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バルトーク 弦楽四重奏曲集

2015 FEB 13 0:00:36 am by 東 賢太郎

unnamed (23)浪人している時に「バルトークのすべて」というLP2枚組(左)を買ってすり減るほど聴いていました。セルのオケコン、ブーレーズの弦チェレ、カサドシュ夫妻の2台ピアノと打楽器、スターン/バーンスタインのVn協2番、アントルモン/バーンスタインのピアノ協2番などが入っていて、そこに第1楽章だけジュリアードSQの弦楽四重奏曲第4番(1928)があったのです。

bartok3これに関心を覚えて大学にはいってジュリアードの全集(右)を買いこみ聴きまくりました。6曲のどれが好きかはそれぞれでしょう。最初はよくわからなかったのですが、だんだん聴きなじむうちにまず2番の神秘感が気に入ったし、5番の終楽章の弦チェレを思わせる対位法の立体構造、6番の宇宙の深遠を覗き見るような不気味さも味が分かるようになってきました。しかしその中でも凄いと思ったのは4番だったのです。

この曲のアーチ構造によるシンメトリカルな構成は非常にロジカル、堅牢です。原子核の陽子と中性子による構成図のようにかっちりと無駄なく出来ています。物体の重さの99.97%が原子核の重さですが、この曲は99.97%が真核のみで組成されているというイメージです。核を構成する主題が第1、5楽章をしめくくるタッタッタッタラランであり、5楽章の1-5,2-4がペアであり第3楽章が3部構造でその1が第1が第1楽章、3が第5楽章と素材共有関係にあって等々はあまりに有名でどこにも書いてありますからご興味ある方はご覧ください。

本稿の目的はそういうことの解説ではなく、これがアートとしてどんなに親しみやすいかを敬遠気味の方にわかってもらうことです。カルテットがバルトークの中でも難解と思っている方も多いでしょうし、1,2度聴いて鼻歌になるような曲でないことはたしかです。まず、4番に入る前に、4番並みの完成度がありながらもっとわかりやすいと思う5番(1934)の第5楽章を聴いてもらいましょう。5番はバルトークが米国に渡ってからの作品で、管弦楽のための協奏曲と同じく曲想が平明です。ジュリアードSQの演奏です。なお5番第5楽章についてはこのブログもご覧いただきたいと思います モーツァルト ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466

これが1935年で翌36年に弦チェレがスイスのパウル・ザッハーの委嘱でできるのですが、最後に長調が回帰するし、リズムや合奏のパターンはこれに木琴とティンパニを入れれば弦チェレみたいと思いませんか?弦チェレ的な要素は4番の第2、4楽章などにも散見されます。僕はこれを完全に覚えて耳を慣らして4番がしっくりくるようになりましたのでドリルと思ってお試しください。

これを覚えたら、もう少し先鋭さよりもハンガリーの伝統に重心を置いた演奏で全曲聴いてみましょう。タカーチQです。

さて4番です。youtubeをいろいろ探しましたが、そこにある中ではこれが最も好感が持てます。フランスのエベーヌ四重奏団(Quatuor Ebène)でメンバーの専攻は全員がジャズという異色のカルテットです。

ややアーティキュレーションがソフト・フォーカスですが第3楽章の神秘感など見事ですし終楽章のエネルギーの爆発は大変よろしいと思います。

ジュリアードSQはモノラル、ステレオ、デジタルとバルトーク全集を3度レコーディングしていますが上掲のは2度目のステレオで、ヴァイオリンがマン、コーエン、ヴィオラがヒリアー、チェロがアダムで、マンが少し音程が甘くなってしまう前のほぼ絶頂期。これで刷り込んだせいもあり、やはりこの筋肉質で直球勝負の全集をファーストチョイスとしてお薦めすることになってしまいます。

XAT-1245530148次点は上記のタカーチQですが上掲は新メンバーによる新録音のほうで、右はオリジナル・メンバーによる84年録音の旧盤です。ジョルジュ・レヘルのブラームス交響曲全集( ブラームス交響曲全集(ジョルジュ・レヘル指揮)で書いた通りのことが当てはまるのですが、共産圏時代の、したがって19世紀欧州のタイムカプセル的な意味合いのある録音で、木質感のあるローカルな味が忘れられません。CDは廃盤のようですがi-tuneで買うことができます。

MI0001114334さて最後に、最近発見した大変な名演をご紹介します。ファイン・アーツQです。昔聴いたことはあったのですが59年録音で音が良くなくそのままになりました。ところがこのMUSIC&ARTSプレスのCDはリマスターが良好で驚くほど音が良く、先日幸いに中古で見つけて狂喜しているところです。ジュリアードの棘はなく丸みのある弦の魅力が支配します。タカーチの木質を保ってスリムにしたような演奏で、シカゴの団体なのに非常に欧州的な味わい。オケにたとえるならウィーンPOがクリーブランドOの精度を持ったようなイメージです。とはいえ4番の第1楽章の機関車のような推進力は快感なうえに、この4人全員の技術とピッチの良さは並ぶ者のない水準なのです。バルトークの不協和音がこんなに音楽的で美しいハーモニーだったのかと目からうろこです。この6曲を敬遠していた人は是非一聴していただきたく、これをくりかえし聴けば必ず名曲だと確信するに至るでしょう。そこから東京SQ、エマーソンQ、ヴェーグQなど多様な演奏を味わうことで、人類史に残る最高峰の弦楽四重奏曲集の多面性を知ることができると思います。

4、5番だけでなく各曲とも個性があり、それぞれについてはいずれ別稿にしたいと思います。

 

(こちらへどうぞ)

バルトーク 弦楽四重奏曲第4番 Sz.91

シューマン弦楽四重奏曲第3番イ長調作品41-3

 

 

 

 

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Categories:______バルトーク, ______ブーレーズ, クラシック音楽

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