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夜女大会(モーツァルト魔笛)

2013 MAR 2 11:11:33 am by 東 賢太郎

夜の女ではありません。「夜の女王」です。

この怖い女の人はオペラ「魔笛」でたった2回しか歌わないのに全曲のイメージをドカンと支配してしまいます。ちなみに映画「アマデウス」ではこんな風に描かれています。

モーツァルトはハプスブルグ女王マリア・テレジアに就職を邪魔されていじめられました。だからこのオペラで彼女を茶化して、しっぺ返ししたという説があります。このシーンはそれを意識しているかもしれませんね。このアリアの題名も「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」ですし。

夜の女王はこう歌っています。

地獄の復讐がわが心に煮え繰りかえる 死と絶望がわが身を焼き尽くす! お前がザラストロに死の苦しみを与えないならば、 そう、お前はもはや私の娘ではない。 勘当されるのだ、永遠に、 永遠に捨てられ、 永遠に忘れ去られる、 血肉を分けたすべての絆が。 もしもザラストロが蒼白にならないなら! 聞け、復讐の神々よ、母の呪いを聞け!

 

怒っているんです。皆さんも子供の時にお母さんにおこられたでしょう。

これは2番目のアリアですが 「夜の女王のアリア」 というと大概こっちをいいます。

オペラでも稀な高音を使用するため、歌うことが難しいことでも知られる。一点ヘ(F4)から高音の三点ヘ(F6)まで、2オクターブにおよぶ声域を歌いこなす必要がある。テッシトゥーラ一点ロ(B4)から二点ロ(B5)の高音で構成される。このアリアの高音を出す場所のように、高い音域での装飾的、技巧的な歌唱様式はコロラトゥーラと呼ばれ、歌唱にはこの高音を出す天性の資質に、その高音を自由自在に使いこなす技術が求められる。(Wiki)

 

だそうです。難しいんです。それはこれを聴くとよくわかります。

http://youtu.be/2eADuDAIVfA

最後に、音だけですが、これを聴いてください。

http://youtu.be/pDUyA-fVie8

この歌手はルチア・ポップです。あんまり怒ってる感じがしませんね。だから劇としての魔笛からはちょっとはずれてます。この人はソプラノ・リリコで本来はパミーナでしょう。

しかしこの演奏の指揮者オットー・クレンペラー はすごいことをやっています。音楽的に5184ryk-y2L__SL500_AA300_は非常に重要な役ですがけっして主役級ではない「3人の侍女」にシュヴァルツコップ、ルートヴィヒ、ヘフゲンという、当時メジャーリーガー級の人たちを充てるなど、大家ですからやりたい放題なのです。劇としては端役でも音楽的には完成度の高さが必須だからです。”音楽的”、この路線を頑固一徹でいったのがこの演奏です。劇は無視だから当然セリフもカットです。僕はこの路線を強力に支持します。モーツァルトは怒るかもしれませんが、このオペラ、筋で大事なのはパパゲーノとパパゲーナのくだりだけ。はっきり言って、あとは難しい解釈はいろいろありますが、音楽鑑賞の観点からはどうでもいいです。そして、その音楽はというと、もう神の造ったものとしか思えません。これを知らないで死んでしまうとしたら、ほんとうに悲しいことです。

ルチア・ポップはブラティスラヴァ歌劇場でまさにこのクレンペラーの指揮による夜の女王役でデビュー。同年にウィーン国立歌劇場にも同役で抜擢されました。ポップの夜の女王はこの録音しかありません。彼にとって人生最後になる魔笛の録音。そこで老クレンペラーがポップを夜の女王に指名した理由を、僕はすごくわかる気がします。

 

モーツァルトに関わると妙なことが起きる

Categories:______オペラ, ______モーツァルト, クラシック音楽

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