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どうして証券会社に入ったの?(その4)

2014 NOV 29 0:00:53 am by 東 賢太郎

<ついに初商いに成功するの巻>

 

「飛び込んで名刺を百枚集めろ」!

インストラクターS先輩によるこの命令は滅茶苦茶でした。同期に社内電話して、おい、お前んとこはどうだときくと、だいたいが「電話でアポ入れだ。入ったら会いに行くんだ」といいます。そりゃそうだろう。「俺んとこは田舎だからな、家に電話だよ。奥さんが結構あってくれるぜ」。そりゃそうだろう!

だんだん腹が立ってきますがS先輩はこう言い放ちます。

「お前らなあ、ここはどこだ?大阪の駅前だろ。まわりは会社しかねえだろ。だから飛び込むのが早いんだよ」

「でもSさん、会社ったってほとんど上場企業しかないですよ。」

「お前らばかか。頭つかえよ、そんなら四季報で外交すりゃ早いってことだろ。ウチの名刺を出して会えない人なんかいないんだぞ。」

うーん、すごい。なんの理屈もないが説得されてる。こういうのがトップセールスってもんなのか。これをまじめに信じて大変なことをやらかしてしまうことになりますが、それは次回にとっときましょう。

さてこの飛込み外交ですが、1、2か月やってるうちにだんだんコツがつかめてきます。楽しいとはいえませんが何ということもなくなってきます。たしかに会社名の威力がなければできないことなので、今ふりかえると良い会社に入れていただいたとつくづく思います。

なにしろ、こういう強力な効能があったからです。

①目的が数字でわかりやすい。

あと5 枚ぐらいになると夜の7 時で真っ暗でも、「くそっ、もうひと頑張り」となる。全力でやってこい、頑張ってこいのような指示より壁際のプレーまでやる気が及ぶ。力が伸びるし長丁場では大差になる。

②何か話さざるを得ない

社長が出てきてしまうと「なんや?」「なんの用でっか?」だ。そこでビビったら名刺すらもらえない。相手を見て瞬時に「つかみ」の一発をかます必要がある。話は簡潔でわかりやすく面白くないとダメ。度胸、洞察、機転、話術、説得力、その全部が勝手に磨かれる。もちろん勉強も毎日せざるをえない。

③本当に社長に会える

電話によるアプローチでは絶対に無理。大会社ほど秘書に撃退される。家にかけても奥さんが出るだけでちっぽけな商売にしかならない。本人を直撃するのが王道だ。苦労人が多いから若者が汗だくで説明すると意外に聞いてくれたりもする。

やっぱり3年でトップセールを極めた人の方法は違います。ストレートだし本質のエッセンスを突いているし、鉄は熱いうちに打て、若手を一気に育てるにはこれだと思います。これを何百回もやったら誰だってトップセールスになりますから。この効能は僕の財産になり、今だってその余禄で食ってるみたいなものです。

最近ですがときどき弊社みたいなちっぽけなオフィスでも飛び込みのセールスが来ます。証券、保険、商品、コーヒー、事務用品、人材派遣などなど。悪いなごめんと思いながら僕は会いません。会うと昔を思い出して同情して買ってしまうからです。

 

さて、初めての商売のことです。自動車修理工場の社長で、現場に油まみれだったから作業員のオッチャンと思ったら社長でした。感じが良かったので後日にN社の公募株をもってまた工場にいったら「よっしゃ、こうたるわ」でした。

新人の初商いです。すごい、俺はラッキーだ!この時の感動は忘れられるものではありません。当時の公募というのは少しだけ値引きでだいたいもうかるからサービス商品なんです。それで口座開設してもらえ、そうすればそこからは普通の取引になるからなと先輩から教わっていました。

200円ぐらいの株だったので千株で20万円ほど。このお札を数えるのですが、そんな大金は触ったこともなく手が震えてうまくいきません。ゆっくりゆっくり5回ぐらいやってなんとか確認。「たしかにいただきました!」うれしさのあまり最敬礼して帰ろうとしたら

「兄ちゃん、預かり証もらってへんで」

そうでしたね、総務の課長さんが僕を見て危ないと思ったんでしょう、しっかり者の同期たちの倍ぐらい口酸っぱく仕込まれたイロハはうれしさの余りどこかにすっとんでました。

店へ帰ると たいへんです。S さんに「東、よーやった」と大声でほめられ、周囲の先輩からも「おー、新人、凄いな」とバンバン肩をたたかれ手荒い祝福を受けました。なんかこの世界いいな、俺にむいてるなあ、とこのとき初めて思ったのです。

ところがその祝福はつかの間のことでした。このオッチャンはひよっこの証券マン食いで、それ以来いくら行っても会ってもくれず電話にも出ず、すぐ売り抜けられてそれっきりでした。有名な公募の食い逃げ常習犯だったのです。

名刺は集まれど、商売成り難し。大阪の商人道は行けども行けども果てしなく、ほろ苦いものでした。

 

どうして証券会社に入ったの?(その5)

 

 

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