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カテゴリー: ______高校野球

夏休みがなかった高校時代

2015 JUL 15 1:01:33 am by 東 賢太郎

高校時代に夏休みはなかった。夏の甲子園予選東京都大会があるからであり、いまそれがたけなわである。毎日の勝敗を見るにつけ血が騒ぐ。最近は知らない高校名もたくさんあるが、だいたいのところは名前で力が想像できてしまう。ああ、ここなら勝てるななんて今でもグラウンド目線で見てるのは、高校野球に完全燃焼できなかったからだ。

中学で背が伸びて171cmになり、草野球ではオトナでも打たれる気がしなくなった。早生まれのせいか体が小さく、でかい女の子に腕相撲で負けたしでかい男子にはケンカも運動も勝てないと思い込んでいた。ところがもっとでかいオトナを三振総なめにして、得意なことを磨けば世の中わたっていけるかもと思えるようになった。

野球は硬式と軟式がある。硬式の人間は軟式は野球と思ってないがあのオトナたちはきっと軟式の人だったのだろう。思えば中学でリトル(硬式)に入って同世代のうまい子にコテンパンにやられていたら小学校の弱っちい自分のままだった。古来、男子が大人になるのが元服だが草野球のおかげでそれがすんだ。

投手のタマと野手のタマは質がちがうのは経験者はわかる。練習しても野手にはああいう球は放れない。野球部員はみなそれなりに自負心があるが投手は別格の天狗だ。世の中に自分のタマを打てる男はほとんど存在しないと思っている。そんなことはどうでもいいのだが、世の中がどう思おうと、そのことがどうでもいいのである。

社会に出て仕事で気おくれする場面はある。それでも、相手が打席に立った姿をイメージすれば気持ちで完全優位になってしまう。人前に出るなどなんでもない、投手は衆人環視になるのが仕事だ。良し悪しはあるだろうがもともとが小さかった僕にはちょうど良かった。野球好きなのは男子としての自信をつくってもらったからだと思う。

九段高校ですぐ硬式にはいった。都立とはいえその夏の東京都大会の第六シード校で4回戦まで行ったから弱くなかった。草野球出身で誰に習ったこともなく投げ方はもちろんプレートの踏み方すら知らなかったが、先輩方とキャッチボールしてみると自分の球のほうが速いと思った。野球だけは自分は特別と天狗になりきっていた。

その夏からすぐベンチ入りさせていただいて、大会終了後に背番号1をいただき一級上の2年生を飛び級した。だから客観的に能力がすこしあったのは球を投げることで、学業など比にもならないと書いて自慢にも謙遜にもならないと思う。この1年でエースというのに比べれば2浪して東大に入ったり徹夜続きでMBAを取ったなどというのは汗の匂いがする格好悪いことだ。

硬式で初めて同世代のうまい子と対戦することになる。天狗はそこまでだった。秋の新人戦は国学院久我山だった。甲子園も出てロッテの井口、日ハムの矢野などプロ選手も多く出している。9-0の7回コールドで負けた。一回り目は零点でたいしたことないと思ったら次から打たれ、それも人生初というほど自慢の直球を打たれてショックをうけた。

打撃では甲子園に出た日大一高戦で一塁線ゴロが抜けたと思ったら併殺打。盗塁は何度かしたがだいたい1メートル手前でアウトだった。そもそも上の子相手ではいい思い出自体があまりなかったのか。二けた三振で2安打完封された聖学院の左腕からセンターオーバーの三塁打を打ったのがいい方の唯一の記憶のように思う。珍しいから覚えてるのだろう。

硬球の怖さも知った。初登板だったOB戦で先輩にぶつけてしまった。それも速球が首を直撃して昏倒され騒ぎになった。走者一三塁の場面で一塁走者が盗塁したとき、捕手が擬投で僕に思い切り投げ返してきた。サインがわかってなく危険だった。打球では何回も怖い思いをした。18.44メートルの距離を強烈に襲ってくる。捕れなければ頭、心臓、股間などを直撃のもあった。

2学期がはじまって同級生が山へ行った海へ行ったという話をする。こっちはあの学校に勝ったの負けたのだけ。体育会というのはクラスでは軍人みたいで戦いの話しか興味がないし女の子とは話題すらない。軟派な都立高だから完全に浮いていた。どうしてそこまでして野球に没入していたのか、あるとすると闘争本能とお試し本能だ。

