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クラシック徒然草-誰でもクラシック通になれる簡単な方法-

2014 MAY 8 12:12:15 pm by 東 賢太郎

斉藤さんは大変なクラシック通ですが、36年前に僕と知り合ったときバルトークやストラヴィンスキーは「???」だったとお書きになっています。僕だって始めはそうだったし、ああいう音楽を一度聴いてそうでない人はまずいないのでは。それでもめげずに何度も聴いてチャレンジするかどうか、クラシック通になれるかどうかのちがいはそれだけなんです。才能も特別な訓練もいりません。

それにはまず、それができる素直な自分をつくること、ご自分のことをポジティブにイメージすることです。これがとても大事です。イメージトレーニングしてください。「私はAKBも好きですけどモーツァルトも聴きますよ」というご自分をです。そういう自分になりたいと思うかどうか、それだけです。それさえできればもう80%はクラシック通が完成です。えっ、どうして私がクラシック?と自ら壁を作ってしまってはもったいない。こんな楽しいものを知らずに死んでしまうなんて、そういう人が一人でも減るといいなと心から願っております。

それでも突然おうちでベートーベンの運命が鳴ったらご家族はびっくりするかもしれませんね。であれば「今日から聴くよ!」「いくわよ!」と夕食の時にでも高らかに宣言してしまって下さい。きっと暖かく応援してくれるでしょう。ご一緒にコンサートに行けば家族の絆にもなりますね。いままで縁がなかった方ほど「クラシックを聴く自分のイメージ」というものは、誰でもないご自分にとって新鮮で刺激になるようです。周囲の目も変わりますがやがて自分も人生も変わったことに気づくと思います。老後の楽しみが確実に一つ増えます。お一人暮らしの方でも日々の大きな生き甲斐ができます。明日はあれを聴こうこれを聴こうとわくわくになります。保証します。そのぐらいクラシック音楽のもっているパワーは大きいのです。

よく考えて下さい。日本人に生まれたあなたはご飯、お寿司、ラーメン、カレー、すきやき、鍋物を食べ飽きますか?お茶漬けやサンマの塩焼きやお漬物、味噌汁はもう二度と食べなくていいやと思いますか?週2回でもOKでないですか?こういう「おいしい」だけではなく「永遠に飽きない」もの、「必須になってしまう」もの。まわりを見渡してもそうはないと思いますよ。でも音楽にはあるんです。音楽のうちで百年も二百年も世界中の人がそう思ってきているものをクラシックと呼びます。それをあなたが嫌いになるのは実はとてもむずかしいことなんです。

クラシックは懐メロやオールディーズとはちがいます。200年前のモーツァルトは「懐かしの」でも「オールド」でもない、永遠に新鮮で飽きないものなんです。おなかがすいて注文したラーメンが目の前に出てきて、「この食べ物は古代中国でできた老麺が起源で・・・」なんて考える人がいますか?いつどこでどうできようが、何国人が作ろうが、おいしければいいですよね。そんなものです、クラシックも。洋食と思わないでください。おいしさを一度覚えたら最後、病みつきになる「うまいもの」なんです。

僕は子供のころマグロのトロが大の苦手でした。だからいつも赤身専門で、トロをうまい!と思ったのはずっと後のことです。食べ続けてみると親がいってたことがわかる!と目から鱗でした。斉藤さんは???だったトロを僕を信じて食べ続けて下さったんでしょう。おせっかいで押しつけた?のに感謝をして下さっていますが、がんばってそうしてくださったご信頼に僕の方こそ感謝です。斉藤さんに36年ぶりにお会いして、あの出会いがなければ・・・と言っていただいて、それがうれしくてなりません。そういう人がもっともっと出てくることが僕の人生の願いなんです。

そういう気持ちでいま僕がブログに書いている音楽は、実は毎日聴いているものとはちょっと違います。新世界や未完成はもうたぶんこの10年で数回も聴いてないでしょう。飽きたのではありません。若い頃の思い出写真のような存在になってしまっているからそっと大事にしておきたいという気持ちがあるのです。それでもたくさんの感動をいただいた恩人ならぬ恩曲です。だからこれからの方にはどうしても聴いていただきたくて、そういう強い思いで選んでいます。

