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読響定期・五島みどりに感動

2016 OCT 19 23:23:24 pm by 東 賢太郎

指揮=シルヴァン・カンブルラン
ヴァイオリン=五嶋 みどり

シューベルト(ウェーベルン編):6つのドイツ舞曲 D 820
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
J.M.シュタウト:ヴァイオリン協奏曲「オスカー」(日本初演)
デュティユー:交響曲第2番「ル・ドゥーブル」

 

コンサートホールには時計がない、というより、ない方が良い。時は音楽が刻んでいるからだ。五島みどりが独奏したコルンゴルドとシュタウトは濃密な時間が流れ、時計はあるときは速くあるときは遅く進み、ときに止まってしまう。聴衆は外界とは別の時間空間にいる。それを支配するのが独奏者という司祭である。

コルンゴルドは何度もライブで聴いて、その都度いい曲だと認めるが記憶にあんまりしっかりと定着してない。冒頭のファ#にびっくりしたりおおいいぞと思うが、たぶん第3楽章の娯楽音楽の風情が毎度気に入らないせいだ。今日もその覚悟でいたが、大変感動した。なんといっても五島がいい。たぐい稀なる司祭ぶりだった。

シュタウトでの圧倒的な集中力。絹糸みたいに繊細でつややかな高音。弦楽器できけるたぶん最高音だろうハーモニクスの完璧なピッチ。まったく素晴らしいの一言。本邦初演。ユリア・フィッシャーが西洋人の美音なら五島は日本の感性の美かもしれない。ぎりぎりまで磨き抜かれた音色を損なわない急速なボウイングは一糸乱れることなしだ。

デュティユーの2番はシャルル・ミュンシュがフランス国立管を振った名演(ライブ)があって、それが僕の愛聴盤だ。メロディーもリズムも和声(神秘的だ、すばらしい!)もある比較的親しみやすい曲で、最後は不意に鳴る灰色に凍てついた氷原のような弦の和音で静かに終わる。ライブは初めてだったがカンブルランはフランス物(ラテン物)を明晰に振り分ける。いい指揮者を指名したと絶賛したい。読響も見事な好演であった。

サントリーホールを出て腕時計を見ると、ずいぶん経ったように感じた時間はほぼ通常通りだった。

 

(参考・デュティユーの2番)

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Categories:______演奏会の感想

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