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舛添さんの辞職に思う

2016 JUN 15 18:18:51 pm by 東 賢太郎

ハインリッヒの法則というものがある。大きな労働災害が起こる前に29の小さな事故があり、その前には300の異常が見つかるというものだ。

この数字は労働災害での確率分布だから一般化はできないが参考にはなる。大事故には何かの予兆があるものだということだ。例えばこの考え方が敷衍されて保険料率表ができているそうなので、あながち無謀な考えでもないだろう。

組織の活動は「小さな人間関係」を潤滑油にして営まれている。ヒラ社員は会社生活の99%がそれに依存するが、位が上がると減ってくる。トップになればもう潤滑油はいらなくなり、権力がその代わりになる。

ところが、組織運営においてはハインリッヒ法則の「小さな事故」や「異常」は、その潤滑油の中に見つかるというのが僕の法則だ。これを舐めると大変なことになる。特に潤滑油とは縁遠くなって久しいトップこそ最も危ないのはお分かりいただけるだろう。外への説明は違っても実はこれが原因で裸の王様になって失脚したトップは多いのだ。

潤滑油である「小さな人間関係」にひびが入ると油の流れが悪くなる。油というのは情報のことだ。どこかで止まるとひびが広がって溝になる。こうなると修復は難しい。人事異動で知らない者同士になると油は一時停滞する。しかし人事が滞って派閥ができると深い溝ができやすく壊すのに時間がかかるから異動はこまめにやった方が良い。

社長室のようなものを持った者はわかるが、トップというのは意外と情報が入らない。悪いものほどそうだ。田中角栄は情報をくれた部下にはくまなく1万円札を渡したが、悪い話だと5万円にしたそうだ。そうやって努力して「異常」に耳を澄ましていたのはさすがと思うが、それでも逮捕されてしまうのだから政治の世界は恐ろしい。

舛添さんは頭が切れて押しも強い。今回の大事故にも300の予兆があったかと思うが、その程度のことは抑えこめるという有能なゆえの驕りがあったかもしれない。抑えるのではなく学ぶべきだった。それをマスコミがうまく突いて「悪代官」仕立てになってしまったが、そういう仕立てを狙ってるぞという予兆もたくさんあったろう。その情報を入れる側近がいないなら10万円払って集めても惜しくはなかった。

まあその10万円はきっと税金から出たろうから、何百円単位の私財の節約をせっせと図るご性格でよかった。これは他山の石だ。

 

 

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