僕は入門用の曲なんかないと考えています。ピアノの練習用に作ったバッハやショパンの曲(しかし名曲!)はあっても、観賞用の入門曲はありません。プロコフィエフが「ピーターと狼」、ブリテンが「青少年のための管弦楽入門」という曲を書いていますが、「おかあさんといっしょ」とはちがって子供を意識はしていても立派な曲です。しかし「ピーターと狼が気に入りましたが次は何を聴いたらいいですか?」ときかれるとちょっとつらい。それがメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲なら自然に何曲かご紹介できるのです。

だから僕のブログのカテゴリー(アルヒーフ)にはそこそこの数の曲がたまっていますがほとんど重量級の曲が並んでいます。どうしてかというと、名曲だから。心から敬服しているからです。だから難しいか?そういうことはありません。カレーとラーメンと、どっちが食べやすいかなんてありませんね?お口に合うか合わないか、それだけなんです。初めて日本食を食べるといってお子様ランチから入る必要はありません。カレーがちょっと辛かったからといって去ってしまってはもったいないです。

僕が「ストラヴィン好きー」だったのはたまたまウマが合ったからです。友達の相性と同じですね。そういう「親友」を見つけると、彼がクラシックの世界に引っぱっていってくれます。これが速いのです。彼は僕にバルトークというちょっと気難しいけどいい奴を紹介してくれ、そうやってどんどん輪が広がりました。それが誰から始まっても構いません。同じ人でも合う作品と合わないのがあります。僕も今でもあります。有名曲が合わないことだってたくさん。ぜんぜん構いません。そういうのはどんどん飛ばして、親友のベスト作品にめぐり会ってください

だから僕が取り上げている曲は僕の親友のベスト作品集です。もう50年もやっていると親友だらけですから、それらはクラシック入門曲でもなければ卒業曲でもなくて、世のクラシック通という人たちがほとんど聴いているのはこれ!というベスト曲集にだんだんなっていきます。順番は意味がなく、なるべくその曲に愛情が高まっているときに書こうと思っているだけです。だからどうしても初恋の方からになっていますがそれは重要なことではありません。そこには通の方が読まれてもいいということも書いています。いろいろな方に楽しんでいただきたいからです。だから楽譜が出てきても何のことやら・・・という方も多いでしょう。わからなければそういうことはぜんぶ無視してください。

ただご紹介した曲はぜひ一度、必ず最後までご自分の耳でお聴きにはなってみてくださいそれが大事なのです。誰の演奏か?というのは親友ができてからでいいです。プライオリティーはずっと下です。どの店のラーメンがおいしいか?どうでもいいです。どこでもいいからまずラーメンがおいしいということを知る方が先です。だからCDだって僕が挙げたものでなくても、i-tuneには安いものがいくらもあるし、youtubeならタダで聴けます。お金はいかようにも倹約できます。それでつまらないと思う曲はどんどんスキップして下さい。それでぜんぜん構わないのです。もしも、あっいいな、ちょっとステキだなジーンときたな、という曲にめぐり会ったら、それはラッキー、それがあなたの親友、恋人候補ですから何回も何回も聴いて下さい

登山と一緒です。どの道から頂上をめざしてもOK。ルートはたくさんあります。お好きな曲がそのルートを教えてくれているのです。それさえ見つかればしめたものです。それが1合目なら、2合目は何を聴いたらいいか?5合目は?それは人それぞれだから答えはひとつでありませんが、もしコメント欄にでもご自由にご質問いただければ必ず回答しますしできるかぎりそれをお示しできると思います。それをご自分で手探りで発見するのも楽しいものです。僕は先生がいませんでしたからかなりの出費を重ねて遠回りの無駄骨を折りましたが、いまになるとそれもいい思い出です。

誰でもクラシック通になれる簡単な方法、それは以上のことを1年ぐらい続けていただくことに尽きます。継続は力なり。あとはご自分でどんどん登っていけるでしょうし、登りたい、頂上を見てみたいという気持ちになっているご自分を発見されることでしょう。そうなっていただけるよう少しでもどんなことでもお手伝いができるなら幸いです。きっとそれは僕の生きがいにもなりますので。

Categories:______クラシック徒然草, ______体験録, クラシック音楽

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