話題のテラドローン株投資のタネあかし
2026 MAY 1 8:08:23 am by 東 賢太郎
これを書いたのは3月17日だ。その日のテラドローンの株価は3,125円だった。
きのう(4月30日)テラドローンは何度目かのストップ高で9,270円で引けた。僕の長い投資歴でも1ヶ月半で3倍になったのは初めてだ。3月17日にブログを読み、徳重社長を信じて株を買った人は宝くじに当たったようなものだろう。
そこに書いたように、僕は上場前の2020年に社長を見込んで投資して第5位の大株主になった。当時会社側は資金需要があり魚心に水心であった。しかしスタートアップ投資という業務は僕が証券会社時代に本業としてきた仕事ではない。当時は上場企業の業績・財務データを解析して評価をするのが本業で、データがないに等しい新興企業投資にその手法はまったく通用しないのである。そこで自分で事例を研究し、何度か実際の投資にチャレンジしたが見事に失敗した。しかしその程度で撤退するにはこの業務は魅力がありすぎた。なぜなら、突き詰めて考えると、失敗の最大の要因は経営者を見る基準が甘かったことにあったのであり、人物を見ることに関しては年の功で業界の誰よりも自信が持てることに気がついたからだ。
「経営者を見ろ!」なんてご託はそこら中のビジネス雑誌がネタ切れの時にタイトルに使う便利な呪文みたいなものだ。意味があるのは、経営者を見て企業の業績を予測することを人の能力を見抜いてマネタイズする行為と無機的に捉えることであり、それ以外の何物でもないと知ることである。要は人の値踏みであり、こう書いてしまうとあまり良い気持ちのしない読者が多いかとは思うがビジネスに成功するのは良い人であったり他人の気持ちを斟酌したりすることによってではない。「経営者のマネタイズ」という視点に気づいてすらいない人が何千人経営者に会って統計を取ろうが経験を積もうが、そもそも他人の経営能力を数値化する方程式を知らないのだから評価などできるはずがない。普通の人が何千人のプロ野球選手にインタビューしようが野球がうまくなるわけでないのと同じなのである。レポーターやマスコミの仕事はそれはそれで大切であり、そこに一定数のファンがいてビジネスとして成り立っていることを否定するものではないが、ここで議論の俎上に載せている「ビジネス」とは投資であり、数字のみが意味を持つお金を扱う仕事においての話であり、結果を出さなければ一文の価値もないのである。
そもそも論だが、僕は口だけ達者でもっともらしい言葉を吐くが自分でやらない人はどんなに好人物で家柄や学歴があっても無価値と思っている。人としての是非をいう気はないが、その手の人がなれるのは評論家だ。事業家として経営を行うことは無理である。だから僕がお付き合いすることはないし、まして投資することはありえない。シベリウスが言っているように評論家の銅像が建つことはないのである。もういちど書く。「人物、家柄、学歴」を否定したのだから経営にそれはいらないと僕は言っている。あっても結構だがそれで経営力を評価すると失敗するから否定した方がリスクが少ない。否定して問題ないのは、血液型や星占いや犬派猫派で判断する人はいないのと同じほど経営実績、つまり株価に影響がないからだ。もしあるならすべての上場企業の経営者は自他ともに認める人格者で、華麗な閨閥を持ち、その国のトップスクールの卒業生ばかりになっているはずだ。日本だけを見ても、例えばトヨタにしてもソニーにしても、閨閥だけで経営して成功した企業はほとんどなく、そんな実態には全くなっていないのである。株というのは美人投票だから仮に99%の人が「経営者が犬派だから」という理由でペット保険会社の株を買えば市場に大きな歪みが生じる。投資収益を最もリスクのない方法で得るには「歪みはいずれ解消する」という数学で言うなら公式に賭けることだから、その判断が誤りだったと99%が気づけば巻き戻しで株は下がり、ショートした投資家は予定調和的に利益を得ることができる。
上場している株はデータが出そろっているから歪みが生じる可能性は少ない。この状態をビジネススクールでは「市場は効率的(efficient)である」と教える。トヨタの来年の収益が確定的に投資家に知れ渡ってしまえばトヨタ株はある株価に収束し、そこに投資して得られる利益(キャピタルゲイン)の期待値はゼロになる。つまり、その逆を考えれば良く、データを分析してなるべく大きな非効率(inefficiency)を発見することがアナリストの仕事であり、与えられた資金をそれを持つ複数の銘柄に振り分け、株価の動きが無用に同期してポートフォリオ全体の収益の増減の振れ幅を大きくしないことがポートフォリオマネージャーの仕事なのであり、投資家は彼らに手数料を払っている。誰だって自分で勉強すれば出来るが、その負荷を背負うためには相応の時間と労力が必要で、その試みが何も生まなくても生活に問題ないほどの資産が必要だ。しかし資産がある人はそこまでしなくても人生に困らないのである。したがって、ほとんどの人は手数料を払ってその作業を専門家に委託しており、我々ソナー・アドバイザーズもその手数料をいただいてアドバイザリー業務を行っている。一方、株価もデータもないスタートアップ企業に効率的(efficient)なものは何もなく、いわば非効率の固まりであり、99%の人が「経営者が犬派だから」程の誤りだったと後で気がつくありえない理由で評価あるいは無視さえしてしまうことが大いにあり得る。非効率が大きいほど投資で得られるリターンは大きい。数学の公式だ。テラドローンの場合、ドローンは子供のおもちゃである、中国企業が独占して参入余地がない、などの”犬派理論” が市場を席巻しており、それが誤りだったという巻き戻しのインパクトは強大だった。だから株価は1ヶ月半で3倍になったのである。
