Sonar Members Club No.1

since September 2012

天気予報はずるいのか

2013 FEB 9 13:13:54 pm by 東 賢太郎

6日の積雪予報がはずれたことで東京都の猪瀬知事が気象庁にクレームするなどちょっとした騒動になっています。

さて、ここで気になるのは降水確率という予報形式を「ずるい」と批判する声があることです。10%と言っておいて雨になっても「10回に1回は降ると言ったでしょ」と逃げるのはけしからんということのようです。

天気予報とはweather forecastのことですが、forecastの訳語に「予報」というのはなく「予想」「予測」です。予報の「報」という文字は「空襲警報」「地震警報」などのように公報(パブリック・アナウンスメント)という含意をもっていますから、ちょっとミスリーディングなのですね。

証券会社にいると市場の予測は避けて通れません。しかしそれが100%的中するなら会社勤めなどやめて自分で株を買えばいい。なぜそうしないかというと予測的中率が低いからです。気象現象は株式市場よりは近未来での予測的中率が高く、国民生活上の必要性も高いのでまずは御上である気象庁がやることになっているのです。

しかし高いといっても的中率は100%ではありません。午後5時に例えば10%と言った降水確率が10%ではなかったことが翌日判明する確率が18%もあるのです。雪が積もると言って翌日それがはずれた2月6日現象はけっこうあり得ます。あれはその前に積雪予報を出さずに交通マヒがおきた時の大批判から、失地挽回か、あるいは正反対に過剰防衛ぎみの「予報」を発してしまった可能性も指摘されています。

いずれにせよそれで飯を食う御上の使命感なのか生活防御本能なのか、単なる「確率」にすぎないものにバイアスを加えて「空襲警報」に寄ってしまい、御上に弱い国民がそれを鵜呑みして大慌てしたという人災の観があります。それを聞く国民も確率という考え方に慣れる必要があります。降水確率1%の予測で翌日雨に降られても、「ずるい」などいう甘ったれた反応が出るようではいけません。猪瀬知事の批判は、「緊急対応で都は迷惑をこうむった。気象庁はもっとしっかり予報しろ」ということです。しかし、株式市場ほどではないが、いくらしっかりやったところで外れる確率はゼロになるはずはなく、「ずるい」と言っている人たちと同じぐらい科学的視点が欠落しています。

気象庁は「空襲警報」はよほどの場合に限定して、確率提示に徹した方が良いと思います。そうなれば、すでに民営化されて183社も民間が参入している気象予測ビジネスはセカンドオピニオンとして需要が増え、設備投資が増えて、予想の精度はますます高まります。気象庁も競争にさらされて頑張るだろうし、不要なら閉鎖して税負担が減るだろうし、国民も「ずるい」と思う機会は減って受益者になるでしょう。

Categories:______世相に思う, 徒然に, 若者に教えたいこと

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