はんなり、まったり、京都 (その5)
2013 APR 13 10:10:09 am by 東 賢太郎
日曜日は妙心寺で例のテレビCMの桜を見てから朝食をいただきました。全国に7000ほどある禅寺のうち約半数がここを大本山としているそうです。天気図では雲は関東へ移動したようで朝方はくもりでした。
昨夜から散りはじめたというCMの桜の花びらが玉砂利の庭につもって、まるで雪景色のような文様を造りだしておりました。
朝食は7:30から40人ほど限定でいただきます。窓の外はやはり雪景色の風情でした。禅寺ですからすべてが簡素、質素で禁欲的なイメージなのにこんな目の保養が許されていいんだろうかと思うほどの美しさです。といっても今日だけなんでしょう。
お膳はこういうものでした。僕は朝ぬきでもぜんぜん平気な人なのですが、こうして出されてしまうと今度はこれではもの足りないという煩悩がむくむくと生じ、おかゆをお替りしてしまいました。禅寺にはもっとも不似合な人間でございましょう。
次は清明神社へ。安倍清明は10世紀の陰陽師とあるが僕にはよく理解できません。奇跡を起こしたという伝説が多くあるようです。それより、鳥居にドーンと貼られた見事な星印が気になって仕方ありません。これはいったい何なんでしょうか?この辺から雨足が強ってきました。しかもセーターを着ずに来たので肌寒く、どこか屋根のあるところへということで二条城へ行くことに。
ここは中学の修学旅行で来たのを覚えています。徳川慶喜が大政奉還をした間など臨場感がありますね。しかし中も寒い。民家のように囲炉裏のようなものも見当たらず、当時は今朝の朝飯程度の低カロリー食でしょうから、冬などは侍も大変だったでしょう。将軍の居所は大きいが、それ以外はトップの老中の間でさえとても小ぶりで、オーナーとサラリーマン社長の関係ですね。
あまりに寒いのでみぞれでも降ってくるかと思いました。皆さん、心は観光よりあったかいうどんのほうへ。さっそく錦小路の冨美家さんで名物の鍋焼きうどんとなりました。東京の人間としてどうしてもお汁だけは譲れませんが、別な食べ物と思えばこれはこれで一級品です。これに3人でカレーうどんとラーメンをシェアしましたが、ここでもやはりカレーうどんがベストであり、結局おみやげでお持ち帰りまでしてしまいました。
腹ごなしに商店街をぶらぶらすると今度は熱燗が欲しくなります。うまい具合に「スタンド」という昭和レトロ風居酒屋を発見、入ってみるとそこはなつかしい昭和の世界でした。東京だと浅草仲見世通りから一本入ったあたりにありそうなムードでしょうか。左から中村さん、阿曽さん、梶浦さん、甘田さん、皆さん、なんともまったりといい感じでした。
このあと、本日のメインイベントであった「都をどり」でした。こっちのほうが京おどりより歴史もプライドの高さも知名度も舞台規模も歌舞練場の立派さも派手さもチケットの値段も上ですよ、とおききしておりました。たしかになるほどです。何といっても祇園です。こんなイメージのものでした。
似て非なると言いますか、 どっちも良さがある。広大な舞台と装置の金のかかり方、明暗(照明)のメリハリはこっちの方が上。音楽はよりポリフォニック(上のビデオの横笛!)でオケも上等。ヨーロッパには複数のオペラハウスを持つ都市がありますが、これと京おどりはベルリン国立歌劇場とベルリンドイツオペラというよりウィーン国立歌劇場とフォルクスオーパーの関係に近いと言ってもあまりお叱りは受けないのではないでしょうか。ただ、僕は「魔笛」や「こうもり」や「ヘンゼルとグレーテル」のような出し物はフォルクスオーパーの手作り感の方がずっと好きです。今回は知っている人が出たし、席の良さ、初めて見たインパクトが強烈ということで京おどりが印象に残りました。
花崎 洋 / 花崎 朋子
4/14/2013 | 4:32 AM Permalink
東さん、京の町家ツアーの詳しいレポート、有り難うございます。特に京の伝統文化、とりわけ、伝統音楽に感動されたご様子が強く伝わって来ます。短調なのに何故か楽天的に聴こえる邦楽独特の節回し、日本人のルーツとも言えるキーポイントが隠れているかもしれませんね。時の明治政府が法律で「旧暦」の使用を禁止すると共に、音楽も洋楽中心で行くという方針を打ち出したために、日本人が失ったものの大きさは、到底計り知れないであろうとの感を強く持ちました。花崎洋
東 賢太郎
4/14/2013 | 1:13 PM Permalink
花崎さん、コメント有難うございます。明治政府が捨ててしまったもの。旧暦、音楽に加えて江戸時代まで「本草学」と呼ばれた今でいう漢方医学もそうです。しかし医学の分野ではその見直しが現在急速に進んでおり、平成19年度から全国80大学医学部すべてがカリキュラムに漢方医学を組み込んでいます。花崎さんのブログで「旧暦」のもつ日本人になじみ深い肌感覚を学ばせていただいていますが、おっしゃるように音楽においてもそうかもしれません。お恥ずかしいことに能も歌舞伎も見たことがないので合奏としての生の邦楽を聴いたのは今回が初めてです。京都で感じた衝撃は今自分の中でなにがしかの「ルネッサンス」のような気分を喚起しておりますが、それがいずれ言葉になったあかつきにはブログでご紹介しようと思います。
花崎 洋 / 花崎 朋子
4/15/2013 | 7:19 AM Permalink
東さん、お返事を有り難うございます。私も能も狂言も観たことがありませんし、能と狂言の違いについて西洋人に尋ねられたら、「能はオペラセーリアで、狂言はオペラブッファ」と回答すれば良い、と最近になって知ったほどです、漢方医学は最近かなり普及してきたようですね。なお「本草学」という用語、初めて聞きました。一つ有意義な知識が増えました。
中島 龍之
4/15/2013 | 10:55 AM Permalink
東さんの写真とコメントにより、行って見たくなりました。音楽も食べ物も興味がわいてきます。日本古来の文化に触れるには京都はいいですね。