ネヴィル・マリナーの訃報
2016 OCT 4 0:00:43 am by 東 賢太郎
いま、お客様から大事な案件を仰せつかっていて、今日もそれで昼に大きな会議があって、前夜もあんまりよく眠れていない。僕の仕事はそれなりの規模で自分でリスクも負うから気が休まることがなく、睡眠中もあれこれ考えているのだろう。
そんななか、朝がたにネヴィル・マリナーさんの訃報を知る。心底がっくりきてしまった。会議を乗り切るのがやっとで、会社にいてもメンタルにもたずお先に失礼した。
去年の11月末、マリナーさんがN響に来てブラームスの4番をきかせてくれた。その日のブログ( マリナー/N響のブラームス4番を聴く)はこう締めくくられている。
ひょっとしてこれが最後かもしれないがいい4番を聴けて幸せでした
あの日、前半がモーツァルトPC24番で、この曲には半音階で天に昇るような音型が終楽章にたくさん出てくるが、なにかを感じたのだったかもしれない。
今年は1月にピエール・ブーレーズさんが、そしていよいよマリナーさんが鬼籍に入られた。おふたりは僕にとって現代音楽の、そしてバッハ、モーツァルトの先生であり、クラシックにのめり込むきっかけを与えてくださった。おふたりのレコードは耳に刷り込まれていて、無限の喜びを与えてくれ、まさしく「おふくろの味」になっている。
youtubeに見当たらないが、大学時代、ブランデンブルグ協奏曲第6番を下宿でたまたまFM放送から録音して、あまりに素敵なのでそのカセットを毎晩きいた。それがこのレコードだ。
J.S.バッハ「ブランデンブルグ協奏曲」BWV1046-1051
中古レコード屋を探し回るほど僕にとっては記念碑的な演奏であり、ほかの演奏では用が足りず、この6番のヴィオラとチェロの音が僕の一生の弦楽器の音色の好みを作ったと言って全く過言でない。
古典からキャリアをスタートしたマリナーさんが晩年に至ってロマン派を振り、それも英国音楽よりもドイツ、東欧物に向かったのは大正解だった。ご性格の、おそらく穏健で懐の深いおおらかさ、ロマンティックなやさしさはそれに適しているからだ。このドヴォルザーク7,8番も忘れ難いが一昨年の2月、雪の日のことだった。
そして僕はこれをこう締めくくっていた。
楽しい時間を過ごさせていただきました。マリナーさん、お元気で末永くご活躍されることを祈っております。
そしてこれを上梓したのは英国のユーロ離脱(Brexit騒ぎ)にひっかけてのことだから去る6月、ほんのこの前のことで( 英国人がドイツのオーケストラを振ると?)、そこにこう書いた。
2010年だったか(マリナーさんが)N響を振ったライン交響曲があって、これにいたく感動したのです。僕にとってこの曲は人生のひとこまであって重たい。良いと思うことなどめったにないのですがあれは本当に名演だった。
この演奏会のビデオは大事にとってあって、客席には僕の顔も映っている。
そしてこのブログはこう締めくくっている。
いつまでもお元気で、もう一度、ドイツ物をきけたらいいなあ。
この言葉をもう一度、そのまま天にお届けしたいです。これからあなたの素晴らしい魔笛をききます。音楽の楽しさを教えてくださりほんとうにありがとうございましたこれは僕が米国時代にFM放送をカセット録音したもの。
これは僕が米国時代にFM放送をカセット録音したもの。1984年のミネソタ交響楽団を振ったライブです。マリナーさんのレパートリーにチャイコフスキーのイメージはないですが、これが見事な快演なのです。一聴の価値あり、ぜひお聴きください。
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