだったね、やっぱり」「安倍さんの死を悼んでたよな、やったのはあいつらだって」「現総理はアンチ安倍の急先鋒って伝わってるだろうな」「当然だろ」「なんでも麻生さんとは割とウマが合うらしいよ」「へえなんでかな、そんな刺さる話したのか」「いや、あいつは金のにおいがするって言ったらしい」

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この不可思議な総選挙はなんだったのか

2024 OCT 30 0:00:27 am by 東 賢太郎

ひょっとして石丸人気でひらめいたのか、支持率ゼロへのまい進をものともせず張り切るキッシー氏を見限ったのは大使閣下お気に入りの”ボク”に首をすげ替える意図だったと思われる。ボクをstrong manに仕立てるには「新鮮なイケメンによる刷新感」を売りに、ボロが出る前に「即刻の解散総選挙」 で速射砲のごとくたたみかける猫だまし作戦が必須だ。それで大勝させて11月に帰国し、アチラから操るのが閣下のシナリオだった。日本側の視点からすればボクをそそのかして踊らせ、「裏strong man」として影響力を行使しようという長老の策略でもあったわけだが、ボクの口から発せられる構文が軒並みSNSのお笑いネタになる事態は見ぬいてなかった。まずい。閣下の不興を買うイッチー女史の登板を避ける手駒は党内野党のゲル氏しかない。その結果があの驚天動地の国会議員投票だった。まるでバイデン・ジャンプじゃないか・・そうして愛国保守がお通夜のごとく沈黙する一夜がやってきたのである。

ゲル氏の登板が国民的な待望でなかったことは、支持率が早々に28%と末期のキッシー政権と10%しか違わぬ所に落ちたことでわかる。そこでゲル氏は裏金議員の非公認など前言撤回をくり返して批判されたが、緊急登板でもあり理解できぬことはない。自民党総裁選中に訴えていた「衆院解散前の衆参予算委員会開催」は、ボクよりは弁の立つ彼としてはまともな手であった。ところが彼はそれをも撤回し「即刻の解散総選挙」に切り替えた。これは驚いた。ボクの擁立が大前提であった「猫だまし作戦」への回帰であるからだ。

猫はそう簡単には騙されない。氏はイケメンでもなければ新鮮なイメージもなく、刷新感どころかキッシー路線の継承まで言っちまってる。こりゃめちゃくちゃだ。現場は対処の間もない。敵方はここぞとばかり裏金ミサイルの集中砲火を浴びせかける。歴史的大敗を喫するだろうという結末は素人にも予見可能であった。ふたをあければ何らの抵抗もなくあっさりとそうなり、野党が不信任決議案を出して自民内の敵方がそれに賛成するか棄権をすれば退陣か解散の二択しかない事態となった。解散は民意に反するだろうから退陣に追い込まれる。つまり将棋なら詰んでいる。ふつう、選挙のプロがそんな馬鹿なはずはなかろう。

僕は犯人が凶器にマンドリンを使うという不可解な殺人現場を残したエラリー・クイーンの名作「Yの悲劇」を想起し、もしかしてそういう驚愕の裏事情があったのか、はたまたゲル氏とモーリー氏が党内の敵方を一掃する自爆作戦を演じたところ、想定外の爆裂に自分が大出血して死にかかったのだろうかと考えた。理由はともあれ聡明なアチラさんの目からすれば非常におバカであり、政治は結果責任がすべてである。こんな輩がstrongに見えることは完璧に、ない。したがって、この選挙は「忠実なstrong manポスト争い」に野党党首も手を挙げられることを示した革新的なものとなったのである。

つまり、前稿で述べたとおり、自民党なるもの、即ち80年の長きにわたって同党が維持してきたマッカーサーのマンデート独占に裏付けられた甘い汁を吸う特権は溶解し、消滅の一途にあることが確認された。我が国がサンフランシスコ講和条約のくびきを解いて真に自立した国家になる第一歩になるのが我々の子孫にとって望ましいが、それができる政治家が何人いるだろうというミクロの議論に落としこまれていくだろう。裏金議員のみならず世襲のお気楽なファミリービジネス議員も一掃し、「世襲はできるが親の地盤の引継ぎは禁じる」という英国型の選挙システムにまで浄化する契機となるのではないか。

「忠実なstrong man」の日本語訳は「ポチ」であり、wikipediaに載せるなら代表的人物の写真はキッシー総理である。彼はそうなるために邪魔な派閥を破壊し、フラットな総裁独裁体制を築いた。ゲル氏がそれを引き継ぐには、どんなに変節といわれようがキッシーイズムを継ぐしかガバナンス保持の方法がない。さもなくば45日で首になった英国のトラス女史の二の舞だからなりふり構わずそうするだろう。イッチー女史は愛国保守の女神とは思うが国際政治はそう甘くない。腹をくくれるかどうかだ。本当かどうか、アチラから聞いた通りを書くが、トランプはキッシーを完璧に馬鹿にしてるそうだ。するとそれを継承する以外に道のないゲル総理の命運も見える。トランプは愛国保守である。来週はいよいよアチラの選挙だ。

