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プロコフィエフ 交響曲第3番ハ短調 作品44

2014 APR 27 12:12:29 pm by 東 賢太郎

プロコフィエフのシンフォニーで1,5番でなくこれが好きという方はいらっしゃるだろうか?もしそうなら音楽的嗜好が近く、すぐお友達になれるだろう。僕は3番が大好きであり大学時代にアバド盤の第4楽章をカセットに入れて本郷の下宿で毎日聴いていたのが懐かしいが、斉藤さんが来られた時お聞かせしたかどうかは記憶にない。

この曲は元々交響曲ではなくオペラ「炎の天使」として作曲されたが、全曲の初演見通しが立たないためその素材を使って交響曲にしたという変わり種であり、実は本来はこの名曲である「炎の天使」の方を聞いていただきたいのだ。

http://youtu.be/_lHsNmU92eY

http://youtu.be/vqmD2cveJJE

プロコフィエフという人はセレナーデを交響曲にしてしまった(第35番)モーツァルトに似て何でも作れる職人中の職人だったが、そういう出自はともかくこの第3番は傑作であり、僕は彼の全作品中ベスト3に入れる。これのスコアは「春の祭典」に匹敵する面白さで、暇ができたらシンセでMIDI録音したい魅惑とワクワク感に満ちている。例えばこの第3楽章だ。13パートで分奏する弦がハーモニクスのグリッサンドでヒューヒュー不気味な音を立てて疾走する様は「火の鳥」、「惑星」(水星)、「弦チェレ」、リズムは「春の祭典」を、最後は「惑星」(火星)を想起させるが、そのどれよりもマジカルで創意に満ちている。ちなみにライバルだったストラヴィンスキーがこの曲は誉めた。

プロコ3番

 

 

 

 

 

 

 

第1楽章の終わりの数ページ、第2楽章の中間部、そうして第3楽章の中間部のこのページから!何という不思議な和音に導かれた氷のように冷たい世界だろう。それがシベリウスのように人間離れしたものではなく、湖に現れた妖女の誘いのように感じる。3の2プロコ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名曲ゆえ名演がいくつかある。僕はアバド/ ロンドン交響楽団で覚えたが第1楽章のどっしりしたテンポは好きだが妖しさにやや不足するのでファースト・チョイスにはおすすめできない。しかしアバドが振ったプロコが1番と3番というのは彼の趣味が伺えとても共感を覚える。

 

ジャン・マルティノン / フランス国立放送管弦楽団

CDX-5054最高に素晴らしい名盤である。このオケはムラがあるがマルティノンが振るとこんなに良いピッチと音色で鳴る。録音は適度な潤いがありフランスの管と曲のマッチングが良く、複雑なスコアが明快に解きほぐされる。価値がよくわかっていないレコード会社がこういう名盤をどんどん安物コンテンツの仲間入りさせて廉価盤に落としてくれる。実に馬鹿な話だが消費者としては有難い。マルティノンは全曲揃えてよい。

 

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー / モスクワ放送交響楽団

この指揮者の読譜力、解析力とオケへのその伝達力はプロとしても群を抜いている。読響を振った火の鳥、春の祭典でそれを確信した。こちらで全曲お聴きいただきたい。http://youtu.be/MlvStcZvqrs                                                                                              第3楽章のオケのうまさは鳥肌物だが第4楽章は弦がやや粗い。韓国のイエダンというレーベル(YCC-0044)から1961年1月6日録音で同じ指揮者がソヴィエト国立SOを振ったライブが出ており、そっちの方がさらに凄い圧倒的名演である。それをYoutubeにアップロードしたのでどうぞ。

 

キリル・コンドラシン / アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

プロコunnamedコンドラシン最晩年のACOライブ録音で、僕はロンドン滞在中に、たしか85,6年にHMVで買って以来ずっと大事にして愛聴しているLPである。5.99ポンドだった。CDはショスタコ9番と組んで出たが音はLPの方が格段に良い。これは廃盤のようでこれまた業者の見る目のなさを嘆くしかない。演奏の素晴らしさは言葉がなく、当曲の真の愛好家は探し出して所有するべきである。

 

ヴァレリー・ゲルギエフ / ロンドン交響楽団

540曲をつかみきった名演。この指揮者は音楽を大づかみにとらえメリハリをつけて表現するタイプであり、それがツボにはまった時は実にいい演奏になる。2003年に東京で聴いたベルリオーズのレクイエムは退屈だったが、95年にチューリヒで聴いたキロフ管弦楽団との「火の鳥」がそうで感銘を受けた。この全集はロンドンSOの重心の低い音を使ってライブのような活力のある音楽となっており、3番は非常に素晴らしい。

 

ネーメ・ヤルヴィ指揮N響のプロコフィエフ6番を聴く

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