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カープの強さ=アスリート本能の2乗 

2019 MAR 7 1:01:18 am by 東 賢太郎

この時期に勝ち負けは関係ないですが、カープのオープン戦は今年を楽しみにさせてくれます。6か月の長丁場のシーズンです。ケガや不調などからレギュラーだけで年間を戦えない可能性がどの球団にもあって、そのダメージコントロールがどれだけできるかで順位が決まると僕は考えています。

とするといわゆる選手層の厚さの勝負になるのですが、今のカープの野手陣は田中、菊池、鈴木以外は誰を使うか迷うほど力量がハイレベルで拮抗しています。センター、レフトの2席は長野、野間、松山、バティスタ、西川、内野(ファーストとサード)は松山、バティスタに加えて安部、メヒア、小園、曽根が。

数の問題ではありません。カープのキャンプ風景を見ていると、見事に無駄がない。「早打ちトス」など1秒に2球のペースで全力で打ちまくる拷問のような練習です。スケジューリングもグラウンドの部分部分の使い方も合理的で隙がなく、あれを見て他球団を見ると無駄だらけでルーティーンを流してるだけに見えてしまいます。広島流のただごとでない練習量をこなせば、持って生まれた能力の頂点にあるという快感を覚えるだろう、というのは僕にもなんとなく経験的に想像がつくのです。

ランナーズハイ(runner’s high)とはマラソンやジョギングで苦しさを我慢し走り続けるとある時点から逆に快感・恍惚感を覚えることです。カープの選手はそれとおなじで「野球ハイ」の状態になるまで練習させられているのではないかと思うのです。この「ハイ」というのはスポーツだけでなく勉強でもあって、数学など練習しまくって何でも来い状態になると解くのが快感になります。うちのネコは猫じゃらしの捕獲がうまくなると恍惚として目がらんらんとして何度でもやるようになります。これって、人間というより、動物的本能じゃないかと思うのです。

そうなると、今度はその能力を確かめたくなる。野球は9人しか試合に出られないからそこで闘争本能という(これも根源的に、動物的です)ものに着火するのです。闘争本能はどの球団の選手にもあります、プロだからないはずはありません。しかし、カープの選手は「野球ハイ」で恍惚、目がらんらんなうえにそれが乗るのだから、本能✖本能(本能の2乗)の尋常でないモチベーションがあるのではないかと想像します。阪神でだめになった新井が帰ってきて覚醒したのも、そのマルチプル効果がきいたのではないでしょうか。こういう動物的モチベーションというものは、お金や虚栄心という頭脳のモチベーションより断然強いと思うのです。カープが強い道理はそれじゃないでしょうか。

丸選手は2年連続セリーグMVPでゴールデングラブ賞ですから、長野だろうが誰だろうがそれ以下の選手ということであって、つまり丸の抜けた穴を埋められる者はないということです。だから普通のチームなら負の効果しかないですが、カープの場合だけはそうではない可能性があって、「3番とセンターが空いた」という本能に火をつけるおいしい要素が二つも提供され、各々が「二乗のレバレッジ効果」でモチベーションを高めます。つまり丸の件はむしろトータルにはプラスに効くかもしれないと僕は思っています。

例えばホークスの育成選手だった曽根がひょっとして菊池の後釜かという成長ぶり。新人の小園は早や成績も体格も3年目ぐらいの風格に育ってますからすぐに田中を脅かすでしょう。邪推ですが、丸のFA移籍で菊池、田中もいなくなること前提でさらなる本能の火種が生まれている感じすらします。カープで育って試合で実績を出すと、やがて巨人さんが30億円くれる。巨人のドラフトにかかると30億円さんや名前だけのロートルさんが毎年天下ってきて出番が来ない。それならドラフトではまずカープに入りたいという有望株が増えるんじゃないでしょうか。

広島対巨人の戦いとは、「動物的モチベーション」対「お金や虚栄心という頭脳のモチベーション」の戦いと見るならば面白い。ここ2年連続で広島が2桁以上の差をつけてボロ勝ち、巨人はお得意さん状態です。才能はあるが「野球ハイ」未満の状態のチームが、恍惚、目がらんらんなチームと当たれば本能的に怖さを感じると思います。オープン戦初戦、先発の床田がいきなり4者連続三振(丸を含む)はそういうものを巨人選手に与えたと思います、今年もお得意さんなのかなと。監督は誰でも関係ないです。やるのは選手だから。もちろん巨人はそれを知っていて、だから丸をとったのです。

丸が2番打者の巨人打線は繋がりという点では強力ですが丸は近年は2番は打ったことがない。彼はまじめな積み上げ型の選手ですから3番で好きに打たせた方が怖いです。常勝巨人軍プロデュースの「原マジック・ショー」というやらせっぽい劇をドームで演じなくてはならない選手たちは大変と思います。あのムードの中で期待と注目を浴びてアドレナリンが出て「ハイ」になれる長嶋や堀内のようなタイプはショーの主役向きですが、丸は鍛錬を重ねていく王貞治タイプと思うので、あれこれ注文がついて気を遣う2番はどうなんでしょうか。巨人は「丸効果」をうたいますがそれは丸が去年並みに打ってのことです。ベルリン・フィルに君臨した帝王、ヘルベルト・フォン・カラヤンが呼んできてほぼ全滅だったソリストたちみたいにならなければいいのですが。

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