Sonar Members Club No.1

since September 2012

金(ゴールド)の価値について 

2014 MAY 15 19:19:48 pm by 東 賢太郎

現在、地上にある金の総量は165,600トンである。50メートルのオリンピックプールにして約3.5杯分に相当する量であり、これを全部買うとすると1gあたり4600円として762兆円が必要になる。馬鹿なことを考えるなと言われそうだが、その62.5%は宝飾品、工芸品だから476兆円は現に誰かに「愛でるために買われている」のである。政府保有は17.5%、民間投資用は17.9%しかない。いかに「民間の実需」が大きいかがわかる。

日本国の今年3月末の国債残高は854兆円である。金は765トンしか持っていない。たったの3.5兆円、国債残高の0.4%でしかない。金価格は2000年から約5倍になっている。金という資産はおカネ(紙幣)が危ない時、つまりインフレや通貨危機の時の古典的な駆け込み寺である。だから個人は当然持っていたほうがいいが、おカネが危ない時は国家財政も危ないのだから、国家だって金を保有する理が通るのだ。ところが日本国は危機意識がないのか金融音痴なのか、やっていない。ドイツは日本の4.5倍、破たんの瀬戸際だったイタリアだって3.2倍もっているのである。

前回の「ビットコインの未来は?」において、

制度や仕組みというものが社会に定着するかどうか?それを判定する3つの尺度は ①有用性(utility)②耐久性(durability)③永続性(sustainability)

と書いた。この法則は、モノの価値にも当てはまる。

①有用性

金は美しい。まず色がきれいだ。太陽光のイメージがある壮麗なきらめきは王の権威の象徴にぴったりだ。女性には高貴さと輝きを与えるだろう。だから王族は金の装飾品を身にまとい黄金の宮殿に住まい、あらゆる信仰の対象に金箔をほどこそうとする。だから太古の昔より世界中で絶大なディマンド(需要)がある。

②耐久性

化学変化せず安定 展延性、耐酸性、伝導性に優れ、錆びない。だから物質として朽ち果てることはなく美しさも永遠に色あせない。

③永続性

人間の手では作れない。採掘は毎年ほぼ2500トン程度で総量の1.5%しかない。だから①のディマンドが減らない限り価値が大幅に希薄化することがなく、②の性質ゆえに財産の保存という別なディマンドも発生し、それも永続する可能性がある。

つまり、金は社会に定着して価値があり続けるための「3種の神器」を所有している地球上ではきわめて稀な物質である。①が大きいことは総額の762兆円の62.5%が民間の実需であることでほぼ保障されていると考えてもよく、その大きさと永続性を考慮すればウルトラレアメタルに相違ない。地球上の金融資産総額はデリバティブを入れると兆を超えて京の単位になっている。そんなものはただの紙になるかもしれないし、その紙のお値段というものは、これも紙になるかもしれない米ドルや円でついているのである。

そのような砂上の楼閣の類で自分の金融資産を保全しようと真面目に考えている資産家は世界のどこにもいない。紙幣も紙なら同じく国家の借金証文である国債も紙である。そういう感覚がないのはガラパゴス日本の資産家、投資家だけである。そうでなければ854兆円の90%以上もが国内だけで売れる国などあるはずがない。いや自分は銀行預金してるから大丈夫?とんでもない。銀行は預金で集めたお金の70-80%は国債を買っているのだ。国債が売れなくなって外人に空売りでもされれば破たんする銀行が確実に出る。そうなれば預金はよくても1千万円しか返ってこないだろう。いや、その時はその1千万円だって牛丼が何杯食べられるか程度の価値になっているかもしれないが。

2000年から金価格が5倍というのは、金の価値(①のディマンド)はほとんど変わっていないのだから、おカネのほうが5分の1になった、つまり紙きれに近づいたということを確実に意味しているのである。世の中は金投資と呼ぶ。アジアで最も早く資本主義を実践したにもかかわらず、日本人は大学教授クラスのインテリに至るまで投資と投機がほぼ同義と思っている人が非常に多い点で、それがずっと遅れた中国の一般大衆となんら変わらない。しかし中国人はその違いはまだ知らないが、それと保全の違いは知っているから日本人より進んでいる。政府を信用していないからである。4600円で買ったのが上がるか下がるか。そういう考えで金を見るのはまったくお門違いである。日本人および日本国、日本の地公体は金保有を真剣に検討すべきである。

 

お知らせ

Yahoo、Googleからお入りの皆様。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/
をクリックして下さい。

 

Categories:______グローバル経済, 経済

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