Sonar Members Club No.1

日: 2014年12月27日

黒田のカープ復帰は歴史をぬり変える

2014 DEC 27 14:14:40 pm by 東 賢太郎

今年の最後の最後に凄いニュースが飛び込んできました。パドレスが21億円を提示した黒田争奪戦、なんと4億円の広島カープが勝ったようです。

これはハナからお金の話ではなく、黒田という男の人生観の話と思います。僕はそう考えたい。

アスリートが上のステージでプレーしたいのは当然でしょう。そのために彼は広島を去った。そしてヤンキースでエース格になった。だから金と名誉もついてきた。

でもそれで彼は「あがり」じゃなかった。育ててくれた広島カープへの恩返しという、もっと重たいものが先にあった。そこがずっしりと重いですね。日本人として、人間として。

田中やダルビッシュもいい投手と思います。いずれ彼らも40歳になる。そこでこういうことができるかな。松井秀喜は日本なら軽く30本塁打できたと思いますが、復帰せず引退した。彼の人生観ですね。それと比べて評価すべき話と思うのです。

だから、メジャーへ行って全然だめでしたとかマイナーに落ちましたとかいうような人たちが仕方なく日本球界に帰ってきて、それでも何億円もらえましたなんていう品格のかけらも感じない金満話と一緒にして欲しくないですね、絶対に。

そもそも黒田は日本球界に帰ったのではない、カープという球団に自分の意志で移籍したのです。他の者とは月とスッポンの差である。日本の組織というのはわがまま言って出ていった者が帰ってきにくいものです。会社だって一度辞めた者が舞い戻るなんてことはまずありません。

だからほとんどの選手が違う球団に戻っています。それを引き戻した広島カープという球団を僕は見直しました。懐が深い。こういう球団だから黒田は戻ったんでしょう。思えば阪神に出ていった新井もそうです。カープのスタンスにとても日本的なものを感じます。お金だけのアメリカンでないものを。

お金といえばパドレスの提示した単年契約で21億7千万円はメジャー全球団でエース級の報酬です。40歳ですがまだメジャーリーガーの頂点にあるという評価であり、日本球界に帰る必要なんかさらさらない。

もうひとつ僕が感心したのは来期はあと1勝で全30球団から勝利という名誉がかかる年だったこと。そしてパドレスのオファー金額は40歳の選手としてメジャー最高記録だったということです。だからそれを受ければ歴史に名を刻む名誉でもあった。

アメリカというのは報酬金額=能力の証明、であっけらかんと皆が納得するわかりやすい国です。金持ちはきっと裏で何かやってるんだろうと疑う日本とはわけが違う。だからそれは堂々たる名誉だったのです。

黒田はもうカネはたんまりあるんでしょと穿って考える人もいると思うので書きますが、そういう人こそ次に欲しくなるのが名誉です。勲章をもらうのが生きがいの人、いくらでもいます。それも彼は蹴ったわけです。これも重い。

「恩がえし」という英単語を僕は知りません。復讐(リベンジ)はありますが・・・。辞書を見たらrequitalとありますが、これは返礼という意味でちょっとニュアンスがずれる。それにやっぱり復讐という意味もあるんです(笑)。

単語がない、ということは欧米人はそういうことはしないということです。存在しないものに名前はつけないのです。

 

希望的観測をこめて、これは以下の3つの大変化を生むと思っています。

 

①黒田は男の言葉の重みを変える

これは腐りきったニュースの続いた日本に強烈なインパクトになるでしょう。

黒田が言っていたといわれる「カープに恩義があるから活躍できるうちに帰る」という言葉は17億円より重かった。うわべだけのリップサービスじゃなかった。これに僕は涙が出るほどいま感動しているのです。

コピペ、STAP論文捏造、偽ベートーベン、おれおれ詐欺、食品偽装、やらせ、なりすまし・・・・こういう国辱ものの大嘘つきどもが吐いたり書いたり貼ったりした軽~い言葉、それを報じるマスコミや評論家やネット民の軽~い言葉。私利私欲や小遣いかせぎで議員になったような唾棄すべき連中の軽~い選挙演説や泣きわめき。

比べてみてください。けっして男だ女だいうつもりはない。でもね、「武士に二言なし」なんです、我が国は昔から。サムライは男です。なにより男の言葉が軽くなっちゃあいけません。

野球選手の話ですが野球の話じゃないです。高倉健亡き後、最高の日本男児が現れました。今年一年、はらわたが煮えくり返り、何度も何度も僕はブログにしてきましたが、黒田が百万倍の力でそれをぶっ飛ばしてくれました。

 

②黒田は世界の日本人評価を変える

これを聞いて、誰より仰天しているのはアメリカ国民です。確実に。

オー、ノー、ホワット イズ ヒロシマカープ?

なんだそれは?メジャーリーガーの誇りよりも、17億円よりもヴァリューがあるものなのか?日本ってなんなんだ?

でもね、これは僕の予測ですが、アメリカ人はきっと黒田をたたえると思いますよ。こいつはリアル マン(男の中の男)だ、サムライだって。

そりゃあ世界のどこへ行ったってこれはすごい、男として格好いい。17万円でいいから俺も言ってみたい。彼はスーパーマンになったのです。中国人、韓国人にできますか?

日本人って、カッコいい!