人間なにごともうまくなると試したくなる。足が速ければかけっこしたい。力自慢なら相撲したい。相手をやっつけたいというより自己確認、それがお試し本能だ。ゴルフはそれだけでできる。相手が人間になると闘争という要素が入る。へたすると戦争にもなる。闘争性を除去してお試し性だけにしたのがオリンピックだ。

僕は2年で肩とひじを両方やって球が投げられなくなった。硬式のレベルでは終わり。お試し本能は出番がなくなったが火がついてしまっている闘争本能は消えなかったので、3年になってやおらそれが受験に向かったような気がする。学業はドべの方だったが、勝ちたいという動機は野球の終焉からやってきた。

野球はお山の大将の蜜の味を教えてくれたし、そこから奈落の底に転落して地獄も見せてくれた。16,17才のみそらでそんな経験ができたのは幸いだったのかもしれないが、どうしても高校の夏休みというとなにか「損したな」という気持ちを抑えきれない。もっと楽しいことがいっぱいあったにちがいないと。

もし、アラジンの魔法のランプがあって、何でも願いを叶えるといわれたら?もういちど高校時代に戻してくれというだろうな。そこで何をやるか?とても迷うにちがいないが、やっぱり野球をやってしまうような気もする。

 
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今年の甲子園

2014 AUG 26 17:17:08 pm by 東 賢太郎

三重高校は強かったです。正直のところ大阪桐蔭が10点ぐらいとっての完勝かなと思っていましたが逆に三重が押してました。三重は勝ててましたね。失敗したスクイズや最終回の選手起用はよくわかりませんでしたが、監督さんは今年からの新任だそうです。アマ野球の監督というのはとくに外部の方の場合はいろいろ大変でしょう。短期間にチームをここまで引っ張りあげた人の判断なのだからあれはあれで良しです。

勝負にタラレバはないので大阪桐蔭が一枚上手だったということです。前回、野球留学の話を書きましたが、その最大の派遣元は大阪と思います。そこで地元に残った子たちなのだから強いだろうと思ってしまう。ダルビッシュもマー君も巨人の坂本も大阪から出て行った方なのだからと。

ところが大阪桐蔭のベンチ入り18人中11人(福岡4兵庫3 奈良2 愛知1 広島1)は留学生だったそうです。一方の三重高校は2人だけでそれも隣の愛知県からなのでほぼ地元のチームといってよさそうです。予選参加校数で見ると大阪は180校で三重は62校です。大阪が勝ったとはいえそれほどの差は感じませんでした。この世界、事情はそう単純なものではなさそうですね。

今大会、全部見たわけではないですが、プロですぐいけるような選手はいなかったような気がします。松井秀喜、松坂、藤波、田中、松井 裕樹みたいなですね。昔になりますが井出元、鵜久森などすごいと思いましたがプロへ入ってからは今一つ。名球会入りした投手の半分も甲子園に出ていないなど、あそこで勝つこととプロでトップクラスになることとは別な話なのだということがだんだん納得できてきます。今年、僕が見たうちで印象に残った投手は東海大相模の先発の子(3回までですが)だけでした。

高校野球というのはおそらく多くの人間が人生をかけて切磋琢磨している数多ある業界のひとつの縮図です。あらゆる技能、職能、職業において、その分野の甲子園クラスの人はいます。野球の甲子園に出る子はたしかに鍛えられていますが、一般高校球児の中での偏差値は60-65ぐらいではないでしょうか。それがプロで通用するとなると75-80でしょう。受験でのイメージですが50と60の差を1mとすると60と70の差は10mはあります。80となると100mでしょう。50の子でも努力で65ぐらいは届きますが 70以上はどうでしょう。

僕のもう一つの趣味である音楽でもそう思います。演奏家はショー、人気商売の側面があるので難しいですが、歴史の淘汰を受ける作曲家はまやかしがきかず、85ぐらいの人しか名が残りません。それ未満の人は調べると星の数ほどいて、後世の人は彼らのソナタをこまめに聴くほど人生に時間はありません。演奏家も80ぐらいでなければ当代の最も耳のこえた聴衆をうならせることはないと思います。それを耳のこえてない人向けのショーが補完しているという業界構造です。科学では85以上がノーベル賞候補にノミネートぐらいでしょうか。そういう人をひとり我が国が失うことになったSTAP論文事件は非常に罪深いと思います。

 

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東海大四の西嶋投手に感動

2014 AUG 19 23:23:20 pm by 東 賢太郎

東海大四の西嶋投手が延長戦の末2-0の無念の敗戦でした。168cm59kgの体躯で球速は130km台ですが、とにかくピッチングがうまい!間合いやタイミングやコーナーワークが駆使されているのですが、内外角高低の精密なコントロール(左右上下)と緩急(前後)のゆさぶり、ストレートの伸び、という想定外の要素で打者は変化球に泳ぎ、直球に差し込まれます。ほれぼれして見入ってしまいました。

