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クラシック徒然草-日本の演奏家は優れている-

2013 JUL 19 18:18:46 pm by 東 賢太郎

日本のホール事情について僕はどうしても否定的なのですが、演奏家はどうかということを一言申し上げておきます。

あるチェコの演奏家が「日本に行くといつも新世界ばっかりやらされる」と嘆いたそうです。招聘元からすればまずチケットを売るのが大事ですから仕方がないのでしょう。音楽に限らず芸術は金に糸目をつけぬ資本家かさもなくばコミュニスト国家を求めているのかもしれませんが、やはり聴衆の方がチェコ・フィル=新世界、パリ管=幻想、とステレオタイプになってしまうのが問題の根源にあります。チェコ・フィルのドビッシーやパリ管のブラームスだって時には聴いてみたいと思うのですが、日本ではなかなか稀なことです。

僕がN響の定期会員なのは、シェフが変わるごとに彼の国籍に合わせてドイツもの、フランスもの、ロシアもの、イタリアものなんでも聴けるというのが理由のひとつです。シェフが固定だと彼の国籍、趣味で偏る可能性があるからです。だからN響は指揮者の要求に敏感に対応する優れた能力があると思います。カメラのCMで美人は美人なりに、そうでない人はそうでない人なりに・・・というのがありましたが、いいシェフもそうでないシェフも「それなりに」映し出してしまうのでとても面白い。しかしこのオーケストラの十八番は何だと聞かれると、ちょっと返答に困ります。誰々が振った時の何々、と枕詞がついてしまう。いやそれでも出てくる音は世界に恥じないレベルなのでいいじゃないかといえば確かにそうなのですが・・・。

韓国はチョン・ミュンフンという国際的スター指揮者がソウル・フィルハーモニーと天下のドイツ・グラモフォンの契約をまとめあげ、一躍、「国際水準のオーケストラを持った国」になりました。マーラーやブラームスのCDは欧米でも売れているそうです。なぜ日本にこれができないんだろう?もっと国際的な小澤征爾さんがいるのに。N響の方がずっとうまいのに。どうもサムスンと日本の電子機器メーカーの戦いを見るようでなりません。天下のNECが、小惑星イトカワの微粒子を地球に持ち帰るという世界を驚かせた宇宙最先端技術を有するNECが、スマホでサムソンにコロリと負けてしまう。これはいったい何なんだろうか??

東京都交響楽団(都響)というオケは音楽を解しない都に予算を削られて大変苦労したと思います。僕はたしか2005~6年頃にこのオケがサントリーホールでバルトークの「管弦楽のための協奏曲」をやるのを聴きました。これが驚異的な名演で、強く印象に残っているのです。この難曲はうまいオケはうまいオケなりに・・・ですから都響の水準は国際的にも非常に高いといってよろしいかと思います。都響は強力なセールスマンが必要なのです。そうすれば欧米で必ず評価されると信じます。

チョン・ミュンフンは韓国大統領と同じで「トップ外交」に熱心なわけです。どうして日本の指揮者にそれができないんでしょう。日本の音楽家はみな大なり小なり西洋人の壁と戦っていると思います。いみじくもチョン・ミュンフン自身が同じことを「東洋人の音楽家」におきかえて言っています。韓国の聴衆のレベルも日本と五十歩百歩ですから、オケのため音楽家のためにも外へ出ていく、それも本丸へ乗り込んでいくしかないでしょう。人口5千万人だとそう思う、でも1億2千万人もいればまあここで食えるからいいんじゃないと思う。そういうことなんでしょうか?

Categories:______クラシック徒然草, ______演奏家について, クラシック音楽

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