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二期会のドン・ジョバンニを聴く

2016 JUL 5 1:01:05 am by 東 賢太郎

昨日はサントリーホールにて、ドンジョバンニを。小ホールで聞くのもピアノ伴奏というのも(そこまでオペラに通じているわけではないので)初めてでした。

たまたまご縁あっての鑑賞でしたが、ホールの声の通りがよくオケの音量に消されることもなく、とてもよかったです。唯一、地獄落ちの場面だけはオケがほしいなと感じましたが。

歌手の皆さん、意気込みが感じられて楽しみました。個人的なモーツァルトの歌劇ランキングでは①魔笛②ドン・ジョバンニ③フィガロ④コシ・・・という具合。②は思い入れがありますが指揮と歌手のマッチングが難しいオペラで演奏にもより、②③④は僅差です。

ドン・ジョバンニは2065人の女性を手にかけた放蕩者ですが下衆のスケベ野郎ではない。貴族です。このオペラが発表されたのは1787年、まさしくフランス革命前夜なのです。つまり②も③と同じく貴族糾弾・反体制オペラというのが私見です。

お上の悪事を暴く。それも効果的に嫉妬をあおれるセックススキャンダルです。しかも「悪代官が村娘に手を出す」、これはわが時代劇でも定番なほど万国共通、実にわかりやすい勧善懲悪の構図じゃないですか。週刊文春にはなれないのでダ・ポンテとつるんで「ほのめかし」作戦で行ったものと解釈しております。

一発目の③はウィーンでは貴族に警戒されたが辺境都市のプラハでは大喝采となりました。二発目の②はその2匹目のドジョウとしてプラハの劇場に依頼された作品なのだから同じ路線と解釈するのは自然でしょう。③で懲悪するのは奥方でしたが、それでも危なかった。そこで②では石像です。神仏だから仕方ないでしょ?天罰ですよとほのめかして逃げたのでは。

モーツァルトは同作をドラマ・ジョコーソと呼んでおります。まじめなドラマ(悲劇)+喜劇(ジョコーソ)です。復讐に燃えるドンナ・アンナ、騎士長がメインラインで悲劇を構成するわけですが、まじめ一点張りでは「ほのめかし」作戦にはなりません。

だからこの曲のキャスティングは喜劇、遊びの側面、つまり人間くささという面で「思いっきりワルっぽい」が「女が靡くのは仕方ない納得の男ぶり」のジョバンニ、捨てられたのに一途に純真で改悛までせまるドンナ・エルヴィーラ、自分の結婚式の最中にドン・ジョヴァンニに口説かれてその気になるお色気村娘ツェルリーナが緩衝材となっていなす。ここははずせないと考えてます。

そのなかでも難しいのはジョヴァンニの従者レポレッロで、親方の放蕩に愛想がつきているのにカネと女のおこぼれをエサにずるずる使われてしまい、狂言回しかと思えば身代わり役にもなってはらはらさせて笑わせる。すごく人間くさいのです。だから性格俳優的な役かというと、大事なアリアが3つもあります。

まずジョバンニの宮本益光さん、お見事、良かったです。そしてレポレッロの池田直樹さん、声も演技も存在感抜群。要の役を堪能させていただきました。それからモーツァルトのオペラというのはアンサンブルが命で皆さん良かったです(ドンナ・アンナの針生美智子さんの高音は声質、ピッチが記憶に残りました)。

とくに第一幕の終結のアンサンブルは感動!完全にモーツァルト界に引きこまれ打ちのめされました。ピアノもよろしかったです(お疲れさま)。皆さん、ありがとうございました。

 
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Categories:______モーツァルト, ______演奏会の感想

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