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選挙のプラセボ効果について

2017 OCT 20 22:22:09 pm by 東 賢太郎

まずはお薬の話だ。AとBとCという錠剤があってAは効き目があり、Bの効き目はAの半分で、Cは中味が砂糖で効き目ゼロとする(3種とも副作用はなし)。厚労省はないものとして、A社、B社、C社が効能書をばらまいて宣伝して市場でセリにかけたら値段はどうなるだろう?

1回目のセリでは宣伝の巧拙だけで値が決まるだろうから順位は不明だ。2回目では患者への効き目を見てA>B>Cとなるだろう。3回目では差がさらにわかるのでA>>B>>Cとなろう。

Cの効能書きはウソだからC=0のはずだが、そうならないことがプラセボ効果(偽薬効果)として知られる。Bを半分サイズにして片方はAの成分、もう片方は砂糖にして「1回2錠」を飲ませると、A×1/2+C >Bとなるから価格は

A:B:C = 100:50:0

とはならず、100:70:20ぐらいの感じになるだろう。プラセボ効果とは何かというと「未開地で薬というものを知らない人に病気が治ると信じさせて歯磨きを飲ませたら本当に治った」という話が昔あったが、そういう思い込みだけで薬が効いてしまうとされる効果だ。

クスリの価格の決まり方を選挙の得票数に置き換えれば衆院選の話になる。Aが普通の候補、Bは泡沫候補、Cは非適格候補で、A社、B社、C社がA党、B党、C党である。「薬の効能書がわからなければ信用ある弊社の薬をオマカセでお飲みください」というのが比例代表制だ。

これがビタミン剤の話ならばプラセボ効果でBやCを買っても損だが害はない。しかし降圧剤ならどうか。砂糖で血圧は下がらないからCを売るのは未必の故意による殺人に近いだろう。ビタミン剤や健康食品なら許されるものが医薬品ではそうはいかないのである。

それを防ぐため医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称「薬事法」)があるが選挙にはそれに当たるものはない。公職選挙法があるが、日本国籍があって選挙違反しなければほぼOKで「薬効」の審査はかけらもない。日本語さえ読めれば合格の試験のようなものだから有権者の目が問われる。ウソの効能書きで立候補している砂糖玉の「プラセボ候補」は落とさないといけない。

そのために我々が考えなくてはいけないのは

「このクスリ、ほんとに効くの?」

なのだが、それ以前に決定的に重要なことがある。若い有権者はこれを肝に銘じてほしい。それは、

「ところで私は何のクスリを選んでるの?」

である。

「ビタミン剤なのか降圧剤なのか?」

である。

あたりまえだが国政選挙は国を良くしてくれる人を選んでいる。国は没落しても私は良くなりたいという議員は不要なのだ。今の国はリセットして私が好きな国にしましょうよといわれても、あなたの好きな国が私も好きかどうかわからないのに投票しようがない。

国は関係ないでしょ、私の生活が第一だしと思うかもしれないし誰でも生活が大事なのは当然だが、国がだめになって私の生活だけが良くなる確率は宝くじでも当たらない限りゼロに近い。英国グローバル情報誌「MONOCLE(モノクル)」の「世界で最も住みやすい都市ベスト25」(2017年版)で東京が1位に選ばれているが、日本はすでに国際的にいい国、外国人が憧れる一等国なのだ。

ただ問題はある。高度成長期に元気な若者だった日本国もそろそろ熟年メタボの兆しが見えており、著名大企業は兆しだけでなく崩壊しかかってきており、自分の血圧だけでなく近隣の暴れ者のとばっちりだって心配しなくてはいけない。「一強政治はいかがなものか!」は大変結構だし、一強に思い上がって脇甘の事件で世間をさわがせてもらっては困るが、では、

「一強でなくなるとどうして血圧が下がるの?」

「どうして暴れ者がおとなしくなるの?」

と子供電話相談室にきいてみたらいい。なんにもむずかしいことはいらない。物事は本質に添って、子供みたいにシンプルな疑問をもって考えればいいのだ。僕は一強でも三強でも何でも構わないが政権執行能力が論点と思う。そうでないと血圧は下がらないし熟年メタボは治らないからだ。もしその薬が効かないなら?それは困るから、国民が国会、行政を監視して薬を替える制度を作るしかない。

 

若者のための政治用語辞典

 

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Categories:政治に思うこと

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