解説者の方が「投手らしい投手」といわれましたが正にその通りの好投手と思います。小手先のワザに聞こえそうですが、打者との駆け引きがうまいということで、それは好投手の条件です。それがなくて速いだけの投手は今どきいくらもいますし、一方今どきのバッターは150kmでもマシーンで打ちこんできていますから予選で打たれて消えている場合も多いのです。マシーンは駆け引きしませんから絶対に練習できません。プロの現役でもすぐ思い浮かぶのはヤクルトの石川ぐらいです。

今日は山形中央の先発、2年生で背番号11の佐藤投手がこれまた5回までノーヒットにおさえるという見事なピッチングで緊迫した投手戦になりました。佐藤君に打者がタイミングが合っておらず、あと4イニングでひょっとしたらという嫌な感じもあっただけに6回からエースの石川投手にすぱっと変わった時がチャンスだったと思います。結局そこで得点できず、石川君の最速148kmの速球が冴え、最後まで打てませんでした。西嶋投手は8回あたりから握力が落ちたかちょっと球が甘くなりだしたので、延長になっては不利でしたね。

たった一球の失投と守備の乱れで負けはしましたが、留学生のいない北日本のチーム同士の息づまる熱戦、これぞ高校野球という素晴らしい試合を見せていただきました。9回を完封したわけですから西嶋君の投球は文句なくすばらしいものです。ここまで見てきた試合のなかで、最も目がくぎづけになったのは彼の2試合です。ずっと記憶に残ると思います。ナイスピッチングでした!

西嶋君、これからも応援します、頑張ってください。

 

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西嶋投手の超スローボールについて

2014 AUG 18 2:02:39 am by 東 賢太郎

先日、東海大四高(南北海道)の西嶋亮太投手が投げた推定50キロの超スローボールを僕もTVで見ました。これについてクレームが出ているというのは少々驚き、去年書いたこのブログを思い出しました。

花巻東 千葉選手がんばれ

「高校野球らしくない」という批判といえば古くは松井秀喜の5打席連続敬遠騒動がありました。高校野球は勝てばいいってもんじゃない!という声が上がり、明徳義塾高校の監督さんや投手は勝ったのにそれで記憶されることになってしまいました。勝った者を称賛しないのは、それが高校野球であるかどうか以前にスポーツではありません。

ちょっと脱線しますが、日本の大企業の経営会議では往々にしてこういう人が出てきます。「あれはいかがなものか」、「あそこでは言わなかったが私は反対だ」。出席していて反対しなかったにもかかわらずです。そういう会議はまじめにやっている人間がわからなくなるだけです。そこでみんなで決めたことがすべてというルールがあるから会議が成り立つし、決めるために会議というものが必要なのです。それをその場では黙っていて後で寝技で覆すようなことがあれば会社経営など成り立ちません。

経営もスポーツもルールに則ってやるから全員が納得するのであり、だからこそ責任が明確になるのです。ルールのない会議で決めておいて成功したら経営者がいい格好をし、失敗したらケツをまくって逃げる。こういう経営をやってきた会社はおおかたダメになってます。なぜなら、ルール通りに決めて失敗したら責任を取らせる、成功したなら評価するという論功行賞に納得性がなければ創意工夫によるリスクテークなどしない方が得であり、社内はサラリーマンばかりになるからです。そういう会社の株を投資家は買わないし、スポーツの場合はつまらないのでお客が入らなくなるでしょう。

5回敬遠してはいかんというルールがあるならともかく、ないのですからそれはルールに則った戦術です。4番打者を5回も一塁に出すというペナルティを負って勝ったのだから、5、6番を打たせなかった明徳が強かったと解釈されるべきことだと思います。「肉を切らせて骨を断つ」。これは剣道で強敵を倒す時の極意とされる言葉だそうですが、それと何が違うのかということです。強かった明徳義塾がその戦術を要するほど星稜は強敵だったということでしょう。

仮に「高校生らしくやれ」という精神がそんなに大事なら、それを具体的な事例としてルールブックに書き込んで審判がペナルティを科すかその場で注意をすべきなのです。会議と一緒で、後であれはいかがなものかと言われたのではまじめにやっている人間がわからなくなるだけです。勝つための創意工夫をする者がなくなります。体重による階級制のない大相撲で決まり手が10種類しかなかったら舞の海のような小兵力士は勝てないでしょう。それが48手になったのは創意工夫の結果だと思うのです。そしてそれによって大相撲という競技は根強い人気を長く保ってきたと思います。