では経営者の資質として評価すべきものはなにか。これを解説するには1冊の書籍のスペースが必要だろう。仮に僕が『株式投資で儲ける方法』というタイトルの本を書いたとしよう。「その本が売れるかどうか」、「売れるなら1冊いくらで売るべきか」は、僕の「人物、家柄、学歴」ではなく、その本が株で儲けたい人にとって実益があるかどうかで決まるはずだ。とすれば、買おうかなと思う人は僕の実力、すなわち、僕が過去に投資した株のパフォーマンス(戦績)を調べるだろう。それが良ければ売れる。たいしたことなければ売れない。そうして本の値段が決まり、著者は印税を手にする。僕は株で儲けることよりもっとうまいことがあると自分では思っているが、それは本の値段の足しにはならない。「経営者(人)のマネタイズ」とはそういうことを言っている。いっぽう僕の側からすると、本を書いて得られるかもしれない印税のベストシナリオより投資の仕事の方が確実に利益率が高い。よって経済原理に従って本は書かない。印税の方が高いか、本業だけでは満足な収益が得られない方は書く道理があるが、そういうことだから、僕が彼らの本を読もうと思うことはない。例えばマーケティングはアメリカでは学問ということになっているが、「商品がたくさん売れる理論」を伝授する教授がなぜGMやIBMのそのポストに就かず、たいしたことのない給料を学校からもらう生活をしているかはウォートンスクールの学生の間で格好の皮肉ネタになっていた。僕がブログを書くのは、こう言ってはMBAという学位をお持ちの方に失礼にはなるが、ビジネスに理論などはなくやってみないと分からないからだ。だからそんなもので人様からお金を取るべきでなく、理知的な人には参考になると信じるブログをこうして無料でお目にかけ、何かを学んで事業で成功してくれる若者が出れば嬉しい。それだけの理由である。
3月17日のブログでお示ししたように「科学技術は戦争で進化する」は帰納法的に一般化可能なテーゼであり、数学でいうなら公式である。では現代の戦争で進化する科学技術は何か?これは議論を前へ進める思考だ。僕の回答は無人兵器(ドローン)であった。ではその技術は世界のどこにあり、どこに投資資金があり、世界のどこにそれをマネタイズする有能な経営者がいるか?これが、もう一歩議論を前へ進めることによって解くべき設問であり、抽象論を現実のアクションに落とし込む最終プロセスである。そしてその回答こそが「今すぐ行うべき投資というインテリジェンス」なのである。その結果、僕は2020年にテラドローン社への投資を決め、徳重社長が必要な事業資金の一部は僕がファイナンスすることで「公式通りのパフォーマンスが実現」し、ソナー・アドバイザーズおよび僕を信じてついてきてくださるお客様たちが大きな投資収益を獲得する確率を自力で高めた。これがテラドローン株投資のタネあかしである。投資の常として、自力でできたのはそこまでだ。MBAという学位をお持ちの方の名誉のために最後に書いておくと、以上のことはビジネススクールで学んだ人にとっては自明のことだ。そこで習った7つ道具を使えば、ここまでは誰でも来れる。少なくとも、習ってない人よりはずっと速くゴールに辿り着くことができる。では僕の母校ウォートンスクールやハーバードビジネススクールを卒業するのにいくらかかるか?現在だと2年で5000万円ぐらいだろう。ということは、MBAの価値はその投資を何年で回収できるかにかかっている。その名の通り「ビジネス」で回収を目論む人には大いに推奨したい。しかしサラリーマンや評論家や印税収入で回収するのは仮にできるとしても時間を要し、下手すると一生それで終わってしまうのであまりお勧めできない。
金融商品である株式への投資は世界経済や金利の動向や決断のタイミングという外的要因の吉凶で結果の良し悪しが決まる部分は常にある。今回はそれもたまたま吉と出たという僥倖に恵まれ、40年この業界にいていまだかつてない成果をあげられたということである。
ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。
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2 comments already | Leave your own comment
東 賢太郎
5/1/2026 | 4:20 PM Permalink
今日もまた1,500円上がってストップ高の10,770円。お客様皆さんびっくりされてますが実力はまだまだ。我々はいま米国パートナーと連携してスペースX(6月にIPO)を狙ってます。コネがないと買えませんがなんとかならないかなあ。
東 賢太郎
5/9/2026 | 2:19 AM Permalink
テラドローン、本日5月8日の引け後の株価はPTSで15,080円。3月17日の約5倍。この投資リターンは我が人生最高記録である。なんというか、言葉もなし。ソナー・アドバイザーズのお客様の皆様、おめでとうございます。5月5日は父、5月29日は母の命日。感謝。