幸せの魔法の合言葉
2012 NOV 22 19:19:25 pm by 東 賢太郎
野村ドイツ社長時代にドイツ連銀総裁を退任されたばかりのシュレジンガーさんと食事をしました。また後任のティートマイヤー総裁とも数回お会いしてドイツの金融政策に関するお話を詳しく聞きました。その2年後、野村スイスの社長時代にはスイス国立銀行総裁のツヴァーレンさんご夫妻と親しくさせていただき、クランモンタナの別荘に家族で3泊もさせていただくなどたくさんの思い出をいただきました。
僕が白川さんに限らず、中央銀行総裁に厳しいのはわけがあるのです。
3人とも口をそろえたように
「2%のインフレがいい。誰もがそれでうまくいくからね。」
と言われたのがとても印象に残っています。1%でも3%でもなく。
デフレは論外なのです。誰もがうまくいかなくなるからです。モノの値段が下がれば得をした気がするでしょう。牛丼もお弁当も。ありがたいですね。これは「お金の価値」が上がったということです。みなさん「消費者」としてはウエルカムですね。
しかし「企業の従業員」としてはどうでしょう。消費者としてのみなさんは何か買いたいものがあっても、今日買うより明日のほうが安ければ買い控えます。そうしてモノが売れなくなります。売るには値段を下げます。だから利益は減ります。すると企業は給料もボーナスもケチります。職もなくなるかもしれません。お金の価値が1%上がっても年収が1%以上下がれば、財布が軽くなってきます。
一方で借金はお金の価値が上がっても名目金額は減りません。だから肩の荷はどんどん重たくなります。資本主義というものは少ない自己資本でも借金を使って会社を大きくできる仕組みが根本にあります。インフレだと借金(肩の荷)が時間とともに軽くなるのでこの仕組みの潤滑油となりますが、デフレは逆に油をぬいてしまいます。資本主義が錆びついてうまく回らないのです。株や不動産も下がって逆資産効果(持っていると思っていた資産が減ってますます消費しなくなる)がダブルパンチになります。
公務員は「企業の従業員」ではありません。モノが売れようが売れまいが年収は変わりません。だから「消費者」のメリットのほうだけ受けられます。デフレはOKなのです。しかし公務員の給与原資は税金です。モノが売れず給与も減れば税収も減ります。国の財政赤字も増えます。当然、公務員費のカットという圧力が出ます。
こうしてデフレは国民全員を不幸にします。
「2%のインフレ」
これが幸せの魔法の合言葉なんです。
なぜ2パーセント?知りません。ともあれヨーロッパ金融界を代表する3人のセントラルバンカーのお言葉です。魔法にしときましょう。
Categories:______グローバル経済, 経済, 若者に教えたいこと
泉 喜章
11/24/2012 | 9:48 AM Permalink
デフレと言いますか、世界的に見て日本の特に若い方々の給与がとんでもなく下がってる事に自民党以外の方々ももっと配慮すべきだと思います。
しかもサラリーマン所帯の「可処分所得」を担ってきた「残業代」もいまや遠い過去の御話になってますね。
インフレ目標2%、素晴らしい目標値だと思います。当然実体経済は統制経済下でもなければ上ブレしますが、そこは資本主義の常です。
日銀がいくらアクセル蒸かしても、日本人は賢明ですから「バブル経済の教訓」を持ってる事と信じます。