つまり、ルールで禁止されていない攻め方、それは立派な戦術であって、予想外の戦術に負けてしまったら要は弱かったということです。そういう大前提のもとに監督も球児たちも炎天下のグラウンドで切磋琢磨しているというのが僕の理解であり、エアコンのきいた部屋で見ている方もそういう理解をしてあげるべきと思います。高校野球は負けたら終わり。だから負けないためにあらゆる合理的な戦術を使うのはグラウンドにいる者たちには当然のことです。相手の4番を5回敬遠することは今でも可能です。誰もそうしないのは、それが高校野球らしくないからではなく、5回も無駄なランナーを出せば負けてしまうからです。

では本件はどうでしょう。60km未満の球速の投球は違反とする、そんなルールはどこにもありません。身長169cm、体重59kgという地区予選レベルですら小兵である西嶋投手が優勝候補の九州国際大付属に1失点12奪三振というのは、同じぐらいの体格だった僕として信じ難い偉業です。誉めても誉めきれません。遅球は打者のタイミングをずらす立派な戦術です。なめているという人がいるようですが、なめたスローボールで12個も三振が取れるならピッチャーをやっている人間は誰でもします。やる人が少ないのは投げるのが難しいからです。五条大橋の牛若丸といっしょで、欄干から奇襲した小兵の西嶋君が強かったということ、それだけと思います。

 

 

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野球を4試合も観戦する幸せ

2014 AUG 16 23:23:34 pm by 東 賢太郎

今日は一日中TVにかじりついて野球をフルに4試合も見られました。甲子園が城北vs東海大望洋、東海大相模vs盛岡大付、八頭vs角館、そして広島vs巨人です。至福の時です。しかも最後はカープが昨日の心配をよそに12-2で大勝のしめくくり。言うことありません。

東海大相模の先発・青山投手の速球はすばらしかった。3回までに8奪三振ですが直球で奪えるのがすごい。ただ5回には盛岡の打者にとらえられていたので6回を投げさせたのはどうでしょう(結局3点取られてそれで負けました)。神奈川大会決勝で20奪三振の吉田投手を含め140km投手が3人もいたのに。6回から代えていれば2-1か3-1で勝ったんじゃないか。もったいないというか、選手たちがかわいそうでした。

盛岡の松本投手は150kmを封印して変化球で丁寧にコーナーをつくクレバーな印象でした。変化球の球種もコントロールも良くて抑え込んでしまいましたね。大変見ごたえのあるゲームで、準決勝ぐらいを見た感じ。最激戦区神奈川の190校の代表・東海大相模が1回戦で消えてしまうというのも、クジ運とはいえ残念に思いました。

皮肉なもので、次の試合が25校と地区予選出場校が最も少ない鳥取の八頭で、52校とこれも少ない秋田の角館を圧倒して6-1で勝ちました。左腕の鎌谷投手は右腰を疲労骨折したそうで、鎮痛剤を飲んでの登板でしたが好投でした。角館の相馬投手も130km代半ばは常時出ていて力のある投手でしたが、八頭の打線の振りはそれを上回っていました。鍛えられている非常にいいチームと思います。

さてカープですが、2軍からいきなり4番にすわったロサリオが2安打に好走塁と、もやもやを吹き飛ばしてくれました。先発の大瀬良に勝ちがついたのも良かったが内容はやや不満。それより嬉しかったのは7,8回を見事に封じた中崎の好投です。152kmの重そうな速球は打たれそうもない水準。一岡の穴を埋めてくれそうです。もうひとつ、売出し中の田原誠を粉砕した丸の2ランは貫録として、福田を打者一巡の血祭りに上げるのろしとなった会澤の2ランです。7本目でしょうか。これは最高にうれしい。やっとカープは打てる正捕手を得ました。

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甲子園名勝負と武士道

2014 AUG 13 22:22:21 pm by 東 賢太郎

夏の甲子園で何が面白いかというと様々でしょう。超高校級の選手を見るのもいいですが、やはり若さと若さのぶつかり合いの中で生まれてくる勝敗のドラマは他には代えがたい楽しみのように思います。

昨日の第4試合、岐阜の大垣日大と茨城の藤代の対戦は面白かった。藤代が1回表にいきなりホームランなどで8点を先取しました。いったい何点取るのかなという感じでしたが、結局、大垣日大がこれをひっくり返して12-10で勝ちました。

