Sonar Members Club No.1

since September 2012

「バンクーバーの朝日」に感動(フェアであることの強さ)

2014 FEB 27 22:22:40 pm by 東 賢太郎

TVで戦前の日本人野球チーム「バンクーバー朝日軍」を知りました。

第2次大戦前の日系カナダ移民の話です。ある日、日系人に職を奪われて怒り狂ったカナダ人暴徒に襲われて被害を受け、それに反撃を加えたために暴動は国と国の憎しみあいにまで発展してしまいます。その後も徹底的に人種差別を受けた日系移民たちは、現地のスポーツ野球で白人を見返そうと立ち上がって野球チーム「朝日軍」を作ります。しかしカナダのナショナルリーグには入れてもらえず、何年かたってやっと一番下のインターナショナル・リーグでの参加を認められます。

徐々に力をつけた朝日軍は白人チームに勝ち始め、やがて連戦連勝の戦果を挙げるまでになります。するとカナダ人チームは徹底したラフプレーを仕掛けて汚い手段で勝に行きます。けが人が続出し試合は一触即発の事態となりました。それでも朝日軍を出場停止にしなかったのは「ジャップをやっつるカナダ軍」が興業として客寄せになるからでした。同じ目的で、今度は審判までもがカナダ軍に味方をして、明らかなえこひいきのジャッジでカナダを勝たせるようになります。

怒り心頭に発した朝日軍の選手たちは審判に体を張った抗議を試みます。それをなだめたのが朝日の監督でした。「みんな暴動を思い出せ。あの時に反撃して何が得られたんだ?判定がおかしくても抗議は一切するな。日本軍はフェアプレーに徹しよう、それをカナダ人にわからせよう。」と言ったのです。

ある日、6-3で朝日が勝っている試合の9回、満塁走者一掃のヒットでカナダは同点とし、打者走者がホームにつっこみました。誰が見てもアウトでしたがジャッジはセーフ。カナダの逆転勝ちとなりました。その時、怒った観衆たちがグラウンドになだれ込み審判に猛抗議しました。それはカナダ人の観衆だったのです。

こうしてまたフェアな野球ができるようになると朝日軍は再び強豪チームとして返り咲き、カナダリーグで堂々たる戦績を挙げてカナダ人ファンの称賛を大いに浴びることとなったのです。そして日米開戦。すべての日系移民は資産を没収されて収容所に送られます。朝日軍は解散となり、終戦後ももはや復活することはありませんでした。

それ以来この話は忘れられていましたが、カナダプロ野球機構が朝日軍を異例中の異例として「殿堂入り」させることを決定し、日の目を見ることになったそうです。サムライとして称えられたのです。それを知った当時の選手の方がWe received spotaneous standing ovation. It was unexpected and will stay in my memory for the rest of my life. とおっしゃっていたのが焼きつきました。

世界ではサムライというのは人殺しなどではなく「フェアな人」であり「どんなに苦しくても正しいと信じることを粛々と行える強い人」だという意味に理解され始めているのかもしれません。それこそ日本人だけが誇ることのできる強さです。朝日軍へのカナダの方々のご評価はこれからの「世界の中の日本」を考える中でとても示唆に富む話ではないかと思いました。

この話は「バンクーバー朝日」というタイトルで今年映画化されるそうです。見てみようと思います。

映画『バンクーバーの朝日』公式サイト

 

 

Categories:______歴史に思う, 徒然に, 映画, 若者に教えたいこと

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