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ビットコインの未来は?

2014 MAY 14 15:15:53 pm by 東 賢太郎

私見 次世代の勝ち組産業

に次回書きますと予告した答え、それは「ネット上の仮想通貨」です。数ある中で最も有名なのがビットコイン(BC)でしょう。通貨は貨幣と違って政府が受け取りを強制したものをいいます。だからBCは正確には仮想貨幣というべきですが、強制されなくても使われるのは理由があります。

制度や仕組みというものが社会に定着するかどうか?それを判定する3つの尺度があります。①有用性(utility)②耐久性(durability)③永続性(sustainability)です。Mt.Gox社が破たんしてどうもいかがわしいというのが一般の理解と思いますが、そうではないと思われます。①は二重丸、②も一重丸はつけられるからです。

①の有用性、つまり「役に立つ」ということですが、これは大きなものです。なぜか?海外送金に銀行が不要になるからです。実際やったことがある方はわかるでしょう。僕も持っていた土地を外人に売ったことがあって、送金してもらう手間、コスト、所要時間、情報のなさに参った経験があります。遅い、高い、不透明なのです。BCはこれが10分でできて為替手数料もゼロです。電話の世界でむかし1分5千円もした海外通話がスカイプ等にシェアを食われたのと同じことがこれから起こります。

マイクロ・ペイメントという有用性もあります。ネットのコンテンツ課金は100円の振込手数料以下の金額では意味がありません。だからコンテンツ無料で広告料課金というワンパターンのビジネスモデルしか成り立たないのが現状です。i-tuneも1曲150-250円取らないとペイしません。しかし銀行を通さなければワンクリック1円の課金でもできますからネットビジネスのすそ野を広げるだけでなく、コンテンツの質を向上させるという効果も現れるでしょう。

アングラマネーを呼び込むという負の側面ばかり報道されますが、以上の2点という正の側面からの潜在需要は概算ですが5-10兆円存在する可能性があります。経済の効率化による副次効果がそれに上乗せされます。政府、中央銀行がBCを禁止したり規制するのはインターネットを禁じない限り技術的に困難と言われており、そうしようと試みるような国家からは資金が逃避するでしょうが皮肉なことにその逃避(キャピタル・フライト)にこそBCがうってつけなのです。

預金封鎖する前にBCを取り締まることが可能かどうかというゲームに負けるとその国家は資本が流出して通貨は売られて危機的状況になるリスクを負います。現にキプロスでそれがおきました。だから世界中の国でBCを潰すのではなくディファクトを創ろうという方向にかじを切る可能性が高く、現在我が国(自民党)もその方向と聞いています。10兆円の需要をBCだけで吸収すればコインの価格は上がってしまいますから、そこには新規参入者が増える余地があります。①は疑いなく巨大なのです。

②が一重丸というのはMt.Gox社破たんのように耐久性にやや疑問あり(脆弱性があるといいます)ということです。しかしこの事件は両替所が潰れたというだけで制度そのものの根幹を棄損したわけではありません。むしろ問題は③にあり、BCは永続性がないかもしれないという点こそ重要です。BCとは「コイン」ではなくネット上のデータです。データの授受(=送金、決済)がブロックチェーン(公開帳簿)に開示され、データが改ざんされていないことを第3者が競って証明(承認)することで取引が正しく成立します。

この証明とは多くの人が「ハッシュ関数」という数学パズルを解き、一番早かった人に報酬が与えられるという仕組みで、それによってセキュリティが守られています。これを「採掘」(マイニング)と呼びます。しかしBCの発行量は2100万で打ち止めであり、採掘は多くの高性能コンピューターと電気代を要し、一部のプロやファンドが独占しつつあります。採掘コストは上がり、当たり率は低下するので採掘者のインセンティブが次第に落ち、攻撃者が結託すればセキュリティを脅かす可能性もあります。だから③「永続性」はクエスチョンマークがつくのです。

BCは証明に10分かかるというのも有用性のネックですね。スーパーのレジで次の人を10分待たせるのは無理でしょう。だから僕はハッシュ関数方式のBCはスタンダードにならないという考えを現在は持っています。しかしネット仮想通貨はBCだけではありません。もっと有望なのがいくつかあります。現在調査中ですが、そのどれかが貿易に限らず世界の決済システムを根底から変える可能性は非常に高いでしょう。

日本は取り組みが遅れ気味です。2008年ごろサイバーキャッシュという概念による決済代行サービスが現れましたが失敗しました。クレジットカード決済が進んでいない中小eーコマース向けの付け焼刃のビジネスだったからです。ところがブロードバンド化が進んで決済の電子化がやりやすくなり、スマホの登場でインターネット・ユビキタスの状態が日常化しつつあります。

クレジットカードというのはインターネット出現以前の仕組みです。だから昭和のにおいのする決済端末が出てくるのです。Edyやsuicaのようなプリペイド型電子マネーにクレジット機能があれば足りるしそのマネーが仮想通貨であってもいいわけです。ここは今後5年で急速に進化するビジネス領域でしょう。個人的に大変興味があり目下研究中であります。

 

Categories:______グローバル経済, 経済

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