今日の第4試合、三重と広陵は好カード、好ゲームでした。やや広陵が押し気味で迎えた9回、ツーアウトから三重が2点取って同点に追いつき、延長戦に。双方ピンチをしのぎつつ11回までいって、その裏に満塁から押し出しで三重が5-4でサヨナラ勝ちしました。

両ゲームとも、見ている方も感動しましたが、終了後のインタビューで両監督が涙を浮かべて選手をたたえていたのがとても良いシーンでした。特にプロが注目するような選手はいなさそうな2試合でしたが、熱いドラマがありました。

プロはお金の世界ですから技術は素晴らしいが無理はしません。先日の阪神・ヤクルトで大敗ムードのヤクルトが投手に代打も出さずにバントさせるなど、高校野球とは似て非なる精神のスポーツといわざるを得ません。

高校生はお金のためでなく名誉をかけて戦っています。それだけであれほど真剣になるという経験は、彼らはひょっとしてこれを最後にもう人生で味わえないかもしれません。だから勝ち負けにこだわりつつも、負けてもすがすがしいものを漂わせています。

日本人はこれが好きなんじゃないでしょうか。この大会が広島・長崎の6日、9日、そして終戦の日の15日という時期にサイレンを鳴らして行われるというのは色々と考えさせられます。

僕は鹿児島へ行ったおりに特攻隊の知覧へ行きました。数千の若者の写真、手紙に圧倒され、最後の出撃が終戦のすぐ前だった等の悲劇を知るにつけ、彼らの一部が今なら元気に野球をやっている年代の子たちだったという事実に思い当たるのです。

我々はこういうメモリーを大事にしなくてはいけませんし、アメリカが都合のいいように作り変えた戦後日本の功利主義ではなく、日本人が本来持っている価値観を大切にすべきと思います。

それがどういうものかは色々な側面がありますが、僕は武士道という一言でそのほとんどが含有されるのではないかと思っています。甲子園の高校生たちのすがすがしさは、消えかけている武士道の名残理を感じることからくるのではないかと思いました。

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甲子園出場投手のその後

2014 AUG 12 16:16:48 pm by 東 賢太郎

台風で甲子園が2日順延になりました。いきなり開会式からというのは記憶にありませんが昨日やっと始まりました。

甲子園常連校などが、県外から選手をスカウトなどして集める「野球留学生」が増えているそうです。ちなみに青森県代表の八戸学院光星はベンチ入り18人のうち17人が他県の子です(大阪6 兵庫3 和歌山2 奈良1神奈川1 岩手1 宮城1 )。思えばダルビッシュ、マー君という日本を代表する投手も留学組でした。

箱根駅伝の2区をアフリカの留学生が走る学校がありますが、一人二人ならともかくほとんど外人はいかんだろうという理屈でしょうか。しかしそれを言うなら野球留学よりも各県の予選参加校数の差を問題にしないとだめでしょう。今年は神奈川190校、愛知189校、大阪180校に対し、鳥取は25校。これだと鳥取1校に対し神奈川は8校出場できることになり激戦区と分かります。東海大相模のエースで148km出ていた巨人の菅野は一度も出られませんでした。

もっといえば鳥取の高校生数は1万6千人、神奈川は20万1千人、東京は31万5千人ですから、単純にいえば東京は20校も甲子園に出られることになります。国会議員定数格差は4,5倍ですから、それと同じ問題と見れば格差はそんなものではありません。激戦区を避けて出馬したいというのは高校野球も同じことで、禁止されていないのですから一概に批判もできないと思います。

ところが、今年の鳥取代表は留学生ゼロの県立八頭高校だそうです。留学生のいる高校は負けてしまった。ここが高校野球の面白いところでしょう。一人二人うまい子がいても負けます。投手の影響力が大きいと言われますがそれでも今年は図抜けた投手たちが予選で次々に敗退してしまいましたし、過去でも160kmの大谷や22奪三振の松井は3年の夏の甲子園を逃しました。

ただ個人的には思う所があります。甲子園をわかせて巨人入りした大阪桐蔭の156km投手辻内 崇伸の故障による引退など気の毒でなりません。似たケースですが、僕が実際にベンチから見た最速投手は日大一の保坂英二(3年連続で夏に投げた4人しかいない1人)で、直球とカーブだけでしたが甲子園で都城から17奪三振でした。恐怖感のある直球でした。その彼が71年ドラフト1位で東映に入りましたが故障で一勝もできず引退です。

