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僕はホームランだけ狙いたい

2018 JAN 13 1:01:41 am by 東 賢太郎

ご迷惑だといけないので某先輩と書いておこう。アークヒルズクラブで久々に夕食となった。昨年読響定期でサントリーホールでばったりお会いしたのがきっかけだ。氏はもと上司で、大学学部先輩の上司は人生ひとりしかいないからわかる人はわかってしまうが、とても仕事がうまくいった。僕はネコ型で基本的に放任でないとだめなタイプなので上司との相性はあんまり関係ないが、大変なリスクを負った時期だっただけにどうしてだろうという思いはずっとあった。

当時は激務でそんな話をする間もなかったが、氏は父上が音楽家で3才からピアノを始めコンサートは4つの在京オケの会員で年間130も聴く強者だ、クラシックのご造詣は半端でない。金融は個人的には余り達成感のない性質の仕事で、仕事よりも人生常に音楽が中心にあったという点では見事に共通している。しかし氏が熱愛するマーラーを僕が大嫌いだと言ったところから、あれヘンだぞとなった。僕は私小説も嫌いだし、芸能人や政治家やら誰と誰がくっついたとか浮気したとか、そういうのはからっきし関心なく、それとマーラーは妙に親和性を感じてしまう。

音楽の話をしているうちに、我々は正反対だから良かったんだということがわかった。氏の音楽のパーセプションは「AIに心がない以上良い音楽は書けず、心で書いたものだけが聴き手の心に響く」というもの。僕は音楽は化学か錬金術に近いと思っていて、「心は化学反応のどこにも存在しないが、化学反応を素材にして思うものを表現したい心の作用であるという意味で心に響く」と思っていて、結論は同じだ。仕事でも予算を達成するという結論は同じだが考え方がちがっていたわけで、それが補完的だったからうまくいったのだろうということになった。

ドイツにシュピーゲル(Der Spiegel)というニュース誌があるが、シュピーゲルは「鏡」の意味である。我が国にも大鏡、吾妻鏡(東鑑)があり世相を映す役割を喩えているが、その夜はマーラーが鏡になってくれたのだから面白い。そして、補完的こそうまくいく秘訣だと確認できたのも良かった。だから氏は当時僕のやることにブレーキを踏みたくなることも多々あったろうと拝察するが、しかしそうせずに全面的に任せてくださった。部下に任すというのは言うは易しだが結果責任は取るということで、器が大きかったということに違いない。

氏は人は理屈でなく好きなら信用するというが、理屈で入る僕と補完的だ。しかし好きな人だけと付き合いたいというのは一緒だ。僕はしゃべった言葉を正確に真摯にキャッチボールできない人は弱い。相手がしゃべってる最中に先が読めて話し出したりして間が悪くなり、そこでごちゃごちゃになるともうやる気が失せてしまう。こっちは精度高くしゃべる傾向があるので、精度高く瞬時に返ってくると良いテンポで高速ラリーになるから心地良い。

部下はそういう人を使う傾向がありできれば30年前の自分が欲しい。しかしそれでも全面的に任すかどうかは自信ない。大事な部分には尋常でなく細かくて用心深いし、しつこい。だから神経が周到に行き届いた仕事をしてもらわないと絶対にOKはしない。僕はそれを徹底してやってここまで来てるから、誰が何といおうとそれを曲げる気は皆無である。だから指示を出すときは他人を信用しない嫌な奴であるマーラーに似た自分を見てしまい、それで嫌いなのかもしれない。

今はオーナーで上司はない。だから補完関係は部下と作るしかない。難しいのは誰がビジネスのドライバー(推力)になるかだ。推力のないベンチャー企業なんて沈没だ。これが僕より強い人はいないから任せても意味ない。しかし推力はストレスと比例するのであって、ストレスが限界になれば推力も頭打ちになる。だからストレスを増やさない環境にするか、別な推力をもった人にターボエンジンになってもらう必要がある。その両方を補強するのが望ましいというのが現状の考えだ。

会社にとって理想なのは僕がいなくても利益は出て、僕はホームランを狙うという推力の在り方だ。僕がこれまでのようにバントや盗塁まで神経を使うのでなく4番として好きに振る。好機とあらば1年ぐらいシリコンバレーに住む。バントはバントの、盗塁は盗塁の上手い人に任す。それがかみ合ってチーム(会社)の得点(利益)が出れば皆に分配する。これがパイを最も大きくする方法で、部下も潤うし、株主配当も増えるのだ。そのためには幹部にはストックオプションを持ってもらうことだ。伊賀の影丸型フォーメーションで自然にそう回転する組織になれば面白い。

先輩のディナーで多くのことを学んだ。

 

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