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クラシック徒然草-3枚のLP音盤-

2013 JUN 3 20:20:33 pm by 東 賢太郎

中古レコードを買いました。1枚目はチェコのスプラフォン盤でモーツァルト(ピアノ協奏曲第9番とハ短調ソナタ)、オケはカレル・アンチェル指揮チェコフィルハーモニー、1960年ごろの最初期のLPレコードです。

写真

チェコ人にとってモーツァルトは特別のようです。交響曲第38番は「プラハ」だし、オペラもドン・ジョバンニや皇帝ティトの慈悲もプラハ初演。フィガロの結婚が最も愛されたのもプラハです。このジャケット、モルダウ川の冬ですが、実にいいですね。これを買ったのはピアニスト、ヒューゴ・シュトイレルとパヴェル・シュテパンが聴きたかったからです。最高でした。この頃のチェコの演奏、チェコフィルもスメタナ弦楽四重奏団もそうですが、音に暖かみがあり、きりりとひき締まったもぎたてのレモンのような切れ味があるのですが、この二人のピアノもまさにその路線です。こんなモーツァルトを今どき誰が弾いてくれるだろう。スプラフォンという当時国営のレーベルの録音もそれを活かす独特の色合いがあります。LPの時代はソ連のメロディア、ハンガリーのフンガロトンなど共産圏レーベルごとにお国ものの味があり面白かったのです。

 

2枚目です。これはにぎやかですね。ドイツ・グラモフォンのフランス盤で、これも1960年前後のものでしょう。「ロシアのこだま」とでもいったアルバム名でしょうか。A面はドレスデン・シュターツカペッレをクルト・ザンデルリンクが指揮したボロディン交響曲第2番。B面はルイ・フレモー指揮モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団によるグリンカの「カマリンスカヤ」、イーゴル・マルケヴィ写真ッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団のボロディン「中央アジアの草原にて」、グリンカ「ルスランとルドミュラ序曲」、リヤードフ「交響詩ヨハネの黙示録より」です。フランス人のジャポニズム(日本好き)は昔から有名で、浮世絵にはじまって今はパリの日本アニメ博覧会に200万人も押しかけるというから半端ではありません。また彼らは大のロシア好きでもあって、だからこそバレエ・ルッス(ロシアバレエ団)がパリで人気があり、あのストラヴィンスキーの3大バレエが生まれたのです(この原色的なジャケットを見ているとペトルーシュカを書く彼の心象風景のようなものが浮かんできます)。フランス人はエキゾチックなもの好きなんですね。しかしエキゾチック過ぎたのでしょうか、よく見るとスペルが間違っていて「カマリンスカヤ」が「カラミンスカヤ」になっています。細かいことは気にしないラテン気質、微笑ましいです。

 

そして3枚目。ノルウエーの作曲家、ヨハン・スヴェンセンの交響曲第1番ニ長調です。オランダのフィリップス盤で、1960年代のLPと思われます。2枚目のジャケットと比べる写真 (1)と何と地味なことか。フランスと北欧の違い、ラテンとゲルマンの気質の違いがわかりますね。オド・グリューナー・ヘッゲ指揮オスロ・フィルハーモニー管弦楽団のお国もの演奏です。グリーグが初演を聴いて激賞したというこのシンフォニーは25歳の若書きとは思えない立派な作品で、オスロ・フィルがまるでブラームスをやるウィーン・フィルのような思い入れで全身全霊をこめて演奏しているのがわかります。音響の面でも、この頃のフリップス録音のオケの音が僕は大好きで、ことにLPで聴く弦の温かみとぬくもりは滋味あふれるものがあります。これぞヨーロッパの手作りの名品の味わいであり、たぶんあまり売れなかったろうと思いますが極めて素晴らしいレコードです。中古レコード屋はこういう掘り出し物との出会いがあるのでたまりません。以上、心から堪能しましたが、お値段は3枚で1,500円でした。

 

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