プロでも、最速伝説の残る阪急の山口高志、巨人からセリーグ・タイの16奪三振のヤクルトの伊藤 智仁、甲子園で桑田・清原のPLを破って優勝した西武の渡辺 智男、初登板で巨人相手にノーヒットノーランをやった中日・近藤 真市など記憶に残る投手が若くして故障で散りました。野手でこういうことはまずありません。だから今年でいえば済美高校の安楽投手、浦和学院の小島投手、前橋育英の高橋投手、小山台の伊藤投手など、本人たちは悔しいでしょうが見ている側としては安心したという気持ちです。

ちなみにプロ野球名球会の投手21名中、甲子園に1度でも出た選手は3分の1の7名、特に3年生の夏に出られたのは東尾修(箕島/西武)、工藤公康(愛工大名電/西武ほか)、佐々木 主浩(東北/大洋ほか)、高津臣吾(広島工/ヤクルトほか)とたった4名しかいません(高津は野手で投げていない)。東尾、工藤がベスト4、佐々木がベスト8でした。

昭和21(1946)年からの夏の甲子園優勝投手は2011年まで77人いるそうです(チームに複数いる場合もある)。そのうち、大学、ノンプロを経た場合も含めてプロ野球入りした選手は32人(41%)ですからこれはさすがです。ところが、そのうち10勝以上を挙げた投手は11人(14%)、100勝以上となると尾崎行雄、野村弘、桑田真澄、松坂大輔の4人(5%)だそうです。全国の頂点に立った人たちにしては意外です。

これらのことから夏の投げ過ぎは危険と結論することはできませんが、甲子園大会がサドンデス(突然死、転じて、負けたら終わり)であるように、故障すると投手生命もサドンデスです。野手から投手への転向は少ないですが、高校時代に一塁手だった斉藤隆と外野手だった上原浩治がメジャーで、捕手だった阪神・久保田、大学で外野だった中日・岩瀬がプロで投手として活躍したのも、肩が消耗していなかったのがラッキーだったかもしれません。

こういうデータを見るとプロで大成することと甲子園出場はあまり関係ないようです。それよりも、大成した人の共通項は故障しなかったことにあると思います。甲子園と箱根駅伝は国民的学生イベントとして出ることに意義がある点が同じですが、投手だけに限っていえばリスクの高いイベントでもあります。

 

 

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今年の甲子園予選・東京大会

2014 JUL 24 19:19:24 pm by 東 賢太郎

先日のこと、外苑前から神宮球場へ歩いていたら100mぐらい向こうから高校生らしい学生服の男くさい集団がやってきました。日焼けで真っ黒な顔、鋭い目、いかつい体、用具をかつぐ下級生、軍隊みたいな硬派な雰囲気は見るからにまわりから異彩とオーラを放っていて硬式野球部とすぐわかります。すれちがうと感じる一種独特の殺気のようなあのムード。ああなつかしいな、夏なんだなあと思いました。

女子マネがもっていたカバンに足立西高校とあり、球場で見ると残念ながら負けちゃったようでした。でも神宮でできてよかったね。できなかった僕にはうらやましい。ネットで調べると足立西は1回戦では筑波大付属に8-0のコールド勝ち。そして、その足立西を6-0で破った文京はシード校の修徳に6-3で負け、その修徳はノーシードの岩倉に6-4で負けました。その岩倉が今度はシードの東亜学園に8-6(逆転サヨナラ)で負けます。まるでジャングルの弱肉強食の食物連鎖。しかしこれで東亜学園はやっとこさ東東京のベスト8になっただけなのです。明日準々決勝で成立学園と当たります。そこから準決勝、決勝と死闘を勝ちぬいてやっと地区大会優勝。いかに東京では甲子園が遠いかおわかりでしょうか。

つまり、足立西が甲子園に出るためには8連勝しなくてはなりません。後になるほど暑く、相手は強く、投手は疲弊します。好投手でも調子を落とすこともあります。サドンデス、負けたら終わりだから強豪校でも気は抜けません。僕が球児だったころは東と西の2校ではなく東京代表は1校でした(だから甲子園は出るものでも目指すものでもなくテレビで見るものでしたが)。ちなみに今年の我が九段は、1回戦は独協に12-0で5回コールド勝ちしましたが正則学園に5-0で負けました。その正則は朋優学院に負けましたがスコアは3-1の接戦で、朋優の石井投手はプロ4球団のスカウトが視察に来た今大会屈指の左腕です。だから正則との5-0はよくやったと思います。

