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ドリーブ 「コッペリア」よりマズルカ

2020 NOV 12 23:23:56 pm by 東 賢太郎

バレエ音楽は好きなくせに舞台の方は女の子の芸事というイメージがあって長いこと無視でした。ニューヨークで春の祭典やダフニスを観ましたがどうということなく、ますます興味を失っていたのです。ところが10年前にロンドンでボリショイ・バレエ団の白鳥の湖を見て衝撃を受けました。かなり前の方のかぶりつきに近い席だったせいか舞台に見とれてしまい、息もつけぬゴージャスで美しいものを目撃してしまったわけです。もちろんチャイコフスキーの曲あってのことなのですが、耳だけでなく目の愉悦というものがあることを発見しました。

レオ・ドリーブ(1836 – 1891)のコッペリアは音楽の出来が良く、フランス趣味でありながらワーグナー流のリッチなオーケストレーションが豪華であります。ぜひ舞台を観たいものです。有名な箇所がいくつかありますが、僕は「マズルカ」が大好きで、このメロディーはどういうわけか物心ついたら知っており、譜面なしでも弾けるぐらいなのにどこで覚えたのかわかりません。家にレコードもないので。

僕においては和声が非常に粘着性があって耳にこびりつき、だから残っているのでしょう。ともあれ浮き浮きする見事な音楽で元気が出ます。どなたも一度聴いたらとりこになると思います。このビデオの6分05秒からがマズルカです。

コッペリアは E. T. A. ホフマンの砂男に基づいたストーリーで、1870年にパリで初演されました。このビデオ(パリオペラ座)のコレオグラフィーがオリジナルなのかどうか踊りについてはまったく素人でご容赦願いますが、とても優美なものですね。

さてこのパリのマズルカですが、記憶に焼きついているのと比べてテンポがやや速い。では焼きついてるのは誰の演奏だったんだろう?幼時のことだから60年代当たりの古い録音であるはず。

こういう時ネットは便利です。まずカラヤン / ベルリン・フィルハーモニー。

とてもシンフォニックで立派な演奏ですが遅すぎる。これじゃない。

フランス系で遅い代表はこれでしょう。ピエール・デルヴォー / コンセール・コロンヌ管です。これも違います。

モントゥー / ボストン響はバレエの雰囲気がある素敵なものですが、微妙に速いですね。これもバツ。

エルネスト・アンセルメ / スイス・ロマンド管です。かなり近いですがシンバルの鳴り方が記憶と違います。

アンセルメならこちら、ロンドンのロイヤルオペラハウス管との録音。これはフィットしますね、これだった可能性はかなりあります。

次はフランスのロジャー・デゾミエール。うん、これはいい。パリ音楽院管弦楽団のローカル色溢れる音がたまりません。これの可能性もあります。

アンタール・ドラティ / ミネアポリス管です。明らかに違う。彼の演奏はどれもメリハリがくっきりつきますね。しかしこれはひっくり返るぐらい速い。こりゃ踊れませんね。

と思ったら甘かった。我が憧れのボリショイ・バレエのビデオをご覧ください。すごい。ポルシェ並みの速さだ。これじゃあ記憶とあまりにかけ離れていて平静には聴けないのです。これとカラヤンのと、同じ音楽と思えますか?

しかし踊れてますね。しかも、とてつもなく美しいではないか!こうなってくると楽譜の指示なんかそれがなんだという気がしてスコアを見る気も致しません。バレエ恐るべし。

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