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衆議院選挙を支配する法則について

2024 OCT 24 9:09:27 am by 東 賢太郎

これを書いたのは9月21日、石破総理誕生の11日前である。一言一句、変更していない。

自民党総裁選に思うこと

同稿は「自民党の裏金問題は国民の記憶からは消えない」で始まり、「総理は民意を無視して決まり得るが(筆者注:そうなったといえる)、その場合、やがてある衆院選、参院選で自公は “予定調和的に” 大敗するだろう」と結論した。その通りになっているように見えるのは僕に情報があるからではない。事実の集積からある法則の存在が推定され、「それによる予定調和」に至ったと見ているからである。その法則は同稿に譲るが、今の情勢をみると正しい可能性もある。もしそうなら、自民党執行部はそれがわかっておらず、事態は時々刻々と進行し、そのまま行けば自民党なるものは消滅する。

つい先日、目黒駅からタクシーに乗った。「あれMさんですよ」と運転士が指さした前の車はなるほど元大臣の自民女史の選挙カーだ。「泣き落としじゃ苦しいですよね、裏金やっといて」。仕事のメールを読むのが忙しいのでこういった。「そうなんですか、政治は疎いんで」。でも、それはそのとおりだ。涙で法則は変わらない。会食が終わった。僕らは政治など関係ないのでそんな下世話な話はしない。ところが帰路のタクシーの運転士も選挙の話を始めたから参った。「あんなコロコロ言うことが変わる総理はいませんね」。またしてもメールがたくさん来ていて、揺れると小さい文字が読みにくい。「そうなんですか、政治は疎いんで」「ええ、ひどいもんです。あっさり裏金議員を公認しちゃったでしょ、で、批判されると一部は非公認ですって、わけわかんねえですよ、ふざけてますねこいつら、自民党には二度といれません」。そういえば昨日、非公認議員にも公認料と同額の2千万円が出ていたと仰天のニュースがあった。なんと国民を欺くためのヤラセ非公認だったのか、裏金議員を処分した党が裏金を振り込んでいたのかって、あの運転士さん怒ってるだろうなあ。たしかに、それ原資は税金だからなあ。

政治は疎いんでは事実だ。政局は芸能界裏話に等しく、そんなもので世界は動いてない。政治家は政策で選ぶべきだから、その人物が噓つきだと有権者はどうしようもない。馬鹿はあり得ないが嘘つきは最悪なのだ。つまり、何度も書いたが、たかが学歴ではあろうと、噓つきの前科者は政治家にしてはいけないということこそが最重要ポイントだ。コロコロ変わる石破氏がそれだという運転士氏の主張は、しかし、やや違うのかもしれない。なぜなら彼は背後から操作されており、さもないとその場に居続けられないと悟り、意に添わぬ台本に合わせようと観念した発言がコロコロに見える。そう思わないでもないからだ。どう考えても主義主張が合うはずのない岸田政権を踏襲すると言ったが、そうであるならば背後は使い勝手が史上最高に良い岸田氏をクビにする必要などなかったわけだ。彼の低支持率では国会の支配力なしと判断したのだが、新総理のご祝儀があるはずが大してかわらない。こいつは用なしだと岸田に戻しかねないと恐れた。そこで出た、岸田さんとおんなじです、言いなりになりますからご安心くださいという背後への忠誠宣言と思われ、これだけは翻すのはクビになった時だけだろう。

こう書くと夢も希望もないが、仮に高市総理になっていても同じことである。強引にそれを阻止したのは彼女は(あえてぴったりの英単語で書くが)idiosyncraticに見え、教化するのは面倒くさそうだ(あるいは安倍元総理と同じほど無理だ)と判断されたのだろう。忠誠とは愛国保守を押さえ込んで国会を支配し、都合の良い(従って愛国保守の怒りを買う)法案と予算を可決させることであり、それができる者を米国人はstrong manという。男でも女でも野党でも馬鹿でも構わない。いやむしろ猛烈な馬鹿で簡単に手なずけられ、多数いる同レベルの国民の受けがいい者こそがお手軽でベストである。しかし忠誠であればあるほどやってるうちにお里が知れて愛国保守を敵に回すので、支持率は時とともに確実に落ちていくという法則も存在する。だから総理は使い捨てでオッケーなのである。そこで、やばい、捨てられると思うと権謀術数、奸計、裏切りなど秘術、裏技の限りを尽くしてお眼鏡にかなうための芸や大噓をくりだしたりの泥仕合が行われる。これが政局の渦の目であり、岸田氏は今もそれでだから俺のがましだったでしょとクリンチしている。国民にはそうした悲喜こもごもの寸劇に根強いファンが一定数おり、消費税ゼロで企業に課税しますなどと秦の始皇帝でなくてはできなさそうな政策を大真面目に掲げる者すら万年名脇役として国会に居場所があったりする。背後はそんな連中はどうでもいい。1955年以来主役たるstrong manが輩出されてきた、というより、党首にさえなれば自動的にそれにしてくれるマシーンとしての自民党が大事であり、操作すべき対象であった。べつに自民党である必要はないのだが。

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