そしてその朋優学院を1-0で破ったのが選抜で甲子園に出た都立小山台でした。小山台は明日神宮での準々決勝です(日大一高をコールドで下している帝京と当ります)。伊藤投手もプロ注目の好投手ですし甲子園メンバーの小山台が今大会ノーシードとは大変意外でした。それだけ力が分散しているのかもしれず甲子園で戦うにはやや不利ですね。野球はやはりピッチャーなのですが、ちなみに昨日の広島戦で好投したヤクルトの秋吉投手は都立足立新田高校出身ですし最近は都立もあなどれません。また、大学ですと149km出る京大(工学部)の田中投手は日米プロ14球団のスカウトが見に来る逸材で阪神がドラフト指名しそうです。意外なところに好投手ありという時代になっているようです。とにかく、雪谷が負けてしまったので明日は小山台にぜひ頑張ってもらいたい。

 

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都立小山台高校の甲子園

2014 MAR 21 18:18:57 pm by 東 賢太郎

履正社の投手はそんなに打てないほど球威があるとは思いませんでしたが、内外角の出し入れと緩急がうまいように見え、6回終了の時にいやな予感がしてしまいました。打球がまともに飛ばなくなっていたのでノーヒットノーランの独特の空気が。いよいよあと2人となって代打の左バッターがピッチャーフライと思ったらかろうじて超えてサードが捕り、間一髪でセーフ。よかった。11対0の完敗でしたがいきなり大阪代表にぶつかったのはちょっと不運でしたね。

小山台はベンチやスタンドにメガネのいかにも都立高校という子もたくさんいて他人ではないという感じでございました。体格は立派でバットの振りもいいがやや荒っぽくて、何より内野守備がちょっとまずい。あれで甲子園は無理ですね。グラウンドが狭くてサッカー部と交代で練習というのは都立には多いんです。しかしエースの伊藤君は素晴らしい。この時期で135km出て変化球もスライダー、カーブが数種類。4番から3つを含む5回終了時点で8奪三振は9回で14個ペースで、大阪代表からこれは物凄いことです。

序盤は変化球が決まらず2番に満塁ホームランを喫しましたが、あの回はまず先頭の三遊間をショートが捕るか最低でも止めてあげないとね。あんなにあっさり抜かれるとピッチャーはいい当たりを打たれた錯覚がして(現にたいした当たりじゃなかった)直球に自信がなくなったりします。そうだったかどうかはともかく、あの回はテンポが速くなって変化球が浮いてしまいボール球がはっきりして四球を連発してしまいました。中盤もせっかく4番を三振にしとめたのに5番を簡単に歩かすなどコントロールに課題があり、2年生のキャッチャーも策がなかったです。

高校野球は基本的に相手は初対面なので、投手の無用な与四球と打者のボール球への手出し凡打によって格を見抜かれてしまいます。今日の2チームはその両方で実力以上に差が出てしまいましたが、そういう不慮の流れになって格上の方のピッチャーがちょっといいと完全試合なんて恐ろしいことに平気でなったりします。そういう流れにハマっていましたから1本出て本当に良かった。

夏はもう一度出てきて雪辱してほしいです。

 

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花巻東 千葉選手がんばれ

2013 AUG 25 18:18:41 pm by 東 賢太郎

休みの間にいろいろなことがおきたようです。イチローの4千本、藤 圭子さんが亡くなるなど。藤さんは(娘の方はあんまり知りませんが)僕の世代には懐かしい名前であり非常に残念です。

それから甲子園は後半の方をすっかりミスってしまいました。勝敗は水ものなのでどこが優勝してもいいのですが話題の選手は見ておきたかった。中でもちょっと気になったのは花巻東の千葉選手です。画像を見ましたが、これは投手からすれば天敵みたいなものです。くそ暑い中苦労してコーナーをついた球をカットされれば体力だけでなく気力も消耗します。

ただ、小兵がカットで球数を稼いで四球で塁に出てかきまわすというのは、昔もよくありましたし普通でしょう。カットというのは誰でもできるもんではありません。相当難しいです。彼はクリケットでも一流になれるんじゃないかというぐらいうまい。あんなにうまいんだから前にだって打てるはずじゃないか。だから故意だろう。それなら投手を疲れさせるのが目的だ。高校野球の精神に反する。そういうことになってしまったのでしょうか。ちょっとぐらいならお目こぼしだがやりすぎはいかんよキミ、というなら彼はうますぎて損したというおかしなことになる。

