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デュトワ/N響のペレアスとメリザンドを聴く

2014 DEC 7 22:22:25 pm by 東 賢太郎

興奮冷めやらぬまま帰宅。日曜日の午後3時からの、あっという間の3時間半でした。僕のこのオペラへの熱い思いはすでにブログにしていますが上演はなかなかありません。録音だって多くはなく、それも一長一短があるのです。

屋久島の深い森をさまよっていたからでしょうか、森の奥深くに猪を追ったゴローが迷い込むシーンからすーっと音楽に入ってしまいます。

僕にとってこのオペラは不思議娘のメリザンドで決まります。好きなタイプのメリザンドがあるのですがフレデリカ・フォン・シュターデがあまりにはまりで、なかなか浮気ができずにおります。

今日の当役はカレン・ヴルチ。きいたことがありません。経歴を見ると「パリ高等師範学校で理論物理学の専門研究課程を修了」です。アルモンド王国でロケット開発でもするんかいとイメージが狂います。

しかし大外れでした。女性はそのものが不思議なんです。泉の水のように澄んだ声と完璧なピッチ。古典も現代曲もいけてしまうだろう究極の音楽美です。たしかにちょっと知的ではあるが、メリザンドは決して馬鹿ではなく「嘘をつくのはゴローにだけよ」という面がある。大変なクオリティの歌唱を生で聴けた僥倖に感謝するしかありません。彼女の歌は全部聴くことに決めました。

ヴァンサン・ル・テクシエも当たりでした。ゴローの猜疑が怒りそして殺人になっていく過程を描いたオペラでもあります。それが弱いと意味不明になります。演技がない演奏会形式でこのインパクトは素晴らしい。

アルケルのフランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ、存在感がありました。この人のザラストロは良さそうだ。ペレアスのステファーヌ・デグー、髪の毛のシーンは好演でした。ジュヌヴィエーヴのナタリー・シュトゥッツマン、どう考えても端役ですがこんな大物が。もちろん良かった。デュトワの気合いを感じます。イニョルドのカトゥーナ・ガデリア、見事でした。いい声、というか気になる声です。フォローしたい。医師のデーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン、貫録でした。

シャルル・デュトワがN響から紡ぎだした音響は一級品でした。モントリオール響とのドビッシーは時々聴きますが、やや作りこんだ美という感じもあります。今日のは特にフランス風ということでもなく、音楽のエッセンスを理想的に引き出した観。模糊とした響きが屋久・白谷雲水峡は「苔むす森」の幻想的な風景とシンクロするほど自然なものがありました。デュトワがいま聴ける指揮者の中でも屈指の巨匠であることを確信しました。そして、なによりそれに見事にこたえたN響に大拍手です。

僕が今年きいたうち、文句なく最高の演奏会でした。大変な名演を有難うございます。

 

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