『黒猫フクの人生観』 (第十四話)
2026 MAY 23 20:20:44 pm by 東 賢太郎
プライバシーに関わるので「主人の知人」としておくことにするよ。その方のご子息であるX君、高校を出て外国の難関大学にめでたく合格したんだ。小学生の頃、主人がプロ野球選手と会食したおり、大ファンだと料亭までサインをもらいにきて目を輝かせていた子だから主人もよく覚えてたよ。帰国子女でないのに英語、大したもんだね。でも昨今の世界情勢なもんだから、父君から「現地に知り合いがいない、独りじゃ心配だ」と主人に相談の電話が入り、「大丈夫だ、しっかりした男がいるよ」とお答えしていたというわけだ。その男がたまたま仕事で来日することになったので、主人が両人をオフィスで引き合わせようというはこびになったんだ。
ご子息をひと目見た主人、感銘を受けた。11歳と18歳。見違えるようだ。7年でこんなに立派な青年になる。ここからの7年、楽しみしかないじゃないかとピンときたんだね。選んだ学部は情報コミュニケーション。将来は何やりたいのときくと金融という。自分の業界なもんだから「X君、それは素晴らしい志だね」といつになく上機嫌である。でもね、主人は彼の年で志したわけじゃない、サラリーマンになるしかなくてしょうがないから野村證券に入っただけなんだ。なんたって、本当の動機は人事部にかわいい女の子がいたっていう恥ずかしい話だ。みっともなくて言えないわけだね。
ここでちょっと遅れてHがオフィスに到着した。X君、少々緊張気味だがしっかりと英語で自己紹介ができた。「大丈夫、半年でペラペラになるよ」とHが太鼓判を押す。「とてもいい。上手い下手なんてどうでもいいからとにかく喋れ。アピールしたいものがある奴の話は聞いてくれるよ。彼女10人作るぐらいの勢いでやりなさい(笑)」。いい感じだ。今どき初対面の子にいきなりこんなアドバイスする人は日本にはいないよね。あそこは危険、あれ食うな、こういう奴に気をつけろみたいなネガティブのご指導から入るんじゃないかな。といって単純に性格が明るいとか陽気とかじゃない、Hはなんたって4大会計事務所(Big4)の1つKPMG出身だからね、能天気じゃなくてSunny Side of the Streetの人種というものだ。まさに主人もそうだからね、初対面の時から気が合ったのもわかる気がするよ。
主人もそう思ったらしく、いつだったか「そう思わんか」と尋ねたことがある。するとHはNoという。なんでも彼は運命を委ねるMonkがいるらしく、主人の写真を見せたら「この人は前世でアンタの先生だった人だ」とびっくりすることを言われたらしいんだ。主人がそんなバカなと笑い飛ばし、「だって前世というならアガスティア曰く俺はパキスタンの王女だったんだぞ」と否定すると「そんな昔じゃない。我々のひとつ前の人生だ」と言いはる。本気なんだ。「だからお前とパートナー契約したんだ」「わかったわかった、じゃあこれからビジネスは先生の言うことに従うんだな」なんてことになったものだ。
天国で物事を眺めてるとこの話はあながち嘘じゃないことがわかるよ。地球で縁があった2人がここに来て別々な赤ちゃんで生まれ変わる。普通はまた出会ったりしないけどね、もしそういうことがあると男と女なら運命の人だなんてことになっちゃうんだ。ある方の結婚式で、主賓の安倍晋三元総理が愛妻家だったチャーチル首相の逸話のスピーチをしたんだ。「生まれ変わっても、地の果てまで行ってきみを探し出す」というくだりで主人はいたく感動したらしい。でもHに言われてもなって思ってるだろう。とはいえ妙に信心深いところもあるからね、ビジネスパートナーとしてHを信用してることは間違いないさ。僕も天国から株式市場見てるしね、キツネと狸の馬鹿しあいで誰も信用できないあの世界でそういう人はあんまりいないんだ。X君、いい人と知り合ったね。
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