甲子園大会はサドンデス・トーナメントです。ゴルフのプレーオフと同じで負けたら終わり。箱根駅伝と同じで見ている方は最後の夏なんていう感傷もまじえて楽しむ。だから3年生は高校生活の終止符という思いも強くなっています。勝ちにこだわるのはあまりに当然であります。高校野球は勝てばいいというものではない?それはエアコンきかして涼しい部屋で見ている人の勝手であって、グラウンドにいて戦っている側はじゃあどうすれば「いいというもの」になるのか教えてくれということでしょう。高校野球の精神というものが仮にあるとすればそれは「負けないこと」に尽きます。負けないためには、要はなかなかアウトにならないのがいいわけです。だから、出塁率7割の千葉君こそ高校野球の精神の申し子でなくて何でしょう。

日本の高校野球は高野連という組織が統括していて大相撲に次ぐ準国技みたいな存在に思います。勝てばいいというもんじゃない、これは横綱に格式と品格を求める横綱審議会の常套句でもある。姑息な手で勝ってはいけないのです。それならそういうルールにすればいいのです。横綱は蹴たぐり、猫だましは禁止とか。ルールにはないが求められる「横綱相撲」なるもの、これが「高校野球の精神」とよく似ていると思うのです。80年代に米国が日本の「非関税障壁」というものを指摘しましたが、同質のものが背景にあるように思います。いや甲子園はベースボールではない、野球でもない、柔道や相撲道に通じた「高校野球道」という別なスポーツなんだというしかないでしょう。

それはそれで構いません。米国にもベースボール道はあって、死球には死球の報復あり、大差の試合では盗塁しないなどルールブックにないinvisible ruleが存在しています。千葉選手のカット、あれを米国でやったら?知りませんが、ああいうのはinvisible ruleすらない想定外だろうし、投手はどうせ歩かすなら逆に球数セーブでぶつけちゃおうになって生命の危険があるかもしれませんが、精神論で「いかがなものか」なんていう横綱審議会が出てくる前にグラウンドで解決されるでしょう。イチローは内野安打が多いから姑息だ、新人王はやらない、なんて声は出ませんでした。仮に姑息だとなったとしてもカット打ちを「禁じ手」としてルール化するのは難しい。だから投手のボークと同じで、その場その場で審判が自己裁量で判断してバントとみなすことに結局なると思われます。

そして日本でも、ちゃんとルールブックにそう書いてあるそうです(「審判員がバントと判断する場合もある」)。

ルールで禁じているものは問答無用でだめです。高校野球の精神も3年間の汗と涙もなんら出る幕はありません。問題は審判がこのルールを適用してこなかったことにあります。ボークと同じで審判がそう判定しなければOKということです。だから千葉君を責めるのはお門違いです。ところが今回、準決勝前になって花巻東に対してこのルールを知っていますか?ときいてきた。これが決定的におかしいのです。ルールは知っていようがいまいが適用されるのであって、この質問は審判団にすべきものなのです。

セカンドからサインを盗んだと注意もされました。しかしこれについては「注意してやめさせる」とだけあって罰則はありません。「サイン盗み」というと知らない方にはとても悪行のように聞こえるでしょうが、昔の話ですがあれはけっこう当たり前で、僕らも当然のようにやっていましたし名電工時代のイチローが甲子園でやっているシーンをyou tubeで見ることができます。もちろん今のルールは厳しいのだろうし順守しているチームと不公平があってはいけません。監督はとぼけているがあれはやっていたように見えます。千葉君はここで審判団に「故意」を疑われてしまって性悪説となったのが影響しているかもしれません。しかしそうであってもそれはそれで、カット打ちに対する審判の判断基準変更が正当化されるわけでは毛頭ありません。

前の試合までOKだった牽制がこの試合からボークですと言われたら投手は確実に混乱します。OKだった試合でそれで負けたチーム はどうなるんでしょう?あの注意が精神論から出たとすればとても異常なことになります。ちょっとぐらいなら見逃すが行き過ぎはいかんというなら一罰百戒の共産国の人治政治と同じことであり、注意された方はそれを会得するために3年間努力したら最後になってお前のしたことは違反だ、悪いことだといわれる。教育の場とも謳われる高校野球においてそんな無茶苦茶な理屈が通るなら、それこそが高校野球の精神に反しているのではないでしょうか。

日本という国は前例のないことに判断をためらう国です。千葉君は審判団が戸惑うほど前例のない高い技術を身につけたということです。これをプライドにして堂々とたくましく生きていって欲しいと願っております。

 

 

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