 

③黒田は近代経済学の歴史を変える

僕はまじめに言ってます。ウォートン・スクールで僕はノーベル経済学賞のクライン博士がこう言ったのをはっきり覚えているからです。

「人間は経済人である。経済的に必ず合理的な行動をとるのです」。

博士はまじめにそう言っている。だから僕もまじめに言ってます。

これから「ただし、目の前に落ちている17億円を拾わないサムライはその限りではない」というリマークが入ることになるだろう。

 

黒田君、ほんとうに凄い決断です。ありがとう。50年もカープを応援してきたことをささやかながら誇りに思います。

 

いかん、それで思い出しました。あまりに凄すぎて4つ目を忘れてました。

 

④黒田はカープの歴史を変える

これで来年は黒田、マエケン、大瀬良と三枚看板がそろい、優勝は完全に射程圏に入りました。

 

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ハイ・ファイ・セット 「メモランダム」

2014 DEC 27 0:00:01 am by 東 賢太郎

中学高校のころみんなオールナイトニッポンなんて深夜放送をきいていて洋楽、ポップスはこれが情報源みたいなものだった。僕は中学、高校は家が遠かったので朝が早くあまりきけなかった。だからポップスはいつも乗りおくれていて話題についていけない。オリビア・ニュートン・ジョンはジョンだから男だと思っていて、そういうのに詳しいのが自慢のシティボーイどもにばかにされた。

大学になって下宿させてもらった。法学部の講義というのは全部が大教室であり出席をとる課目がない。全員が勤勉という性善説で成り立っている大学なので僕のような怠け者がいることは想定がない。それをいいことにあしたの授業はまあいっかとなる。そうなると元来が夜行性である。借りを返そうとポップスを夜中に聴きまくって、だいたいのはあとからそこで覚えた。ビートルズの後期も実はそこで半ばクラシックとして聴いたので、ベンチャーズ世代ではあってもビートルズ世代というのはおこがましい。

hfs1どこでどう知ったか記憶にないが、夜中にきいたであろうグループにハイ・ファイ・セットがある。フォークの赤い鳥というのがあり、これは問題外で全然興味なし。そのメンバーだったとは信じ難いほど洗練されたヴォーカル・アンサンブルが気に入った。ただ、ビートルズといっしょで「世代」という感じでないからアルバムをきいたわけでなく、ハイファイブレンド1・2というベストアルバムを買っただけだ。

hfs2当時なけなしの小遣いでクラシックをさしおいて2枚も買ったのだからよほど気に入ったのだろう。先日それを録音して下宿に持ち込んだカセットをきいていたら、もう40年も前なのにきっちり覚えている。それにしてもいい、これは。女性はともかく男性2人は特にうまいわけではない。ところがハーモニーはピタリと純正調に決まる。それも、その和声がなんともオシャレである。

こういう音を作るのは非常に耳とセンスを問われると思う。「フェアウエル・パーティー 」「スカイレストラン」、この和声進行はまことにハイセンスである。「 スウィング」のコーラスの2度音程を含む密集和音での進行の音程の良さなど、今ならこのままアメリカへもっていって通用しそうだ。ガキの音楽がJ-popみたいになっているが、当時のは大人がじっくり聴けるものだったのだ。

「真夜中の面影」、そう、これは当時はまっていたっけ。僕的にはちょっと音があぶないカウンターテナー・ソロで頼りなくはじまる。ところがだ。あれはほんの数分前のことなのに~のコーラス、歌詞!はやく~の女声が入るとがらっと和音も音色もがらりと変わり見事なバックコーラスが!ここで完全にノックアウト、脱帽である。作曲者をみると山本俊彦、最初のソロだが、彼は今年の3月に亡くなったことを知る。なんということだ・・・。

もうひとつ、書きたい。この曲、メモランダム。ハイ・ファイ・セットのバックコーラスの和声の洗練度はカーペンターズぐらいしか対抗するものが浮かばない。

このメロディーはクラシックになる。フォークのおにいちゃんや凡庸な音大生が書ける代物ではない。今夜も呼んでいるあなた~の裏、全音で上がるマイナー7、こりゃすごい。

これも山本俊彦と思ったら違う。滝沢洋一というアーティストだ。ぜんぜん知らない。そうしたらyoutubeに彼の自作自演があった。

あまりに曲として完成度が高いからだろう、ハイ・ファイ・セットのカバーは伴奏のアレンジはともかくほぼ原曲だ。ユーミンのはかなり音もテンポもいっじてるのに!

こういう曲を作れる人はクラシックの教育を受けているんだろうか?それはイコール、ピアノだ。アメリカのシンガーソングライターはピアノが弾けそうだが日本はよく知らない。でもレノン・マッカートニーみたいにむしろギターじゃないとできない曲想もある。こんな作品ができればやりかたなんか二の次だ。

滝沢洋一は売れなくてアルバム1枚で亡くなったらしい。売れなかった?なんてことだ。クラシック世界の人は認めないだろうが僕はこういう曲はわけのわからないゲンダイ音楽などよりずっと価値があると思う。いや、僕が思わなくたってきっと聴きつづけられる。ということはコンクールが終わったらめったに演奏されない現代曲よりこっちが「クラシック」になる日が来るのだ。

おふたりとも団塊の世代、熱かった世代だ。音楽にも人生にも恋愛にもうるさくて熱い、いい時代でした。ご冥福をお祈りします。

 

(こちらへどうぞ)

マッコイ・タイナー「Fly With the Wind」

 

 

 

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