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ジョン派 ポール派

2013 FEB 9 10:10:42 am by 東 賢太郎

先日、ねこ派と犬派の話を書きました。次はやっぱりこれでしょう。

僕はたぶん少しだけポール派です。少しというのは、ジョンの曲にはどうしても苦手なのがありポールにはあまりないという程度の差です。しかしベスト3の1位はアイ・アム・ザ・ウォルラスだったりして、その差は僅少かもしれません。

僕にとってポールの曲で、ウォルラス、ルーシー、ストロベリーのように「とんがった天才」を感じるものは思い浮かびません。ジョンの曲で正統派の弦楽四重奏で聞くに堪える曲は思い浮かびません。こういう正と反が弁証法的飛躍をしたのがビートルズという存在だったのでしょう。単にお互い違うというのではなく、お互いを刺激して高めあう作用があったのが奇跡を呼んだのだと思います。

のちにレクイエムまで作曲しているポールのクラシック音楽能力(少なくとも耳)は高いように聴こえます。ペニーレーン、ロング・アンド・ワインディング・ロードなどがピアノなしで作曲されたとしたら僕はけっこう驚きます。ピアノがちゃんと弾けたジョージ・マーティンの関与かもしれませんが、ポールのテーストであることは確かでしょう。そこに、ウイズ・ア・リトル・ヘルプ・・・での、これはまぎれもないポール自身のベースプレイ。モーツァルトにもない、でもまさしくそのレベルに達している(!)天才が乗っています。

作曲というのは音を選び取るという行為です。1オクターブを12分割した音を自由に選んで組み合わせることです。どうしてここでこの音を!という感動を僕はあらゆる音楽に聴こうとしています。その自由が実は天の差配だったのではという奇跡を追い求めています。クラシック好きなのは、そこにそれがたくさんあるからです。モーツァルトはそれに満ち満ちています。ポールの場合、よく言われるメロディーラインやコード進行ではなく、僕は彼の弾くベースに強くそれを見るのです。

ジョンにクラシック的テーストや個別の音選択の妙を見ることはありません。彼はロッカーであり、ギターという密集和音を出せない楽器による発想だけで作曲した非伝統的脈絡の中の天才です。彼自身が丸ごとああいう人であり、生み出した曲に見る天才の源泉そのものなので、ドラッグとの親和性が云々されるのです。クラシックの流れでいえばベルリオーズ、ヤナーチェック、ストラヴィンスキーといった突然変異型の作曲家を思い浮かべます。ジョンの曲は、幻想交響曲、シンフォニエッタ、春の祭典が当時の聴衆につきつけた鋭い刃のようなものを隠しもっています。

さて結局、お前はどっち派なんだといわれますと、やっぱり困ります。

 

(こちらにどうぞ)

  Abbey Road (アビイ・ロードB面の解題)

Categories:______ロシア音楽, クラシック音楽, 徒然に

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